1級山岳フルームサーベルクの山頂フィニッシュが設定されたツール・ド・スイス第6ステージで、逃げグループから飛び出したアントワン・トールク(ユンボ・ヴィズマ)がプロ初勝利。メイン集団のライバルたちをふるい落として2位に入ったエガン・ベルナル(チームイネオス)が首位に立った。


ツール・ド・スイス2019第6ステージツール・ド・スイス2019第6ステージ photo:Tour de Suisse
ついに始まったツール・ド・スイスの山岳決戦。前日のフィニッシュ地点アインジーデルンからスイス東部の山岳地帯を目指し、隣国リヒテンシュタインとの国境をかすめながら1級山岳フルームサーベルク(距離8.4km/平均9.2%)へ。獲得標高差1,900mの120.2km短距離コースに140名の選手たちが挑んだ。

総合変動必至のこの山岳ステージで、24名という巨大な逃げ集団が25km地点から先行を開始した。ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ネイサン・ハース(オーストラリア、カチューシャ・アルペシン)、フランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール)らを含むこの逃げ集団は、メイン集団から最大4分30秒のリードを奪うことに成功する。

メイン集団とのタイム差をキープしながら中盤の3級山岳ウィルトハウス(距離3.5km/平均5.1%)を越えた逃げ集団。コース誘導ミスによってマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)とコリン・ジョイス(アメリカ、ラリーUHCサイクリング)、山岳賞ジャージを着るクラウディオ・インホフ(スイス、スイスナショナルチーム)の3名が先行するシーンも見られたが、最後の1級山岳フルームサーベルクに差し掛かる頃までに逃げ集団は一つに。

EFエデュケーションファーストが長時間牽引し、終盤にかけて前日のステージ優勝者エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)も牽引に加わったメイン集団は、逃げ集団から2分遅れで1級山岳フルームサーベルクの麓に到着した。

アントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)を含む25名で構成された逃げ集団アントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)を含む25名で構成された逃げ集団 photo:CorVos
残り3kmから独走したアントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)残り3kmから独走したアントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
登坂時間25分前後の1級山岳フルームサーベルクで、逃げ集団内でステージ優勝争いが、メイン集団内で総合争いが同時進行で繰り広げられた。活発に動いたアントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)にルイス・マス(スペイン、モビスター)とパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム)が合流して先頭は3名。2012年から3年連続で総合優勝を飾っているコスタを含む追走グループから30秒、チームイネオス率いるメイン集団から1分程度のリードで先頭3名は残り5kmを切った。

残り3km地点を前に再びトールクがアタックすると、マスとベヴィンは反応することができずに脱落。こうしてトールクが独走に持ち込んだ一方で、メイン集団からはケニー・エリッソンド(フランス、チームイネオス)に発射される形でエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)が動いた。

追いすがるドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)やヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ)らをふるい落としたベルナルが、遅れた逃げメンバーたちを勢いよく追い抜きながらトールクを猛追。しかしベルナルはタイム差を詰め切ることができず、先頭トールクが17秒のリードをもったまま標高1,220mのフィニッシュに飛び込んだ。

メイン集団からアタックするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)メイン集団からアタックするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
独走でフィニッシュしたアントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)独走でフィニッシュしたアントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
17秒遅れでフィニッシュするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)17秒遅れでフィニッシュするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
「特別な気持ち。3年前に山岳賞ジャージを獲得したワールドツアーレースでプロ初勝利。この感情をうまく表現できない」。大会最初の山頂フィニッシュを制した25歳はそう語る。トールクはジャパンカップで2017年に4位、2018年に2位に入っているクライマー。2019年はジロ・デ・イタリアでプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)のアシストを務めた。

「チームの走りにも感謝している。一緒に逃げたベルトヤン(リンデマン)はとても力強い走りを見せてくれて、彼の牽引は逃げ切りに欠かせないものだった。最後は無線でベルナルが追いかけてきていることを知ったんだ。昨年のカリフォルニアで彼に負けたことがあるので、今回だけは追いつかれたくなかった」と、アスタナに並ぶシーズン28勝目をユンボ・ヴィズマにもたらしたトールクは語っている。

トールクの他にも逃げメンバーのビダールが3位、ベヴィンが6位、コスタが7位に入り、メイン集団から追い上げたベルナルが2位、ヒルトが4位、ポッツォヴィーヴォが5位に。メイン集団の中でヒルトに12秒、ポッツォヴィーヴォに14秒のタイム差をつけたベルナルが総合首位に立った。

ゲラント・トーマス(イギリス)のリタイアによってチームイネオスの単独エースとなったベルナルは「強力なチームメイトたちがハイペースな展開に持ち込んで、そこから一発のアタックで飛び出した。最後は全開走行で、作戦通りイエロージャージを手にすることができたよ。3月のカタルーニャ以来のレース出場なので、この結果は自信につながる」とコメント。

ステージ12位に入ったローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)が12秒差の総合2位。ベルナルは「これからは総合リードを守る立場。個人タイムトライアルでローハン・デニスからタイムを失うことになる。彼は登りもこなせているので、これからもチームは全力を尽くしたい」と語っている。

リーダージャージを手にしたエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)リーダージャージを手にしたエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
ツール・ド・スイス2019第6ステージ結果
1位 アントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 2:43:34
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) 0:00:17
3位 フランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール) 0:00:24
4位 ヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ) 0:00:29
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:31
6位 パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム) 0:00:38
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 0:00:44
8位 ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)
9位 パトリック・シェリンク(スイス、スイスナショナルチーム) 0:00:46
10位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
個人総合成績
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) 18:40:18
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ) 0:00:12
3位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:29
4位 ヤン・ヒルト(チェコ、アスタナ) 0:00:35
5位 ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)
6位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター) 0:00:41
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:50
8位 フランソワ・ビダール(フランス、アージェードゥーゼール) 0:00:58
9位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:01:07
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 37pts
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 32pts
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) 19pts
山岳賞
1位 クラウディオ・インホフ(スイス、スイスナショナルチーム) 25pts
2位 ギャビン・マニオン(アメリカ、ラリーUHCサイクリング) 19pts
3位 アントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 12pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) 18:40:18
2位 ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) 0:00:35
3位 エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:01:17
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 56:03:48
2位 サンウェブ 0:00:21
3位 モビスター 0:00:58

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