平坦コースメインのジロ・デ・イタリア前半戦を締めくくる第11ステージの集団スプリントでカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が2勝目をマーク。ユアンは未勝利に終わったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)とともにこの日を最後にジロを去る。


初山翔と西勉メカニック(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)初山翔と西勉メカニック(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
5月22日(水)第11ステージ カルピ〜ノーヴィ・リグーレ 221km ☆5月22日(水)第11ステージ カルピ〜ノーヴィ・リグーレ 221km ☆ photo:RCS Sport5月22日(水)第11ステージ カルピ〜ノーヴィ・リグーレ 221km ☆5月22日(水)第11ステージ カルピ〜ノーヴィ・リグーレ 221km ☆ photo:RCS Sport

極端すぎるほど平坦なステージが2日連続で登場。モデナ近郊のカルピをスタートするジロ・デ・イタリア第11ステージは、ポー川が作り出した広大な平原を西へ。ひたすら平坦路を走り、ピエモンテ州のノーヴィリグーレにフィニッシュする。翌日から本格的な山岳決戦が始まり、しかも後半戦に登場する集団スプリント向きのコースは第18ステージだけとあって、多くのピュアスプリンターがこの第11ステージを最後にリタイアすることをあらかじめ宣言していた。

そんなジロ前半戦を締めくくるスプリントステージは、マルコ・フラッポルティ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)とダミアーノ・チーマ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)という今大会逃げまくっている2人にミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)を加えた3人が逃げる展開。スタート直後から逃げた3人は40km地点で最大5分33秒のリードを得た。

42km/h前後のペースを刻んで平野を逃げ続ける3人を、スプリンターチームがメイン集団の先頭に立って追いかける今大会何度も見た光景。221kmの長いステージの半分を終えたところでタイム差は3分に。危険な風が吹くこともなく、気温25度ほどの陽気に包まれたポー平原をジロは進んでいく。

残り73km地点の第1スプリントをチーマが先頭通過すると、その2分17秒後方ではマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)をかけたスプリント争いが繰り広げられる。この日を最後にジロを去る予定だったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が最終スプリントに向けて脚を温存する中、ポイント賞1位のパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)と同賞2位のアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)がスプリント。3番手通過したデマールが暫定的にポイント賞トップの座を奪った。

逃げるミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)ら3名逃げるミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)ら3名 photo:Kei Tsuji
平穏なステージを過ごすマリアローザのヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)平穏なステージを過ごすマリアローザのヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
ポー川が作り出した広大な平野を走るポー川が作り出した広大な平野を走る photo:LaPresse
ポー川が作り出した広大な平野を走るポー川が作り出した広大な平野を走る photo:LaPresse
ロット・スーダルを先頭に進むメイン集団ロット・スーダルを先頭に進むメイン集団 photo:Kei Tsuji
ロット・スーダル、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、ボーラ・ハンスグローエの連合軍が率いるメイン集団は逃げグループとのタイム差を詰め、200km弱におよんだフラッポルティ、チーマ、マエストリの逃げは残り25km地点で終了。スプリンターチームに総合系チームも集団先頭に上がって、強い向かい風が吹く中を40km/h弱で巡航した。

残り4kmを切ってからのクリスティアン・クネース(ドイツ、チームイネオス)のアタックは不発に終わり、CCCチームやイスラエルサイクリングアカデミーが人数を揃えて残り3kmの最終コーナーを曲がる。そこからフィニッシュラインまでは向かい風気味の横風が吹く1%ほどの登り基調。残り1kmアーチを通過すると、グルパマFDJが主導権を奪った。

前日同様にジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)がデマールのために最終リードアウト。しかしボーラ・ハンスグローエが先頭を奪い、リュディガー・ゼーリッヒ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がアッカーマンを引き上げる。真っ先にスプリントを開始したアッカーマンだったが、前日の落車の影響か、重いギアを踏む脚が重い。アッカーマンのスリップストリームからタイミング良く抜け出るとともに、低い体勢を保って突進したユアンが、追い上げるデマールに並ばせることなくフィニッシュした。

先頭でスプリントするカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)先頭でスプリントするカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)とパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji
カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)に並びかけるアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)に並びかけるアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:Kei Tsuji
ステージ2勝目を飾ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ステージ2勝目を飾ったカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
第8ステージに続く今大会ステージ2勝目を飾った24歳のユアンは「昨日よりも距離が長いステージは自分向きだった。最後はパスカル・アッカーマンの番手からスプリント。良いリードアウトを受けた彼の後ろは絶好のポジションだった。スプリント開始のタイミングもバッチリ。トップスプリンターの仲間入りを果たした気分だ」とコメント。ポイント賞3位に浮上したものの、ユアンは予定通り第12ステージをスタートすることなくモナコの自宅に戻る。ユアンはロット・スーダルのエーススプリンターとして7月のツール・ド・フランスに出場する予定だ。

デマールはステージ連勝を逃したものの、アッカーマンに11ポイント差をつけてポイント賞トップに立った。この日も勝てなかったヴィヴィアーニがユアンと同様に第11ステージでジロを去るため、マリアチクラミーノ争いはデマールとアッカーマンの一騎打ちになる見込みだ。

「グランツールで総合成績を狙ったことがないので、これからどうなるか分からない。総合トップ10に入ることができれば上出来だ。とにかく今は明日マリアローザを守ることに集中したい」と語るのは、マリアローザを着て今大会最初の本格山岳ステージに挑むことになったヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)。終盤に1級山岳モントーゾ(距離8.8km/平均9.5%)が設定された第12ステージでマリアローザ争いがいよいよ本格化する。

ステージに上がるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ステージに上がるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
マリアチクラミーノはアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)の手にマリアチクラミーノはアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)の手に photo:Kei Tsuji

ジロ・デ・イタリア2019第11ステージ結果
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 5:17:26
2位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
3位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
5位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエルサイクリングアカデミー)
6位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
7位 ライアン・ギボンズ(南アフリカ、ディメンションデータ)
8位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ)
9位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム)
10位 ショーン・ベネット(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
144位 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 0:01:30
DNS マッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)
マリアローザ 個人総合成績
1位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 42:02:05
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 0:01:50
3位 ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:02:21
4位 ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) 0:02:33
5位 ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) 0:02:36
6位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) 0:02:39
7位 アマーロ・アントゥネス(ポルトガル、CCCチーム) 0:03:05
8位 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) 0:03:27
9位 ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニCSF) 0:03:30
10位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) 0:03:32
11位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:03:34
12位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 0:03:45
14位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:04:08
24位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:05:36
27位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:06:19
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 194pts
2位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 183pts
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 159pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 32pts
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) 22pts
3位 ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク) 18pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) 45:04:26
2位 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) 0:01:06
3位 ジョヴァンニ・カルボーニ(イタリア、バルディアーニCSF) 0:01:09
チーム総合成績
1位 モビスター 135:11:29
2位 ドゥクーニンク・クイックステップ 0:06:53
3位 アンドローニジョカトリ・シデルメク 0:08:04
text&photo:Kei Tsuji in Novi Ligure, Italy

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