今シーズンのワールドカップに実戦投入され、大きな注目を集めてきたトレックの新型MTBが遂にベールを脱ぐ。その名は「Supercaliber」。フレームと一体化した60mmストロークのリアサスシステム「IsoStrut」を投入した、全く新しいフルサスXCレーシングバイクだ。イタリアの発表会に出席した編集部の磯部がレポートする。
トレックの新型フルサスXCレーシングバイク、Supercaliberがデビューを飾った photo:So.Isobe
トレックのMTBファンであるならば、ストローク量の増加によってトレイルバイク寄りに進化したTop Fuel(トップフューエル)を見て一つの疑問が頭を過ぎるはず。「それなら、ピュアなフルサスXCレーシングバイクはどこへ?」。
その答えこそ、ヨランダ・ネフ(スイス)らが今シーズン途中からワールドカップに投入して話題を呼び、先日の世界選手権で銀メダル獲得に貢献した新型バイク「Supercaliber(スーパーキャリバー)」。100mmストロークのハードテールバイク「Procaliber(プロキャリバー)」と、先述した前後120mmの新型Top Fuelの中間に位置する、全く新しい新ジャンルのピュアレーシングバイクだ。
ワールドカップでSupercaliberを走らせるヨランダ・ネフ(スイス)。IsoStrutに目隠しをした状態で走り注目を集めた (c)トレック・ジャパン
イタリアのグローバルプレスローンチで詳細が語られたSupercaliber photo:So.Isobe
年々激しさを増すクロスカントリーレースにおいてフルサスペンションバイクは非常に有効だが、コースによっては軽さや剛性を優先してハードテールバイクが選ばれることもまた事実。そこでトレックは4年にも及ぶ研究期間を経て、フォックスと共にフレームに組む込んだリアショック「IsoStrut(アイソストラット)」を開発。前100mm/後60mmトラベルという既存のハードテールとフルサスペンションの中間に当たるSupercaliberを生み出した。
60mmトラベルのIsoStrut。トップチューブに組み込まれたショックアブソーバーを、ピボットレスで直接繋がるシートステーが押す機構だ photo:So.Isobe
IsoStrutの内部構造を見る。歪みを防ぐ工夫が各所にもたらされている photo:So.Isobe
シートステー内部には強度を増すための硬質ウレタンが封入されている photo:So.Isobe
フロントサスペンションは100mm。キャパシティは120mmだ photo:So.Isobe
メインピボットを前側に位置させることでペダリング効率を高める photo:So.Isobe
極細のシートステー。もちろん強度的な問題は一切ない photo:So.Isobe
幻の性能を実現したとして、「ユニコーン的存在」と、イタリアで開催されたグローバルプレゼンテーションで紹介されたSupercaliberのフレーム重量は、サスペンションとハードウェア込みで僅か1950g。IsoStrutはトップチューブに組み込まれたショックアブソーバーを、ピボットレスで直接繋がるシートステーが押すという特徴的な構造を持つ。ショックにはそれ自体の歪みを抑えるブッシュと、ショックの回転を防ぐ「アンチローテーショナルショックピン」が内蔵されているため、ストロークした際にもストラット部分がほとんど歪まない。完全なロックアウトを実現していることや、ボトルを2本装備できることもレースバイクとして大きなメリットだ。
会場に試乗車こそ用意されなかったが、開発者によれば、走行フィーリングは「ハードテールとほぼ共通のリジット感」であり、例えばヨランダ・ネフは実際のレース時に一切ロックアウトを使わないほど自然な乗り味だという。メンテナンスもアフターサービスに定評のある通常のフォックスのサービスキットを使うため安心感がある。
いかなるコンポーネントにも対応する「Control Freak」システムを採用する photo:So.Isobe
ヘッドチューブアングルとシートチューブアングル、そしてリーチ量はProcaliberとTop Fuelの中間値 photo:So.Isobe
直線と曲線を組み合わせたトップチューブ。ステルス機のような無骨なルックスだ photo:So.Isobe
フォーククラウンとダウンチューブの接触を防ぐKnock Blockを採用し、ダウンチューブを直線的にデザインすることで剛性強化を図っている photo:So.Isobe
非常に細身のリアバック。チェーンステー長をProcaliberよりも5mm短くすることで反応性を高めた photo:So.Isobe
XCレースで勝つことを至上命題としたピュアレーシングマシンだけに、スモールサイズも含めてホイールは29インチで統一され、かつシートステーのしなりを利用する上でフレームはカーボンのみ。完成車では全モデルがボントレガーのカーボンホイールを搭載するなど走りを極めたセットアップが特徴だ。
ジオメトリー的な工夫も行われており、例えばチェーンステー長はProcaliberよりも5mm短い430mmで反応性を狙う。ヘッドチューブアングルとシートチューブアングル、そしてリーチ量はProcaliberとTop Fuelの中間値に落ち着いている。
ハンドルが一定角度以上に切れてしまい、フォーククラウンやハンドルなどがフレームにヒットすることを防ぐために採用されるのがヘッドパーツに内蔵されたKnock Blockテクノロジー。この技術を採用することで、ヘッドチューブ側の逃がしをなくし直線的なデザインを可能にした”Straight Shotダウンチューブ”によってより高い剛性と軽量化を実現している。新型FUEL EXなどと同じくどんなコンポーネントにも対応する「Control Freak」も採用している。
日本国内で展開されるのは、完成車が3種類。税抜き53.9万円の「9.7」と、60.8万円の「9.8」、そして105万円の最上級モデル「9.9」。いずれもS、M、ML、Lの4サイズ展開で、自分だけの一台をオーダーできる「プロジェクトワン」にも対応予定(12月を予定しているという)だ。
Supercaliber 9.7(税抜き53.9万円) (c)トレック・ジャパン
Supercaliber 9.8(税抜き60.8万円) (c)トレック・ジャパン
Supercaliber 9.9(税抜き105万円) (c)トレック・ジャパン
トレック Supercaliber 完成車価格
Supercaliber 9.7(スラム NX Eagle完成車):税抜き53.9万円
Supercaliber 9.8(スラム GX Eagle完成車):税抜き60.8万円
Supercaliber 9.9(スラム XX1 Eagle完成車):税抜き105万円
text:So.Isobe

トレックのMTBファンであるならば、ストローク量の増加によってトレイルバイク寄りに進化したTop Fuel(トップフューエル)を見て一つの疑問が頭を過ぎるはず。「それなら、ピュアなフルサスXCレーシングバイクはどこへ?」。
その答えこそ、ヨランダ・ネフ(スイス)らが今シーズン途中からワールドカップに投入して話題を呼び、先日の世界選手権で銀メダル獲得に貢献した新型バイク「Supercaliber(スーパーキャリバー)」。100mmストロークのハードテールバイク「Procaliber(プロキャリバー)」と、先述した前後120mmの新型Top Fuelの中間に位置する、全く新しい新ジャンルのピュアレーシングバイクだ。


年々激しさを増すクロスカントリーレースにおいてフルサスペンションバイクは非常に有効だが、コースによっては軽さや剛性を優先してハードテールバイクが選ばれることもまた事実。そこでトレックは4年にも及ぶ研究期間を経て、フォックスと共にフレームに組む込んだリアショック「IsoStrut(アイソストラット)」を開発。前100mm/後60mmトラベルという既存のハードテールとフルサスペンションの中間に当たるSupercaliberを生み出した。






幻の性能を実現したとして、「ユニコーン的存在」と、イタリアで開催されたグローバルプレゼンテーションで紹介されたSupercaliberのフレーム重量は、サスペンションとハードウェア込みで僅か1950g。IsoStrutはトップチューブに組み込まれたショックアブソーバーを、ピボットレスで直接繋がるシートステーが押すという特徴的な構造を持つ。ショックにはそれ自体の歪みを抑えるブッシュと、ショックの回転を防ぐ「アンチローテーショナルショックピン」が内蔵されているため、ストロークした際にもストラット部分がほとんど歪まない。完全なロックアウトを実現していることや、ボトルを2本装備できることもレースバイクとして大きなメリットだ。
会場に試乗車こそ用意されなかったが、開発者によれば、走行フィーリングは「ハードテールとほぼ共通のリジット感」であり、例えばヨランダ・ネフは実際のレース時に一切ロックアウトを使わないほど自然な乗り味だという。メンテナンスもアフターサービスに定評のある通常のフォックスのサービスキットを使うため安心感がある。





XCレースで勝つことを至上命題としたピュアレーシングマシンだけに、スモールサイズも含めてホイールは29インチで統一され、かつシートステーのしなりを利用する上でフレームはカーボンのみ。完成車では全モデルがボントレガーのカーボンホイールを搭載するなど走りを極めたセットアップが特徴だ。
ジオメトリー的な工夫も行われており、例えばチェーンステー長はProcaliberよりも5mm短い430mmで反応性を狙う。ヘッドチューブアングルとシートチューブアングル、そしてリーチ量はProcaliberとTop Fuelの中間値に落ち着いている。
ハンドルが一定角度以上に切れてしまい、フォーククラウンやハンドルなどがフレームにヒットすることを防ぐために採用されるのがヘッドパーツに内蔵されたKnock Blockテクノロジー。この技術を採用することで、ヘッドチューブ側の逃がしをなくし直線的なデザインを可能にした”Straight Shotダウンチューブ”によってより高い剛性と軽量化を実現している。新型FUEL EXなどと同じくどんなコンポーネントにも対応する「Control Freak」も採用している。
日本国内で展開されるのは、完成車が3種類。税抜き53.9万円の「9.7」と、60.8万円の「9.8」、そして105万円の最上級モデル「9.9」。いずれもS、M、ML、Lの4サイズ展開で、自分だけの一台をオーダーできる「プロジェクトワン」にも対応予定(12月を予定しているという)だ。



トレック Supercaliber 完成車価格
Supercaliber 9.7(スラム NX Eagle完成車):税抜き53.9万円
Supercaliber 9.8(スラム GX Eagle完成車):税抜き60.8万円
Supercaliber 9.9(スラム XX1 Eagle完成車):税抜き105万円
text:So.Isobe
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