2019/04/04(木) - 07:50
フランドルクラシックの大一番が近づく中開催されたドワーズ・ドール・フラーンデレンで、マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が逃げ切り勝利。自ら後半の展開を作り、共に逃げたライバルをスプリントで下す圧巻のレース運びを披露した。
ロンド・ファン・フラーンデレンを4日後、パリ〜ルーベを11日後に控えるフランドル地方を舞台に第74回ドワーズ・ドール・フラーンデレン(UCIワールドツアー)が開催された。
ベルギー北西部フランドル地方のローセラーレを出発し、急登坂を縫うように経由しつつワレヘムを目指すコースは182.6km。ヘントやロンドと同じ「フランダースクラシックス」によって運営されるセミクラシックレースであり、2017年からワールドツアーに昇格している。ただし昨年からロンド本戦と区別するためコースがばっさりと短距離化され、ワンデー開催のワールドツアーとしてはカデルエヴァンス・グレートオーシャンレース(164km)に続いて2番目に短い。中盤から連続する急勾配登坂の中には「ターイエンベルグ」や「ノケレベルグ」が含まれるほか、パヴェ(石畳)区間は合計6か所用意されている。
今回のエントリーは全25チームから175名。先の日曜に開催されたヘント〜ウェヴェルヘムが激しい消耗戦となったこと、そしてロンド直前のタイミングだけにペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)といった有力勢は出場を回避したが、3連覇を狙うイヴ・ランパルート(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)やヘント覇者アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、ロードシーズンイン早々2勝を挙げたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、ミラノ〜サンレモとヘントで手堅く表彰台に上がっているオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)、ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)、ニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)らも参戦。
急坂の難易度がロンドほどではないためアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)といったスプリンターの割合も多く、今季初石畳レースの世界王者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も顔を揃えた。
国立自転車博物館やヴェロドロームが置かれたローセラーレから出発すると、この日は比較的穏やかな展開から8名が逃げを打つ。ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)やラモン・シンケルダム(オランダ、グルパマFDJ)、ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)といったワールドチーム中心のメンバーが3分台のリードを持って逃げ続けた。
終盤に入ると同時開催の女子レースの進行が遅れていたため一時ストップを余儀なくされたが、ニュートラル走行を挟んで再発進したため特に大きなトラブルはなし。第1登坂「ニュー・クワレモント」を過ぎて徐々にペースが上がる中、集団内では複数名が巻き込まれる落車が発生した。
路面に叩きつけられた2017年のパリ〜ルーベ・エスポワール覇者のジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)やステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、アージェードゥーゼール)が戦線離脱。続く65km地点の第3登坂「クノクテベルク(距離1100m/平均4.9%/最大11.8%)」では優勝候補の一角、ファンデルポール自らがアタックを仕掛けた。
先行させたチームメイトのクリース・デボント(ベルギー)を目掛けて抜け出したファンデルポールにはイバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)やカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、アントニー・テュルジ(フランス、ディレクトエネルジー)らが追従。6名がメイン集団から抜け出して先行したが、ファンデルポールのハイペースによって人数が絞られ、反対に逃げグループから遅れたメンバーを吸収しながら先を急ぐ。
30kmを切って逃げから唯一生き残っていたオリヴェイラが引き戻され、メイン集団とファンデルポールグループの距離が縮まったことでボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)とティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)が飛びつく。先頭は当初の逃げに入ったペストルベルガー、追走グループに入っていたファンデルポールとテュルジ、ユンゲルス、ベノートという5名に再編成が行われた。
メンバーの半分以上がナショナル王者という豪華な逃げグループは快調にローテーションを回し、メイン集団との距離をじわじわと広げていく。後方ではデマールやジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)が追走グループを形成したが、先頭は40秒以上先。最終的に追いつくことはなかった。
逃げる5名vsスプリンターを抱えたメイン集団という構図となったものの、メイン集団のコントロールはグルパマFDJとバーレーン・メリダが担うのみ。急坂を越えてきたアシスト勢に追撃の力は残っておらず、50秒リードで残り10kmを切った先頭5名が逃げ切りを決めた。
最後のノケレベルグではユンゲルスとファンデルポールが同時にアタックを仕掛けたが決まらない。向かい風が吹き付ける先行しにくい状況下で、5名がぎこちなくローテーションを回しながらラスト1kmアーチを通過した。
すると「可能な限りタイミングを待った」と言うベノートがアタックしたが、クールネ〜ブリュッセル〜クールネ覇者のユンゲルスが確実にチェック。この瞬間をベノートは「僕が捕まっても誰もカウンターで飛び出さなかったので驚いた。全員がスプリントを待っていたんだ。これで今日勝つのは厳しいぞ、と直感したよ」と振り返っている。
最終コーナーを回って互いに見合う状況から、弾かれたようにスプリントしたのはテュルジだった。速度差を持って先頭に立ったものの、瞬間的な加速でファンデルポールがスリップストリームに潜り込む。ユンゲルスやペストルベルガーは出遅れ、ロングスプリントを続けるテュルジをリードアウトに使ったファンデルポールが悠々と先着。格の違いを見せつけるかのような試合運びでオランダ王者がワールドツアー初勝利を飾った。
自ら追走グループを作り、メイン集団からユンゲルスとベノートを合流させながらも得意パターンで勝利したファンデルポール。父アドリが2位止まりだったドワーズ・ドールで優勝した24歳は週末のフランドルにも出場予定だが、「今日よりもずっと距離が長いフランドルでは展開の予想がつきにくく、自分が優勝候補かどうかは定かではない」と控えめな言葉を残している。
18秒遅れたメイン集団先頭はロングスパートしたルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)。フィリップ・ジルベール(ベルギー)が途中リタイアするなどチームワークが不発に終わったドゥクーニンク・クイックステップは、3位にユンゲルスを送り込んだことで体裁を保った。
ロンド・ファン・フラーンデレンを4日後、パリ〜ルーベを11日後に控えるフランドル地方を舞台に第74回ドワーズ・ドール・フラーンデレン(UCIワールドツアー)が開催された。
ベルギー北西部フランドル地方のローセラーレを出発し、急登坂を縫うように経由しつつワレヘムを目指すコースは182.6km。ヘントやロンドと同じ「フランダースクラシックス」によって運営されるセミクラシックレースであり、2017年からワールドツアーに昇格している。ただし昨年からロンド本戦と区別するためコースがばっさりと短距離化され、ワンデー開催のワールドツアーとしてはカデルエヴァンス・グレートオーシャンレース(164km)に続いて2番目に短い。中盤から連続する急勾配登坂の中には「ターイエンベルグ」や「ノケレベルグ」が含まれるほか、パヴェ(石畳)区間は合計6か所用意されている。
今回のエントリーは全25チームから175名。先の日曜に開催されたヘント〜ウェヴェルヘムが激しい消耗戦となったこと、そしてロンド直前のタイミングだけにペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)といった有力勢は出場を回避したが、3連覇を狙うイヴ・ランパルート(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)やヘント覇者アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、ロードシーズンイン早々2勝を挙げたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、ミラノ〜サンレモとヘントで手堅く表彰台に上がっているオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)、ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)、ニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)らも参戦。
急坂の難易度がロンドほどではないためアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)やパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)といったスプリンターの割合も多く、今季初石畳レースの世界王者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も顔を揃えた。
国立自転車博物館やヴェロドロームが置かれたローセラーレから出発すると、この日は比較的穏やかな展開から8名が逃げを打つ。ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター)やラモン・シンケルダム(オランダ、グルパマFDJ)、ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)といったワールドチーム中心のメンバーが3分台のリードを持って逃げ続けた。
終盤に入ると同時開催の女子レースの進行が遅れていたため一時ストップを余儀なくされたが、ニュートラル走行を挟んで再発進したため特に大きなトラブルはなし。第1登坂「ニュー・クワレモント」を過ぎて徐々にペースが上がる中、集団内では複数名が巻き込まれる落車が発生した。
路面に叩きつけられた2017年のパリ〜ルーベ・エスポワール覇者のジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)やステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、アージェードゥーゼール)が戦線離脱。続く65km地点の第3登坂「クノクテベルク(距離1100m/平均4.9%/最大11.8%)」では優勝候補の一角、ファンデルポール自らがアタックを仕掛けた。
先行させたチームメイトのクリース・デボント(ベルギー)を目掛けて抜け出したファンデルポールにはイバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)やカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、アントニー・テュルジ(フランス、ディレクトエネルジー)らが追従。6名がメイン集団から抜け出して先行したが、ファンデルポールのハイペースによって人数が絞られ、反対に逃げグループから遅れたメンバーを吸収しながら先を急ぐ。
30kmを切って逃げから唯一生き残っていたオリヴェイラが引き戻され、メイン集団とファンデルポールグループの距離が縮まったことでボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)とティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)が飛びつく。先頭は当初の逃げに入ったペストルベルガー、追走グループに入っていたファンデルポールとテュルジ、ユンゲルス、ベノートという5名に再編成が行われた。
メンバーの半分以上がナショナル王者という豪華な逃げグループは快調にローテーションを回し、メイン集団との距離をじわじわと広げていく。後方ではデマールやジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)が追走グループを形成したが、先頭は40秒以上先。最終的に追いつくことはなかった。
逃げる5名vsスプリンターを抱えたメイン集団という構図となったものの、メイン集団のコントロールはグルパマFDJとバーレーン・メリダが担うのみ。急坂を越えてきたアシスト勢に追撃の力は残っておらず、50秒リードで残り10kmを切った先頭5名が逃げ切りを決めた。
最後のノケレベルグではユンゲルスとファンデルポールが同時にアタックを仕掛けたが決まらない。向かい風が吹き付ける先行しにくい状況下で、5名がぎこちなくローテーションを回しながらラスト1kmアーチを通過した。
すると「可能な限りタイミングを待った」と言うベノートがアタックしたが、クールネ〜ブリュッセル〜クールネ覇者のユンゲルスが確実にチェック。この瞬間をベノートは「僕が捕まっても誰もカウンターで飛び出さなかったので驚いた。全員がスプリントを待っていたんだ。これで今日勝つのは厳しいぞ、と直感したよ」と振り返っている。
最終コーナーを回って互いに見合う状況から、弾かれたようにスプリントしたのはテュルジだった。速度差を持って先頭に立ったものの、瞬間的な加速でファンデルポールがスリップストリームに潜り込む。ユンゲルスやペストルベルガーは出遅れ、ロングスプリントを続けるテュルジをリードアウトに使ったファンデルポールが悠々と先着。格の違いを見せつけるかのような試合運びでオランダ王者がワールドツアー初勝利を飾った。
自ら追走グループを作り、メイン集団からユンゲルスとベノートを合流させながらも得意パターンで勝利したファンデルポール。父アドリが2位止まりだったドワーズ・ドールで優勝した24歳は週末のフランドルにも出場予定だが、「今日よりもずっと距離が長いフランドルでは展開の予想がつきにくく、自分が優勝候補かどうかは定かではない」と控えめな言葉を残している。
18秒遅れたメイン集団先頭はロングスパートしたルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)。フィリップ・ジルベール(ベルギー)が途中リタイアするなどチームワークが不発に終わったドゥクーニンク・クイックステップは、3位にユンゲルスを送り込んだことで体裁を保った。
ドワーズ・ドール・フラーンデレン2019結果
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
Amazon.co.jp