2020/07/22(水) - 11:00
「バーチャル・ツール・ド・フランス」が盛り上がりを見せていた中、一般サイクリストが参加できる6日間3ステージの「エタップ・デュ・ツール」も同時開催されていた。魔の山"モン・ヴァントゥ"が登場した第3ステージにCW編集部員の高木が参戦した模様をレポートする。
新型コロナウイルスの影響で世界中のレースやイベントが中止や延期となっている2021シーズン。サイクルロードレースにおいて最高峰の存在でもあるツール・ド・フランスも例にもれず、8月末へと開催延期となっている。
本来であれば、6月27日から7月19日にかけて、南仏ニースからパリ・シャンゼリゼを目指してプロトンが走り、数々のドラマが繰り広げられていたはず。ぽっかり空いたスケジュールと選手の活躍の場、そしてレースファンの心の穴を埋めるため、コロナ禍において世界中のサイクリストを受け入れてきたバーチャルサイクリングゲーム、ズイフトを舞台に「バーチャル・ツール・ド・フランス」が開催された。(※各ステージのレポートはこちらから)
また、ツールが延期されると同時に9月6日へと順延されたアマチュア向けライドイベント「エタップ・デュ・ツール」のバーチャルイベントも合わせて開催されることに。リアルではツールの1ステージをトレースし選手気分を味わえるワンデイイベントだが、バーチャルイベントでは3つのステージを週替わりで計6日間、全16回のセッションで開催された。
バーチャルとはいえ、夢のツール・ド・フランス、参加料も渡航費もかからないとあっては参加しないわけにはいかない。遅ればせながら参加すべくズイフトのコンパニオンアプリで詳細を調べてみると、第3ステージのコースは最終ステージに相応しい魔の山「モン・ヴァントゥ」だ。
このバーチャル・ツール・ド・フランスのために新たに実装された「モン・ヴァントゥ」のコースプロフィールは距離20.9km、獲得標高1,539m。これまでズイフト内で最高標高を誇ってきた「アルプ・ドゥ・ズイフト(距離12.2km、獲得標高1,042m)」を凌駕する最高難易度のコースとなり、ゲーム的な表現をするならば「エンドコンテンツ」とでもいうべき存在だ。
ちなみに、同じくモン・ヴァントゥを舞台としたバーチャルツールの第5ステージは、中腹となるシャレー・レイナールへフィニッシュ。一方で、バーチャルエタップでは頂上まで登るため、ここだけ見ればプロ以上の高難度コースを走ることになる。
「エタップ・デュ・ツール」ではAカテゴリーは女性限定となっており、男女問わず参加できるEカテゴリーにエントリーすることになる。Eカテゴリーには男女4337人がエントリーしておりその人気の高さが窺える。参加者一覧を見てみるとフランスやイタリア、オーストラリア、アメリカ、日本など、時差を問わず世界中から参加者が集まっていた。
筆者もツール・ド・フランスの気分を味わいたいということで、個人総合成績1位の証たる「マイヨジョーヌ」やマヴィックカーのミニカーをローラー台の周囲に配置。そして、ズイフトのために導入した強力な業務用扇風機をセットして準備は完了だ。
フランスの世界に飛び込むとスタート地点には世界中からのライド参加者が集結している。アバターの最大表示可能数を軽々と突破する人数が集まっており、スタートゲートから大勢が並んでいるはずだが画面上には表示しきれていない。仲間と一緒に参加する場合は、スタート後に表示される順位で位置を確認しつつ、合流すると良いだろう。
開始時刻が近づくとカウントダウンが開始。スタートゲートの電光掲示板に"GO"と表示されると、「エタップ・デュ・ツール 第3ステージ」がスタートした。せっかく参加するからには先頭集団に乗りたい。スタートから300W以上の出力で踏み、しばらく踏み続けていくと25番手まで一気にジャンプアップすることができた。
集団の中にいると自分のアバターがどこにいるのか分からなくなるほどの密度。バーチャルエタップ専用の黄色いRideOnが飛び交い、三密なんてメじゃない、これぞバーチャルディスタンス。一列棒状になった先頭付近まで来て、ようやく自身のアバターの仕様を確認できた。
このイベントでは自動でRapha L'ETAPEジャージを着用し、トレック MADONEに乗ることになる。フレームは選ぶことができないがホイールは自身で選ぶことが可能。今回はずっと登りのコースなので、ヒルクライムで最も速いとズイフターの間で噂になっているライトウェイト Meilensteinのホイールを選んでいる。同じことを考えているのだろう、先頭付近ではライトウェイト Meilensteinのホイールを選んでいる人がとても多かった。
このライトウェイトのホイールは、いわゆるガチャ産のレアアイテム。だが、課金する必要はないので安心してほしい。先程紹介した「アルプ・ドゥ・ズイフト」を登ると回すことができるルーレットで入手可能。運良く1回のルーレットで当てる人もいるが、筆者は25回目でようやく当てることができた汗と涙の結晶のホイールである。アイテムを手に入れるガチャを回すためには、経済ではなくクランクを回さないといけない、そんなズイフトの世界観を象徴するアイテムでもある。
話をライドに戻そう。世界中から多くの参加者が集まる大舞台で一瞬でも暫定1位になりたい筆者は体重の6倍以上で踏み続け、悲願の暫定1位を1分ほどだが死守することができた。やはり先頭を走る気持ち良さはリアルでもバーチャルでも変わらない。距離19kmを残し、目的を達成した後はマイペースに切り替えた。
5km地点までは勾配3~5%と比較的緩いのだが、6km地点からは10%まで一気に斜度が跳ね上がるのがこのコースの特徴。いかに後半に向けて力を温存できるかがモン・ヴァントゥを攻略するキーポイントになってくる。
6km地点に突入し、トンネル内では一列棒状に。周りの選手は体重の5倍前後の出力でペダルを踏むハイペースな展開が続く。画面右上の勾配表示には11%という数字が躍る。チラッと見ただけでも乳酸が出てきそう。
しばらく単独で走り続け、13.9km地点には中腹のシャレー・レイナールにフィニッシュするバーチャル・ツール・ド・フランス 第5ステージの残り1kmを示すフラムルージュが登場した。しかし、モン・ヴァントゥの頂上まで登り続けるエタップ・デュ・ツール 第3ステージは残り7km。まだまだ先は長い。
観客の服装がマイヨジョーヌや山岳賞ジャージのマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュになっていたり、コース上のパネルもツール・ド・フランス仕様になっていたりと演出も非常に手が込んでおり、実際にツールの舞台を走っているような感覚を味わえる。カメラアングルをPOVへと変更すれば、更に没入度はアップ。実際に魔の山"モン・ヴァントゥ"を登っているように楽しめた。
14.4km地点でツール・ド・フランスといえばお馴染みの悪魔おじさんが満を持して登場。勾配がきつく苦しい場面であったが、悪魔おじさんから元気をもらい気持ちを切り替えてペダルを踏み込むことができた。「ありがとう!悪魔おじさん!」。RideOnを送れるものなら100回くらい送っているところだ。
コース中に配置されている道路標識にはフランスの幹線道路"D974"の表記やステージの残り距離、その地点の勾配などが細かく記されている。ゴールまで残り1.1km地点にはモン・ヴァントゥの登りで死去したトム・シンプソンの慰霊碑が再現されていた。
ディテールの積み重ねがリアリティを高めてくれる。ズイフトがバーチャルサイクリングで圧倒的なシェアを持つ理由を垣間見た。そして、モン・ヴァントゥの山頂に聳え立つ天文観測塔が観え、残りの力を振り絞り第3ステージのゴールゲートを潜り抜けた。
エタップ・デュ・ツール 第3ステージ(距離21km、獲得標高1535m)を1時間4分28秒で走り、レースではないが3354人中20位で無事完走。
「バーチャル・ツール・ド・フランス」と「エタップ・デュ・ツール」のためにズイフト内に造られたスペシャルコースには、何度も映像を通して観戦したツールを代表するロケーションが忠実に再現されていて、実際にフランスを走っているように楽しめた。
筆者はついつい頑張って走ってしまったが、「エタップ・デュ・ツール」はEカテゴリーに分類されたイベントで、誰でも気負わずに参加できるもの。レースに出ている人は先頭を目指しても良いし、モン・ヴァントゥのヒルクライムタイムを競ったりするのも良い。また、サイクリング仲間と一緒に参加して、ビデオ通話しながらフランスのコースを楽しんだりと楽しみ方は多種多様だ。
今後もこのような世界的なバーチャルサイクリングイベントは開催されると思うので、新型コロナウイルスに感染しないように気をつけつつ、楽しいサイクリングライフを送ってみてはいかがだろうか。
text:Michinari.Takagi
edit:Naoki.Yasuoka
新型コロナウイルスの影響で世界中のレースやイベントが中止や延期となっている2021シーズン。サイクルロードレースにおいて最高峰の存在でもあるツール・ド・フランスも例にもれず、8月末へと開催延期となっている。
本来であれば、6月27日から7月19日にかけて、南仏ニースからパリ・シャンゼリゼを目指してプロトンが走り、数々のドラマが繰り広げられていたはず。ぽっかり空いたスケジュールと選手の活躍の場、そしてレースファンの心の穴を埋めるため、コロナ禍において世界中のサイクリストを受け入れてきたバーチャルサイクリングゲーム、ズイフトを舞台に「バーチャル・ツール・ド・フランス」が開催された。(※各ステージのレポートはこちらから)
また、ツールが延期されると同時に9月6日へと順延されたアマチュア向けライドイベント「エタップ・デュ・ツール」のバーチャルイベントも合わせて開催されることに。リアルではツールの1ステージをトレースし選手気分を味わえるワンデイイベントだが、バーチャルイベントでは3つのステージを週替わりで計6日間、全16回のセッションで開催された。
バーチャルとはいえ、夢のツール・ド・フランス、参加料も渡航費もかからないとあっては参加しないわけにはいかない。遅ればせながら参加すべくズイフトのコンパニオンアプリで詳細を調べてみると、第3ステージのコースは最終ステージに相応しい魔の山「モン・ヴァントゥ」だ。
このバーチャル・ツール・ド・フランスのために新たに実装された「モン・ヴァントゥ」のコースプロフィールは距離20.9km、獲得標高1,539m。これまでズイフト内で最高標高を誇ってきた「アルプ・ドゥ・ズイフト(距離12.2km、獲得標高1,042m)」を凌駕する最高難易度のコースとなり、ゲーム的な表現をするならば「エンドコンテンツ」とでもいうべき存在だ。
ちなみに、同じくモン・ヴァントゥを舞台としたバーチャルツールの第5ステージは、中腹となるシャレー・レイナールへフィニッシュ。一方で、バーチャルエタップでは頂上まで登るため、ここだけ見ればプロ以上の高難度コースを走ることになる。
「エタップ・デュ・ツール」ではAカテゴリーは女性限定となっており、男女問わず参加できるEカテゴリーにエントリーすることになる。Eカテゴリーには男女4337人がエントリーしておりその人気の高さが窺える。参加者一覧を見てみるとフランスやイタリア、オーストラリア、アメリカ、日本など、時差を問わず世界中から参加者が集まっていた。
筆者もツール・ド・フランスの気分を味わいたいということで、個人総合成績1位の証たる「マイヨジョーヌ」やマヴィックカーのミニカーをローラー台の周囲に配置。そして、ズイフトのために導入した強力な業務用扇風機をセットして準備は完了だ。
フランスの世界に飛び込むとスタート地点には世界中からのライド参加者が集結している。アバターの最大表示可能数を軽々と突破する人数が集まっており、スタートゲートから大勢が並んでいるはずだが画面上には表示しきれていない。仲間と一緒に参加する場合は、スタート後に表示される順位で位置を確認しつつ、合流すると良いだろう。
開始時刻が近づくとカウントダウンが開始。スタートゲートの電光掲示板に"GO"と表示されると、「エタップ・デュ・ツール 第3ステージ」がスタートした。せっかく参加するからには先頭集団に乗りたい。スタートから300W以上の出力で踏み、しばらく踏み続けていくと25番手まで一気にジャンプアップすることができた。
集団の中にいると自分のアバターがどこにいるのか分からなくなるほどの密度。バーチャルエタップ専用の黄色いRideOnが飛び交い、三密なんてメじゃない、これぞバーチャルディスタンス。一列棒状になった先頭付近まで来て、ようやく自身のアバターの仕様を確認できた。
このイベントでは自動でRapha L'ETAPEジャージを着用し、トレック MADONEに乗ることになる。フレームは選ぶことができないがホイールは自身で選ぶことが可能。今回はずっと登りのコースなので、ヒルクライムで最も速いとズイフターの間で噂になっているライトウェイト Meilensteinのホイールを選んでいる。同じことを考えているのだろう、先頭付近ではライトウェイト Meilensteinのホイールを選んでいる人がとても多かった。
このライトウェイトのホイールは、いわゆるガチャ産のレアアイテム。だが、課金する必要はないので安心してほしい。先程紹介した「アルプ・ドゥ・ズイフト」を登ると回すことができるルーレットで入手可能。運良く1回のルーレットで当てる人もいるが、筆者は25回目でようやく当てることができた汗と涙の結晶のホイールである。アイテムを手に入れるガチャを回すためには、経済ではなくクランクを回さないといけない、そんなズイフトの世界観を象徴するアイテムでもある。
話をライドに戻そう。世界中から多くの参加者が集まる大舞台で一瞬でも暫定1位になりたい筆者は体重の6倍以上で踏み続け、悲願の暫定1位を1分ほどだが死守することができた。やはり先頭を走る気持ち良さはリアルでもバーチャルでも変わらない。距離19kmを残し、目的を達成した後はマイペースに切り替えた。
5km地点までは勾配3~5%と比較的緩いのだが、6km地点からは10%まで一気に斜度が跳ね上がるのがこのコースの特徴。いかに後半に向けて力を温存できるかがモン・ヴァントゥを攻略するキーポイントになってくる。
6km地点に突入し、トンネル内では一列棒状に。周りの選手は体重の5倍前後の出力でペダルを踏むハイペースな展開が続く。画面右上の勾配表示には11%という数字が躍る。チラッと見ただけでも乳酸が出てきそう。
しばらく単独で走り続け、13.9km地点には中腹のシャレー・レイナールにフィニッシュするバーチャル・ツール・ド・フランス 第5ステージの残り1kmを示すフラムルージュが登場した。しかし、モン・ヴァントゥの頂上まで登り続けるエタップ・デュ・ツール 第3ステージは残り7km。まだまだ先は長い。
観客の服装がマイヨジョーヌや山岳賞ジャージのマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュになっていたり、コース上のパネルもツール・ド・フランス仕様になっていたりと演出も非常に手が込んでおり、実際にツールの舞台を走っているような感覚を味わえる。カメラアングルをPOVへと変更すれば、更に没入度はアップ。実際に魔の山"モン・ヴァントゥ"を登っているように楽しめた。
14.4km地点でツール・ド・フランスといえばお馴染みの悪魔おじさんが満を持して登場。勾配がきつく苦しい場面であったが、悪魔おじさんから元気をもらい気持ちを切り替えてペダルを踏み込むことができた。「ありがとう!悪魔おじさん!」。RideOnを送れるものなら100回くらい送っているところだ。
コース中に配置されている道路標識にはフランスの幹線道路"D974"の表記やステージの残り距離、その地点の勾配などが細かく記されている。ゴールまで残り1.1km地点にはモン・ヴァントゥの登りで死去したトム・シンプソンの慰霊碑が再現されていた。
ディテールの積み重ねがリアリティを高めてくれる。ズイフトがバーチャルサイクリングで圧倒的なシェアを持つ理由を垣間見た。そして、モン・ヴァントゥの山頂に聳え立つ天文観測塔が観え、残りの力を振り絞り第3ステージのゴールゲートを潜り抜けた。
エタップ・デュ・ツール 第3ステージ(距離21km、獲得標高1535m)を1時間4分28秒で走り、レースではないが3354人中20位で無事完走。
「バーチャル・ツール・ド・フランス」と「エタップ・デュ・ツール」のためにズイフト内に造られたスペシャルコースには、何度も映像を通して観戦したツールを代表するロケーションが忠実に再現されていて、実際にフランスを走っているように楽しめた。
筆者はついつい頑張って走ってしまったが、「エタップ・デュ・ツール」はEカテゴリーに分類されたイベントで、誰でも気負わずに参加できるもの。レースに出ている人は先頭を目指しても良いし、モン・ヴァントゥのヒルクライムタイムを競ったりするのも良い。また、サイクリング仲間と一緒に参加して、ビデオ通話しながらフランスのコースを楽しんだりと楽しみ方は多種多様だ。
今後もこのような世界的なバーチャルサイクリングイベントは開催されると思うので、新型コロナウイルスに感染しないように気をつけつつ、楽しいサイクリングライフを送ってみてはいかがだろうか。
text:Michinari.Takagi
edit:Naoki.Yasuoka
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