ツール・ド・フランスで現役最多のステージ通算30勝を上げ、今季バーレーン・マクラーレンに加入したマーク・カヴェンディッシュ。過去にうつ病を患っていたことをTHE TIMESのインタビューで明かした。



マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン) (c)RCS Sport
英大衆紙のTHE TIMESが伝えたところによると、新型コロナウィルスの感染拡大を受けマン島の自宅でトレーニングを行うカヴェンディッシュは、Zoomを使ったオンラインインタビューで2018年にうつ病と診断されていたことを語った。「ここ数年に渡り私を苦しめたのは、身体的な健康問題だけではなかった。この時期私はうつ病とも闘っていた」。

2007年にTモバイルでプロ入りしたカヴェンディッシュは、ロード世界選手権やミラノ〜サンレモで優勝、ツール・ド・フランスではステージ通算30勝を上げるなど、2010年前後にかけて名実ともに世界最速スプリンターとして名を馳せる。しかし、ツールで4勝を上げた2016年シーズンを最後に成績は低迷。たび重なる落車負傷に喘ぐなか、2017年4月にEBウィルスによる伝染性単核球症を患っていることを発表した。

その2ヶ月後、無事レース復帰を果たすも不調から脱することはできできず、翌年にはふたたび伝染性単核球症と診断され、再度競技から離れることになってしまった。

そして2018年8月にはうつ病を発症。当時を「薬は飲まなかった。飲むべき時と場合じゃなかったからだ。だが手助けはしてもらった」とカヴェンディッシュは話し、こう付け加えた。「暗闇にいた。そしてありがたいことに、いまはその対岸にいる」。

2019年シーズンから本格的にプロトンに戻ってきたカヴェンディッシュは、ツール出場を逃し、プロ入り後初めてとなる未勝利でシーズンを終えたものの、2016年以来3年ぶりにフルシーズンを走ることができた。

フィル・バウハウス(ドイツ)の勝利を喜ぶバーレーン・マクラーレンフィル・バウハウス(ドイツ)の勝利を喜ぶバーレーン・マクラーレン (c)CorVos
そして今年、4シーズンを過ごしたディメンション・データ(現NTTプロサイクリング)を離れ、かつてチームGB(イギリス自転車連盟)やチームスカイ(現チームイネオス)で指導を受けたロッド・エリングワースがGMに就任したバーレーン・マクラーレンに加入し再起を狙っている。

恩師エリングワースは現在のカヴェンディッシュについて「その(不調だった時期の)話は聞きたくない。どこに向かっているかを見よう 。それに向けて頑張ろう。そう伝えた」と話した。

新型コロナウィルスの世界的感染が拡がっているいま、ツール・ド・フランスはおろか世界選手権すら不透明な状態が続いている。だが、長く続いた不調を乗り越えたカヴェンディッシュにとって、「いつレースに復帰できるか分からない状態が2年間も続いていたんだから(問題ない)」と、現況はそれほどストレスになっていないと語った。

エディ・メルクスのツール・ド・フランス通算34勝の偉大な記録の更新が期待される、ステージ通算30勝(歴代2位)を誇るマン島の超特急。シーズン序盤の中東レースではフィル・バウハウス(ドイツ)のステージ優勝に貢献するなど活躍したカヴは、「前向きな気持ちを持ち続けよう」と、今日も苦手なZwiftでトレーニングを続けている。

text:Sotaro.Arakawa
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