北欧ノルウェーを舞台にした「アークティック・レース・オブ・ノルウェー」が開幕。中盤に31名の逃げが決まり、その中に入ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)がスプリント勝利。リーダージャージに袖を通した。



スタート前に笑顔を見せるマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)スタート前に笑顔を見せるマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos現ノルウェー王者のアムントグレンダール・ヤンセン(ユンボ・ヴィズマ)現ノルウェー王者のアムントグレンダール・ヤンセン(ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos

ノルウェーらしいフィヨルドの海岸線を駆け抜けていく。レース開始後3時間の平均時速は50km/hを超えたノルウェーらしいフィヨルドの海岸線を駆け抜けていく。レース開始後3時間の平均時速は50km/hを超えた (c)CorVos
UCIのHC(超級)にカテゴライズされるアークティック・レース・オブ・ノルウェーは、北欧ノルウェーを舞台にした4日間のステージレース。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が主催し、その名の通りアークティック、つまり北極圏に踏み込む唯一のビッグレースだ。

2017年の世界選手権開催地となったノルウェーは、伝統的に屈強な選手を多く輩出している地。アレクサンドル・クリストフ(UAEチームエミレーツ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)らの出場はないものの、現ノルウェー王者アムントグレンダール・ヤンセン(ユンボ・ヴィズマ)やマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)など北欧系選手が参戦するほか、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)やアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)、ツールを総合10位で終えたワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)、そして先週末のMTBワールドカップで母国レースのニノ・シューター(スイス)を下し、アムステル・ゴールドレース以来4カ月ぶりにロードレース復帰するマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)らが顔を揃えた。

総合争いは平均勾配10%を超える超級山岳フィニッシュが用意される第3ステージ。その他はスプリンター向けだが、第1と第4ステージはアタッカー有利のアップダウンが組み込まれているのがミソ。フィヨルドや森林北限、雪を残したままの山岳地帯など、このレースでしか見られない美しい景観も特徴だ。

序盤のアタック合戦に加わるアムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィズマ)序盤のアタック合戦に加わるアムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos現役続行中のステイン・デヴォルデル(ベルギー、コレンドン・サーカス)現役続行中のステイン・デヴォルデル(ベルギー、コレンドン・サーカス) (c)CorVos

中盤、ほとんどの有力勢が入った31名の逃げグループが形成される中盤、ほとんどの有力勢が入った31名の逃げグループが形成される (c)CorVos
たった一文字の街「Å(オー)」からノルウェー海に浮かぶロフォーテン諸島の島々を渡り、海と山と湖の街レクネスにフィニッシュする開幕ステージは、序盤とフィニッシュ前20kmに同じ2級山岳(距離1.7km/平均5.6%)が組み込まれた181kmコース。この日は序盤から激しくレースが動いた。

逃げ狙いのアタックは一向に決まらず、ボーナスタイムが賭けられた中間スプリントではノルウェー王者ヤンセンが先頭通過を果たす。約70kmを消化した段階でスティーヴン・カミングス(イギリス、ディメンションデータ)の加速をきっかけに生まれたのは31名の巨大なエスケープ。この中にはルツェンコ、バルギル、ザカリン、バルギル、ファンデルポール、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)らほとんどの有力勢が入った。

メイン集団はエーススプリンターのブライアン・コカール(フランス)を送り損ねたヴィタルコンセプトやノルウェーのU23チームが牽引するも、先頭との差は広がるばかり。逃げきりを決めた先頭グループでは、山岳ポイントでカミングスが、中間スプリントでルツェンコが先着してそれぞれポイントとボーナスタイムを稼いだ。

圧倒的なスプリントでダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)を下したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)圧倒的なスプリントでダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)を下したマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
残り10kmを切ると度重なるアタックでクミングスが独走に持ち込んだ。得意パターンで勢いよく先行するクミングスだったが、リードアウト要員を使い潰しながら懸命に追走するユンボ・ヴィズマと、残り1kmを切って現れたマグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ)の牽引によって射程圏内に。残り250mから爆発的な加速を見せたファンデルポールがクミングスを追い抜き、追従を試みたダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)を一切寄せ付けずに先着。平均時速48.20km/hという高速サバイバルレースを締めくくった。

「すごく厳しいレースだった。3時間を経過した時点でコンピューターの平均時速表示が50km/hを超えていて信じられない気持ちだった。1日中キツい展開だったけどこんなタイプのレースは自分向き。最後はロットがクミングスを捕まえられるかどうかの賭けで、ラスト7〜8kmは難しい展開だったものの、自分としてはスプリントで勝負することを決めていたんだ。他に選択肢も多くはなかったし、タイミングを待って自分のスプリントを完璧にこなそうとしたんだ」と語るファンデルポール。総合成績とポイント賞、更にはヤングライダー賞で首位に立っており、ロード復帰戦で今一度その才能を見せつけることとなった。

総合とヤングライダー、ポイント賞で首位に立ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)総合とヤングライダー、ポイント賞で首位に立ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
アークティック・レース・オブ・ノルウェー2019第1ステージ結果
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 3:45:14
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
3位 アンドレア・パスクァロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
4位 ベンジャミン・デクレルク(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
5位 クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー)
6位 ヨルディ・ワルロップ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
7位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ディメンションデータ)
8位 マークス・ホーエルガード(ノルウェー、ウノX・ノルウェージャンデヴェロップメント)
9位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)
10位 フランク・ボナモー(フランス、アルケア・サムシック)
個人総合成績
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 3:45:04
2位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) 0:03
3位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 0:04
4位 アンドレア・パスクァロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール) 0:05
5位 マークス・ホーエルガード(ノルウェー、ウノX・ノルウェージャンデヴェロップメント) 0:06
6位 アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィズマ) 0:07
7位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、アスタナ) 0:08
8位 クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー) 0:039
9位 ベンジャミン・デクレルク(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) 0:10
10位 ヨルディ・ワルロップ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
ポイント賞
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 15pts
2位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 12pts
3位 アンドレア・パスクァロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール) 10pts
山岳賞
1位 スティーヴン・カミングス(イギリス、ディメンションデータ) 9pts
2位 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) 2pts
3位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー) 2pts
ヤングライダー賞
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 3:45:04
2位 マークス・ホーエルガード(ノルウェー、ウノX・ノルウェージャンデヴェロップメント) 0:06
3位 アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィズマ) 0:07
チーム総合成績
1位 スポートフラーンデレン・バロワーズ 11:15:42
2位 ユンボ・ヴィズマ
3位 リワル・レディーネス
text:So.Isobe
photo:CorVos

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