2020/09/10(木) - 10:07
最大勾配21%の「パンターニの壁」で抜け出したマイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング)が、共に逃げたラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)を下して勝利。3月の落車で大腿骨を骨折していたウッズが得意の激坂ステージで総合首位に浮上した。
ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)は3日目は、いよいよアドリア海に別れを告げて起伏に富んだ内陸部に突入する217km。前日にパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が2連勝を挙げた街フォッロニカを出発してしばらくは海岸線の平坦路を南下するが、中盤からは「Muro(壁)」と呼ばれる短くも急勾配の登りが連続する。
特に134km地点と208km(フィニッシュまで9km)地点で2回登場するポッジオ・ムレッラ(登坂距離1.6km/平均勾配10.7%)は、故マルコ・パンターニがマッシミリアーノ・レッリ(イタリア)との練習場所として愛した名物登坂だ。パンターニのニックネームを冠して「海賊の壁」と親しまれ、簡易舗装と所々20%超えの勾配が待ち受けるこの登坂の脇にはパンターニの両親が住居を構えている。
この日0km地点から始まったアタック合戦の末に抜け出したのは、ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア、バーレーン・マクラーレン)やバンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)、昨年の東京五輪プレ大会で4位に入ったマシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)など8名だった。
ここまで2連勝した総合リーダーのパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)にとって勝機が無いため、アルペシン・フェニックスやミッチェルトン・スコットがボーラに代わり、逃げグループとの差を3分半〜4分でコントロール。ゲラント・トーマス(イギリス)をエースに据えるイネオス・グレナディアーズは連日同様集団前方に陣取った。
先頭グループが134km地点で1度目の「ポッジオ・ムレッラ」に差し掛かると、一人快調なペースを刻んだトマが独走状態に。3分後にパンターニの名前が刻まれた急勾配に入ったメイン集団後方では失速し、沿道の観客に押されて登る選手たちが続出した。
大きなリードを築いた先頭トマは単独での逃げ続行を選んだが、一時1分半差をつけられたペーンシュタイナーたちはおよそ40kmを要してトマを引き戻す。2分半後方のメイン集団ではマイケル・ウッズ(カナダ)でのステージ優勝を狙うEFプロサイクリングが組織だったペースアップを開始した。
ただ一人真っ黄色のエクアドルチャンピオンジャージを着るヨナタン・カイセド(EFプロサイクリング)たちが集団のテンポを上げる中、集団後方のカメラは力なく遅れていくクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の姿を映し出した。ブエルタ・ア・エスパーニャに向けて調整するフルームはこの日18分22秒遅れでフィニッシュすることとなる。
先頭では前日のツール・ド・アルデーシュ6日目に逃げたシモーナの兄、マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)が独走に持ち込んだものの、2度目のポッジオ・ムレッラ序盤で引き戻される。最後の力を振り絞る逃げメンバーを、頂上付近の最急勾配区間に向けて緊張感を高めるメイン集団が飲み込んだ。
20%前後の「壁」区間に入ってペースアップしたウッズを追従できたのはトーマスやヤコブ・フルサン(デンマーク)とアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)のアスタナコンビやファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)といった精鋭たち。緩斜面区間に入ってラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が追いついた一方、マチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)らは遅れを喫した。
ハイペースを刻んだウッズが独走に持ち込み、超テクニカルなダウンヒルで追走グループからジャンプしたマイカが合流する。ステージ優勝と総合ジャンプアップを目指す二人はローテーションを回し、16秒リードを得てラスト1kmのバナーを超える。互いを見合ったことでペースを落としたものの、有力勢ばかりの追走グループも牽制状態に陥ったことでタイム差は広がるばかり。こうしてステージ優勝争いはウッズとマイカに絞られた。
マイカの背後から残り150mでウッズが加速。反応が遅れたマイカは大きなリードを許し、あっけなくウッズが先着。3月のパリ〜ニース第5ステージの落車で大腿骨骨折を負っていたウッズが、得意の激坂レースで見事な復活勝利を挙げた。
「今日はチームが素晴らしい働きをして僕のことを牽引してくれた。その最後に勝利できて本当に嬉しく思う。チームワークが僕の夢を動かしてくれたんだ」と言うウッズはマイカに5秒差、ケルデルマンに26秒差、トーマスに30秒差で青いリーダージャージを獲得している。
「レース前から今日のステージは僕向きだなと踏んでいたんだ。今回の勝利は間違いなくキャリアの中で大きなステップだ。ワールドツアーでリーダージャージを着るのは初めて。個人タイムトライアルで僕より速い選手たちが揃っているので僕自身は優勝候補では無いけれど、一度手にしたこのジャージをできる限り守りたいと思う。再びアタックしていきたい」と、ウッズは意欲を見せている。
「勝ちたかったけれど超ハードな登りが2回もあるので簡単ではないだろうと思っていたよ」とマイカは言う。「ウッズは単純に最後僕よりもスプリントがあった。でもこれから先は今日よりも難しい登坂ステージがやってくるのでチャンスがある。何かできることがあるはずだ」と加えている。
ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)は3日目は、いよいよアドリア海に別れを告げて起伏に富んだ内陸部に突入する217km。前日にパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が2連勝を挙げた街フォッロニカを出発してしばらくは海岸線の平坦路を南下するが、中盤からは「Muro(壁)」と呼ばれる短くも急勾配の登りが連続する。
特に134km地点と208km(フィニッシュまで9km)地点で2回登場するポッジオ・ムレッラ(登坂距離1.6km/平均勾配10.7%)は、故マルコ・パンターニがマッシミリアーノ・レッリ(イタリア)との練習場所として愛した名物登坂だ。パンターニのニックネームを冠して「海賊の壁」と親しまれ、簡易舗装と所々20%超えの勾配が待ち受けるこの登坂の脇にはパンターニの両親が住居を構えている。
この日0km地点から始まったアタック合戦の末に抜け出したのは、ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア、バーレーン・マクラーレン)やバンジャマン・トマ(フランス、グルパマFDJ)、昨年の東京五輪プレ大会で4位に入ったマシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)など8名だった。
ここまで2連勝した総合リーダーのパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)にとって勝機が無いため、アルペシン・フェニックスやミッチェルトン・スコットがボーラに代わり、逃げグループとの差を3分半〜4分でコントロール。ゲラント・トーマス(イギリス)をエースに据えるイネオス・グレナディアーズは連日同様集団前方に陣取った。
先頭グループが134km地点で1度目の「ポッジオ・ムレッラ」に差し掛かると、一人快調なペースを刻んだトマが独走状態に。3分後にパンターニの名前が刻まれた急勾配に入ったメイン集団後方では失速し、沿道の観客に押されて登る選手たちが続出した。
大きなリードを築いた先頭トマは単独での逃げ続行を選んだが、一時1分半差をつけられたペーンシュタイナーたちはおよそ40kmを要してトマを引き戻す。2分半後方のメイン集団ではマイケル・ウッズ(カナダ)でのステージ優勝を狙うEFプロサイクリングが組織だったペースアップを開始した。
ただ一人真っ黄色のエクアドルチャンピオンジャージを着るヨナタン・カイセド(EFプロサイクリング)たちが集団のテンポを上げる中、集団後方のカメラは力なく遅れていくクリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の姿を映し出した。ブエルタ・ア・エスパーニャに向けて調整するフルームはこの日18分22秒遅れでフィニッシュすることとなる。
先頭では前日のツール・ド・アルデーシュ6日目に逃げたシモーナの兄、マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)が独走に持ち込んだものの、2度目のポッジオ・ムレッラ序盤で引き戻される。最後の力を振り絞る逃げメンバーを、頂上付近の最急勾配区間に向けて緊張感を高めるメイン集団が飲み込んだ。
20%前後の「壁」区間に入ってペースアップしたウッズを追従できたのはトーマスやヤコブ・フルサン(デンマーク)とアレクサンドル・ウラソフ(ロシア)のアスタナコンビやファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)といった精鋭たち。緩斜面区間に入ってラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が追いついた一方、マチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)らは遅れを喫した。
ハイペースを刻んだウッズが独走に持ち込み、超テクニカルなダウンヒルで追走グループからジャンプしたマイカが合流する。ステージ優勝と総合ジャンプアップを目指す二人はローテーションを回し、16秒リードを得てラスト1kmのバナーを超える。互いを見合ったことでペースを落としたものの、有力勢ばかりの追走グループも牽制状態に陥ったことでタイム差は広がるばかり。こうしてステージ優勝争いはウッズとマイカに絞られた。
マイカの背後から残り150mでウッズが加速。反応が遅れたマイカは大きなリードを許し、あっけなくウッズが先着。3月のパリ〜ニース第5ステージの落車で大腿骨骨折を負っていたウッズが、得意の激坂レースで見事な復活勝利を挙げた。
「今日はチームが素晴らしい働きをして僕のことを牽引してくれた。その最後に勝利できて本当に嬉しく思う。チームワークが僕の夢を動かしてくれたんだ」と言うウッズはマイカに5秒差、ケルデルマンに26秒差、トーマスに30秒差で青いリーダージャージを獲得している。
「レース前から今日のステージは僕向きだなと踏んでいたんだ。今回の勝利は間違いなくキャリアの中で大きなステップだ。ワールドツアーでリーダージャージを着るのは初めて。個人タイムトライアルで僕より速い選手たちが揃っているので僕自身は優勝候補では無いけれど、一度手にしたこのジャージをできる限り守りたいと思う。再びアタックしていきたい」と、ウッズは意欲を見せている。
「勝ちたかったけれど超ハードな登りが2回もあるので簡単ではないだろうと思っていたよ」とマイカは言う。「ウッズは単純に最後僕よりもスプリントがあった。でもこれから先は今日よりも難しい登坂ステージがやってくるのでチャンスがある。何かできることがあるはずだ」と加えている。
ティレーノ〜アドリアティコ2020第3ステージ結果
個人総合成績
その他の特別賞
ポイント賞 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) |
山岳賞 | ネイサン・ハース(オーストラリア、コフィディス・ソルシオンクレディ) |
ヤングライダー賞 | アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) |
チーム総合成績 | EFプロサイクリング |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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