2020/10/04(日) - 09:13
ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを駆け上がるビンクバンクツアー最終ステージでマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)が独走。実に50kmにわたるソロエスケープを成功させたファンデルプールがステージ優勝と逆転総合優勝を果たした。
ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを駆け上がる選手たち photo:CorVos
さながら「北のクラシック」。ビンクバンクツアー最終日は、ステージ後半にかけて「ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン」や「ボズベルグ」を含む25km周回コースを4周する全長187km。最後は合計5回登場する「ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン」を駆け上がり、その中腹にフィニッシュする。
第5ステージのスタート時点でリーダージャージを着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)は総合2位セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)から7秒、総合3位シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)から13秒、総合4位シュテファン・ビッセガー(スイス、EFプロサイクリング)から14秒、そして総合5位マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)から17秒のリード。ボーナスタイムを最大19秒獲得できる最終ステージで、激しい総合争いが予想された。
ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)やクリスティアン・クネース(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)、ドリス・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)を含む8名の逃げグループを追いかけるようにして、フィニッシュまで75kmを残した2回目の「ミュール」でファンデルプールがフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)とともにアタック。総合で17秒遅れのファンデルプールは、チームメイトのデボントにエスコートされて逃げグループに合流する。
ベルギーチャンピオンとオランダチャンピオンを含むこの逃げグループは、トレック・セガフレード率いるメイン集団とのタイム差を広げ始めた。残り50km地点、3回目の「ミュール」で再びアタックを仕掛けたファンデルプールは、食らいつくセネシャルをふるい落として独走状態に。1分20秒遅れのメイン集団に対して、ファンデルプールが1時間強の個人タイムトライアルを開始した。
先頭グループに追いついたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを駆け上がるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
メイン集団からアタックするリーダージャージのマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) photo:CorVos
ただ前だけを向いて踏み続けるファンデルプールを、総合トップスリーを抱えるトレック・セガフレードとサンウェブ、グルパマFDJの3チームが追いかける。いずれのカウンターアタックも決まらず、ファンデルプールは独走のまま1分10秒リードで最終周回に入った。
最終周回の「ミュール」で総合1位ピーダスン、総合2位クラーウアナスン、総合3位キュング、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・マクラーレン)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・マクラーレン)ら6名が先行したが、乗り遅れた総合4位ビッセガーを引き上げたいセップ・ファンマルク(ベルギー、EFプロサイクリング)の献身的な追走によって集団は再び一つに。
「ボズベルグ」を独走のまま駆け上がったファンデルプールが「ゴールデンキロメーター」で合計9秒のボーナスタイムを獲得した一方で、リーダージャージを着るピーダスンはついに失速してしまう。クラーウアナスン、キュング、ナーセン、コルブレッリの4名が追走グループを形成し、30秒先を走るファンデルプールを追いかけた。
残り5kmの石畳坂「デンデロールトベルグ」で追走4名がタイム差を15秒にまで詰めたが詰めきれない。通り雨に濡れた路面をスムーズに駆け抜けたファンデルプールが12秒リードのまま残り1kmアーチ。フィニッシュに至る石畳坂を耐え抜き、後方からアタックしたナーセンとコルブレッリを振り切って、ファンデルプールが4秒差で逃げ切った。
残り50kmから独走に持ち込んだマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
懸命に追走するセーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ) photo:CorVos
ナーセンらを振り切ってフィニッシュするマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
「こんな展開で総合優勝するなんて信じられない。セネシャルと一緒にメイン集団を飛び出すタイミングはバッチリだった。でも先頭グループに追いついてからは協調体制を築けず。ミュールでセネシャルと申し合わせて加速したけど、頂上で単独になってしまった。まだフィニッシュまで50km残っていたから躊躇したけど、一か八かそのまま独走することに決めた」と、自らアタックを仕掛けて独走し、ステージ優勝を飾ったファンデルプール。
ボーナスタイムを合計19秒獲得し、さらに後続にタイム差4秒をつけたファンデルプールが総合優勝。8秒差で総合優勝を逃したクラーウアナスンは「今日はマチューが間違いなく一番強かった」とライバルを称えた。「最終周回に入ってから攻撃を仕掛ける予定だったので、マチューがアタックした時もパニックにならなかった。むしろ残り50km地点から独走状態になったと聞いて安心したほど。でもそこから彼の走りは素晴らしかった。逃げ切る展開になるとは予想していなかった。ステージ狙いのナーセンとコルブレッリは脚を貯めていたけど、キュングとともに全開で追いかけたよ。マチューは自分からレースを動かして、そして勝ったんだ。自分には総合2位に入るのがやっとだった」。
リーダージャージを着るピーダスンは1分21秒遅れでフィニッシュし、総合5位でレースを終えている。敗れたピーダスンは「もちろん総合リードを守って総合優勝することが目標だった。そのためにチームメイトたちは素晴らしい働きをしてくれたけど、今日は自分よりも強い選手に負けたんだ。追走グループからも遅れてしまい、もう前に追いつく力は残っていなかった。とても厳しいレースだったけど、次なるレースに向けての良い準備になった」とコメント。2018年のロンド・ファン・フラーンデレンで2位に入って一躍その名が知られるようになったピーダスンは、リエージュ、ロンド、パリ〜ルーベに出場予定だ。
UCIワールドツアーのステージレースで自身初となる総合優勝を飾ったファンデルプールは「最後の登りでは全身が攣っていて、バイクを前に進めるのがやっとだった。昨年のアムステルゴールドレースよりもハードで、完全に出し切った。キャリアの中で最高の走りだったと思う。ビンクバンクツアーは決してクラシックレースのための準備レースではなく、優勝を狙って出場していた。だからこれ以上の結果はないよ」。UCIプロチームのアルペシン・フェニックスはチーム総合成績でもトップ。ファンデルプールは急遽翌日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに初出場することを決めている。
逃げ切りステージ優勝&逆転総合優勝を果たしたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
2位セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)、1位マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)、3位シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:CorVos
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さながら「北のクラシック」。ビンクバンクツアー最終日は、ステージ後半にかけて「ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン」や「ボズベルグ」を含む25km周回コースを4周する全長187km。最後は合計5回登場する「ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン」を駆け上がり、その中腹にフィニッシュする。
第5ステージのスタート時点でリーダージャージを着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)は総合2位セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ)から7秒、総合3位シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)から13秒、総合4位シュテファン・ビッセガー(スイス、EFプロサイクリング)から14秒、そして総合5位マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)から17秒のリード。ボーナスタイムを最大19秒獲得できる最終ステージで、激しい総合争いが予想された。
ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)やクリスティアン・クネース(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)、ドリス・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)を含む8名の逃げグループを追いかけるようにして、フィニッシュまで75kmを残した2回目の「ミュール」でファンデルプールがフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)とともにアタック。総合で17秒遅れのファンデルプールは、チームメイトのデボントにエスコートされて逃げグループに合流する。
ベルギーチャンピオンとオランダチャンピオンを含むこの逃げグループは、トレック・セガフレード率いるメイン集団とのタイム差を広げ始めた。残り50km地点、3回目の「ミュール」で再びアタックを仕掛けたファンデルプールは、食らいつくセネシャルをふるい落として独走状態に。1分20秒遅れのメイン集団に対して、ファンデルプールが1時間強の個人タイムトライアルを開始した。
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ただ前だけを向いて踏み続けるファンデルプールを、総合トップスリーを抱えるトレック・セガフレードとサンウェブ、グルパマFDJの3チームが追いかける。いずれのカウンターアタックも決まらず、ファンデルプールは独走のまま1分10秒リードで最終周回に入った。
最終周回の「ミュール」で総合1位ピーダスン、総合2位クラーウアナスン、総合3位キュング、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)、ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・マクラーレン)、イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・マクラーレン)ら6名が先行したが、乗り遅れた総合4位ビッセガーを引き上げたいセップ・ファンマルク(ベルギー、EFプロサイクリング)の献身的な追走によって集団は再び一つに。
「ボズベルグ」を独走のまま駆け上がったファンデルプールが「ゴールデンキロメーター」で合計9秒のボーナスタイムを獲得した一方で、リーダージャージを着るピーダスンはついに失速してしまう。クラーウアナスン、キュング、ナーセン、コルブレッリの4名が追走グループを形成し、30秒先を走るファンデルプールを追いかけた。
残り5kmの石畳坂「デンデロールトベルグ」で追走4名がタイム差を15秒にまで詰めたが詰めきれない。通り雨に濡れた路面をスムーズに駆け抜けたファンデルプールが12秒リードのまま残り1kmアーチ。フィニッシュに至る石畳坂を耐え抜き、後方からアタックしたナーセンとコルブレッリを振り切って、ファンデルプールが4秒差で逃げ切った。
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「こんな展開で総合優勝するなんて信じられない。セネシャルと一緒にメイン集団を飛び出すタイミングはバッチリだった。でも先頭グループに追いついてからは協調体制を築けず。ミュールでセネシャルと申し合わせて加速したけど、頂上で単独になってしまった。まだフィニッシュまで50km残っていたから躊躇したけど、一か八かそのまま独走することに決めた」と、自らアタックを仕掛けて独走し、ステージ優勝を飾ったファンデルプール。
ボーナスタイムを合計19秒獲得し、さらに後続にタイム差4秒をつけたファンデルプールが総合優勝。8秒差で総合優勝を逃したクラーウアナスンは「今日はマチューが間違いなく一番強かった」とライバルを称えた。「最終周回に入ってから攻撃を仕掛ける予定だったので、マチューがアタックした時もパニックにならなかった。むしろ残り50km地点から独走状態になったと聞いて安心したほど。でもそこから彼の走りは素晴らしかった。逃げ切る展開になるとは予想していなかった。ステージ狙いのナーセンとコルブレッリは脚を貯めていたけど、キュングとともに全開で追いかけたよ。マチューは自分からレースを動かして、そして勝ったんだ。自分には総合2位に入るのがやっとだった」。
リーダージャージを着るピーダスンは1分21秒遅れでフィニッシュし、総合5位でレースを終えている。敗れたピーダスンは「もちろん総合リードを守って総合優勝することが目標だった。そのためにチームメイトたちは素晴らしい働きをしてくれたけど、今日は自分よりも強い選手に負けたんだ。追走グループからも遅れてしまい、もう前に追いつく力は残っていなかった。とても厳しいレースだったけど、次なるレースに向けての良い準備になった」とコメント。2018年のロンド・ファン・フラーンデレンで2位に入って一躍その名が知られるようになったピーダスンは、リエージュ、ロンド、パリ〜ルーベに出場予定だ。
UCIワールドツアーのステージレースで自身初となる総合優勝を飾ったファンデルプールは「最後の登りでは全身が攣っていて、バイクを前に進めるのがやっとだった。昨年のアムステルゴールドレースよりもハードで、完全に出し切った。キャリアの中で最高の走りだったと思う。ビンクバンクツアーは決してクラシックレースのための準備レースではなく、優勝を狙って出場していた。だからこれ以上の結果はないよ」。UCIプロチームのアルペシン・フェニックスはチーム総合成績でもトップ。ファンデルプールは急遽翌日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに初出場することを決めている。
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ビンクバンクツアー2020第5ステージ結果
個人総合成績
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) | 10:43:08 |
2位 | セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ) | 0:00:08 |
3位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | 0:00:23 |
4位 | イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:01:16 |
5位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 0:01:21 |
6位 | ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・マクラーレン) | 0:01:42 |
7位 | フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:01:45 |
8位 | マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | 0:01:49 |
9位 | フロリアン・フェルメルシュ(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:01:59 |
10位 | ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル) | 0:02:02 |
text:Kei Tsuji
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