2020/10/03(土) - 11:14
10月3日にシチリア島で開幕する第103回ジロ・デ・イタリア。大会を象徴するのがピンク色の総合リーダージャージ「マリアローザ」だ。ここではトーマスやフルサン、ニバリ、Sイェーツ、クライスヴァイクら、マリアローザ候補として名前が挙がる選手たちを紹介します。
ジロ総合優勝者の証、マリアローザ
ツール・ド・フランスの総合リーダーが着用するのは黄色いマイヨジョーヌ。ジロ・デ・イタリアの総合リーダーが着用するのはピンク色のマリアローザだ。
マリアローザは直訳すると「バラ色ジャージ」。独特の淡いピンク色はガゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙の色に由来する。イタリア最大手のスポーツ新聞であるガゼッタ紙が発行部数増加のためにジロを初開催したのは今から111年前の1909年のこと。以降、これまでに102回開催されてきた。現在はガゼッタ紙と同じメディアグループのRCSスポルトが大会を主催しており、元国営電力会社のエネル社がジャージスポンサーを務める。
他のステージレースと同様に、マリアローザ着用の権利を有するのは「最も少ない合計時間で前日までのステージを走りきっている選手」。つまりミラノでの最終ステージ後にマリアローザを受け取った選手が総合優勝者となる。また、総合優勝者には「トロフェオ・センツァ・フィーネ(終わりのないトロフィー)」と呼ばれる螺旋状の黄金トロフィーが贈られる。
ボーナスタイムは今年も健在で、タイムトライアルを除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位に3秒、2位に2秒、3位に1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージはレースの中でタイム差がつきにくく、ボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。たかが数秒のボーナスタイムと侮るなかれ、地道にタイムを積み重ねた選手が最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、そして総合トップ10争いで微笑むことになるかもしれない。
注目はトーマスやフルサン、ニバリ、Sイェーツ、クライスヴァイク
2018年にツール・ド・フランスで総合優勝を飾り、翌年ツールで総合2位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)はマリアローザ候補の筆頭であると言える。調整遅れを理由にツールをスキップしたトーマスは9月のティレーノ〜アドリアティコで総合2位に入り、ロード世界選手権個人タイムトライアルで4位。初日を含めて合計64.9kmの個人タイムトライアルが設定されたコースはトーマス向きであると言える。「確かに3つのタイムトライアルは自分に味方すると思う。でもジロはタフなレースであり、天気や気温という要素も加わる。大きなチャレンジが今から楽しみだ」とトーマス。
トーマスはこれまで3回ジロに出場して2012年の総合80位が最高位。グランツールレーサーに進化したトーマスが3年ぶりのジロに挑む。ローハン・デニス(オーストラリア)やテイオ・ゲイガンハート(イギリス)といった強力なアシスト陣がトーマスをサポート。ツールではイネオスのチーム力が影を潜めたが、ジロでは主導権を握ると見られる。
2月のブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝に続き、8月のイル・ロンバルディアを制したヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)はトーマス同様ツールではなくジロにフォーカスした。ロード世界選手権を5位で終えた35歳は総合12位に入った2016年以来のジロ出場となる。ツールを総合6位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)と新星アレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン)はフルサンにとって心強い存在だ。
過去に2度総合優勝しているヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)は地元シチリア島で開幕するだけにモチベーションは高いはず。パリ〜ニースを総合4位で終えた35歳のベテランはロックダウンを経てもなお安定した成績を残しているが、ティレーノ〜アドリアティコでは総合19位に沈んでいる。エースとして挑んだロード世界選手権は15位。ジュリオ・チッコーネ(イタリア)やジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア)がニバリの脇を固める。
9月のティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を果たしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は「イタリアで、やり残した仕事がある」として3年連続のジロ出場。2018年大会でマリアローザを13日間着用しながらクリストファー・フルーム(イギリス)に逆転優勝を許したイェーツは、同年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を果たしている。ジロでは2019年大会の総合8位が最高位。なお、ツールで総合9位に入った双子の兄弟アダムが来季チームイネオス入りする一方で、サイモンは2022年までミッチェルトン・スコットと契約を延長済みだ。
クリテリウム・デュ・ドーフィネの落車で肩に骨折を負い、ツール欠場を余儀なくされたステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)もイェーツ同様にマリアローザ獲得に闘志を燃やしているはず。2016年大会で後半にかけて5日間総合首位を走りながら第19ステージでマリアローザを着て落車し、総合4位に甘んじたクライスヴァイク。2019年のツールで自身初となるグランツール総合表彰台を経験している。
オランダ勢としては2017年ブエルタ総合4位を含めてグランツールで安定した成績を残すウィルコ・ケルデルマン(オランダ)とサム・オーメン(オランダ)のサンウェブコンビにも注目。これまで出場した4回のジロ全てで総合5〜7位の成績を残したラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)はティレーノ〜アドリアティコを総合3位で終えて好調ぶりを示している。
今シーズンすでに世界トップとなる7,854kmのレース距離をこなしているペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)や、初出場した2019年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合8位のカールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル)、今シーズンのイタリアレースで抜群の登坂力を見せつけている22歳ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)らがアウトサイダーとして総合上位を狙う。
歴代マリアローザ獲得選手
2019年 リチャル・カラパス(エクアドル )
2018年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2017年 トム・デュムラン(オランダ)
2016年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)
text:Kei Tsuji
ジロ総合優勝者の証、マリアローザ
ツール・ド・フランスの総合リーダーが着用するのは黄色いマイヨジョーヌ。ジロ・デ・イタリアの総合リーダーが着用するのはピンク色のマリアローザだ。
マリアローザは直訳すると「バラ色ジャージ」。独特の淡いピンク色はガゼッタ・デッロ・スポルト紙の紙の色に由来する。イタリア最大手のスポーツ新聞であるガゼッタ紙が発行部数増加のためにジロを初開催したのは今から111年前の1909年のこと。以降、これまでに102回開催されてきた。現在はガゼッタ紙と同じメディアグループのRCSスポルトが大会を主催しており、元国営電力会社のエネル社がジャージスポンサーを務める。
他のステージレースと同様に、マリアローザ着用の権利を有するのは「最も少ない合計時間で前日までのステージを走りきっている選手」。つまりミラノでの最終ステージ後にマリアローザを受け取った選手が総合優勝者となる。また、総合優勝者には「トロフェオ・センツァ・フィーネ(終わりのないトロフィー)」と呼ばれる螺旋状の黄金トロフィーが贈られる。
ボーナスタイムは今年も健在で、タイムトライアルを除くステージのフィニッシュ地点で1位に10秒、2位に6秒、3位に4秒、そして2つあるうちの2つ目の中間スプリントポイントで1位に3秒、2位に2秒、3位に1秒のボーナスタイムが与えられる。特に序盤のステージはレースの中でタイム差がつきにくく、ボーナスタイムによるマリアローザの移動もあり得る。たかが数秒のボーナスタイムと侮るなかれ、地道にタイムを積み重ねた選手が最終的にマリアローザ争いや総合表彰台争い、そして総合トップ10争いで微笑むことになるかもしれない。
注目はトーマスやフルサン、ニバリ、Sイェーツ、クライスヴァイク
2018年にツール・ド・フランスで総合優勝を飾り、翌年ツールで総合2位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)はマリアローザ候補の筆頭であると言える。調整遅れを理由にツールをスキップしたトーマスは9月のティレーノ〜アドリアティコで総合2位に入り、ロード世界選手権個人タイムトライアルで4位。初日を含めて合計64.9kmの個人タイムトライアルが設定されたコースはトーマス向きであると言える。「確かに3つのタイムトライアルは自分に味方すると思う。でもジロはタフなレースであり、天気や気温という要素も加わる。大きなチャレンジが今から楽しみだ」とトーマス。
トーマスはこれまで3回ジロに出場して2012年の総合80位が最高位。グランツールレーサーに進化したトーマスが3年ぶりのジロに挑む。ローハン・デニス(オーストラリア)やテイオ・ゲイガンハート(イギリス)といった強力なアシスト陣がトーマスをサポート。ツールではイネオスのチーム力が影を潜めたが、ジロでは主導権を握ると見られる。
2月のブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝に続き、8月のイル・ロンバルディアを制したヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)はトーマス同様ツールではなくジロにフォーカスした。ロード世界選手権を5位で終えた35歳は総合12位に入った2016年以来のジロ出場となる。ツールを総合6位のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)と新星アレクサンドル・ウラソフ(カザフスタン)はフルサンにとって心強い存在だ。
過去に2度総合優勝しているヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)は地元シチリア島で開幕するだけにモチベーションは高いはず。パリ〜ニースを総合4位で終えた35歳のベテランはロックダウンを経てもなお安定した成績を残しているが、ティレーノ〜アドリアティコでは総合19位に沈んでいる。エースとして挑んだロード世界選手権は15位。ジュリオ・チッコーネ(イタリア)やジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア)がニバリの脇を固める。
9月のティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を果たしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は「イタリアで、やり残した仕事がある」として3年連続のジロ出場。2018年大会でマリアローザを13日間着用しながらクリストファー・フルーム(イギリス)に逆転優勝を許したイェーツは、同年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を果たしている。ジロでは2019年大会の総合8位が最高位。なお、ツールで総合9位に入った双子の兄弟アダムが来季チームイネオス入りする一方で、サイモンは2022年までミッチェルトン・スコットと契約を延長済みだ。
クリテリウム・デュ・ドーフィネの落車で肩に骨折を負い、ツール欠場を余儀なくされたステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)もイェーツ同様にマリアローザ獲得に闘志を燃やしているはず。2016年大会で後半にかけて5日間総合首位を走りながら第19ステージでマリアローザを着て落車し、総合4位に甘んじたクライスヴァイク。2019年のツールで自身初となるグランツール総合表彰台を経験している。
オランダ勢としては2017年ブエルタ総合4位を含めてグランツールで安定した成績を残すウィルコ・ケルデルマン(オランダ)とサム・オーメン(オランダ)のサンウェブコンビにも注目。これまで出場した4回のジロ全てで総合5〜7位の成績を残したラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)はティレーノ〜アドリアティコを総合3位で終えて好調ぶりを示している。
今シーズンすでに世界トップとなる7,854kmのレース距離をこなしているペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)や、初出場した2019年ブエルタ・ア・エスパーニャで総合8位のカールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル)、今シーズンのイタリアレースで抜群の登坂力を見せつけている22歳ホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)らがアウトサイダーとして総合上位を狙う。
歴代マリアローザ獲得選手
2019年 リチャル・カラパス(エクアドル )
2018年 クリストファー・フルーム(イギリス)
2017年 トム・デュムラン(オランダ)
2016年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2015年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2014年 ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2013年 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
2012年 ライダー・ヘシェダル(カナダ)
2011年 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)
2010年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2009年 デニス・メンショフ(ロシア)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 イヴァン・バッソ(イタリア)
2005年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2004年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 パオロ・サヴォルデッリ(イタリア)
2001年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2000年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
1999年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 イヴァン・ゴッティ(イタリア)
1996年 パヴェル・トンコフ(ロシア)
1995年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1994年 エフゲニー・ベルツィン(ロシア)
1993年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1991年 フランコ・キオッチォーリ(イタリア)
1990年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)
text:Kei Tsuji
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