2009/03/19(木) - 18:37
現存するクラシックレースの中で最長の298kmのコースを誇るミラノ〜サンレモ。イタリアに「プリマヴェーラ(春)」を告げるこのクラシックは、今年で開催100回目を迎える。チプレッサとポッジオで攻撃を仕掛けるアタッカーとスプリンターの熾烈なタイトル争奪戦は、今年もイタリア全土を熱くする。
鍵を握るチプレッサとポッジオ
ミラノ〜サンレモ、コース全体図 image:RCS Sport1907年にスタートし、今年で開催102年目を迎えるミラノ〜サンレモ。開催回数では記念すべき100回目だ。コースは昨年と変わらず、その名の通りミラノからサンレモまで、300kmの大台目前の298kmで行なわれる。コースの大部分がフラットだが、後半には重要な上りが4つ登場する。
日本で言うところの、東京〜愛知、大阪〜静岡に匹敵するほどの長旅は、内陸部の大都市ミラノをスタート。レース前半は長い平坦路をこなし、ジェノバ近郊のトゥルキーノ峠(標高532m)を越えて地中海沿いに出る。
海沿いの平坦路を走った後、昨年導入されたレ・マニエ峠(標高318m)をクリア。このレ・マニエが脚にダメージを与え、スプリンターのチャンスを奪っているというのが昨年からの言い回しだ。アタッカー有利の展開に持ち込みたいチームはここでペースを上げてくるだろう。
チプレッサとポッジオのプロフィール image:RCS Sportそして真の勝負どころとして選手たちを待ち構えるのが、ゴール28km手前から連続する2つの上り、高低差234mのチプレッサ(平均4.1%、最大9%)と、高低差136mのポッジオ(平均3.7%、最大8%)。いずれもコース全体から見れば小さな上りだが、アタッカーにとっては格好の勝負どころとなる。
チプレッサとポッジオで激しいアタック合戦が繰り広げられ、飛び出した選手をスプリンターチームが追撃する展開が例年のお決まりパターン。ポッジオの頂上からゴールまでは6.2kmで、大まかに言えば3km下って3km平坦。昨年に引き続きローマ大通りではなくルンゴマーレ・イタロ・カルヴィーノにゴールする。
アタッカーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。この2通りの展開が絶妙なバランスでクロスするコースレイアウトがミラノ〜サンレモの一番の見どころだ。
世界を代表するスプリンターが集結
ティレーノ〜アドリアティコでステージ優勝を飾ったアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス) photo:Cor Vos歴代の優勝者を見ると、スプリンターの名がズラリと並ぶ。統計的にはスプリント勝負に持ち込まれている場合が多い。過去に2勝しているオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)はツアー・オブ・カリフォルニアで落車し、骨折した肋骨が完治していないため欠場する。
地元イタリアのガゼッタ紙の一押しは、2005年大会優勝者のアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)だ。ドーピング疑惑によってチームを離れ、出場停止処分を経験した35歳のペタッキが再びサンレモに戻ってくる。
サルデーニャで総合優勝に輝いたダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vos直前のティレーノ〜アドリアティコではステージ優勝を飾るなど、本人も好調さを確認済み。プロコンチームながら、アシスト体制は整っている。そんなペタッキ曰く、勝利の秘訣は「上りで消耗しないこと。勝つのは『速い選手』ではなくて『フレッシュな選手』」だ。
そしてイタリア期待の選手がもう一人、ペタッキの7歳年下のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)は初勝利を狙う。ティレーノでは勝利に手が届かなかったが、ジロ・ディ・サルデーニャで総合優勝。サンレモでの過去最高位は2007年の26位だが、その山岳対応力はスプリンターの中でトップクラスであり、レース終盤の「フレッシュさ」は大きな武器になる。
サンレモ初出場のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:Cor Vosイタリアンスプリンターとしては他にも、サルデーニャ2勝を飾ったミルコ・ロレンツェット(イタリア、ランプレ)やルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)らが戦線に加わるだろう。
経験豊富なベテランスプリンターたちが警戒しているのが、初出場のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)だ。直前のティレーノ〜アドリアティコでは最終ステージで今シーズン5勝目を達成。スプリントの力勝負では勝率が高いが、上りにはめっぽう弱い。本人も「自分には厳しすぎるコース。優勝レベルに達するまであと2年はかかる」とコメントしている。
コースを試走するハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ) photo:Cor Vosそのカヴェンディッシュとティレーノで対等な闘いを演じたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)はダークホース的存在。英語圏の選手としては2007年大会2位のアラン・デーヴィス(クイックステップ)やロビー・マキュアンカチューシャ)、スチュアート・オグレディ(いずれもオーストラリア、サクソバンク)が有力候補。オーストラリア勢は毎年上位に絡むものの、まだタイトルを手にしたことはない。
2006年大会4位、2007年大会3位のトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)は、最大の目標に掲げる北のクラシックに向けてここで勢いをつけたい。
パリ〜ニースでステージ優勝を飾ったハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)は、今年ブレイクした選手の筆頭だ。山岳も難なくこなし、独走力やスプリント力も高次元で兼ね備えている。トル・フースホフト(ノルウェー)とともに、序盤から好調なサーヴェロ・テストチームを率いる。
上りで攻撃に出るアタッカー
ペタッキとともにタイトル獲得を目指すダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) photo:Cor Vosスプリント勝負を阻止しようと、チプレッサとポッジオで攻撃を仕掛けるのがアタッカーたち。ステージレースで活躍するオールラウンダーもこのバトルに加わる。
例年アタッカーorスプリンターの闘いが常だが、昨年はこの2つのカテゴリーに収まらないファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が独走勝利。上りでアタックすること無く、ラスト2kmから独走し、スプリントを避けて逃げ切った。
シーズン序盤から好調のダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:CorVos同様にレース終盤の短距離独走に長けた選手と言えば、世界選手権ロードレースのラスト3kmから独走したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)。しかしこの両者はレース欠場が決まっている。
ジロ・デ・イタリアに次ぐ国内ビッグタイトルだけに、イタリア勢のモチヴェーションは非常に高い。ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)やダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)を筆頭に、クラシックレーサーが波状攻撃を仕掛けてくるだろう。
毎年ポッジオで攻撃を仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット) photo:Cor Vosアタックが決まり、小集団でのスプリントに持ち込まれればフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)に勝機が有る。ポッツァートは大集団のスプリント勝負でも上位に食い込む実力の持ち主だ。
アタック力に長けたエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ランプレ)やジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)、リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)など、虎視眈々とアタックチャンスを伺う選手は数多い。
モンテパスキ・エロイカを制したトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) photo:Cor Vos毎年ポッジオで鋭いアタックを見せるフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)はトーマス・デッケル(オランダ)らとともに勝利を狙う。スプリンターのフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)も揃っており、チーム念願のシーズン1勝目に手が届くか。
海外勢は他にも、トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ファビアン・ウェーグマン(ドイツ、ミルラム)、そしてシュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)が顔を揃える(兄フランクは練習中の落車で手首を痛め欠場決定)。
また、優勝候補ではないものの、人一倍注目を集めているのがランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)だ。1996年大会で11位に入っているアームストロングの出場は2002年以来。チームに絶対的なエースはおらず、自ら動いてくる可能性も。その一挙一動に注目が集まる。
7時間のタフレースの先に待つのは逃げ切りか、それとも集団スプリントか。今年も手に汗握る闘いが期待できそうだ。
シクロワイアードではミラノ〜サンレモの模様をテキストライブでお伝えします!ライブは3月21日(土)22時30分スタート予定です!!
鍵を握るチプレッサとポッジオ
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日本で言うところの、東京〜愛知、大阪〜静岡に匹敵するほどの長旅は、内陸部の大都市ミラノをスタート。レース前半は長い平坦路をこなし、ジェノバ近郊のトゥルキーノ峠(標高532m)を越えて地中海沿いに出る。
海沿いの平坦路を走った後、昨年導入されたレ・マニエ峠(標高318m)をクリア。このレ・マニエが脚にダメージを与え、スプリンターのチャンスを奪っているというのが昨年からの言い回しだ。アタッカー有利の展開に持ち込みたいチームはここでペースを上げてくるだろう。
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チプレッサとポッジオで激しいアタック合戦が繰り広げられ、飛び出した選手をスプリンターチームが追撃する展開が例年のお決まりパターン。ポッジオの頂上からゴールまでは6.2kmで、大まかに言えば3km下って3km平坦。昨年に引き続きローマ大通りではなくルンゴマーレ・イタロ・カルヴィーノにゴールする。
アタッカーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。この2通りの展開が絶妙なバランスでクロスするコースレイアウトがミラノ〜サンレモの一番の見どころだ。
世界を代表するスプリンターが集結
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地元イタリアのガゼッタ紙の一押しは、2005年大会優勝者のアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)だ。ドーピング疑惑によってチームを離れ、出場停止処分を経験した35歳のペタッキが再びサンレモに戻ってくる。
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そしてイタリア期待の選手がもう一人、ペタッキの7歳年下のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)は初勝利を狙う。ティレーノでは勝利に手が届かなかったが、ジロ・ディ・サルデーニャで総合優勝。サンレモでの過去最高位は2007年の26位だが、その山岳対応力はスプリンターの中でトップクラスであり、レース終盤の「フレッシュさ」は大きな武器になる。
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パリ〜ニースでステージ優勝を飾ったハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)は、今年ブレイクした選手の筆頭だ。山岳も難なくこなし、独走力やスプリント力も高次元で兼ね備えている。トル・フースホフト(ノルウェー)とともに、序盤から好調なサーヴェロ・テストチームを率いる。
上りで攻撃に出るアタッカー
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また、優勝候補ではないものの、人一倍注目を集めているのがランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)だ。1996年大会で11位に入っているアームストロングの出場は2002年以来。チームに絶対的なエースはおらず、自ら動いてくる可能性も。その一挙一動に注目が集まる。
7時間のタフレースの先に待つのは逃げ切りか、それとも集団スプリントか。今年も手に汗握る闘いが期待できそうだ。
シクロワイアードではミラノ〜サンレモの模様をテキストライブでお伝えします!ライブは3月21日(土)22時30分スタート予定です!!
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