2010/05/03(月) - 04:22
佐々木龍(早稲田大学)が圧倒的にポイント優勢で迎えた最終ストレート。ゴールライン上の一瞬の出来事が明暗を分けた。学生選手権は1年生の元砂勇雪(鹿屋体育大学)が優勝して鹿屋勢4年連続優勝を果たした。
5月2日(日)、滋賀県草津市の立命館大学草津キャンパス構内でワールドサイクルカップ2010春季Ritsクリテリウムが行われた。
会場は大学構内の道路を使う1周2.1kmで、連続するコーナーと緩いアップダウンのあるコース。立命館大学の全面的な協力のもと行われた。
レースは京都府・滋賀県自転車競技連盟が行う「リッツクリテ」と、日本学生自転車競技連盟が行う第12回全日本学生選手権クリテリウム大会が共催。後者は学連の行うクリテリウムの最高峰の大会だ。
C1は世界大学自転車競技選手権覇者のルーテンビークが優勝
リッツクリテのC1は20周42.9kmのレース。序盤から数人が飛び出し、20分後には小嶋洋介(岩井商会GAN WELL RACING)と小渡健悟(ストラーダレーシング)の2名の逃げに。ここへメイン集団から単独抜け出したマライヤ・ファン・ルーテンビーク(オランダ・同志社大学)が合流、3人で逃げ続ける。
終盤、メイン集団からは岡崎陽介と大永剛志(ともにトラクターRC)が抜け出し、その後岡崎のみが単独で追走するがもはや届かない。さらに北京五輪出場のトライアスリート・山本良介(岩井商会GAN WELL RACING)も単独抜け出してゴールへ。先頭の3人のゴール勝負となり、ルーテンビークがこれを制した。ルーテンビークはオランダ出身の同志社大学院生。2006・2008年の世界大学自転車競技選手権のロード個人TTで連覇している強豪で、当日はその実力の片鱗を見せた。
学生選手権 ゴールでのまさかの出来事
学生選手権男子は、予選を勝ち抜いた50名によって行われた。20周42kmで、2周ごとにポイントが上位3人まで付くポイントレース方式だ。
注目どころは昨年まで3年連続して優勝の鹿屋体育大学、佐々木龍・入部正太朗ら擁する早稲田大学、4月の飯山ラウンド優勝の笠原恭輔(中央大学)らだ。
ただし鹿屋はその過去3連覇をした伊藤雅和・内間康平・吉田隼人の3人がツール・ド・コリアにジャパンナショナルチームで遠征のため不在だ。同じく日本大学の越海誠一も不在だ。
スタートから各大学がまとまって走る。序盤のポイントは、鹿屋や中央の作る列車をものともせずに、佐々木が圧倒的な力で1位通過で5点を取っていく。鹿屋は1年生の黒枝士揮が2位通過を続ける。途中で数人単位の落車が続き、鹿屋の高宮正嗣・野口正則・黒枝がこれにかかり結局リタイアとなる。佐々木も落車でニュートラル周回を適用される。
中盤以降も、佐々木がポイントを連取していく。いっぽうで鹿屋は野中竜馬と元砂の2名のみになったため、中盤過ぎてから元砂にポイントを集中させていく。
ゴールポイントは倍点の設定。そのゴールポイントを残した時点では佐々木が22点で1位、元砂が16点、木守望(京都産業大学)が12点。佐々木に圧倒的に有利な状況でゴールを迎える。
佐々木先行でゴールへ向かう集団。その番手から元砂が仕掛けて並んだ瞬間に、優勝を確信した佐々木が両手を挙げるが、横の元砂と接触してバランスを崩し、佐々木が落車。仮に元砂が1着で佐々木が2着でも佐々木の優勝だった。30分ほどして発表されたのは佐々木に対する「最終スプリントにおいて走行レーンを保持しなかったことにより集団最後尾へ降格とする」措置。
これで元砂の優勝が決定、佐々木もそれまでの貯金が効いて2位に。
元砂は1年生ながらも見事4年連続の鹿屋体育大学としての優勝を果たした。
鹿屋は当初予定していたエースの野口をアクシデントで欠いてから黒枝にシフトしたが、その黒枝も欠いて、中盤過ぎにようやく元砂にシフトさせた。元砂は気転を効かせて自分の判断でポイントを狙いにいき、そして最終ゴールは、ラインを越えるまで全力を尽くした執念が実った。「落車がなくとも確実にかわしていたタイミング」と語る読みも1年生とは思えないものだ。大学としては、伊藤・内間・吉田が不在の中で若手中心のメンバーで勝てた意味は大きい。
早稲田の佐々木は入部らのアシストも大きいが、序盤からゴール直前までレースを支配し続けた、ずば抜けた個人の能力を見せ付けた。他大学の列車などまるで問題にせずポイントをとるさまは圧巻。しかし、途中の落車でポイント争いに1回加われず(ニュートラル適用後のポイントに参加できない)にいたことも不運だった。ゴールまでの出来事については「反省しています。これからは絶対にしません」と固く誓った。トラックだけでなく、アップダウンのあるロードまで高い次元で元々こなす能力のある佐々木に、今年は大注目だ。
なお佐々木と元砂は、この2週間前にUAEで行われたアジア選手権のエリート・マディソンで銅メダルを獲得したペアだ。レース後、2人は握手して互いの健闘を称えた。
終わってみれば決勝50人出場でポイントを取ったのはわずかに10人。各大学ともエースへポイントを集中させた結果だ。木守望(京都産業大学)はスピードとスタミナの両方を備えた走りで3位に、中央大学はチームワークの良さが目立ち堀内俊介を4位に導いた。そして1年生の榊原健一(中京大学)はアタックを連発して5位となり、非凡さを見せた。
結果
C1 42.0km
1位 マライヤ・ファン・ルーテンビーク(オランダ・同志社大学)58分28秒35
2位 小渡健悟(ストラーダレーシング)
3位 小嶋洋介(岩井商会GAN WELL RACING)+2秒
4位 岡崎陽介(トラクターRC)+50秒
5位 山本良介(岩井商会GAN WELL RACING)+52秒
6位 辻俊行(Tacurino.net)+54秒
学生選手権男子 42.0km
1位 元砂勇雪(鹿屋体育大学)26点
2位 佐々木龍(早稲田大学)22点
3位 木守望(京都産業大学)18点
4位 堀内俊介(中央大学)14点
5位 榊原健一(中京大学)7点
6位 入部正太朗(早稲田大学)6点
学生女子&登録女子
1位 堀記理子(クラブシルベスト)23分48秒75
2位 福本千佳(Ready Go JAPAN・大阪履正社)
3位・学生1位 近藤美子(鹿屋体育大学)
4位・学生2位 上野みなみ(鹿屋体育大学)
5位・学生3位 木村亜美(鹿屋体育大学)
6位 元砂七夕美(MUUR ZERO)+9秒
photo&text:高木秀彰
5月2日(日)、滋賀県草津市の立命館大学草津キャンパス構内でワールドサイクルカップ2010春季Ritsクリテリウムが行われた。
会場は大学構内の道路を使う1周2.1kmで、連続するコーナーと緩いアップダウンのあるコース。立命館大学の全面的な協力のもと行われた。
レースは京都府・滋賀県自転車競技連盟が行う「リッツクリテ」と、日本学生自転車競技連盟が行う第12回全日本学生選手権クリテリウム大会が共催。後者は学連の行うクリテリウムの最高峰の大会だ。
C1は世界大学自転車競技選手権覇者のルーテンビークが優勝
リッツクリテのC1は20周42.9kmのレース。序盤から数人が飛び出し、20分後には小嶋洋介(岩井商会GAN WELL RACING)と小渡健悟(ストラーダレーシング)の2名の逃げに。ここへメイン集団から単独抜け出したマライヤ・ファン・ルーテンビーク(オランダ・同志社大学)が合流、3人で逃げ続ける。
終盤、メイン集団からは岡崎陽介と大永剛志(ともにトラクターRC)が抜け出し、その後岡崎のみが単独で追走するがもはや届かない。さらに北京五輪出場のトライアスリート・山本良介(岩井商会GAN WELL RACING)も単独抜け出してゴールへ。先頭の3人のゴール勝負となり、ルーテンビークがこれを制した。ルーテンビークはオランダ出身の同志社大学院生。2006・2008年の世界大学自転車競技選手権のロード個人TTで連覇している強豪で、当日はその実力の片鱗を見せた。
学生選手権 ゴールでのまさかの出来事
学生選手権男子は、予選を勝ち抜いた50名によって行われた。20周42kmで、2周ごとにポイントが上位3人まで付くポイントレース方式だ。
注目どころは昨年まで3年連続して優勝の鹿屋体育大学、佐々木龍・入部正太朗ら擁する早稲田大学、4月の飯山ラウンド優勝の笠原恭輔(中央大学)らだ。
ただし鹿屋はその過去3連覇をした伊藤雅和・内間康平・吉田隼人の3人がツール・ド・コリアにジャパンナショナルチームで遠征のため不在だ。同じく日本大学の越海誠一も不在だ。
スタートから各大学がまとまって走る。序盤のポイントは、鹿屋や中央の作る列車をものともせずに、佐々木が圧倒的な力で1位通過で5点を取っていく。鹿屋は1年生の黒枝士揮が2位通過を続ける。途中で数人単位の落車が続き、鹿屋の高宮正嗣・野口正則・黒枝がこれにかかり結局リタイアとなる。佐々木も落車でニュートラル周回を適用される。
中盤以降も、佐々木がポイントを連取していく。いっぽうで鹿屋は野中竜馬と元砂の2名のみになったため、中盤過ぎてから元砂にポイントを集中させていく。
ゴールポイントは倍点の設定。そのゴールポイントを残した時点では佐々木が22点で1位、元砂が16点、木守望(京都産業大学)が12点。佐々木に圧倒的に有利な状況でゴールを迎える。
佐々木先行でゴールへ向かう集団。その番手から元砂が仕掛けて並んだ瞬間に、優勝を確信した佐々木が両手を挙げるが、横の元砂と接触してバランスを崩し、佐々木が落車。仮に元砂が1着で佐々木が2着でも佐々木の優勝だった。30分ほどして発表されたのは佐々木に対する「最終スプリントにおいて走行レーンを保持しなかったことにより集団最後尾へ降格とする」措置。
これで元砂の優勝が決定、佐々木もそれまでの貯金が効いて2位に。
元砂は1年生ながらも見事4年連続の鹿屋体育大学としての優勝を果たした。
鹿屋は当初予定していたエースの野口をアクシデントで欠いてから黒枝にシフトしたが、その黒枝も欠いて、中盤過ぎにようやく元砂にシフトさせた。元砂は気転を効かせて自分の判断でポイントを狙いにいき、そして最終ゴールは、ラインを越えるまで全力を尽くした執念が実った。「落車がなくとも確実にかわしていたタイミング」と語る読みも1年生とは思えないものだ。大学としては、伊藤・内間・吉田が不在の中で若手中心のメンバーで勝てた意味は大きい。
早稲田の佐々木は入部らのアシストも大きいが、序盤からゴール直前までレースを支配し続けた、ずば抜けた個人の能力を見せ付けた。他大学の列車などまるで問題にせずポイントをとるさまは圧巻。しかし、途中の落車でポイント争いに1回加われず(ニュートラル適用後のポイントに参加できない)にいたことも不運だった。ゴールまでの出来事については「反省しています。これからは絶対にしません」と固く誓った。トラックだけでなく、アップダウンのあるロードまで高い次元で元々こなす能力のある佐々木に、今年は大注目だ。
なお佐々木と元砂は、この2週間前にUAEで行われたアジア選手権のエリート・マディソンで銅メダルを獲得したペアだ。レース後、2人は握手して互いの健闘を称えた。
終わってみれば決勝50人出場でポイントを取ったのはわずかに10人。各大学ともエースへポイントを集中させた結果だ。木守望(京都産業大学)はスピードとスタミナの両方を備えた走りで3位に、中央大学はチームワークの良さが目立ち堀内俊介を4位に導いた。そして1年生の榊原健一(中京大学)はアタックを連発して5位となり、非凡さを見せた。
結果
C1 42.0km
1位 マライヤ・ファン・ルーテンビーク(オランダ・同志社大学)58分28秒35
2位 小渡健悟(ストラーダレーシング)
3位 小嶋洋介(岩井商会GAN WELL RACING)+2秒
4位 岡崎陽介(トラクターRC)+50秒
5位 山本良介(岩井商会GAN WELL RACING)+52秒
6位 辻俊行(Tacurino.net)+54秒
学生選手権男子 42.0km
1位 元砂勇雪(鹿屋体育大学)26点
2位 佐々木龍(早稲田大学)22点
3位 木守望(京都産業大学)18点
4位 堀内俊介(中央大学)14点
5位 榊原健一(中京大学)7点
6位 入部正太朗(早稲田大学)6点
学生女子&登録女子
1位 堀記理子(クラブシルベスト)23分48秒75
2位 福本千佳(Ready Go JAPAN・大阪履正社)
3位・学生1位 近藤美子(鹿屋体育大学)
4位・学生2位 上野みなみ(鹿屋体育大学)
5位・学生3位 木村亜美(鹿屋体育大学)
6位 元砂七夕美(MUUR ZERO)+9秒
photo&text:高木秀彰
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