2010/04/09(金) - 08:32
2010年4月8日、ブエルタ・アル・パイスバスコ(UCIプロツアー)第4ステージが、7つのカテゴリー山岳が設定された山岳コースで行なわれ、ゴール直前で飛び出したサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が優勝。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)が総合首位の座を取り戻した。
1級から3級までのカテゴリー山岳が7つ設定された第4ステージは、今大会最難関の山岳ステージ。最後の1級山岳ウサルツァ峠は頂上ゴールではないものの、1級の頂上はゴールの僅か2km手前だ。
総合変動必至の重要なステージで逃げたのは、アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、リクイガス)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)、ヨハネス・フレーリンガー(ドイツ、チームミルラム)、アイトール・ペレス(スペイン、フットオン・セルヴェット)。
最大4分のリードを稼ぎ出したこの5名を追ったのは、ランプレやカチューシャがコントロールするメイン集団。この日5つ目の1級山岳イシュア峠でジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット)やロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が動きを見せたが、決定的なタイム差は生まれず。
イシュア峠通過後、逃げグループの2分後方にまで迫ったメイン集団ではアタックが繰り返され、一時的にアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)を含む追走グループが形成。この中からスティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)が飛び出し、この日6つ目の2級山岳ウルカレギ峠を先頭から45秒遅れで通過。しかしパンクによってメイン集団に吸収された。
この日最後の1級山岳ウサルツァ峠は、ラスト7km地点から標高差430mを駆け上がる。平均勾配は8.4%。ケースデパーニュがスピードを上げたメイン集団は、先頭グループから僅か20秒遅れでこのウサルツァ峠に突入した。
先頭グループでは地元バスク出身のチュルカがアタックして独走。しかしゴール5.5km手前でメイン集団に吸収されてしまう。ここから総合有力選手たちによる闘いが始まった。
チュルカの吸収後すぐにアタックを仕掛けたのはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)。前日に落車して頭を数針縫う怪我を負った兄のフランク・シュレクはこの日のステージDNS(未出走)。サクソバンクの希望はアンディに委ねられた。
しかしアンディは後続を引き離すことが出来ず、ペローやヘーシンク、バルベルデ、サンチェス、クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)がアンディに合流。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は脱落した。
ゴール4km手前(頂上2km手前)で先頭グループからホーナーがアタックすると、意外にもアンディが脱落。ホーナーは観客が詰めかけたウサルツァ峠を独走したが、その後方から大歓声に後押しされたサンチェスが追う展開。サンチェスは頂上通過後に何とか先頭に追いついた。
ゴールまでの平坦区間で後続ヘーシンクとバルベルデも追いつき、先頭4名でラスト1km。カーブが連続する下り基調のゴール前で飛び出したのは、世界屈指のダウンヒラーとして知られるサンチェスだった。
牽制し合う後続3名を得意の下りで突き放したサンチェスが、そのまま独走でゴール。喜びを爆発させた。
地元バスクを代表するエウスカルテル所属のサンチェスは、開幕前から総合優勝候補に挙げられていたが、初日の第1ステージで大きく遅れて総合争いから脱落。この最難関ステージでの優勝で地元チームのエースとしての面目を保った。
ちなみにサンチェスはバスク州出身ではなくアストゥリアス州出身。アマ時代からバスクチームで走っており、特例として2000年にエウスカルテルに入団した。言わずと知れた2008年北京五輪ロードレースの金メダリストだ。
サンチェスは今シーズンここまでボルタ・アン・アルガルヴェ総合5位、パリ〜ニース総合5位、クリテリウム・アンテルナシオナル総合4位と、まずまずの成績を残しながらも勝利数ゼロ。バスクのファンが見守る中、今シーズン初勝利を飾った。
スペイン・マルカ紙のインタビュー記事の中でサンチェスは「これまでコンタドールを始めとするチャンピオンが勝った地で優勝出来て本当に良かった。この最難関ステージで勝ったことは誇り高いよ」とコメントしている。毎年上位に絡むアルデンヌ・クラシックに向けて準備万端だ。
一方、総合争いが懸かったバルベルデ、ヘーシンク、ホーナーの3名は2秒遅れでフィニッシュ。後続が30秒以上遅れたため、この3名が総合争いにおいて抜け出している。バルベルデはリーダージャージを取り戻し、ホーナーとヘーシンクが僅か1秒差で追う展開に。
総合争いは残る2ステージで決着する。翌第5ステージは6つのカテゴリー山岳が登場。終盤にかけて連続して登場する2つの2級山岳でアタックが繰り返されるだろう。そして、最終日は高低差310m、距離22kmの個人タイムトライアルだ。
レース展開はレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。
ブエルタ・アル・パイスバスコ2010第4ステージ結果
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) 4h05'16"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) +02"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、エウスカルテル) +33"
6位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット)
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) +40"
8位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
9位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー) +49"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
個人総合成績
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) 18h46'50"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
4位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット) +32"
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、エウスカルテル)
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) +39"
7位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
8位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTC・コロンビア) +48"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
10位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)
ポイント賞
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
山岳賞
アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)
チーム総合成績
レディオシャック
text:Kei Tsuji
photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com
1級から3級までのカテゴリー山岳が7つ設定された第4ステージは、今大会最難関の山岳ステージ。最後の1級山岳ウサルツァ峠は頂上ゴールではないものの、1級の頂上はゴールの僅か2km手前だ。
総合変動必至の重要なステージで逃げたのは、アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、リクイガス)、ヤコブ・フグルサング(デンマーク、サクソバンク)、ヨハネス・フレーリンガー(ドイツ、チームミルラム)、アイトール・ペレス(スペイン、フットオン・セルヴェット)。
最大4分のリードを稼ぎ出したこの5名を追ったのは、ランプレやカチューシャがコントロールするメイン集団。この日5つ目の1級山岳イシュア峠でジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット)やロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が動きを見せたが、決定的なタイム差は生まれず。
イシュア峠通過後、逃げグループの2分後方にまで迫ったメイン集団ではアタックが繰り返され、一時的にアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)を含む追走グループが形成。この中からスティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)が飛び出し、この日6つ目の2級山岳ウルカレギ峠を先頭から45秒遅れで通過。しかしパンクによってメイン集団に吸収された。
この日最後の1級山岳ウサルツァ峠は、ラスト7km地点から標高差430mを駆け上がる。平均勾配は8.4%。ケースデパーニュがスピードを上げたメイン集団は、先頭グループから僅か20秒遅れでこのウサルツァ峠に突入した。
先頭グループでは地元バスク出身のチュルカがアタックして独走。しかしゴール5.5km手前でメイン集団に吸収されてしまう。ここから総合有力選手たちによる闘いが始まった。
チュルカの吸収後すぐにアタックを仕掛けたのはアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)。前日に落車して頭を数針縫う怪我を負った兄のフランク・シュレクはこの日のステージDNS(未出走)。サクソバンクの希望はアンディに委ねられた。
しかしアンディは後続を引き離すことが出来ず、ペローやヘーシンク、バルベルデ、サンチェス、クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)がアンディに合流。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は脱落した。
ゴール4km手前(頂上2km手前)で先頭グループからホーナーがアタックすると、意外にもアンディが脱落。ホーナーは観客が詰めかけたウサルツァ峠を独走したが、その後方から大歓声に後押しされたサンチェスが追う展開。サンチェスは頂上通過後に何とか先頭に追いついた。
ゴールまでの平坦区間で後続ヘーシンクとバルベルデも追いつき、先頭4名でラスト1km。カーブが連続する下り基調のゴール前で飛び出したのは、世界屈指のダウンヒラーとして知られるサンチェスだった。
牽制し合う後続3名を得意の下りで突き放したサンチェスが、そのまま独走でゴール。喜びを爆発させた。
地元バスクを代表するエウスカルテル所属のサンチェスは、開幕前から総合優勝候補に挙げられていたが、初日の第1ステージで大きく遅れて総合争いから脱落。この最難関ステージでの優勝で地元チームのエースとしての面目を保った。
ちなみにサンチェスはバスク州出身ではなくアストゥリアス州出身。アマ時代からバスクチームで走っており、特例として2000年にエウスカルテルに入団した。言わずと知れた2008年北京五輪ロードレースの金メダリストだ。
サンチェスは今シーズンここまでボルタ・アン・アルガルヴェ総合5位、パリ〜ニース総合5位、クリテリウム・アンテルナシオナル総合4位と、まずまずの成績を残しながらも勝利数ゼロ。バスクのファンが見守る中、今シーズン初勝利を飾った。
スペイン・マルカ紙のインタビュー記事の中でサンチェスは「これまでコンタドールを始めとするチャンピオンが勝った地で優勝出来て本当に良かった。この最難関ステージで勝ったことは誇り高いよ」とコメントしている。毎年上位に絡むアルデンヌ・クラシックに向けて準備万端だ。
一方、総合争いが懸かったバルベルデ、ヘーシンク、ホーナーの3名は2秒遅れでフィニッシュ。後続が30秒以上遅れたため、この3名が総合争いにおいて抜け出している。バルベルデはリーダージャージを取り戻し、ホーナーとヘーシンクが僅か1秒差で追う展開に。
総合争いは残る2ステージで決着する。翌第5ステージは6つのカテゴリー山岳が登場。終盤にかけて連続して登場する2つの2級山岳でアタックが繰り返されるだろう。そして、最終日は高低差310m、距離22kmの個人タイムトライアルだ。
レース展開はレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。
ブエルタ・アル・パイスバスコ2010第4ステージ結果
1位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) 4h05'16"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) +02"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、エウスカルテル) +33"
6位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット)
7位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) +40"
8位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
9位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー) +49"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
個人総合成績
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) 18h46'50"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
4位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット) +32"
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、エウスカルテル)
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) +39"
7位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
8位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTC・コロンビア) +48"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
10位 サンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)
ポイント賞
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
山岳賞
アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)
チーム総合成績
レディオシャック
text:Kei Tsuji
photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com
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