2010/05/24(月) - 11:21
ジロ第15ステージは山頂ゴールが設定されたモンテ・ゾンコランでイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が残り3.5kmでエヴァンスを振り切り、独走で区間優勝を飾った。マリアローザはダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)が守った。
いよいよ迎えた第15ステージ、モンテ・ゾンコラン山頂ゴール。レース前から話題に上るその訳は、ゾンコランの山岳としての過酷さに尽きる。平均勾配11.9%・登坂距離10.1km、最大勾配は22%という常識の通用しないこの登りがこのジロのポイントとなることは明らかだった。
2003年にジロに初登場したモンテ・ゾンコランは、2007年にもジロのステージに組み込まれ、そのどちらもがジルベルト・シモーニ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)の手に落ちている。シモーニが引退レースに今年のジロを選んだのも、このゾンコランを走りたいがためと言われている。
昨日チーム力の違いを見せつけ、ステージ勝利と総合順位アップを果たしたリクイガス・ドイモのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)、イヴァン・バッソ(イタリア)のダブルエースは厳しい表情でスタートを待つ。このステージの重要さと難しさとが選手をナーバスにする。
この日、このジロで2勝しているタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、そしてロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)がスタートラインにつかなかった。スプリンターにとっては過酷すぎる最終週のジロだ。
レースは18km地点で早くもアタックが決まる。ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)、ジャクソン・ロドリゲス(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ)、リュドヴィク・テュルパン(フランス、アージェードゥーゼル)、フランチェスコ・レーダ(イタリア、クイックステップ)、ギヨーム・ルフロッシュ(フランス、Bboxブイグテレコム)、ニコ・シーメンス(ベルギー、コフィディス)の6名が先頭グループを形成。
後に控える山岳に向けて、集団はペースをセーブ。するとみるみる差は開き、100km地点で14分10秒差を稼ぎ出す。この日最初の山岳2級のセッラ・キアンツタンは112kmよりから始まる。
逃げグループは一定のペースで登り、テュルパンを先頭に山頂を通過。リクイガス・ドイモが登り始めからペースを上げた集団は、9分16秒遅れでここを通過していく。
次にそびえる1級山岳パッソ・デュロンの登り始めには中間スプリントポイントが設定された。ここを先頭で通過しポイントを加算したのは現在ポイント賞2位につけるピノー。これでポイント賞暫定トップのアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)に並ぶ。
1級山岳パッソ・デュロンで先頭グループからレーダが脱落。5人になったグループは再びテュルパンを先頭に山頂を通過。やはりリクイガス・ドイモが牽引した集団は4分55秒遅れでここをパスする。
ゾンコラン前の最後の山岳となる2級のセッラ・ヴァルカルダ。5人はペースを保って走り、やはりテュルパンを先頭に山頂通過。3分39秒遅れて集団はここを通過。いよいよレースはモンテ・ゾンコランを残すばかりとなる。
ゾンコランに入るなり、先頭グループは分解。テュルパンが単独で先頭を走る。その3分後方ではランプレがペースをあげるメイン集団もゾンコラン入り。エースのクネゴと、そしてシモーニのための動きを見せる。
昨日素晴らしい働きをした山岳アシストのシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・ドイモ)がここでも集団のペースを徐々に上げていく。集団の後方ではこれによりどんどん選手が千切れていく。残り7.3km地点でシュミットが力つきると、変わってバッソがペースを上げる。
このペースアップに多くの選手はついていくことができない。バッソについていったのはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)の2人だけ。3人でまだ逃げるテュルパンを追う。マリアローザのダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)はこの時点で脱落。
残り6.5kmの急勾配地点も3人は快調なペダリングで飛ばしていく。後方ではヴィノクロフ、クネゴがそれぞれ単独で追走。その後ろにはニーバリ含む選手たちが続く。アローヨはニーバリからも遅れを取ってしまう。
残り6kmでスカルポーニが脱落すると、2人は先頭を行くテュルパンをパスし一躍先頭に。モンテ・ゾンコランはバッソとエヴァンスの一騎打ちの舞台と化す。バッソは様子見にペースを上げるなど、エヴァンスを揺さぶる様子を見せる。一方のエヴァンスは防戦一方。これを見たバッソが残り3.7kmでアタック。
バッソの強力なペースアップにエヴァンスはついていけない。その後方30秒のところにスカルポーニ、42秒後方にクネゴが追う展開。しかしバッソのペースは誰よりも速かった。残り3.2kmでエヴァンスに対し26秒もの差を生み出す。さらに快調なバッソは単独で山頂へ。
残り1kmを切っても急勾配が続くモンテ・ゾンコラン山頂、大勢のティフォージ(ファン)が詰め寄せた山頂にバッソが単独で帰ってくる。左手のリングにキスをし、力強いガッツポーズで最後まで追い込んでのゴールとなった。
バッソを捕えられなかったエヴァンスは1分19秒差でゴール。自分のペースで走ったスカルポーニは1分30秒差の3位に入った。単独で追走したクネゴ、ヴィノクロフはそれぞれおよそ2分、2分半のビハインドでゴールラインを切った。
マリアローザのアローヨは3分51秒差の11位でゴール。マリアローザは守った。5分47秒遅れたリッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)は総合2位をキープ。そして3分33秒遅れの総合3位にバッソが浮上。サストレ、エヴァンス、ヴィノクロフも軒並み総合順位を上げることに成功した。
ニーバリは6分8秒遅れの総合7位。まだバッソとダブルエース体制でいくかはリクイガスとしては判断の難しいところ。今日と同じくらいに総合を占う上で重要なステージとなるのが、休息日を挟んでの第16ステージ。プランデ・コロネスの山岳個人タイムトライアルが設定されており、さらに総合争いは混戦を極めることになりそうだ。
ジロ・デ・イタリア2010第15ステージ結果
1位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) 6h21'58"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'19"
3位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +1'30"
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +1'58"
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +2'26"
6位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム) +2'44"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +3'07"
8位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア) +3'20"
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ) +3'45"
10位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル) +3'51"
110位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +26'10"
個人総合成績
1位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ) 67h48'42"
2位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア) +2'35"
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +3'33"
4位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム) +4'21"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +4'43"
6位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +5'51"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +6'08"
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +6'34"
9位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム) +7'12"
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ) +8'13"
125位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +2h33'12"
山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)
ポイント賞 マリアロッソパッショーネ
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)
チーム総合成績
リクイガス・ドイモ
敢闘賞
リュドヴィク・テュルパン(フランス、アージェードゥーゼル)
フーガ(逃げ)賞
ニコ・シーメンス(ベルギー、コフィディス)
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos
いよいよ迎えた第15ステージ、モンテ・ゾンコラン山頂ゴール。レース前から話題に上るその訳は、ゾンコランの山岳としての過酷さに尽きる。平均勾配11.9%・登坂距離10.1km、最大勾配は22%という常識の通用しないこの登りがこのジロのポイントとなることは明らかだった。
2003年にジロに初登場したモンテ・ゾンコランは、2007年にもジロのステージに組み込まれ、そのどちらもがジルベルト・シモーニ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)の手に落ちている。シモーニが引退レースに今年のジロを選んだのも、このゾンコランを走りたいがためと言われている。
昨日チーム力の違いを見せつけ、ステージ勝利と総合順位アップを果たしたリクイガス・ドイモのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)、イヴァン・バッソ(イタリア)のダブルエースは厳しい表情でスタートを待つ。このステージの重要さと難しさとが選手をナーバスにする。
この日、このジロで2勝しているタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、そしてロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)がスタートラインにつかなかった。スプリンターにとっては過酷すぎる最終週のジロだ。
レースは18km地点で早くもアタックが決まる。ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)、ジャクソン・ロドリゲス(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ)、リュドヴィク・テュルパン(フランス、アージェードゥーゼル)、フランチェスコ・レーダ(イタリア、クイックステップ)、ギヨーム・ルフロッシュ(フランス、Bboxブイグテレコム)、ニコ・シーメンス(ベルギー、コフィディス)の6名が先頭グループを形成。
後に控える山岳に向けて、集団はペースをセーブ。するとみるみる差は開き、100km地点で14分10秒差を稼ぎ出す。この日最初の山岳2級のセッラ・キアンツタンは112kmよりから始まる。
逃げグループは一定のペースで登り、テュルパンを先頭に山頂を通過。リクイガス・ドイモが登り始めからペースを上げた集団は、9分16秒遅れでここを通過していく。
次にそびえる1級山岳パッソ・デュロンの登り始めには中間スプリントポイントが設定された。ここを先頭で通過しポイントを加算したのは現在ポイント賞2位につけるピノー。これでポイント賞暫定トップのアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)に並ぶ。
1級山岳パッソ・デュロンで先頭グループからレーダが脱落。5人になったグループは再びテュルパンを先頭に山頂を通過。やはりリクイガス・ドイモが牽引した集団は4分55秒遅れでここをパスする。
ゾンコラン前の最後の山岳となる2級のセッラ・ヴァルカルダ。5人はペースを保って走り、やはりテュルパンを先頭に山頂通過。3分39秒遅れて集団はここを通過。いよいよレースはモンテ・ゾンコランを残すばかりとなる。
ゾンコランに入るなり、先頭グループは分解。テュルパンが単独で先頭を走る。その3分後方ではランプレがペースをあげるメイン集団もゾンコラン入り。エースのクネゴと、そしてシモーニのための動きを見せる。
昨日素晴らしい働きをした山岳アシストのシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・ドイモ)がここでも集団のペースを徐々に上げていく。集団の後方ではこれによりどんどん選手が千切れていく。残り7.3km地点でシュミットが力つきると、変わってバッソがペースを上げる。
このペースアップに多くの選手はついていくことができない。バッソについていったのはカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)の2人だけ。3人でまだ逃げるテュルパンを追う。マリアローザのダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)はこの時点で脱落。
残り6.5kmの急勾配地点も3人は快調なペダリングで飛ばしていく。後方ではヴィノクロフ、クネゴがそれぞれ単独で追走。その後ろにはニーバリ含む選手たちが続く。アローヨはニーバリからも遅れを取ってしまう。
残り6kmでスカルポーニが脱落すると、2人は先頭を行くテュルパンをパスし一躍先頭に。モンテ・ゾンコランはバッソとエヴァンスの一騎打ちの舞台と化す。バッソは様子見にペースを上げるなど、エヴァンスを揺さぶる様子を見せる。一方のエヴァンスは防戦一方。これを見たバッソが残り3.7kmでアタック。
バッソの強力なペースアップにエヴァンスはついていけない。その後方30秒のところにスカルポーニ、42秒後方にクネゴが追う展開。しかしバッソのペースは誰よりも速かった。残り3.2kmでエヴァンスに対し26秒もの差を生み出す。さらに快調なバッソは単独で山頂へ。
残り1kmを切っても急勾配が続くモンテ・ゾンコラン山頂、大勢のティフォージ(ファン)が詰め寄せた山頂にバッソが単独で帰ってくる。左手のリングにキスをし、力強いガッツポーズで最後まで追い込んでのゴールとなった。
バッソを捕えられなかったエヴァンスは1分19秒差でゴール。自分のペースで走ったスカルポーニは1分30秒差の3位に入った。単独で追走したクネゴ、ヴィノクロフはそれぞれおよそ2分、2分半のビハインドでゴールラインを切った。
マリアローザのアローヨは3分51秒差の11位でゴール。マリアローザは守った。5分47秒遅れたリッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)は総合2位をキープ。そして3分33秒遅れの総合3位にバッソが浮上。サストレ、エヴァンス、ヴィノクロフも軒並み総合順位を上げることに成功した。
ニーバリは6分8秒遅れの総合7位。まだバッソとダブルエース体制でいくかはリクイガスとしては判断の難しいところ。今日と同じくらいに総合を占う上で重要なステージとなるのが、休息日を挟んでの第16ステージ。プランデ・コロネスの山岳個人タイムトライアルが設定されており、さらに総合争いは混戦を極めることになりそうだ。
ジロ・デ・イタリア2010第15ステージ結果
1位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) 6h21'58"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +1'19"
3位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +1'30"
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ) +1'58"
5位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +2'26"
6位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム) +2'44"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +3'07"
8位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア) +3'20"
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ) +3'45"
10位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル) +3'51"
110位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +26'10"
個人総合成績
1位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ) 67h48'42"
2位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア) +2'35"
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +3'33"
4位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム) +4'21"
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) +4'43"
6位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +5'51"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +6'08"
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +6'34"
9位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム) +7'12"
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ) +8'13"
125位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +2h33'12"
山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)
ポイント賞 マリアロッソパッショーネ
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)
チーム総合成績
リクイガス・ドイモ
敢闘賞
リュドヴィク・テュルパン(フランス、アージェードゥーゼル)
フーガ(逃げ)賞
ニコ・シーメンス(ベルギー、コフィディス)
text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos
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