2019/10/24(木) - 19:19
10月12日に日本初開催となったグラベルイベント「グラインデューロ」の上位入賞者たちのバイクを紹介する。本国アメリカ流のコース設定によりより本場に近いグラベルが設定されたコース。日本の急峻な地形と土質、迫る台風と雨の影響を考慮し、参加者たちはどんなバイクにカスタムしてレースを走ったのだろう?
Pro Men優勝 バリー・ウィックス(KONA COG) KONA LIBRE
海外招待勢のなか圧倒的なスピードをみせてプロ男子クラスに優勝したバリー・ウィックス(KONA COG) 。身長2mを超える大男のウィックスが駆るのはコナのフルカーボンアドベンチャーバイク、LIBRE(リブレ)だ。モンスタークロスなどグラベル&アドベンチャー系バイクが得意なコナのフラッグシップモデルで、54サイズのフレームのダウンチューブには2連でボトルケージが取り付けられるユーティリティ性をもつ。フォークやリアステーにはキャリアやバッグ類に対応するダイレクトマウント用のダボ穴が備わっているのがアドベンチャーバイクにカテゴライズされる所以だ。
パーツはシマノの新グラベルコンポ GRXのDI2モデルがインストールされる。駆動系はフロントWで、油圧式の補助ブレーキレバーもセット。ホイールもGRXというフル仕様だ。幅広のフレアハンドル、ドロッパーポストはケーブル式でハンドル根本にコントロールレバーをセットアップ。700Cなら45cも使用可能なクリアランスをもつフレームに、太めのタイヤを使用するため27.5(650B)ホイールを使用し、タイヤはWTB RENGER2.0を採用。ノブのしっかりしたタイヤでグリップを稼ぐ仕様で、計測区間以外のダウンヒルでも恐ろしいほどのスピードで駆けていたのが印象的だ。ウィリー走行を延々と決めたり、バイクコントロールにも長けていたウィックス。シクロクロスレーサーでもあるとおり、長身&大柄ながら機敏なアクションでバイクを操るスーパーテクニックの持ち主だった。
Pro Men3位 タイデマン・ニューマン キャノンデールTOPSTONE CARBON
Pro Men3位のタイデマン・ニューマン(キャノンデール)は、シクロクロス、マウンテンバイク、ロードレース、そしてグラベルレースのほとんどをハイレベルでこなす17歳の「スーパー高校生」。来期モデルが掲載されたキャノンデールのカタログの表紙やウェブサイトのイメージ写真の多くは彼だというほど、キャノンデールイチ推しの若手選手だ。
そんなニューマンが駆るのはもちろんキャノンデールの新型グラベルバイク、TOPSTONE CARBON。しかも世界で4人だけがサポートを受けて乗るという、グラインデューロカラー&ロゴがあしらわれたスペシャルモデルだ。
コンポはスラムのFORCE ETAP AXSで、ホイールにはHUNTのグラベル専用設計カーボンホイールを採用する。リムハイトは50mm。タイヤはフロントにマキシスのRAVAGER 40C、リアにWTB NANO 40Cを使用していた。本人はゴール後すぐに居なくなったため話が聞けなかったが、一緒に走った山本カズさんの話ではコースが荒れた際にはフロントに45Cを選ぶことがあると話していたそうだ。そしてカズさん曰く「下りが本当に速い。ぶっ飛んでいます。ついていけません」とのこと。17歳にして驚きのバイクコントロールだったそうだ。
Men 31-40優勝 白石真悟(シマノドリンキング) トレックCHECK POINT SL5
激戦区の31-40男子で優勝した白石真悟(シマノドリンキング) 。ライバルと目された山本和弘(キャノンデール・ジャパン)を1秒の僅差で下して勝利をモノにした。かつてMTBエリートライダーであり、ツール・ド・おきなわ市民200kmクラスでも2度の優勝を飾っている白石だが、新しいイベントで優勝のタイトルを取ることを目標に乗り込んできた。
白石の駆るトレックのオールロードバイク「CHECK POINT」はカーボンフレーム仕様のハイエンドであるSL5。搭載するコンポは(シマノ社員だから)もちろんGRXだ。プロ男子クラス優勝のウィックス同様、DI2仕様のフルコンポで使用する。ギアも細かいギア選択が可能なW仕様だ。タイヤはシュワルベのG-ONEチューブレスタイプを、プロトタイプのようなカーボンホイールに装着する。
「ギア比はフロントWの48/31で、リアは11〜32T。約1対1の軽いローギアで大抵の登りはいけます。やはりシングルよりも汎用性が高いフロントWにしました。ハンドルの角度、下ハンドルを握ってもレバーに指のかかりやすいセッティングを目指しました。リラックスして走るにはいいですね。タイヤの太さは40Cで、未知のコースだったので空気圧は2気圧まで高めて使いました。これはレース途中で空気を足せないこともありますが、結果的にはガレた箇所は無かったのでもうちょっと圧は下げても良かったかなとは思います。グラベルバイクの使い勝手の良さに驚いています」。
Women 20-30優勝 テイヨウフウ サーヴェロ ASPERO DISC
20〜30代女子で優勝したSNS界隈で有名なヒルクライマー、テイヨウフウさんが駆るのはサーヴェロの新型グラベルロード、ASPERO DISC。エアロ&軽量化が徹底されたグラベルバイクの最先端で、発売されて間もないためまだ乗ったことがある人は日本でもごくわずか。
「じつはこのバイクは代理店さんからの借り物で、しっかり走るのは今回で2回め。私のようなグラベル初心者でも乗りやすくて快適な、とてもいいバイクでした」とテイさん。ほぼ貸し出し試乗車の状態で、シマノのGRXのケーブル式コンポによるFシングル仕様。ギア比はフロント40T、リア11〜42T。タイヤにはDONNELY X'PLOR EMP 700×38Cがセットされていた。ホイールはイーストンのEC70AX。
サーヴェロ ASPEROはフロントフォーク先端のエンド部にオフセットを5mm変更できる”トレイルミキサー”という機構が搭載されていて、オンロード/オフロードの設定を変えることができる。もちろん今回はオフロードモードで走った。
「初めてのグラベルロードでしたがブレーキもよく効くし、安心感がありました。踏んでも脚にこない乗り味で、これは欲しくなりますね。ロードともMTBとも別の乗り物です」。
Men 41-50優勝 三上和志(cycleclub3UP)モンドレイカー PODIUM
こちらも激戦区のMen 41-50に優勝した三上和志さん(cycleclub3UP)。埼玉県飯能市のショップ、サイクルハウスミカミの店長であり、奥武蔵MTB友の会の世話人も務める。シクロクロスレースではC1で走り、MTBではENSエンデューロシリーズで活躍するなどオフロード系ライドシーンでは日本を代表する一人。そんな三上さんが駆るのはスペインのブランド、モンドレイカーの29er XCモデル、PODIUMだ。先進的なフレーム設計思想”フォワードジオメトリー”を取り入れたこのモデルは日本のXCシーンでもトップライダーに多く支持を得ている。タイヤはIRCのマッド系タイヤ、STINGO XC29・2.0を使用した。
「完全なXCレーシングバイクですが、いつも地元の里山で遊んでいるバイクです。純XCレースバイクですがドロッパーポストやワイドタイヤを入れて下りを楽しめる味付けにしています。グラベルレースなのでシクロクロスバイクで出場しようかとも思ったんですが、天候が荒れるようだったので安定性を重視してMTBを選びました。SS1の登りの長い区間では2位に甘んじましたが、下りを攻められるこのバイクをチョイスしたおかげでSS2とSS3で挽回、優勝することができました。選んだバイクとタイヤは正解でした」と三上さん。
Men 20-30優勝 野中秀樹(NESTO) NESTO TRAZE PRO
20〜30代男子で優勝した野中秀樹さんは、チーム名の通りNESTOブランドのスポーツバイクをリリースする日本の自転車メーカー、ホダカの社員さん。実業団のE1でロードレース、シクロクロスではC1、そしてMTBではセルフディスカバリー王滝を中心にレースに参戦するマルチ系レーサーだ。今回、野中さんが選んだのは自社の27.5インチクロスカントリーMTBのTRAIZE PROというモデル。ホイールはマヴィックのXAエリート、タイヤはシュワルベのROCKET RON。ごくスタンダードなクロカン系マウンテンバイクだ。
「NESTOの最新作として29er+BOOST採用モデルもリリースしているんですが、今回はコーナーの立ち上がりの素早さなどを重視して27.5を選びました。一番乗り慣れているバイクというのも大きかったです。ほかにNESTOでグラベルロード2種を新発売したので乗るべきか悩んだんですが、最終的には天候を考えたことと、バイクに乗ってきた時間が一番長いモデルを選びました。ほぼSDA王滝仕様なんです。2位の選手とも登りで10秒ほどしか差がついておらず、下りをバイクに助けられ、攻めることができました。荒れたコンディションが得意で、当初の80kmコースを見て王滝と同じ仕様で行こうと決めました。でも登り区間ははグラベルロードのほうが有利でしたね」。
シングルスピード優勝 國井 豊 REW10WORKS
区間合計17分31秒という、年代別クラスなら優勝争いに匹敵する素晴らしいタイムをシングルスピードバイクで叩き出した國井 豊さん。普段のシクロクロスでもシングルギアで各地のレースに参戦している。
そんな國井さんが駆るのは東京・世田谷区上馬のハンドメイド工房「REW10WORKS(リューテン・ワークス)」製のカスタムフレーム。知る人ぞ知る同工房はクロモリフレームに加えて指輪やレザー製アクセサリー、アパレルなど色々な製品をクリエイトしている。個性派ビルダーが手掛けた作品らしく、國井さんのバイクにも随所に凝ったラグワークが伺える。「ラグまで全部削り出しで制作してもらいました。普段はシクロクロスバイクとして乗っているシングルスピードバイクです。ギア比はフロント:34×リア19Tで1.7少々。ギア比はちょうど良かったんですしが、雨だったのでカンティブレーキでは効きが悪く、下りで苦労しました」と笑う。
そのカンチブレーキはブルースゴードン製のクラシックなもの。手組みホイールのリムにはヴェロシティのMAJOR TOMを使用し、タイヤはIRC BOKENチューブレス40Cをセット。「乗り心地がとても良くてグラベルには最高のタイヤです。1.6気圧で使用しました」。
台風で短縮されたコース 本来ならば太めタイヤ装備のグラベルロードに有利
今回のグラインデューロは巨大台風襲来の影響を受けて当初の2ループ総距離80kmコースから大幅に距離が短縮され、29.7km・獲得標高890mの1ループで開催された。難しいセクションや雨でぬかるむとやっかいなゲレンデの急登もカットされ、難易度も大幅に下げられた。
コース設計担当者に伺ったところ、当初の80kmコースのコンセプトについては、コース全体の6〜7割がオフロード(残りは舗装路)。実感的にはグラベルロードに適した路面状況が7割ほど、MTBのほうが適している荒れた区間も一部あり、という設定だったという。当初のコースで、天候が安定していれば、速く走れる正解はどんなバイクだったのだろうか? 担当者は次のようなアドバイスをくれた。
「実質全体の7割ぐらいはグラベルに適しています。そのほかはかなり荒れていたり、ロッキー(岩がち)なところもあります。正直キツイとこもあります。が、アメリカやスコットランドのグラインデューロでも相当荒れている箇所もあります。それらのレースで、欧米のライダーたちは日本人の感覚からすると『これグラベルで行くところじゃないだろう』というところもガンガン行きます。しかもそれでマウンテンバイクより速いのです。グラインデューロは色々なシチュエーションが絡んでくるのが面白いところで、本国でも『いまだに答えが出ないところが面白いよね』などと言われています。
バイクによってそれぞれ走り方に得意なパートと不得意なパートがあり、『どのバイクで走れば自分の不得意分野をカバーしてくれて気持ちよく走れるか』がポイントだと思います。体力が無く下りが得意であれば、グラベルバイクに太めのタイヤを履くのがトータルで一番楽しめるかもしれませんが、下りを楽しむ、あるいは速く走るためにマウンテンバイクで出る、というのもアリだと思います」。
来年こそフルコースで開催して欲しいグラインデューロ・ジャパン。こうした話を来年の出場の際のバイクカスタムの参考にして欲しい。
photo&text:Makoto.AYANO
Pro Men優勝 バリー・ウィックス(KONA COG) KONA LIBRE
海外招待勢のなか圧倒的なスピードをみせてプロ男子クラスに優勝したバリー・ウィックス(KONA COG) 。身長2mを超える大男のウィックスが駆るのはコナのフルカーボンアドベンチャーバイク、LIBRE(リブレ)だ。モンスタークロスなどグラベル&アドベンチャー系バイクが得意なコナのフラッグシップモデルで、54サイズのフレームのダウンチューブには2連でボトルケージが取り付けられるユーティリティ性をもつ。フォークやリアステーにはキャリアやバッグ類に対応するダイレクトマウント用のダボ穴が備わっているのがアドベンチャーバイクにカテゴライズされる所以だ。
パーツはシマノの新グラベルコンポ GRXのDI2モデルがインストールされる。駆動系はフロントWで、油圧式の補助ブレーキレバーもセット。ホイールもGRXというフル仕様だ。幅広のフレアハンドル、ドロッパーポストはケーブル式でハンドル根本にコントロールレバーをセットアップ。700Cなら45cも使用可能なクリアランスをもつフレームに、太めのタイヤを使用するため27.5(650B)ホイールを使用し、タイヤはWTB RENGER2.0を採用。ノブのしっかりしたタイヤでグリップを稼ぐ仕様で、計測区間以外のダウンヒルでも恐ろしいほどのスピードで駆けていたのが印象的だ。ウィリー走行を延々と決めたり、バイクコントロールにも長けていたウィックス。シクロクロスレーサーでもあるとおり、長身&大柄ながら機敏なアクションでバイクを操るスーパーテクニックの持ち主だった。
Pro Men3位 タイデマン・ニューマン キャノンデールTOPSTONE CARBON
Pro Men3位のタイデマン・ニューマン(キャノンデール)は、シクロクロス、マウンテンバイク、ロードレース、そしてグラベルレースのほとんどをハイレベルでこなす17歳の「スーパー高校生」。来期モデルが掲載されたキャノンデールのカタログの表紙やウェブサイトのイメージ写真の多くは彼だというほど、キャノンデールイチ推しの若手選手だ。
そんなニューマンが駆るのはもちろんキャノンデールの新型グラベルバイク、TOPSTONE CARBON。しかも世界で4人だけがサポートを受けて乗るという、グラインデューロカラー&ロゴがあしらわれたスペシャルモデルだ。
コンポはスラムのFORCE ETAP AXSで、ホイールにはHUNTのグラベル専用設計カーボンホイールを採用する。リムハイトは50mm。タイヤはフロントにマキシスのRAVAGER 40C、リアにWTB NANO 40Cを使用していた。本人はゴール後すぐに居なくなったため話が聞けなかったが、一緒に走った山本カズさんの話ではコースが荒れた際にはフロントに45Cを選ぶことがあると話していたそうだ。そしてカズさん曰く「下りが本当に速い。ぶっ飛んでいます。ついていけません」とのこと。17歳にして驚きのバイクコントロールだったそうだ。
Men 31-40優勝 白石真悟(シマノドリンキング) トレックCHECK POINT SL5
激戦区の31-40男子で優勝した白石真悟(シマノドリンキング) 。ライバルと目された山本和弘(キャノンデール・ジャパン)を1秒の僅差で下して勝利をモノにした。かつてMTBエリートライダーであり、ツール・ド・おきなわ市民200kmクラスでも2度の優勝を飾っている白石だが、新しいイベントで優勝のタイトルを取ることを目標に乗り込んできた。
白石の駆るトレックのオールロードバイク「CHECK POINT」はカーボンフレーム仕様のハイエンドであるSL5。搭載するコンポは(シマノ社員だから)もちろんGRXだ。プロ男子クラス優勝のウィックス同様、DI2仕様のフルコンポで使用する。ギアも細かいギア選択が可能なW仕様だ。タイヤはシュワルベのG-ONEチューブレスタイプを、プロトタイプのようなカーボンホイールに装着する。
「ギア比はフロントWの48/31で、リアは11〜32T。約1対1の軽いローギアで大抵の登りはいけます。やはりシングルよりも汎用性が高いフロントWにしました。ハンドルの角度、下ハンドルを握ってもレバーに指のかかりやすいセッティングを目指しました。リラックスして走るにはいいですね。タイヤの太さは40Cで、未知のコースだったので空気圧は2気圧まで高めて使いました。これはレース途中で空気を足せないこともありますが、結果的にはガレた箇所は無かったのでもうちょっと圧は下げても良かったかなとは思います。グラベルバイクの使い勝手の良さに驚いています」。
Women 20-30優勝 テイヨウフウ サーヴェロ ASPERO DISC
20〜30代女子で優勝したSNS界隈で有名なヒルクライマー、テイヨウフウさんが駆るのはサーヴェロの新型グラベルロード、ASPERO DISC。エアロ&軽量化が徹底されたグラベルバイクの最先端で、発売されて間もないためまだ乗ったことがある人は日本でもごくわずか。
「じつはこのバイクは代理店さんからの借り物で、しっかり走るのは今回で2回め。私のようなグラベル初心者でも乗りやすくて快適な、とてもいいバイクでした」とテイさん。ほぼ貸し出し試乗車の状態で、シマノのGRXのケーブル式コンポによるFシングル仕様。ギア比はフロント40T、リア11〜42T。タイヤにはDONNELY X'PLOR EMP 700×38Cがセットされていた。ホイールはイーストンのEC70AX。
サーヴェロ ASPEROはフロントフォーク先端のエンド部にオフセットを5mm変更できる”トレイルミキサー”という機構が搭載されていて、オンロード/オフロードの設定を変えることができる。もちろん今回はオフロードモードで走った。
「初めてのグラベルロードでしたがブレーキもよく効くし、安心感がありました。踏んでも脚にこない乗り味で、これは欲しくなりますね。ロードともMTBとも別の乗り物です」。
Men 41-50優勝 三上和志(cycleclub3UP)モンドレイカー PODIUM
こちらも激戦区のMen 41-50に優勝した三上和志さん(cycleclub3UP)。埼玉県飯能市のショップ、サイクルハウスミカミの店長であり、奥武蔵MTB友の会の世話人も務める。シクロクロスレースではC1で走り、MTBではENSエンデューロシリーズで活躍するなどオフロード系ライドシーンでは日本を代表する一人。そんな三上さんが駆るのはスペインのブランド、モンドレイカーの29er XCモデル、PODIUMだ。先進的なフレーム設計思想”フォワードジオメトリー”を取り入れたこのモデルは日本のXCシーンでもトップライダーに多く支持を得ている。タイヤはIRCのマッド系タイヤ、STINGO XC29・2.0を使用した。
「完全なXCレーシングバイクですが、いつも地元の里山で遊んでいるバイクです。純XCレースバイクですがドロッパーポストやワイドタイヤを入れて下りを楽しめる味付けにしています。グラベルレースなのでシクロクロスバイクで出場しようかとも思ったんですが、天候が荒れるようだったので安定性を重視してMTBを選びました。SS1の登りの長い区間では2位に甘んじましたが、下りを攻められるこのバイクをチョイスしたおかげでSS2とSS3で挽回、優勝することができました。選んだバイクとタイヤは正解でした」と三上さん。
Men 20-30優勝 野中秀樹(NESTO) NESTO TRAZE PRO
20〜30代男子で優勝した野中秀樹さんは、チーム名の通りNESTOブランドのスポーツバイクをリリースする日本の自転車メーカー、ホダカの社員さん。実業団のE1でロードレース、シクロクロスではC1、そしてMTBではセルフディスカバリー王滝を中心にレースに参戦するマルチ系レーサーだ。今回、野中さんが選んだのは自社の27.5インチクロスカントリーMTBのTRAIZE PROというモデル。ホイールはマヴィックのXAエリート、タイヤはシュワルベのROCKET RON。ごくスタンダードなクロカン系マウンテンバイクだ。
「NESTOの最新作として29er+BOOST採用モデルもリリースしているんですが、今回はコーナーの立ち上がりの素早さなどを重視して27.5を選びました。一番乗り慣れているバイクというのも大きかったです。ほかにNESTOでグラベルロード2種を新発売したので乗るべきか悩んだんですが、最終的には天候を考えたことと、バイクに乗ってきた時間が一番長いモデルを選びました。ほぼSDA王滝仕様なんです。2位の選手とも登りで10秒ほどしか差がついておらず、下りをバイクに助けられ、攻めることができました。荒れたコンディションが得意で、当初の80kmコースを見て王滝と同じ仕様で行こうと決めました。でも登り区間ははグラベルロードのほうが有利でしたね」。
シングルスピード優勝 國井 豊 REW10WORKS
区間合計17分31秒という、年代別クラスなら優勝争いに匹敵する素晴らしいタイムをシングルスピードバイクで叩き出した國井 豊さん。普段のシクロクロスでもシングルギアで各地のレースに参戦している。
そんな國井さんが駆るのは東京・世田谷区上馬のハンドメイド工房「REW10WORKS(リューテン・ワークス)」製のカスタムフレーム。知る人ぞ知る同工房はクロモリフレームに加えて指輪やレザー製アクセサリー、アパレルなど色々な製品をクリエイトしている。個性派ビルダーが手掛けた作品らしく、國井さんのバイクにも随所に凝ったラグワークが伺える。「ラグまで全部削り出しで制作してもらいました。普段はシクロクロスバイクとして乗っているシングルスピードバイクです。ギア比はフロント:34×リア19Tで1.7少々。ギア比はちょうど良かったんですしが、雨だったのでカンティブレーキでは効きが悪く、下りで苦労しました」と笑う。
そのカンチブレーキはブルースゴードン製のクラシックなもの。手組みホイールのリムにはヴェロシティのMAJOR TOMを使用し、タイヤはIRC BOKENチューブレス40Cをセット。「乗り心地がとても良くてグラベルには最高のタイヤです。1.6気圧で使用しました」。
台風で短縮されたコース 本来ならば太めタイヤ装備のグラベルロードに有利
今回のグラインデューロは巨大台風襲来の影響を受けて当初の2ループ総距離80kmコースから大幅に距離が短縮され、29.7km・獲得標高890mの1ループで開催された。難しいセクションや雨でぬかるむとやっかいなゲレンデの急登もカットされ、難易度も大幅に下げられた。
コース設計担当者に伺ったところ、当初の80kmコースのコンセプトについては、コース全体の6〜7割がオフロード(残りは舗装路)。実感的にはグラベルロードに適した路面状況が7割ほど、MTBのほうが適している荒れた区間も一部あり、という設定だったという。当初のコースで、天候が安定していれば、速く走れる正解はどんなバイクだったのだろうか? 担当者は次のようなアドバイスをくれた。
「実質全体の7割ぐらいはグラベルに適しています。そのほかはかなり荒れていたり、ロッキー(岩がち)なところもあります。正直キツイとこもあります。が、アメリカやスコットランドのグラインデューロでも相当荒れている箇所もあります。それらのレースで、欧米のライダーたちは日本人の感覚からすると『これグラベルで行くところじゃないだろう』というところもガンガン行きます。しかもそれでマウンテンバイクより速いのです。グラインデューロは色々なシチュエーションが絡んでくるのが面白いところで、本国でも『いまだに答えが出ないところが面白いよね』などと言われています。
バイクによってそれぞれ走り方に得意なパートと不得意なパートがあり、『どのバイクで走れば自分の不得意分野をカバーしてくれて気持ちよく走れるか』がポイントだと思います。体力が無く下りが得意であれば、グラベルバイクに太めのタイヤを履くのがトータルで一番楽しめるかもしれませんが、下りを楽しむ、あるいは速く走るためにマウンテンバイクで出る、というのもアリだと思います」。
来年こそフルコースで開催して欲しいグラインデューロ・ジャパン。こうした話を来年の出場の際のバイクカスタムの参考にして欲しい。
photo&text:Makoto.AYANO
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