2020/10/22(木) - 11:01
今季僅か1勝しか挙げていなかったモビスターがチーム拠点パンプローナの山岳コースで猛攻撃。終盤の1級山岳ダウンヒルで抜け出したマルク・ソレル(スペイン、モビスター)がライバル勢を振り切り、低迷していたチームに嬉しい勝利をもたらした。
カルロス・バルベロ(スペイン、NTTプロサイクリング)が母を亡くした入部正太朗にメッセージ photo:Unipublic
マイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とマイヨモンターニャのセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
美しいパンプローナ旧市街を駆け抜けていく photo:Unipublic
開幕初日にして激しく総合成績が動いたブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)だが、2日目もスプリンターの出番は回ってこない。主催者ユニパブリックが「丘陵ステージ」とカテゴライズするパンプローナからレクンベリまでの151.6kmコースは、序盤から3級山岳を2つ越え、残り26km地点から1級山岳サンミゲル・デ・アララル峠を駆け上がる紛れもない山岳ステージだ。
10月21日(水)第2ステージ パンプローナ〜レクンベリ 151.6km photo:Unipublic
10月21日(水)第2ステージ パンプローナ〜レクンベリ 151.6km photo:Unipublic
ジロ・デ・イタリアでトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が逃げたこの日、ブエルタでは盟友ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が2日連続のエスケープ。アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ)を含む5名がリーダーチームのユンボ・ヴィズマ率いるメイン集団から飛び立った。
逃げた5名
アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ)
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
ゴンサロ・セラーノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
逃げる5名はメイン集団から4分程度のリードを得て、パンプローナ西側の山岳地帯を駆け抜けていく。昨年大会でステージ2位を2度経験しているアランブルと同じく昨年大会で5位を経験しているアルミライルという逃げメンバーを、ウェレンスが2つ目の3級山岳「プエルト・デ・ウルバサ(全長6.8km・平均5.7%)」を前に置き去りにした。
2日連続エスケープを打ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
2つ目の3級山岳で独走に持ち込んだティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
メイン集団をコントロールするヘーシンクやデュムラン(ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
ステージ優勝を目指して超ロングアタックを繰り出したウェレンス。ツール・ド・フランス直前のモーターペーサー練習中の落車でメンバーから外れたため、今季初グランツール出場となった29歳は長い登坂区間で順調にリードを積み重ね、残り50km地点で追走グループを1分半、メイン集団を6分以上突き放すことに成功した。
その頃、しばらく平穏に進むかと思えたメイン集団では、3級山岳の下り区間に横風吹きさらし区間があることを理解していたモビスターが猛烈なペースアップを敢行する。メンバーを総動員した加速に集団後方の選手たちはたまらず千切れ、約70名に減ったプロトンは一気に先頭ウェレンスと追走グループの距離を縮める。この動きを知ったウェレンスはアタックを止め、追走グループに戻るとそのカウンターでアルミライルが飛び出した。
モビスターが牽引する集団からは2日連続でクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が遅れ、118km地点の中間スプリントをきっかけに繰り下がりでマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着用するリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がアンドレイ・アマドール(コスタリカ)の力を借り、逃げからこぼれたアランブルを連れて集団を飛び出した。
色づく山岳地帯を駆け抜けていくプロトン photo:Unipublic
ログリッチから繰り下がりでマイヨプントスを着用するリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) photo:Unipublic
横風区間でペースアップを仕掛けるモビスター photo:CorVos
カラパス、アマドール、アランブルの3人は一人逃げ続けていたアルミライルをキャッチしたものの、全長9.4km・平均7.9%・最大15%という1級山岳サンミゲル・デ・アララル峠の序盤区間でハイペースを保ち続けるモビスター勢に引き戻される。カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)の牽引によってトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)も脱落し、続いてスペイン王者ルイスレオン・サンチェス(アスタナ)が飛び出したものの、頂上まで15km以上を残してやはりモビスターが吸収する。地元レースで輝く青色軍団の動きはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)も脱落させた。
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着用するセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)のアタックも許されず、9.4kmの登坂を先頭グループ内で生き残ったのはマイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)や総合2位カラパス、3位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)、4位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)、6位エンリク・マス(スペイン、モビスター)、7位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)、8位クス、11位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、20位マルク・ソレル(スペイン、モビスター)という精鋭グループのみ。総合5位フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)は大きく遅れを喫した。
緩いコーナーが続くハイスピードダウンヒルで鮮烈なアタックを仕掛けたのはソレルだった。「一度遅れていたけれど、彼らの倍のスピードで下っていたのを利用して、誰にも後ろに付かれないよう追い抜いた」と言うソレルは一気にリードを奪い、人数を揃えたモビスターが後続グループのペーシングをかき乱したことで追走のリズムが回らない。追いついてきたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ)とクスがローテーションを回したが、チームの地元ステージに燃えるソレルの勢いが上回った。
終盤に単独で飛び出し優勝を決めたマルク・ソレル(スペイン、モビスター) (c)CorVos
追走グループ先頭でフィニッシュするプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
およそ25秒差を得たソレルが、馬が乱入した下りを無事にこなし、フラムルージュをくぐり、フィニッシュラインが引かれたレクンベリの街中に戻ってくる。何度も後ろを振り返り、無線機に話しかけ、拳を振り上げながらフィニッシュ。期待されていたツールの初日に落車し、総合21位と不完全燃焼に終わっていた26歳がモビスターのチームワークの末に勝利した。
「この勝利はとても嬉しい。母国でのレースかつ、チームの拠点のあるナバラということもありモチベーションが高かった。スタート前に監督とウルバサ峠(残り61km地点)の頂上で仕掛ける計画を立てていたんだ。そこから集団を引き始め、すべてが上手くいった」と振り返るソレルにとっては、2月のチャレンジマヨルカに続く今季2勝目。今季ソレルの1勝のみに留まっていたモビスターが、チーム拠点を走る地元ステージで狙い通りの勝利を挙げてみせた。
ソレルを逃した後続グループは。マイヨロホのログリッチを先頭にフィニッシュ。ボーナスタイムを得たログリッチは2位カラパスとの差を9秒差に広げている。ソレルが総合10位に浮上した一方、遅れたグロスチャートナーは総合5位から9位にダウン。「脚がもう空っぽだ」と振り返るデュムランは総合16位から28位に、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)は総合18位から29位に、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)も総合12位から36位まで順位を落としている。
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開幕初日にして激しく総合成績が動いたブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)だが、2日目もスプリンターの出番は回ってこない。主催者ユニパブリックが「丘陵ステージ」とカテゴライズするパンプローナからレクンベリまでの151.6kmコースは、序盤から3級山岳を2つ越え、残り26km地点から1級山岳サンミゲル・デ・アララル峠を駆け上がる紛れもない山岳ステージだ。
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ジロ・デ・イタリアでトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が逃げたこの日、ブエルタでは盟友ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)が2日連続のエスケープ。アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ)を含む5名がリーダーチームのユンボ・ヴィズマ率いるメイン集団から飛び立った。
逃げた5名
アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ)
ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)
ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)
ジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
ゴンサロ・セラーノ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)
逃げる5名はメイン集団から4分程度のリードを得て、パンプローナ西側の山岳地帯を駆け抜けていく。昨年大会でステージ2位を2度経験しているアランブルと同じく昨年大会で5位を経験しているアルミライルという逃げメンバーを、ウェレンスが2つ目の3級山岳「プエルト・デ・ウルバサ(全長6.8km・平均5.7%)」を前に置き去りにした。
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ステージ優勝を目指して超ロングアタックを繰り出したウェレンス。ツール・ド・フランス直前のモーターペーサー練習中の落車でメンバーから外れたため、今季初グランツール出場となった29歳は長い登坂区間で順調にリードを積み重ね、残り50km地点で追走グループを1分半、メイン集団を6分以上突き放すことに成功した。
その頃、しばらく平穏に進むかと思えたメイン集団では、3級山岳の下り区間に横風吹きさらし区間があることを理解していたモビスターが猛烈なペースアップを敢行する。メンバーを総動員した加速に集団後方の選手たちはたまらず千切れ、約70名に減ったプロトンは一気に先頭ウェレンスと追走グループの距離を縮める。この動きを知ったウェレンスはアタックを止め、追走グループに戻るとそのカウンターでアルミライルが飛び出した。
モビスターが牽引する集団からは2日連続でクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が遅れ、118km地点の中間スプリントをきっかけに繰り下がりでマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着用するリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)がアンドレイ・アマドール(コスタリカ)の力を借り、逃げからこぼれたアランブルを連れて集団を飛び出した。
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カラパス、アマドール、アランブルの3人は一人逃げ続けていたアルミライルをキャッチしたものの、全長9.4km・平均7.9%・最大15%という1級山岳サンミゲル・デ・アララル峠の序盤区間でハイペースを保ち続けるモビスター勢に引き戻される。カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)の牽引によってトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)も脱落し、続いてスペイン王者ルイスレオン・サンチェス(アスタナ)が飛び出したものの、頂上まで15km以上を残してやはりモビスターが吸収する。地元レースで輝く青色軍団の動きはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)も脱落させた。
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着用するセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)のアタックも許されず、9.4kmの登坂を先頭グループ内で生き残ったのはマイヨロホのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)や総合2位カラパス、3位ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)、4位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)、6位エンリク・マス(スペイン、モビスター)、7位ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング)、8位クス、11位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、20位マルク・ソレル(スペイン、モビスター)という精鋭グループのみ。総合5位フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)は大きく遅れを喫した。
緩いコーナーが続くハイスピードダウンヒルで鮮烈なアタックを仕掛けたのはソレルだった。「一度遅れていたけれど、彼らの倍のスピードで下っていたのを利用して、誰にも後ろに付かれないよう追い抜いた」と言うソレルは一気にリードを奪い、人数を揃えたモビスターが後続グループのペーシングをかき乱したことで追走のリズムが回らない。追いついてきたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ)とクスがローテーションを回したが、チームの地元ステージに燃えるソレルの勢いが上回った。
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およそ25秒差を得たソレルが、馬が乱入した下りを無事にこなし、フラムルージュをくぐり、フィニッシュラインが引かれたレクンベリの街中に戻ってくる。何度も後ろを振り返り、無線機に話しかけ、拳を振り上げながらフィニッシュ。期待されていたツールの初日に落車し、総合21位と不完全燃焼に終わっていた26歳がモビスターのチームワークの末に勝利した。
「この勝利はとても嬉しい。母国でのレースかつ、チームの拠点のあるナバラということもありモチベーションが高かった。スタート前に監督とウルバサ峠(残り61km地点)の頂上で仕掛ける計画を立てていたんだ。そこから集団を引き始め、すべてが上手くいった」と振り返るソレルにとっては、2月のチャレンジマヨルカに続く今季2勝目。今季ソレルの1勝のみに留まっていたモビスターが、チーム拠点を走る地元ステージで狙い通りの勝利を挙げてみせた。
ソレルを逃した後続グループは。マイヨロホのログリッチを先頭にフィニッシュ。ボーナスタイムを得たログリッチは2位カラパスとの差を9秒差に広げている。ソレルが総合10位に浮上した一方、遅れたグロスチャートナーは総合5位から9位にダウン。「脚がもう空っぽだ」と振り返るデュムランは総合16位から28位に、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)は総合18位から29位に、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)も総合12位から36位まで順位を落としている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2020第2ステージ結果
1位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 3:47:04 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 0:19 |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | |
5位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
6位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
7位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | |
8位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | |
9位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | |
10位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | |
DNF | アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル) | - |
DNF | ブランドン・リベラ(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | - |
マイヨロホ 個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 8:09:41 |
2位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 0:09 |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 0:11 |
4位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 0:17 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | |
6位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFプロサイクリング) | 0:20 |
7位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:26 |
8位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ) | 0:56 |
9位 | フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:59 |
10位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | 1:04 |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 14pts |
2位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) | 14pts |
3位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル) | 6pts |
マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | 45pts |
2位 | リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) | 34pts |
3位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) | 32pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)
1位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | 8:09:58 |
2位 | アンドレア・バジオーリ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 1:29 |
3位 | ジーノ・マーダー(スイス、NTTプロサイクリング) | 2:13 |
チーム総合成績
1位 | ユンボ・ヴィズマ | 24:30:41 |
2位 | モビスター | 1:00 |
3位 | UAEチームエミレーツ | 4:36 |
text:So Isobe
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