2019/07/03(水) - 10:00
アメリカ・カリフォルニアに拠点を構えるマウンテンバイク専業ブランドのサンタクルズより、アルミハードテール「CHAMELEON」をインプレッション。29er、27.5+のタイヤサイズ、チェーンステー長を調節し、バイクのキャラクターを変えることのできる遊び系MTBの実力に迫る。
マウンテンバイクと一口に言っても遊び方は千差万別。短時間で高強度のレースを繰り広げるクロスカントリー、崖を駆け下りてしまうダウンヒル、計測区間のダウンヒルとスタート地点まで自力でペダルアップする区間が連続するエンデューロ、驚くような技を披露するトライアルなど競技だけでも種類は豊富にある。
シャカリキに結果を追い求めるレースだけではなく、自由気ままに遊ぶことができるのがマウンテンバイクだ。北米を中心にグラベルロードが流行っているのと同時にMTBでラフにトレイル遊びを楽しむ層が増えているのだという。バイクパッキングで長期間のキャンプツーリングに出かけるのも1つの楽しみ方だ。
遊び系マウンテンバイクのトレンドの1つとして、寝ているヘッドアングルのハードテールフレームが各社よりリリースされている。特にアルミ製フレームが注目を浴びており、ハードユースに耐えられるフレームであり、トレイルで下りを楽しめるバイクというのがこのトレンドの要素。気軽にマウンテンバイクを楽しめることで、多くのサイクリストにメリットが有るトレンドだ。
今回紹介するサンタクルズのCHAMELEONもその1つ。1993年に立ち上げられたマウンテンバイク専業ブランドはダウンヒルバイクを中心に開発を進めており、サンタクルズ・シンジゲートという世界的に知名度が高いチームをサポート。エンデューロチームも持っているため、下りをアグレッシブに攻めるバイク作りに関しては十分ノウハウを持っていることは想像に難くない。
まずCHAMELEONにはカーボンとアルミの2種類が用意されそれぞれに29erと27.5+という設定がある。ジオメトリーは各バイクで微調整が行われているが、肝となる各部の角度や長さは統一されているため、バイクのキャラクターは似たものに作られているはずだ。今回インプレッションを行ったのは、アルミの27.5+仕様。
さて、CHAMELEONの詳細を紹介していこう。寝たヘッドアングルはトレンドの1つとも説明した通り、CHAMELEONでは67.2°に設定されている。XC系ハードテールHIGHBALLが69.5°、XC系フルサスTALLBOYが68°、オールマウンテン系フルサスHIGHTOWERが67°、エンデューロ向けMEGATOWERが65°、ダウンヒルバイクV10が63.7°と各タイプのバイクと比較してみるとCHAMELEONがどこに位置づけられるのかわかるはずだ。
マウンテンバイクはサスペンションのトラベル量でも走るシチュエーションを分けることができる。クロスカントリーの場合は100mmや110mmが主力であり、エンデューロレースやオールマウンテン系は150mm以上が使われ、ダウンヒルは200mmにまで到達している。
そんな中CHAMELEONは120mmトラベルという設定が採用されている。クロスカントリーよりも若干サスの移動量が大きく、下りでのパフォーマンスだけに注力しない中間という位置づけだ。120mmはショートストロークではカバーしきれないセクションが現れるクロスカントリーレースでも使われるが、トレイルライドに最適なトラベル量と言うことができるだろう。
ジオメトリー、搭載サスのトラベル量、27.5+というタイヤの選択肢を考慮するとCHAMELEONは、上りのダッシュで順位が変わってしまうクロスカントリーレースや、下りでアグレッシブに攻めるオールマウンテンの中間に位置している。トレイルの下りとペダルアップする舗装路を組み合わせるライドなどにマッチするだろう。
また、CHAMELEONという名前がつけられていることにも理由がある。先述したタイヤ径/幅が選択できる加え、リアエンド(チェーンステー長)を15mm調節することが可能。タイヤサイズや走るシチュエーションによってバイクの性格を変えることができる、まるでカメレオンのようなバイクとなっているのだ。
変幻自在のアルミハードテールCHAMELEONをライズライドの鈴木祐一店長がインプレッション。MTBに精通した鈴木さんはこのバイクをどう見るのか。販売はフレームと2種類の完成車で行われている。
― インプレッション
「遊びの幅広く、ビギナーから上級者まで楽しめる素晴らしいバイク」鈴木祐一(ライズライド)
遊びの幅広く、ビギナーから上級者まで楽しめる懐の深さがある素晴らしいバイクですよ。いわゆる下り系のパークライドは楽しめるだろうし、クロスカントリー的な上りもある里山ライドでもカバーしてくれる。マウンテンバイクでの遊び方をよく知っているブランドが作ったマルチなバイクという印象がありますね。
CHAMELEONは名前の通りバイクが変化することが特徴で、ホイールサイズを29erから27.5に変更して自転車のキャラクターを変えられるんですよ。ホイールだけではなくリアエンドもそれぞれのホイールサイズによって入れ替えるので、29erと27.5+どちらを選択しても最適なジオメトリーで乗ることができる。そこまで計算して開発されているのが非常に素晴らしい。
タイヤを29erの2.2インチから27.5の3インチ級のものに変えるだけで、サスのストローク量が増えたような感覚を得られるんですよ。このバイクは元々120mmストロークの設定で、セミファットにすることで150mmぐらいのストローク感になってくれます。そもそもの120mmトラベルが、クロスカントリー用の100mmではストローク量が不足する下りのシチュエーションをカバーしてくれますが、セミファットのタイヤを使うことで更に広い幅に対応してくれる。その懐の深さがCHAMELEONという名を表していると感じます。
ジオメトリーも今のマウンテンバイクのスタンダードを抑えていますよね。最近はウイリーやマニュアルでフロントホイールを簡単に上げられるほどリアセンターを短く設計し、走りの俊敏性やターンの素早さを生み出すようなバイクが流行り。それでいて長めのトップチューブや寝かせたヘッドアングルなどの、ハンドリングが落ち着きコントロールしやすいジオメトリーは、ほとんどのメーカーが採用してきていてCHAMELEONでも合わせてきています。下りが面白く感じられるのはジオメトリーから生み出される走行感なのでしょう。
このバイクは上級者がMTBライドを楽しめるクイック感、ビギナーもカバーできる安定感も持ち合わせていて、乗る人によって特徴が変わりるので、まさにカメレオンのよう。今はMTBの遊び方やスタイルが細分化され、それぞれに専用バイクが用意されていて、初心者には落とし所を見つけにくいはずです。そんな中で幅広く遊べるCHAMELEONは選びやすいでしょう。
ハードテールという点もポイントです。フルサスはフルサスの面白さがありますが、ハードテールにもハードテールならではのダイレクト感があるので、パークでのライドは楽しいものになるでしょうし、クロスカントリー的な上りも含めた里山ライドにもマッチします。
自分だったら里山を舗装路で繋ぎながら長距離を走って半日や1日中遊び倒したい。長い距離を走ると言っても遠くまで足を運ぶことを突き詰める走り方ではなく、途中で息抜きのように遊びながら走りたいですね。サンタクルズは遊び方を熟知しているブランドで性能もバッチリ、かっこいいイメージもあるし、誰が選んでも良い懐の深い一台でした。
サンタクルズ CHAMELEON
フレーム(アルミ):108,000円(税抜)
サンタクルズ CHAMELEON-D
フォーク:RockShox Recon RL
ドライブトレイン:SRAM NX
クランクセット:Race Face Ride、30T
カセット:SRAM PG1130 11-42T
ブレーキ:SRAM Level
リム:WTB ST i25 TCS 2.0 29″ Rims
タイヤ:Maxxis Minion 29×2.3 DHF(フロント)、Maxxis Crossmark 29×2.1(リア)
価格:253,000円(税抜)
サンタクルズ CHAMELEON-R
フォーク:FOX Rhythm 34, 29″
ドライブトレイン:SRAM NX Eagle
クランクセット:SRAM NX Eagle 148 DUB, 30T
カセット:SRAM PG1230 11-50T
ブレーキ:SRAM Level T
リム:WTB ST i25 TCS 2.0 29″ Rims
タイヤ:Maxxis Minion 29×2.3 DHF(フロント)、Maxxis Crossmark II 29X2.25(リア)
価格:346,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
マウンテンバイクと一口に言っても遊び方は千差万別。短時間で高強度のレースを繰り広げるクロスカントリー、崖を駆け下りてしまうダウンヒル、計測区間のダウンヒルとスタート地点まで自力でペダルアップする区間が連続するエンデューロ、驚くような技を披露するトライアルなど競技だけでも種類は豊富にある。
シャカリキに結果を追い求めるレースだけではなく、自由気ままに遊ぶことができるのがマウンテンバイクだ。北米を中心にグラベルロードが流行っているのと同時にMTBでラフにトレイル遊びを楽しむ層が増えているのだという。バイクパッキングで長期間のキャンプツーリングに出かけるのも1つの楽しみ方だ。
遊び系マウンテンバイクのトレンドの1つとして、寝ているヘッドアングルのハードテールフレームが各社よりリリースされている。特にアルミ製フレームが注目を浴びており、ハードユースに耐えられるフレームであり、トレイルで下りを楽しめるバイクというのがこのトレンドの要素。気軽にマウンテンバイクを楽しめることで、多くのサイクリストにメリットが有るトレンドだ。
今回紹介するサンタクルズのCHAMELEONもその1つ。1993年に立ち上げられたマウンテンバイク専業ブランドはダウンヒルバイクを中心に開発を進めており、サンタクルズ・シンジゲートという世界的に知名度が高いチームをサポート。エンデューロチームも持っているため、下りをアグレッシブに攻めるバイク作りに関しては十分ノウハウを持っていることは想像に難くない。
まずCHAMELEONにはカーボンとアルミの2種類が用意されそれぞれに29erと27.5+という設定がある。ジオメトリーは各バイクで微調整が行われているが、肝となる各部の角度や長さは統一されているため、バイクのキャラクターは似たものに作られているはずだ。今回インプレッションを行ったのは、アルミの27.5+仕様。
さて、CHAMELEONの詳細を紹介していこう。寝たヘッドアングルはトレンドの1つとも説明した通り、CHAMELEONでは67.2°に設定されている。XC系ハードテールHIGHBALLが69.5°、XC系フルサスTALLBOYが68°、オールマウンテン系フルサスHIGHTOWERが67°、エンデューロ向けMEGATOWERが65°、ダウンヒルバイクV10が63.7°と各タイプのバイクと比較してみるとCHAMELEONがどこに位置づけられるのかわかるはずだ。
マウンテンバイクはサスペンションのトラベル量でも走るシチュエーションを分けることができる。クロスカントリーの場合は100mmや110mmが主力であり、エンデューロレースやオールマウンテン系は150mm以上が使われ、ダウンヒルは200mmにまで到達している。
そんな中CHAMELEONは120mmトラベルという設定が採用されている。クロスカントリーよりも若干サスの移動量が大きく、下りでのパフォーマンスだけに注力しない中間という位置づけだ。120mmはショートストロークではカバーしきれないセクションが現れるクロスカントリーレースでも使われるが、トレイルライドに最適なトラベル量と言うことができるだろう。
ジオメトリー、搭載サスのトラベル量、27.5+というタイヤの選択肢を考慮するとCHAMELEONは、上りのダッシュで順位が変わってしまうクロスカントリーレースや、下りでアグレッシブに攻めるオールマウンテンの中間に位置している。トレイルの下りとペダルアップする舗装路を組み合わせるライドなどにマッチするだろう。
また、CHAMELEONという名前がつけられていることにも理由がある。先述したタイヤ径/幅が選択できる加え、リアエンド(チェーンステー長)を15mm調節することが可能。タイヤサイズや走るシチュエーションによってバイクの性格を変えることができる、まるでカメレオンのようなバイクとなっているのだ。
変幻自在のアルミハードテールCHAMELEONをライズライドの鈴木祐一店長がインプレッション。MTBに精通した鈴木さんはこのバイクをどう見るのか。販売はフレームと2種類の完成車で行われている。
― インプレッション
「遊びの幅広く、ビギナーから上級者まで楽しめる素晴らしいバイク」鈴木祐一(ライズライド)
遊びの幅広く、ビギナーから上級者まで楽しめる懐の深さがある素晴らしいバイクですよ。いわゆる下り系のパークライドは楽しめるだろうし、クロスカントリー的な上りもある里山ライドでもカバーしてくれる。マウンテンバイクでの遊び方をよく知っているブランドが作ったマルチなバイクという印象がありますね。
CHAMELEONは名前の通りバイクが変化することが特徴で、ホイールサイズを29erから27.5に変更して自転車のキャラクターを変えられるんですよ。ホイールだけではなくリアエンドもそれぞれのホイールサイズによって入れ替えるので、29erと27.5+どちらを選択しても最適なジオメトリーで乗ることができる。そこまで計算して開発されているのが非常に素晴らしい。
タイヤを29erの2.2インチから27.5の3インチ級のものに変えるだけで、サスのストローク量が増えたような感覚を得られるんですよ。このバイクは元々120mmストロークの設定で、セミファットにすることで150mmぐらいのストローク感になってくれます。そもそもの120mmトラベルが、クロスカントリー用の100mmではストローク量が不足する下りのシチュエーションをカバーしてくれますが、セミファットのタイヤを使うことで更に広い幅に対応してくれる。その懐の深さがCHAMELEONという名を表していると感じます。
ジオメトリーも今のマウンテンバイクのスタンダードを抑えていますよね。最近はウイリーやマニュアルでフロントホイールを簡単に上げられるほどリアセンターを短く設計し、走りの俊敏性やターンの素早さを生み出すようなバイクが流行り。それでいて長めのトップチューブや寝かせたヘッドアングルなどの、ハンドリングが落ち着きコントロールしやすいジオメトリーは、ほとんどのメーカーが採用してきていてCHAMELEONでも合わせてきています。下りが面白く感じられるのはジオメトリーから生み出される走行感なのでしょう。
このバイクは上級者がMTBライドを楽しめるクイック感、ビギナーもカバーできる安定感も持ち合わせていて、乗る人によって特徴が変わりるので、まさにカメレオンのよう。今はMTBの遊び方やスタイルが細分化され、それぞれに専用バイクが用意されていて、初心者には落とし所を見つけにくいはずです。そんな中で幅広く遊べるCHAMELEONは選びやすいでしょう。
ハードテールという点もポイントです。フルサスはフルサスの面白さがありますが、ハードテールにもハードテールならではのダイレクト感があるので、パークでのライドは楽しいものになるでしょうし、クロスカントリー的な上りも含めた里山ライドにもマッチします。
自分だったら里山を舗装路で繋ぎながら長距離を走って半日や1日中遊び倒したい。長い距離を走ると言っても遠くまで足を運ぶことを突き詰める走り方ではなく、途中で息抜きのように遊びながら走りたいですね。サンタクルズは遊び方を熟知しているブランドで性能もバッチリ、かっこいいイメージもあるし、誰が選んでも良い懐の深い一台でした。
サンタクルズ CHAMELEON
フレーム(アルミ):108,000円(税抜)
サンタクルズ CHAMELEON-D
フォーク:RockShox Recon RL
ドライブトレイン:SRAM NX
クランクセット:Race Face Ride、30T
カセット:SRAM PG1130 11-42T
ブレーキ:SRAM Level
リム:WTB ST i25 TCS 2.0 29″ Rims
タイヤ:Maxxis Minion 29×2.3 DHF(フロント)、Maxxis Crossmark 29×2.1(リア)
価格:253,000円(税抜)
サンタクルズ CHAMELEON-R
フォーク:FOX Rhythm 34, 29″
ドライブトレイン:SRAM NX Eagle
クランクセット:SRAM NX Eagle 148 DUB, 30T
カセット:SRAM PG1230 11-50T
ブレーキ:SRAM Level T
リム:WTB ST i25 TCS 2.0 29″ Rims
タイヤ:Maxxis Minion 29×2.3 DHF(フロント)、Maxxis Crossmark II 29X2.25(リア)
価格:346,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto.AYANO
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