新型SUPERSIX EVOと並びキャノンデールの2020モデルで大きな目玉となった「CAAD13」をインプレッション。CAADシリーズに特徴的な優れた軽量性と剛性はそのままに、エアロシェイプによって空力性能と快適性を大幅に強化したアルミレーシングバイクを紹介しよう。



キャノンデール CAAD13 DISCキャノンデール CAAD13 DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
キャノンデールが誇るアルミロードシリーズCAAD(キャド)。Cannondale Advanced Aluminum Design(=キャノンデール・アドバンスド・アルミニウム・デザイン)を略した名称であり、ブランドの黎明期から現代まで続く歴史と伝統が詰め込まれた、キャノンデールにとって最も重要なモデルの1つといえるだろう。

比較的初期のCAAD3からCAAD8までを当時の強豪プロチームである「サエコ」が使用し、レーシングバイクとして一躍注目を集めることに。その後もモデル名の数字を更新するごとに性能を進化させ、2010年に登場したCAAD10は当時のアルミロードで世界最軽量モデルとして話題を呼んだ。”11”の数字を飛ばして2015年にはCAAD12へ、そして今回4年ぶりのモデルチェンジによってアルミニウムの原子番号を冠した「CAAD13」が誕生した。

コンパクトなリアトライアングルを採用しエアロロード然としたルックスを実現コンパクトなリアトライアングルを採用しエアロロード然としたルックスを実現 アルミフレームながらエアロチュービングを多用し空力性能を強化しているアルミフレームながらエアロチュービングを多用し空力性能を強化している CAAD13用に新設計されたフルカーボンフォークが鋭いコーナリングも可能とするCAAD13用に新設計されたフルカーボンフォークが鋭いコーナリングも可能とする

歴代のCAADシリーズ同様に、カーボンのトップモデルSUPERSIX EVOのテクノロジーをアルミフレームに落とし込むことで性能を強化。生まれ変わったSUPERSIX EVOと同じく、フレーム各所にエアロフォルムを採用したことが大きなアップデートポイントだ。カーボンバイクと見紛うほどのルックスは、さすがアルミの扱いに長けたキャノンデールと言えるだろう。

翼断面形状の後端を切り落としたD型のエアロチュービングを多用しており、ラウンド形状のチューブに比べ最大30%もの空力性能向上を実現。また、コンパクトなリアトライアングルによって前方投影面積を削減し空気抵抗を低減させる。シートステーが短くなることで重量削減と剛性強化にも繋がっており、かつシートチューブ上部の突き出し量が増えることで振動吸収性の向上にも寄与している。

アルミチューブを美しく加工しSUPERSIX EVOのシートクランプ内蔵デザインを再現したアルミチューブを美しく加工しSUPERSIX EVOのシートクランプ内蔵デザインを再現した エアロと快適性を両立するカーボン製のSAVEハンドルバーを搭載エアロと快適性を両立するカーボン製のSAVEハンドルバーを搭載

チェーンステーを扁平させリア三角をしならせることで乗り心地を良くしているチェーンステーを扁平させリア三角をしならせることで乗り心地を良くしている ダウンチューブのスイッチプレートを差し替えることでシフトケーブル内装やDi2ジャンクションの配置もできダウンチューブのスイッチプレートを差し替えることでシフトケーブル内装やDi2ジャンクションの配置もでき

シートポストもSUPERSIX EVOと同じエアロ形状のものへと刷新され、フレーム内蔵式のクランプがスマートなルックスにも貢献している。Force eTap AXS完成車には軽量かつフレックスゾーンを設けた形状によって乗り心地を向上させたカーボン製のものをアセンブル。下位グレードの完成車はアルミシートポストが付属するものの、カーボンシートポストも単体で販売されアップグレードすることが可能だ。

フレーム素材は前作から引き続き、重量剛性比に優れた6069アルミニウムを使用しており、極限まで重量を削減する一方で、剛性が必要な箇所には適切な素材の厚みを持たせることで高いパワー伝達性とレーシーな反応性が与えられている。フレームをしならせ快適性を高めるSAVEテクノロジーにも磨きをかけており、リア三角の柔軟性を綿密に調整することで路面追従性も強化され、スムーズなライディングを楽しめる乗り味を獲得した。

シートステー裏側などフェンダーマウント用のダボを各所に配置シートステー裏側などフェンダーマウント用のダボを各所に配置 BBはキャノンデール独自のBB30A規格BBはキャノンデール独自のBB30A規格

ジオメトリーもSUPERSIX EVOと共通の設計が採用されており、ピュアレーシングなSYSTEMSIXとアップライトなSYNAPSEのちょうど中間に当たるスタック&リーチの値に。前作からわずかにスタックが長くリーチが短くなっており、幅広いレベルのライダーが扱いやすいよう工夫されている。加えて、ホイールベースも延長されたことで直進安定性の向上を狙っている。

ディスクブレーキはフラットマウント&12mmスルーアクスルの標準的な仕様。エンドの片側に切り欠きを設け、アクスルを完全に引き抜かずともホイールを着脱できるスピードリリース機構を採用している。上位モデルのようなオイルラインの内装システムは搭載しておらず、ごく一般的なインターナルルーティングだ。

SUPERSIX EVOと共通のKNØT27シートポストが振動吸収に一役買っているSUPERSIX EVOと共通のKNØT27シートポストが振動吸収に一役買っている ダウンチューブのボトルポジションは上下2箇所から選択できるよう3つのボルトが設けられているダウンチューブのボトルポジションは上下2箇所から選択できるよう3つのボルトが設けられている 丸チューブのヘッドはアルミフレームらしい造形だ丸チューブのヘッドはアルミフレームらしい造形だ

タイヤクリアランスもよりワイドな最大30mm幅まで対応(リムブレーキモデルはキャリパーの構造上28mmまで)。標準でも28Cタイヤがアセンブルされる仕様で、エアボリューム増大による快適性の向上を図っている。フェンダーマウントも各所に備わっており、かつ耐久性の高いアルミフレームとあって通勤通学にも最適だろう。

今回はディスクブレーキ仕様のトップグレードであるForce eTap AXS完成車にてテスト。エアロと快適性を両立するカーボン製の”SAVEハンドルバー”と、45mmのディープリムが空力性能を高めてくれる”HollowGram KNØT45ホイール”をアセンブルしたハイスペックな1台だ。まだまだ愛用者の多いリムブレーキモデルも各種完成車にてラインアップされる。



― インプレッション

「カーボンバイクに近い快適な乗り心地とレーシーな走行性能を両立」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

まず、CAAD12から13になって乗り心地がかなり良くなりましたね。ガラリと見た目を変えたフレームのアップデートもそうですし、専用のシートポストもワイドな28Cタイヤも快適性の向上に一役買っています。踏み込んだ時に金属っぽくない、アルミっぽくない感触でかなりカーボンバイクに近づいた乗り味を獲得しています。

「カーボンバイクに近い快適な乗り心地とレーシーな走行性能を両立」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)「カーボンバイクに近い快適な乗り心地とレーシーな走行性能を両立」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
パワーをかけたときにいい塩梅で逃しが効いている印象で、アルミらしい足にガツンとくる感じがないんです。決してフレームが柔らかい訳ではないのですが、若干のしなりがマイルドさを引き出しているのかと。振動吸収の考え方もCAAD12とは違っていて、今作はシートチューブをしならせることで快適性もトラクションも格段にアップしています。いわゆるアルミバイクの乗り味を求めている人には物足りないかもしれませんね。そのくらい進化した1台なんです。

前作同様オールラウンドな走りは健在で、足当たりの良さからレーシーな印象は薄まっているのですが、比べてみると明らかにCAAD13の方が速いですね。踏んだ瞬間だけシュンっと進むのではなく、踏み始めから終わりまでしっかりトルクが掛かってくれるイメージで、減速感なく進んでくれるのが非常に気持ちいい。速度維持もしやすく巡航性能も良いですし、高速域からさらに伸びるポテンシャルもあります。ヒルクライムみたいにジワッとパワーをかけるペダリングでも応えてくれますね。

ハンドリングもニュートラルで癖がなく扱いやすいと思います。加えて、コーナリングの安定感の高さは28Cタイヤもかなり効いているはずです。ハイスピードの下りも怖くないですし、かといってワイドすぎて走りがダルいという印象もありません。乗り心地も非常に良いですし、個人的には28Cが今後スタンダードになっていくのではとも感じますね。普段25Cを使っている人も、一度乗ってみればその良さが一発で分かるはずです。

新しいSAVEハンドルバーとステムは、見た目はゴツい印象ですけど特に硬いという感覚もなく違和感なく使っていけるかと。一体型のようなデザインでも調整が効くのがいいですね。ホイールも今回の45mmハイトでマッチングは良く、この仕様だと軽さも際立ってそのままレースバイクとして十分活躍してくれるでしょう。

もちろん下位グレードの完成車でもCAAD13の走りの良さはバッチリ味わえます。足当たりが良いのでロングライドに使ってもいいし、フェンダーも付けられるので通勤通学にも良いでしょう。アルミロードとはいえ、幅広いライダーが満足できる1台となってくれるはずです。

「例え良いカーボンバイクを持っていても、手許に置いておきたくなる」錦織大祐(フォーチュンバイク)

アルミロードの集大成といっても過言ではないですよね。CAAD12がフレーム全体の構造として剛性感を調整することで乗り味を演出していたのに対して、ダウンチューブはしっかりとペダリングパワーを受け止め、シートステーは縦に動くように、という風にCAAD13は各チューブに明確な役割を与えているように感じました。

CAAD13の最も素晴らしい部分はリアトライアングルのしなやかさです。とにかくトラクションが掛かりやすい。バンピーな路面でも跳ねず、地面を捉えて離さない。接地している時間が長いので、前へ前へと進んでいく感覚が強いです。太いタイヤを履かせればグラベルにだって連れていけそうです。

「例え良いカーボンバイクを持っていても、手許に置いておきたくなる」錦織大祐(フォーチュンバイク)「例え良いカーボンバイクを持っていても、手許に置いておきたくなる」錦織大祐(フォーチュンバイク)
ドロップシートステーを採用して、リアトライアングルがコンパクトなデザインになったのを見た時、CAADよお前もか!と思ったのですが、実際に乗ってみると納得させられます。むしろ、アルミロードを本気で追求し続け、一旦CAAD12でその旅を終着させたキャノンデールがその先を目指した結果の選択だという重みがありますね。ただ、流行のデザインを取り入れたというだけではありません。

専用のハンドルとステムは特殊なクランプを採用しているので、初見では少し不安でしたがこちらも実際に乗ってみれば違和感は全くありません。シートポストも専用ですし、そういったトータルデザインで振動を制御しようとしているのでしょう。

例え良いカーボンバイクを持っていたとしても、手許に置いておきたくなるバイクですね。いうなればこのCAAD13というバイク自体が一つのカテゴリーと呼んでも良いぐらい、唯一無二の個性を持ったバイクです。金属特有の均質でダイレクトなフィーリングを前面に押し出しつつも、振動のいなし方や細やかな所作は質の良いカーボンバイクのようで、上質なライドクオリティが全体を包み込んでいます。

初心者にとってエントリーの一台としても、ベテランライダーにとって練習からレースまで心おきなく使えるバイクとしても、しっかり乗り手の信頼に応えてくれ、楽しませてくれるのがCAAD13です。豊かなバイクライフを楽しみたいのであれば、迷うことなく選ぶべきバイクでしょう。

キャノンデール CAAD13 DISC
フレーム:All-New, SmartForm C1 Premium Alloy, integrated cablerouting w/ Switchplate, SAVE, BB30a, 142x12 SpeedRelease thru-axle, Di2 Ready, flat-mount disc
フォーク:All-New, BallisTec Carbon, SAVE, 12x100mm SpeedRelease thru-axle, flat mount disc
サイズ:44, 48, 51, 54, 56, 58(Force eTap AXSは44, 58の展開なし)
価格:
スラムForce eTap AXS完成車 590,000円(税抜)
シマノ105完成車 210,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。

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アウトドアスペース風魔横浜 HP

錦織大祐(フォーチュンバイク)錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)

幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。

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フォーチュンバイク HP

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO

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