2010/04/09(金) - 12:15
「北の地獄」と呼ばれるパリ〜ルーベ(UCIヒストリカル)が4月11日、27のパヴェ(石畳)区間が詰め込まれた259kmで行なわれる。再びカンチェラーラ(サクソバンク)とボーネン(クイックステップ)の直接対決に持ち込まれるのか?別府史之(レディオシャック)は2年連続3度目の出場だ。
合計27セクター・総延長52.9kmのパヴェ区間
近代オリンピックと同じ1896年に第1回大会が開催され、今年で開催108回目を迎えるパリ〜ルーベ。「クラシックの女王」と呼ばれ、格式高きクラシックレースとして独特の地位を誇っている。
またの名を「北の地獄」。そう、他のレースでは決して見ることが出来ない荒れたパヴェ(石畳)が連続して登場する異質のレース。選手たちはバイクを抑え込みながら荒れたパヴェを突き進むのだ。
その他のワンディクラシックとは異なり、259kmのコースは平坦そのもの。上りは皆無に等しい。今年もパリ北部のコンピエーニュをスタートし、パヴェ区間を縫うようにして蛇行しながらベルギー国境近くのルーベにゴールする。
レース前半、97km地点までは快適なアスファルト舗装路が続く。しかしそこからゴールまでは休むまもなくパヴェ区間(セクター)が登場。ゴール地点ルーベに至るまで、合計で27のパヴェ区間が設定されている。その総延長は52.9kmに及び、レース後半部の3分の1がパヴェに覆われている計算になる。
パヴェ区間のほとんどが握りこぶし大の石が敷き詰められた「悪路」で、石と石の間の土は風雨によって浸食。鋭く角の立った石や段差が、パンクや落車を引き起こす。毎年少しずつ修復が加えられているが、中には規則性を失って波打ったものや、陥没した穴もある。
これほどマシントラブルや落車の多いレースは他に類を見ない。荒れた路面が選手たちを苦しめ、ときに致命的なダメージを与える。狭いパヴェ区間で一旦後方に下がってしまうと、その時点でゲームオーバーになる可能性も有る。
選手たちは振動吸収性や耐久性に重きを置いた「パリ〜ルーベ特製バイク」を使用し、並走バイクによるニュートラルサポートも通常より手厚い。さらに沿道の観客もホイールを片手に声援を送り、トラブルが発生すれば率先して飛び出す。それでもトラブルは避けられない。
パヴェでは、ハンドルから伝わる強烈な振動をうまく抑え込み、安全なラインを読む独特の高度な走行テクニックが要求される。いかにトラブル無くパヴェをこなしていくかが勝負の分かれ道。一つのミスで勝機を失う可能性は高い。
そして選手を苦しめるもう一つの要因、それが天候だ。晴れて乾燥すれば、凄まじい砂埃が舞い上がり、視界が遮られるとともに呼吸もままならない「砂埃地獄」に。
また、雨が降って路面が濡れれば「泥地獄」になる。泥が容赦なく選手とバイクを襲い、落車やメカトラを誘発。泥だらけの選手たちが泥だらけのパヴェに倒れ込む集団落車はまさに地獄絵図。過去には選手の顔の判別がままならないほど泥だらけのレースが繰り広げられたこともあった。
しかし、近年パリ〜ルーベは雨と無縁だ。2005年にはレース途中に軽い雨が降ったが「泥地獄」にはほど遠いコンディション。本格的な雨には2002年以降ずっと降られていない。果たして今年こそ雨が降るか?
4月9日現在、レース開催日現地ルーベの天気予報は晴れ時々曇り。降水確率は10%で最高気温13度だ。
選手の行く手を阻むアランベールやカルフール・ダルブル
登場する27のパヴェ区間は、それぞれ長さが200mから3700mまで様々。その長さや路面の荒れ具合に応じて、難易度が1〜5までランク付けされている。最高級5つ星の栄誉を与えられているのは164km地点のアランベール(アーレンベルグ)、211km地点のモンサン・ぺヴェル、242km地点のカルフール・ド・ラルブルの3つ。
レースが大きな動きを見せるのがゴール95km手前に登場するアランベールだ。「アランベールの森」を貫くこの一本道は、長さが2400mに達し、その路面は荒れ放題。ここで数々の名選手が落車やトラブルにより勝機を失い、そして同時に、多くの決定的な動きが生まれた。
荒れた本線よりも沿道の路面は比較的スムースだが、無情にもバリケードが選手たちの沿道侵入を許さない。集団は縦一列になること必至。集団後方に埋もれてしまうと、渋滞で後方に取り残され、二度と集団に復帰出来ないこともある。パヴェでの走りだけでなく、パヴェ突入前の熾烈なポジション争いにも注目したい。
そして、終盤にかけて大きな盛り上がりを見せるのが、難易度4の3セクター(シソワン・ブルゲル、ブルゲル・ワヌエン、カンファナン・ぺヴェル)を越えた後に登場するカルフール・ド・ラルブルだ。
長さ2100mのこの難所を越えるとゴールまで15km。その後の3セクターの難易度が低いため、ここで勝負が決まる可能性が高い。
毎年のようにアタックがかかるカルフール・ド・ラルブルには、毎年大勢の熱狂的な観客が詰めかける。昨年は観客の品行の悪さに自治体が業を煮やし、一時パリ〜ルーベの通過を禁止したほどだ。
ゴール地点は今年もルーベのヴェロドローム(トラック競技場)。荒れたパヴェレースの最後を締めくくるのは、皮肉にも、スムースな路面の競技場。先頭でゴールラインを駆け抜けた選手には、パヴェの石塊で作られたトロフィーが贈られる。
登場するパヴェ27区間(セクターNo.・地点km・名称・長さ・難易度)
27 98km Troisvilles 2200m ☆☆☆
26 104km Viesly 1800m ☆☆☆
25 107km Quievy 3700m ☆☆☆☆
24 112km Saint-Python 1500m ☆☆
23 120km Vertain 2300m ☆☆☆
22 126km Capelle-sur-Ecaillon - Le Buat 1700m ☆☆☆
21 138km Verchain-Maugré - Quérénaing 1600m ☆☆☆
20 142km Querenaing - Maing 2500m ☆☆☆
19 145km Monchaux-sur-Ecaillon 1600m ☆☆☆
18 156km Haveluy 2500m ☆☆☆☆
17 164km Trouée d’Arenberg(アランベール) 2400m ☆☆☆☆☆
16 177km Hornaing - Wandignies 3700m ☆☆☆
15 184km Warlaing - Brillon 2400m ☆☆☆
14 188km Tilloy - Sars-et-Rosières 2400m ☆☆☆
13 194km Beuvry-la-Forêt à Orchies 1400m ☆☆☆
12 199km Orchies 1700m ☆☆☆
11 205km Auchy-lez-Orchies - Bersée 2600m ☆☆☆
10 211km Mons-en-Pévèle(モンサン・ぺヴェル) 3000m ☆☆☆☆☆
9 217km Mérignies - Pont-à-Marcq 700m ☆☆
8 220km Pont-Thibaut 1400m ☆☆☆
7a 225km Templeuve l’Epinette 200m ☆
7b 226km Le Moulin de Vertain 500m ☆☆
6a 232km Cysoing - Bourghelles 1300m ☆☆☆☆
6b 235km Bourghelles - Wannehain 1100m ☆☆☆☆
5 239km Camphin-en-Pévèle 1800m ☆☆☆☆
4 242km Le Carrefour de l’Arbre(カルフール・ド・ラルブル) 2100m ☆☆☆☆☆
3 244km Gruson 1100m ☆☆
2 251km Hem 1400m ☆
1 258km Roubaix 300m ☆
再び激突する両雄 フミは2年連続3度目の出場
ロンド・ファン・フラーンデレンで火花を散らした両雄が、再びパリ〜ルーベで相見える。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)とトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)。ともにパリ〜ルーベで優勝経験のあるこの2人が、今年の優勝候補の筆頭だ。
ロンドで他を圧倒し、独走勝利を飾ったカンチェラーラは、2006年大会の優勝者。当時もその類い稀な独走力を武器にパヴェバトルを制した。ロンド初制覇を達成したばかりのカンチェラーラは当然「コンディションはバッチリ」。再び石畳でカンチェラーラが火を噴くか。
サクソバンクには2007年大会優勝者のスチュアート・オグレディ(オーストラリア)やマッティ・ブレシェル(デンマーク)も揃っており、カンチェラーラの活躍を全力でサポート。万が一カンチェラーラにトラブルが発生した場合でも、最前線で闘う代役は揃っている。
対するボーネンは2008年から2年連続で優勝しているディフェンディングチャンピオン。昨年は圧倒的な力でライバルを蹴散らし、メルクスやモゼール、そしてムセーウに肩を並べる3勝目を飾った。今年は史上3人目の3連勝、そして史上最多タイの4勝目を狙う。
近年「北のクラシック」で圧倒的な力を誇っていたクイックステップだが、ロンドでの走りを見る限り、ステイン・デヴォルデル(ベルギー)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス)のコンディションはマックスとは言えない。戦力の面でサクソバンクに水をあけられているのは事実だろう。
ちなみにカンチェラーラとボーネンは2008年に直接対決を繰り広げている。当時はカンチェラーラのスパートが決まらず、ヴェロドロームでのスプリント勝負に持ち込んだボーネンが勝利。今年、ロンドでそうしたように、カンチェラーラは得意の独走で揺さぶってくるだろう。王者ボーネンはカンチェラーラの独走を防げるか。もうロンドの二の舞はゴメンだ。
この二強に食って掛かるのが、パヴェを走れる希有なスペイン人として知られるフアンアントニオ・フレチャ(チームスカイ)。フレチャは2005年大会で3位に入ると、2006年4位、2007年2位、2009年6位。もう表彰台の左右両端はこりごり。欲しいのは石塊のトロフィーだ。
チームメイトのエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)の出場にも注目が集まったが、アキレス腱を痛めているボアッソンは、ロンドに続いてルーベの出場も辞退。マシュー・ヘイマン(オーストラリア)やクルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー)がフレチャの脇を固める。
アメリカ人として唯一表彰台に上ったこと(2005年2位)のあるジョージ・ヒンカピー(アメリカ)は、BMCレーシングチームを率いて出場。チームには過去に2度3位に入っているアレッサンドロ・バッラン(イタリア)もいる。
プロコンチネンタルチームとしては、昨年3位のトル・フースホフト(ノルウェー)擁するサーヴェロ・テストチームも侮れない。
アメリカのガーミン・トランジションズは、過去最高の戦力でパリ〜ルーベに挑む。2008年から2年連続で4位に入ったマルティン・マースカント(オランダ)や、毎年アシストとして素晴らしい走りを見せるヨハン・ファンスーメレン(ベルギー)、そして直前のシュヘルデプライスで優勝したタイラー・ファラー(アメリカ)らが揃う。
そして、体調不良によってロンドを欠場したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が復帰。ポッツァートは昨年ボーネンを脅かす存在として果敢に走り、過去最高の2位をマークしている。コンディションには疑問が残るが、今年もカチューシャのエースとしてレースに挑む。
イタリア勢としては他にも、マヌエル・クインツィアートやダニエル・オスを揃えたリクイガスにも注目。パリ〜ニースでステージ2勝という怒濤の活躍を見せたペーター・サガン(スロバキア)も出場する。サガンは2008年のパリ〜ルーベ・ジュニアレースで2位。再びA.S.O.主催レースで存在感を見せるか。
伏兵として、シクロクロス出身でオフロード走行に長けたラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)やストゥヴ・シェネル(フランス、Bboxブイグテレコム)の走りにも注目だ。
そして、日本からは別府史之(レディオシャック)が出陣。ヘント〜ウェベルヘムで激しくクラッシュし、ロンドを欠場したフミが「北のクラシック」に戻ってくる。フミは過去にパリ〜ルーベ・エスポワールレース(U23)で好成績を収め、そこでの走りがプロになる自信を生むきっかけとなったという。フミは2年連続3度目のエリートレース出場。2度の出場はいずれもアシストに徹し、途中リタイアに終わっている。今年こそ日本人初の完走、そしてそれ以上の活躍を願う。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka
合計27セクター・総延長52.9kmのパヴェ区間
近代オリンピックと同じ1896年に第1回大会が開催され、今年で開催108回目を迎えるパリ〜ルーベ。「クラシックの女王」と呼ばれ、格式高きクラシックレースとして独特の地位を誇っている。
またの名を「北の地獄」。そう、他のレースでは決して見ることが出来ない荒れたパヴェ(石畳)が連続して登場する異質のレース。選手たちはバイクを抑え込みながら荒れたパヴェを突き進むのだ。
その他のワンディクラシックとは異なり、259kmのコースは平坦そのもの。上りは皆無に等しい。今年もパリ北部のコンピエーニュをスタートし、パヴェ区間を縫うようにして蛇行しながらベルギー国境近くのルーベにゴールする。
レース前半、97km地点までは快適なアスファルト舗装路が続く。しかしそこからゴールまでは休むまもなくパヴェ区間(セクター)が登場。ゴール地点ルーベに至るまで、合計で27のパヴェ区間が設定されている。その総延長は52.9kmに及び、レース後半部の3分の1がパヴェに覆われている計算になる。
パヴェ区間のほとんどが握りこぶし大の石が敷き詰められた「悪路」で、石と石の間の土は風雨によって浸食。鋭く角の立った石や段差が、パンクや落車を引き起こす。毎年少しずつ修復が加えられているが、中には規則性を失って波打ったものや、陥没した穴もある。
これほどマシントラブルや落車の多いレースは他に類を見ない。荒れた路面が選手たちを苦しめ、ときに致命的なダメージを与える。狭いパヴェ区間で一旦後方に下がってしまうと、その時点でゲームオーバーになる可能性も有る。
選手たちは振動吸収性や耐久性に重きを置いた「パリ〜ルーベ特製バイク」を使用し、並走バイクによるニュートラルサポートも通常より手厚い。さらに沿道の観客もホイールを片手に声援を送り、トラブルが発生すれば率先して飛び出す。それでもトラブルは避けられない。
パヴェでは、ハンドルから伝わる強烈な振動をうまく抑え込み、安全なラインを読む独特の高度な走行テクニックが要求される。いかにトラブル無くパヴェをこなしていくかが勝負の分かれ道。一つのミスで勝機を失う可能性は高い。
そして選手を苦しめるもう一つの要因、それが天候だ。晴れて乾燥すれば、凄まじい砂埃が舞い上がり、視界が遮られるとともに呼吸もままならない「砂埃地獄」に。
また、雨が降って路面が濡れれば「泥地獄」になる。泥が容赦なく選手とバイクを襲い、落車やメカトラを誘発。泥だらけの選手たちが泥だらけのパヴェに倒れ込む集団落車はまさに地獄絵図。過去には選手の顔の判別がままならないほど泥だらけのレースが繰り広げられたこともあった。
しかし、近年パリ〜ルーベは雨と無縁だ。2005年にはレース途中に軽い雨が降ったが「泥地獄」にはほど遠いコンディション。本格的な雨には2002年以降ずっと降られていない。果たして今年こそ雨が降るか?
4月9日現在、レース開催日現地ルーベの天気予報は晴れ時々曇り。降水確率は10%で最高気温13度だ。
選手の行く手を阻むアランベールやカルフール・ダルブル
登場する27のパヴェ区間は、それぞれ長さが200mから3700mまで様々。その長さや路面の荒れ具合に応じて、難易度が1〜5までランク付けされている。最高級5つ星の栄誉を与えられているのは164km地点のアランベール(アーレンベルグ)、211km地点のモンサン・ぺヴェル、242km地点のカルフール・ド・ラルブルの3つ。
レースが大きな動きを見せるのがゴール95km手前に登場するアランベールだ。「アランベールの森」を貫くこの一本道は、長さが2400mに達し、その路面は荒れ放題。ここで数々の名選手が落車やトラブルにより勝機を失い、そして同時に、多くの決定的な動きが生まれた。
荒れた本線よりも沿道の路面は比較的スムースだが、無情にもバリケードが選手たちの沿道侵入を許さない。集団は縦一列になること必至。集団後方に埋もれてしまうと、渋滞で後方に取り残され、二度と集団に復帰出来ないこともある。パヴェでの走りだけでなく、パヴェ突入前の熾烈なポジション争いにも注目したい。
そして、終盤にかけて大きな盛り上がりを見せるのが、難易度4の3セクター(シソワン・ブルゲル、ブルゲル・ワヌエン、カンファナン・ぺヴェル)を越えた後に登場するカルフール・ド・ラルブルだ。
長さ2100mのこの難所を越えるとゴールまで15km。その後の3セクターの難易度が低いため、ここで勝負が決まる可能性が高い。
毎年のようにアタックがかかるカルフール・ド・ラルブルには、毎年大勢の熱狂的な観客が詰めかける。昨年は観客の品行の悪さに自治体が業を煮やし、一時パリ〜ルーベの通過を禁止したほどだ。
ゴール地点は今年もルーベのヴェロドローム(トラック競技場)。荒れたパヴェレースの最後を締めくくるのは、皮肉にも、スムースな路面の競技場。先頭でゴールラインを駆け抜けた選手には、パヴェの石塊で作られたトロフィーが贈られる。
登場するパヴェ27区間(セクターNo.・地点km・名称・長さ・難易度)
27 98km Troisvilles 2200m ☆☆☆
26 104km Viesly 1800m ☆☆☆
25 107km Quievy 3700m ☆☆☆☆
24 112km Saint-Python 1500m ☆☆
23 120km Vertain 2300m ☆☆☆
22 126km Capelle-sur-Ecaillon - Le Buat 1700m ☆☆☆
21 138km Verchain-Maugré - Quérénaing 1600m ☆☆☆
20 142km Querenaing - Maing 2500m ☆☆☆
19 145km Monchaux-sur-Ecaillon 1600m ☆☆☆
18 156km Haveluy 2500m ☆☆☆☆
17 164km Trouée d’Arenberg(アランベール) 2400m ☆☆☆☆☆
16 177km Hornaing - Wandignies 3700m ☆☆☆
15 184km Warlaing - Brillon 2400m ☆☆☆
14 188km Tilloy - Sars-et-Rosières 2400m ☆☆☆
13 194km Beuvry-la-Forêt à Orchies 1400m ☆☆☆
12 199km Orchies 1700m ☆☆☆
11 205km Auchy-lez-Orchies - Bersée 2600m ☆☆☆
10 211km Mons-en-Pévèle(モンサン・ぺヴェル) 3000m ☆☆☆☆☆
9 217km Mérignies - Pont-à-Marcq 700m ☆☆
8 220km Pont-Thibaut 1400m ☆☆☆
7a 225km Templeuve l’Epinette 200m ☆
7b 226km Le Moulin de Vertain 500m ☆☆
6a 232km Cysoing - Bourghelles 1300m ☆☆☆☆
6b 235km Bourghelles - Wannehain 1100m ☆☆☆☆
5 239km Camphin-en-Pévèle 1800m ☆☆☆☆
4 242km Le Carrefour de l’Arbre(カルフール・ド・ラルブル) 2100m ☆☆☆☆☆
3 244km Gruson 1100m ☆☆
2 251km Hem 1400m ☆
1 258km Roubaix 300m ☆
再び激突する両雄 フミは2年連続3度目の出場
ロンド・ファン・フラーンデレンで火花を散らした両雄が、再びパリ〜ルーベで相見える。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)とトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)。ともにパリ〜ルーベで優勝経験のあるこの2人が、今年の優勝候補の筆頭だ。
ロンドで他を圧倒し、独走勝利を飾ったカンチェラーラは、2006年大会の優勝者。当時もその類い稀な独走力を武器にパヴェバトルを制した。ロンド初制覇を達成したばかりのカンチェラーラは当然「コンディションはバッチリ」。再び石畳でカンチェラーラが火を噴くか。
サクソバンクには2007年大会優勝者のスチュアート・オグレディ(オーストラリア)やマッティ・ブレシェル(デンマーク)も揃っており、カンチェラーラの活躍を全力でサポート。万が一カンチェラーラにトラブルが発生した場合でも、最前線で闘う代役は揃っている。
対するボーネンは2008年から2年連続で優勝しているディフェンディングチャンピオン。昨年は圧倒的な力でライバルを蹴散らし、メルクスやモゼール、そしてムセーウに肩を並べる3勝目を飾った。今年は史上3人目の3連勝、そして史上最多タイの4勝目を狙う。
近年「北のクラシック」で圧倒的な力を誇っていたクイックステップだが、ロンドでの走りを見る限り、ステイン・デヴォルデル(ベルギー)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス)のコンディションはマックスとは言えない。戦力の面でサクソバンクに水をあけられているのは事実だろう。
ちなみにカンチェラーラとボーネンは2008年に直接対決を繰り広げている。当時はカンチェラーラのスパートが決まらず、ヴェロドロームでのスプリント勝負に持ち込んだボーネンが勝利。今年、ロンドでそうしたように、カンチェラーラは得意の独走で揺さぶってくるだろう。王者ボーネンはカンチェラーラの独走を防げるか。もうロンドの二の舞はゴメンだ。
この二強に食って掛かるのが、パヴェを走れる希有なスペイン人として知られるフアンアントニオ・フレチャ(チームスカイ)。フレチャは2005年大会で3位に入ると、2006年4位、2007年2位、2009年6位。もう表彰台の左右両端はこりごり。欲しいのは石塊のトロフィーだ。
チームメイトのエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー)の出場にも注目が集まったが、アキレス腱を痛めているボアッソンは、ロンドに続いてルーベの出場も辞退。マシュー・ヘイマン(オーストラリア)やクルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー)がフレチャの脇を固める。
アメリカ人として唯一表彰台に上ったこと(2005年2位)のあるジョージ・ヒンカピー(アメリカ)は、BMCレーシングチームを率いて出場。チームには過去に2度3位に入っているアレッサンドロ・バッラン(イタリア)もいる。
プロコンチネンタルチームとしては、昨年3位のトル・フースホフト(ノルウェー)擁するサーヴェロ・テストチームも侮れない。
アメリカのガーミン・トランジションズは、過去最高の戦力でパリ〜ルーベに挑む。2008年から2年連続で4位に入ったマルティン・マースカント(オランダ)や、毎年アシストとして素晴らしい走りを見せるヨハン・ファンスーメレン(ベルギー)、そして直前のシュヘルデプライスで優勝したタイラー・ファラー(アメリカ)らが揃う。
そして、体調不良によってロンドを欠場したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が復帰。ポッツァートは昨年ボーネンを脅かす存在として果敢に走り、過去最高の2位をマークしている。コンディションには疑問が残るが、今年もカチューシャのエースとしてレースに挑む。
イタリア勢としては他にも、マヌエル・クインツィアートやダニエル・オスを揃えたリクイガスにも注目。パリ〜ニースでステージ2勝という怒濤の活躍を見せたペーター・サガン(スロバキア)も出場する。サガンは2008年のパリ〜ルーベ・ジュニアレースで2位。再びA.S.O.主催レースで存在感を見せるか。
伏兵として、シクロクロス出身でオフロード走行に長けたラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)やストゥヴ・シェネル(フランス、Bboxブイグテレコム)の走りにも注目だ。
そして、日本からは別府史之(レディオシャック)が出陣。ヘント〜ウェベルヘムで激しくクラッシュし、ロンドを欠場したフミが「北のクラシック」に戻ってくる。フミは過去にパリ〜ルーベ・エスポワールレース(U23)で好成績を収め、そこでの走りがプロになる自信を生むきっかけとなったという。フミは2年連続3度目のエリートレース出場。2度の出場はいずれもアシストに徹し、途中リタイアに終わっている。今年こそ日本人初の完走、そしてそれ以上の活躍を願う。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka