2020/08/23(日) - 12:25
エアロダイナミクスとカーボン素材への造詣が深いHED(ヘッド)が用意するカーボンクリンチャーホイール「VANQUISH 6」をインプレッション。メイドインUSAにこだわるヘッドのロード用エアロホイールの実力は如何に。
ロードレースのタイムトライアルやトライアスロンと言った、空力が重要視される場面で重宝されるHED(ヘッド)のホイール。TT世界王者であり、アワーレコードの元記録保持者でもあるローハン・デニスが、ツール・ド・フランスのタイムトライアルステージでスポンサーではないヘッドのホイールを使用していたというエピソードもあるほどだ。
ヘッドの歴史を紐解くとエアロダイナミクスに注力したホイールに80年代から着手していたことがわかる。創業した1984年にはディスクホイールでデビューを果たし、1990年代初頭にはカーボンディープリムを開発。JETシリーズが生まれたのもこの頃だ。1998年にはトライアスロンで世界選手権を制覇し、その地位を確かなものとした。
2000年代に入るとフルカーボンのSTINGERが登場。クリンチャーモデルや3バトンホイールの新型など開発の手を止めることは無かったが、各社フルカーボンクリンチャーホイールをリリースする中でヘッドは保守的な態度を取り続けてきた。
ヘッドによるとその理由は2つ。1つは制動時に発生するリムの加熱によってインナーチューブやタイヤ、リム自体にトラブルが起こりうるため。2つ目は既にラインアップされていたJETよりも優れたエアロダイナミクスを実現するためだ。
2018年、満を持してリリースされたフルカーボンクリンチャー「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」で示された解決策はディスクブレーキ専用ホイールとすることだった。ディスクブレーキの場合、熱がリムに伝わらないことはご想像の通り。エアロダイナミクス面でディスクブレーキがもたらした恩恵は、リムのキャリパーでは収めきれないワイドプロファイルの獲得だ。
外幅をJETよりも5mm広い30mmへと拡幅することで空気抵抗の削減を実現。VANQUISHは23-28mmタイヤにおいてほぼ同等の空力性能を発揮し、いずれも抗力が300gを下回るという。ヘッドが示す最適タイヤ幅は28mm。現在のカーボンホイールが軒並みワイドプロファイルとなっているため、VANQUISHにも優れたエアロダイナミクスを期待できそうだ。
シリーズとしてはVANQUISH 4、VANQUISH 6、VANQUISH 8という3種類を用意。今回はリムハイトが60mmのVANQUISH 6をインプレッションした。リム重量は前後共に491g。ホイール全体重量はフロントが734g、リアが855gで計1,589gだ。また、チューブレスリムテープが付属しており、チューブレスレディホイールとしても使用可能となっている。
スポークは前後共に24本で、ヘッドオリジナルの545ディスクブレーキハブが装備されている。ディスクローターはセンターロック仕様で、対応フリーはシマノHG。前後それぞれ単体で販売されており、フロントは182,700円、リアは189,900円で、合計は372,600円(税抜)となっている。
重量とエアロのバランスが取れたVANQUISH 6のインプレッションを担当したのはワイズロードの川原さん。大柄でパワーのあるライダーはVANQUISH 6をどう評価するのか。インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「重そうな見た目にしては軽量な重量と走行感」川原建太郎(ワイズロード東大和)
1800gほどの重量を備えていそうなルックスですが、カタログスペックでは1589gと意外にも軽いんですよね。実際に乗ってみた印象としても見た目の重量感からくる鈍重そうなイメージとは異なり、漕ぎはじめの一歩目から軽さを感じられます。スピードが乗った状態からも更に加速していく点も申し分ないので、大柄でパワーのある方でディープリムホイールの加速に不満を感じているのであれば、是非試してもらいたいと感じたホイールです。
かくいう私も身体が大きく体重は重めなので、このホイールとの相性が良かったのでしょう。ゼロからの加速感だけではなく、登りでの印象が思っていた以上に良かったですね。例えば、アウターギアでパワーを掛けながらダンシングで斜面を駆け上がっていくシチュエーションで、ホイールがよれること無くパワーを受け止めてくれるので、スピードを乗せやすかったです。コーナリング中もホイールの剛性についてネガティブな印象は受けなかったので、クリテリウム、トライアスロン、サーキットエンデューロで活躍してくれると感じました。
ただ、大柄のライダーしか受け付けないという訳ではありません。体重が軽い方でも1000ワット以上出せる方もいますし、高速コーナリングを楽しみたい方、レースで攻めた走りをする方は性能を発揮できるでしょう。
テストホイールは28Cタイヤとチューブとの組み合わせだったので、乗り心地にネガティブな印象はありませんでした。横風の影響も大きくなく、風が強く吹いていたり、路面が荒れていたりする部分でもスムースに走れました。コーナリングに不安のないホイールなので、信頼できるタイヤをチョイスしてあげれば、ギリギリの領域を楽しめるでしょう。もし、足回りの軽量性を意識するならば25Cタイヤを選びたいですね。23Cではホイールとのバランスが悪くなってしまうような感覚がありました。
フレームとホイールの組み合わせとしては、どちらも剛性の高いモデルを選んであげると良さそうです。もし剛性が低いフレームにVANQUISHを装着すると、フレーム側の低剛性の部分が際立って感じてしまう可能性があります。今回同じタイミングでインプレッションを行ったフェルト AR FRD、サーヴェロ S3 Discとのマッチングは好印象でしたよ。
最近のエアロ系ホイールは横風に対する空力は優れているものが多いですし、VANQUISHも例外ではありませんでしたね。ハイトが高いことによる横風や登坂性能にネガティブな印象はありませんでしたし、思ってたよりも守備範囲が広いです。ミドルハイトやローハイトは1gでも軽さを求めたい時だけ選択すれば良いと思わせるほどのホイールでした。
ヘッド VANQUISH 6
カラー:ブラック
重量:フロント 734g、リア 855g(セット1589g)
リムハイト:60mm
価格:フロント182,700円(税抜)、リア189,900円(税抜)
インプレライダープロフィール
川原建太郎(ワイズロード東大和)
ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。
ワイズロード東大和
CWレコメンドショップページ
ウェア協力:カステリ
ロードレースのタイムトライアルやトライアスロンと言った、空力が重要視される場面で重宝されるHED(ヘッド)のホイール。TT世界王者であり、アワーレコードの元記録保持者でもあるローハン・デニスが、ツール・ド・フランスのタイムトライアルステージでスポンサーではないヘッドのホイールを使用していたというエピソードもあるほどだ。
ヘッドの歴史を紐解くとエアロダイナミクスに注力したホイールに80年代から着手していたことがわかる。創業した1984年にはディスクホイールでデビューを果たし、1990年代初頭にはカーボンディープリムを開発。JETシリーズが生まれたのもこの頃だ。1998年にはトライアスロンで世界選手権を制覇し、その地位を確かなものとした。
2000年代に入るとフルカーボンのSTINGERが登場。クリンチャーモデルや3バトンホイールの新型など開発の手を止めることは無かったが、各社フルカーボンクリンチャーホイールをリリースする中でヘッドは保守的な態度を取り続けてきた。
ヘッドによるとその理由は2つ。1つは制動時に発生するリムの加熱によってインナーチューブやタイヤ、リム自体にトラブルが起こりうるため。2つ目は既にラインアップされていたJETよりも優れたエアロダイナミクスを実現するためだ。
2018年、満を持してリリースされたフルカーボンクリンチャー「VANQUISH(ヴァンキッシュ)」で示された解決策はディスクブレーキ専用ホイールとすることだった。ディスクブレーキの場合、熱がリムに伝わらないことはご想像の通り。エアロダイナミクス面でディスクブレーキがもたらした恩恵は、リムのキャリパーでは収めきれないワイドプロファイルの獲得だ。
外幅をJETよりも5mm広い30mmへと拡幅することで空気抵抗の削減を実現。VANQUISHは23-28mmタイヤにおいてほぼ同等の空力性能を発揮し、いずれも抗力が300gを下回るという。ヘッドが示す最適タイヤ幅は28mm。現在のカーボンホイールが軒並みワイドプロファイルとなっているため、VANQUISHにも優れたエアロダイナミクスを期待できそうだ。
シリーズとしてはVANQUISH 4、VANQUISH 6、VANQUISH 8という3種類を用意。今回はリムハイトが60mmのVANQUISH 6をインプレッションした。リム重量は前後共に491g。ホイール全体重量はフロントが734g、リアが855gで計1,589gだ。また、チューブレスリムテープが付属しており、チューブレスレディホイールとしても使用可能となっている。
スポークは前後共に24本で、ヘッドオリジナルの545ディスクブレーキハブが装備されている。ディスクローターはセンターロック仕様で、対応フリーはシマノHG。前後それぞれ単体で販売されており、フロントは182,700円、リアは189,900円で、合計は372,600円(税抜)となっている。
重量とエアロのバランスが取れたVANQUISH 6のインプレッションを担当したのはワイズロードの川原さん。大柄でパワーのあるライダーはVANQUISH 6をどう評価するのか。インプレッションに移ろう。
― インプレッション
「重そうな見た目にしては軽量な重量と走行感」川原建太郎(ワイズロード東大和)
1800gほどの重量を備えていそうなルックスですが、カタログスペックでは1589gと意外にも軽いんですよね。実際に乗ってみた印象としても見た目の重量感からくる鈍重そうなイメージとは異なり、漕ぎはじめの一歩目から軽さを感じられます。スピードが乗った状態からも更に加速していく点も申し分ないので、大柄でパワーのある方でディープリムホイールの加速に不満を感じているのであれば、是非試してもらいたいと感じたホイールです。
かくいう私も身体が大きく体重は重めなので、このホイールとの相性が良かったのでしょう。ゼロからの加速感だけではなく、登りでの印象が思っていた以上に良かったですね。例えば、アウターギアでパワーを掛けながらダンシングで斜面を駆け上がっていくシチュエーションで、ホイールがよれること無くパワーを受け止めてくれるので、スピードを乗せやすかったです。コーナリング中もホイールの剛性についてネガティブな印象は受けなかったので、クリテリウム、トライアスロン、サーキットエンデューロで活躍してくれると感じました。
ただ、大柄のライダーしか受け付けないという訳ではありません。体重が軽い方でも1000ワット以上出せる方もいますし、高速コーナリングを楽しみたい方、レースで攻めた走りをする方は性能を発揮できるでしょう。
テストホイールは28Cタイヤとチューブとの組み合わせだったので、乗り心地にネガティブな印象はありませんでした。横風の影響も大きくなく、風が強く吹いていたり、路面が荒れていたりする部分でもスムースに走れました。コーナリングに不安のないホイールなので、信頼できるタイヤをチョイスしてあげれば、ギリギリの領域を楽しめるでしょう。もし、足回りの軽量性を意識するならば25Cタイヤを選びたいですね。23Cではホイールとのバランスが悪くなってしまうような感覚がありました。
フレームとホイールの組み合わせとしては、どちらも剛性の高いモデルを選んであげると良さそうです。もし剛性が低いフレームにVANQUISHを装着すると、フレーム側の低剛性の部分が際立って感じてしまう可能性があります。今回同じタイミングでインプレッションを行ったフェルト AR FRD、サーヴェロ S3 Discとのマッチングは好印象でしたよ。
最近のエアロ系ホイールは横風に対する空力は優れているものが多いですし、VANQUISHも例外ではありませんでしたね。ハイトが高いことによる横風や登坂性能にネガティブな印象はありませんでしたし、思ってたよりも守備範囲が広いです。ミドルハイトやローハイトは1gでも軽さを求めたい時だけ選択すれば良いと思わせるほどのホイールでした。
ヘッド VANQUISH 6
カラー:ブラック
重量:フロント 734g、リア 855g(セット1589g)
リムハイト:60mm
価格:フロント182,700円(税抜)、リア189,900円(税抜)
インプレライダープロフィール
川原建太郎(ワイズロード東大和)
ワイズロード東大和店の副店長であり、同社実業団チームのキャプテンも務める。JBCFのE1クラスで走っていた経験を持つ実力派スタッフで、速く走りたいというホビーレーサーへのアドバイスを得意とする。バイオレーサー1級の資格を持ち、ライダーのパフォーマンスを引き出すフィッティングに定評がある。東大和店はワイズロードの中でも関東最大級の店舗で、各ジャンルに精通したスタッフと豊富な品揃えが特徴だ。
ワイズロード東大和
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