ツール開幕に先んじて開催されたラ・クルスbyツール・ド・フランスで、現/元世界王者3名を含む超強力な6選手が逃げ切り。マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)を下したエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)が大会初勝利を挙げた。



レース前インタビューはソーシャルディスタンスでレース前インタビューはソーシャルディスタンスで (c)CorVos2年連続3度目のラ・クルス勝利が期待されるマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)2年連続3度目のラ・クルス勝利が期待されるマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ) (c)CorVos

リアヌ・リッパート(ドイツ)擁するサンウェブが序盤戦をコントロールリアヌ・リッパート(ドイツ)擁するサンウェブが序盤戦をコントロール (c)CorVos
男子レースに先んじて、グランデパールの地南仏ニースで第7回ラ・クルスbyツール・ド・フランスが開催された。ツールのキックオフレースという大役を担ったUCIウィメンズワールドツアーレースは、ニースを発着する48kmのサーキットコースを2周する96km。

3級山岳リミエ峠(距離5.8km/平均5.1%)と連続するアスプレモントの登り(距離6.7km/平均3.2%)を含むルートは数時間後にスタートする男子レースと同じ。急峻な山岳地帯に囲まれたコートダジュールならではのワインディングロードを通るものの、コース全体の難易度は高くない。フィニッシュラインは最後の頂上から31.5km先のニース市街地であり、スプリンターとアタッカー両方にチャンスがある。

岩山にくり抜かれた礼拝堂の横を駆け抜ける岩山にくり抜かれた礼拝堂の横を駆け抜ける (c)CorVos
曇り空のニースをスタートすると、僅か2km地点から始まる1度目のリミエ峠でサンウェブやパークホテル・ファルケンブルクらがペースメイクを担った。11年連続のルクセンブルクチャンピオンに輝いたクリスティーヌ・マジュラス(ブールス・ドルマンス)が山岳ポイントを先着すると、テクニカルコーナーが続くダウンヒル区間でマジュラスや欧州選手権2位エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)&3位カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)、セシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ)という要注意選手6名が抜け出した。

優勝候補を多く含む危険な逃げ。ラリーサイクリングなどスプリンターチームが牽引するメイン集団は1分以上のリードを許さず、2周目突入前に逃げを引き戻す。イギリス人の遊歩道(プロムナード・デ・ザングレ)でトレック・セガフレードが飛ばし、続く2回目のリミエ峠に入ると「勾配がキツくないので麓から作戦通りにロングアタックを仕掛けた」と、2日前に欧州選手権を制したばかりの世界王者アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)が加速した。

強力なアタックでレースを作ったアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)強力なアタックでレースを作ったアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット) (c)CorVos
アルカンシエルのアタックに追従したのはロンゴボルギーニやマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)、好調のまま臨んだ欧州選手権で落車リタイアを喫したエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)など6名。クロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)らスプリンターは早々に遅れ、UCIウィメンズワールドツアーリーダーのリアヌ・リッパート(ドイツ、サンウェブ)も脱落。6名中3名が現/元世界王者という超強力な先頭グループが、フィニッシュまで40km以上を残して発進した。

逃げグループを形成した6名
マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)
アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)
カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
エリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)
エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)
デミ・フォラーリング(オランダ、パークホテル・ファルケンブルク)

最後のアスプレモントの登りを先頭通過するエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)最後のアスプレモントの登りを先頭通過するエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) (c)CorVos
「誰も先頭を引きたがらないと分かっていたので振り返らず、誰にも助けを求めず先頭を引き続けた。自分自身苦しんでいたので、(ついてくる全員が)自分と同じくらい苦しんでいることを望んでいた」と振り返るファンフルーテンの一本引きによって、散り散りに追走を試みるメイン集団との差は1分を超えてもなお止まらない。テクニカルな下りを飛ばしたニエウィアドーマも抜け出すには至らず、6名が後続に1分半差をつけたまま後半の平坦区間に入った。

2名を揃えたトレック・セガフレードがローテーションを回し、後続との差を2分まで広げてニースの海岸線へと到達する。残り2.5kmで仕掛けたロンゴボルギーニのアタックをフォスが封じ込め、カウンターで仕掛けたファンフルーテンもフォスが離さない。各選手が激しくアタックとチェックを繰り返しながら進むと、遅れていたロンゴボルギーニは残り400mから追いつきざまにアタック。乗じたフォスがロングスプリントを仕掛けたものの、するりとダイグナンがフォスの背後に滑り込んだ。

ハンドルを投げ込むマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)とエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)ハンドルを投げ込むマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)とエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) (c)CorVos
ラ・クルス初勝利を挙げたエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)ラ・クルス初勝利を挙げたエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) (c)CorVos
チームワークを実らせたエリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)とエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)チームワークを実らせたエリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)とエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) (c)CorVos
フォスが2年連続3度目のラ・クルス制覇に向けて勝ちパターンに持ち込んだものの、ロンゴボルギーニに誘い出されたスプリントのタイミングはあまりにも早かった。一時1車身以上のリードを得ていたフォスだったが、終盤にかけて徐々に失速してしまう。フィニッシュラインでハンドルを投げ合う接戦の末、ダイグナンが初のラ・クルス優勝を射止めた。

「勝利できて本当に安心した。今日のチーム全体のパフォーマンスは本当に素晴らしくて、チームメイト一人一人が完璧な仕事をこなしたと思う。厳しいトレーニングを積んだ時に勝てないとフラストレーションが溜まるけれど、遂に勝つことができた。家の近くでのレースだったので、電話で夫(元チームスカイのフィリップ・ダイグナン)と娘に報告するのが待ちきれない」と喜びを話すダイグナン。出産による活動休止期間を経て2019年から本格復帰した31歳が、4日前のGPプルエーに続くワールドツアー2連勝を飾った。

優勝トロフィーを受け取るエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード)優勝トロフィーを受け取るエリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) (c)CorVos
好相性のラ・クルスで敗れたフォスが2位となり、3位は欧州選手権で積極的な走りを見せたデミ・フォラーリング(オランダ、パークホテル・ファルケンブルク)。「誰もがスプリンター向けと口を揃えるレースでの自分の走りに誇りを感じている。最後トレックが2人になってしまったことだけがアンラッキーだった」と言うファンフルーテンは5位。レースを作った果敢な走りに対し、レース主催者から敢闘賞が贈られている。

ラ・クルスbyツール・ド・フランス2020結果
1位 エリザベス・ダイグナン(イギリス、トレック・セガフレード) 2:22:51
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)
3位 デミ・フォラーリング(オランダ、パークホテル・ファルケンブルク)
4位 カタジナ・ニエウィアドーマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
5位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)
6位 エリザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) 0:07
7位 エミリア・ファーレン(スウェーデン、FDJヌーヴィルアキテーヌ・フュチュロスコープ) 1:50
8位 エリザ・バルサモ(イタリア、ヴァルカー・トラベル&サービス)
9位 ソラヤ・パラディン(イタリア、CCC・リブ)
10位 リアヌ・リッパート(ドイツ、サンウェブ)
text:So.Isobe
photo:CorVos

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