2020/08/06(木) - 08:14
ツール・ド・ポローニュ開幕初日の集団スプリントで大事故が発生してしまう。ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)にラインを塞がれクラッシュしたファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が人工的昏睡状態に置かれるダメージを負った。
8月5日(水)から9日(日)までの5日間、ポーランド南西部を舞台にしたツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)が開幕した。ワールドツアーは既に先週末のストラーデビアンケで再開を果たしたものの、ステージレースとしてはこのポローニュが3月半ばにパリ〜ニースが途中閉幕して以降初となる。
通常1週間通し開催されるポローニュだが、2020年大会はシーズン再開後の過密スケジュールを鑑みて5日間日程に変更。普段ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに挟まれて開催されるポローニュが、今年はツール前哨戦として位置付けられることとなった。
なおポーランド国内の新型コロナウイルス新規感染者数は8月4日に最多数(680人)を記録しており、ポローニュのステージは主にその発生源(炭鉱でのクラスター発生も影響しているという)であるシレジア地方を駆け巡る。幾重にも感染防止対策を張り巡らした上で第77回ツール・ド・ポローニュにはGoサインが下された。
今年のステージ構成は平坦3、短距離登坂フィニッシュ1、中級山岳フィニッシュ1。グランツールに登場するような超級山岳がないため、総合勢の他に登坂力を備えたパンチャーが総合トップ10に食い込んでくるはずだ。今年は出場したステージレースで全勝している弱冠20歳のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が総合優勝候補筆頭だが、ストラーデビアンケ3位のマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と同5位ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)が参戦。そしてティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)らが待ったをかける。
多数のレースと日程が重なるポローニュだが、チャンスが多いためスプリンターの布陣も豪華。パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、そして昨年大会で受けた降格処分の借りを返したいファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)がラインナップ。なお昨年大会で事故死したビョルグ・ランブレヒトを悼み、彼のゼッケンナンバー143はポローニュにおいて永久欠番となることが発表されている(ゼッケン140番台は今年もロット・スーダル)。
午後3時51分にオフィシャルスタートが下されると、集団からはポーランドチームのポーランド人選手、カミル・マウェツキ(ポーランド、CCCチーム)やジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFプロサイクリング)ら4名がアタック。メイン集団ではユンボ・ヴィズマやボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップらが最大4分半を与えてコントロールを行った。
カトヴィツェを目指す195.8kmコースの大部分は平穏に過ぎ、積極的にスプリントポイントと山岳ポイントを確保したマチェイ・パテルスキ(ポーランド、ポーランドナショナルチーム)が大会最初の敢闘賞を獲得。コーナーが連続する終盤の市街地周回コース(合計3周)に入るとスプリンターチームが主導するメイン集団がその差を急速に削り取っていった。
この日2回目の山岳ポイント直後に逃げグループが吸収されると、各チームが入り乱れて位置取り争いを展開する。右に左にうねるコーナーはもちろん、増減を繰り返す道幅が危険回避のペースアップを呼び寄せた。
残り7.5kmで他選手と接触したスプリンターのフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)が激しく落車し、危険回避を目論むチームイネオス先頭で市街地を駆け抜けていく。残り1kmで緩いランナバウトを周り、ドゥクーニンク・クイックステップやトレック・セガフレード、サンウェブらを先頭に、下り基調のホームストレートに姿を現した。
サンウェブが絶好の形に持ち込んだものの勢いが足りず、アッカーマンやフルーネウェーヘン、ヤコブセン、そしてマルク・サロー(フランス、グルパマFDJ)らが横並びになって勝負の火蓋が切って落とされる。メカトラでアッカーマンが足を止める中、真っ先に仕掛けたフルーネウェーヘンの後ろからヤコブセンが迫った。
超ハイスピードの新旧オランダ王者同士による一騎打ち。しかしフルーネウェーヘンは伸びるヤコブセンをフェンス側に押しやったため、行き場を無くしたヤコブセンはトップスピードのままフェンスを突き破り、ゴールゲート周辺とその横にいたオフィシャルスタッフに激突。吹き飛ばされたフェンスやバナーボードが次々と選手を巻き込み、フルーネウェーヘンやサロー、ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)、エデュアルド・プラデス(スペイン、モビスター)らが地面に激しく叩きつけられる。目を覆いたくなる惨状にフィニッシュ地点は混乱を極めた。
原因を作ったフルーネウェーヘン自身も激しく落車しながら先頭でフィニッシュラインを超えたものの、レースオーガナイザーのチェスラウ・ラング氏や審判団は、レース直後にフルーネウェーヘンの失格処分を発表。これによりステージ優勝扱いとなったヤコブセンだが、当然レース続行可能な状態にはなかった。
ドクターチームの緊急治療によってヤコブセンは幸い命こそ繋ぎ止め、容体こそ安定しているものの、依然として深刻な状態。チームが5時間後に出したリリースによれば、複数箇所に大きなダメージを受けているため薬物投与によって人工的な昏睡状態に置かれている。地元メディアが伝えた話では、頭や胸を強く打ち付けたことで大量出血を伴う頭蓋頭蓋損傷や臓器ダメージを負い、「生命が危険な状況」だったが脳や脊髄損傷は無いという。ヤコブセンは口腔外科や顎顔面外科、形成外科を専門とする医師の手術を受ける可能性が高い。
UCIはレース直後にプレスリリースを出し「集団落車を引き起こした危険な行動を強く非難し、容認することはできない。直ちにこの問題を懲戒委員会に委ね、深刻さに見合った制裁を課すよう要求した」と、強い語調でフルーネウェーヘンを非難している。
この状況により表彰式は行われず、各関係者には警察による事情聴取が行われているという。
各チームや選手、関係者、ファンからはヤコブセンを気にかけるメッセージが贈られ続けている。
ヤコブセンをはじめ、落車に巻き込まれた選手や関係者の一日も早い回復をお祈りします。
8月5日(水)から9日(日)までの5日間、ポーランド南西部を舞台にしたツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)が開幕した。ワールドツアーは既に先週末のストラーデビアンケで再開を果たしたものの、ステージレースとしてはこのポローニュが3月半ばにパリ〜ニースが途中閉幕して以降初となる。
通常1週間通し開催されるポローニュだが、2020年大会はシーズン再開後の過密スケジュールを鑑みて5日間日程に変更。普段ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに挟まれて開催されるポローニュが、今年はツール前哨戦として位置付けられることとなった。
なおポーランド国内の新型コロナウイルス新規感染者数は8月4日に最多数(680人)を記録しており、ポローニュのステージは主にその発生源(炭鉱でのクラスター発生も影響しているという)であるシレジア地方を駆け巡る。幾重にも感染防止対策を張り巡らした上で第77回ツール・ド・ポローニュにはGoサインが下された。
今年のステージ構成は平坦3、短距離登坂フィニッシュ1、中級山岳フィニッシュ1。グランツールに登場するような超級山岳がないため、総合勢の他に登坂力を備えたパンチャーが総合トップ10に食い込んでくるはずだ。今年は出場したステージレースで全勝している弱冠20歳のレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が総合優勝候補筆頭だが、ストラーデビアンケ3位のマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と同5位ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナ)が参戦。そしてティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)らが待ったをかける。
多数のレースと日程が重なるポローニュだが、チャンスが多いためスプリンターの布陣も豪華。パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)、そして昨年大会で受けた降格処分の借りを返したいファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)がラインナップ。なお昨年大会で事故死したビョルグ・ランブレヒトを悼み、彼のゼッケンナンバー143はポローニュにおいて永久欠番となることが発表されている(ゼッケン140番台は今年もロット・スーダル)。
午後3時51分にオフィシャルスタートが下されると、集団からはポーランドチームのポーランド人選手、カミル・マウェツキ(ポーランド、CCCチーム)やジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFプロサイクリング)ら4名がアタック。メイン集団ではユンボ・ヴィズマやボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップらが最大4分半を与えてコントロールを行った。
カトヴィツェを目指す195.8kmコースの大部分は平穏に過ぎ、積極的にスプリントポイントと山岳ポイントを確保したマチェイ・パテルスキ(ポーランド、ポーランドナショナルチーム)が大会最初の敢闘賞を獲得。コーナーが連続する終盤の市街地周回コース(合計3周)に入るとスプリンターチームが主導するメイン集団がその差を急速に削り取っていった。
この日2回目の山岳ポイント直後に逃げグループが吸収されると、各チームが入り乱れて位置取り争いを展開する。右に左にうねるコーナーはもちろん、増減を繰り返す道幅が危険回避のペースアップを呼び寄せた。
残り7.5kmで他選手と接触したスプリンターのフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)が激しく落車し、危険回避を目論むチームイネオス先頭で市街地を駆け抜けていく。残り1kmで緩いランナバウトを周り、ドゥクーニンク・クイックステップやトレック・セガフレード、サンウェブらを先頭に、下り基調のホームストレートに姿を現した。
サンウェブが絶好の形に持ち込んだものの勢いが足りず、アッカーマンやフルーネウェーヘン、ヤコブセン、そしてマルク・サロー(フランス、グルパマFDJ)らが横並びになって勝負の火蓋が切って落とされる。メカトラでアッカーマンが足を止める中、真っ先に仕掛けたフルーネウェーヘンの後ろからヤコブセンが迫った。
超ハイスピードの新旧オランダ王者同士による一騎打ち。しかしフルーネウェーヘンは伸びるヤコブセンをフェンス側に押しやったため、行き場を無くしたヤコブセンはトップスピードのままフェンスを突き破り、ゴールゲート周辺とその横にいたオフィシャルスタッフに激突。吹き飛ばされたフェンスやバナーボードが次々と選手を巻き込み、フルーネウェーヘンやサロー、ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)、エデュアルド・プラデス(スペイン、モビスター)らが地面に激しく叩きつけられる。目を覆いたくなる惨状にフィニッシュ地点は混乱を極めた。
原因を作ったフルーネウェーヘン自身も激しく落車しながら先頭でフィニッシュラインを超えたものの、レースオーガナイザーのチェスラウ・ラング氏や審判団は、レース直後にフルーネウェーヘンの失格処分を発表。これによりステージ優勝扱いとなったヤコブセンだが、当然レース続行可能な状態にはなかった。
ドクターチームの緊急治療によってヤコブセンは幸い命こそ繋ぎ止め、容体こそ安定しているものの、依然として深刻な状態。チームが5時間後に出したリリースによれば、複数箇所に大きなダメージを受けているため薬物投与によって人工的な昏睡状態に置かれている。地元メディアが伝えた話では、頭や胸を強く打ち付けたことで大量出血を伴う頭蓋頭蓋損傷や臓器ダメージを負い、「生命が危険な状況」だったが脳や脊髄損傷は無いという。ヤコブセンは口腔外科や顎顔面外科、形成外科を専門とする医師の手術を受ける可能性が高い。
UCIはレース直後にプレスリリースを出し「集団落車を引き起こした危険な行動を強く非難し、容認することはできない。直ちにこの問題を懲戒委員会に委ね、深刻さに見合った制裁を課すよう要求した」と、強い語調でフルーネウェーヘンを非難している。
この状況により表彰式は行われず、各関係者には警察による事情聴取が行われているという。
各チームや選手、関係者、ファンからはヤコブセンを気にかけるメッセージが贈られ続けている。
ヤコブセンをはじめ、落車に巻き込まれた選手や関係者の一日も早い回復をお祈りします。
ツール・ド・ポローニュ2020 第1ステージ結果
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 4:31:50 |
2位 | マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ) | |
3位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット) | |
4位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | ライアン・ギボンズ(南アフリカ、NTTプロサイクリング) | |
6位 | シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム) | |
7位 | ダミアン・トゥゼ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) | |
8位 | ロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル) | |
9位 | モレノ・ホフラント(オランダ、EFプロサイクリング) | |
10位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) |
個人総合成績
1位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 4:31:40 |
2位 | マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ) | 0:04 |
3位 | ルカ・メズゲッツ(スロベニア、ミッチェルトン・スコット) | |
4位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | 0:06 |
5位 | ライアン・ギボンズ(南アフリカ、NTTプロサイクリング) | 0:10 |
6位 | シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム) | |
7位 | ダミアン・トゥゼ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) | |
8位 | ロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル) | |
9位 | モレノ・ホフラント(オランダ、EFプロサイクリング) | |
10位 | エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) |
その他の特別賞
ポイント賞 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) |
山岳賞 | カミル・マウェツキ(ポーランド、CCCチーム) |
チーム総合成績 | UAEチームエミレーツ |
Text:So.Isobe
Photo:CorVos
Photo:CorVos
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