2019/03/30(土) - 11:03
「ミニロンド」と呼ばれ、大一番に向けて重要なE3・ビンクバンククラシックでドゥクーニンク・クイックステップのチームプレーが炸裂。ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)の働きで脚を残したゼネク・スティバル(チェコ)が精鋭集団のスプリントを制した。
ロンド・ファン・フラーンデレンの9日前というタイミングで開催されるE3・ビンクバンククラシック(UCIワールドツアー)。昨年まで「レコードバンク・E3ハーレルベーケ」、2010年までE3プライス・フラーンデレンと呼ばれていた今年で62回目開催を迎える歴史あるセミクラシックレースだ。
60年代に建設されたアントワープとフランスを結ぶ主要高速道路の名称E3(現在のA14)を付けたレースは、昨年までの呼び名の通りウェストフランデレン州に位置するハーレルベーケを発着する。ロンド・ファン・フラーンデレンが9日後に迫ったタイミングで開催される石畳&急坂レースであるため、通称「ミニロンド」としても親しまれている。
204kmの道中には含まれる急坂は合計15箇所で、いずれも標高が低い丘を越えるものだが総獲得標高差は2,000mに達する。パテルベルグやオウデ・クワレモントといったロンド本戦に登場する難関石畳登坂も組み込まれるため、過去に上位に入った選手がそのまま本戦で活躍するすることが通例だ。今年も多数の重量級クラシックレーサーや、フランドルクラシックを得意とするスプリンター勢が名を連ねた。
プロコンチネンタルチームを中心としたアタック合戦の末、エスケープを成功させたのはハイメ・カストリリョ(スペイン、モビスター)やマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)、今年積極的なレースを見せている昨年TOJ美濃ステージ優勝者のミヒケル・レイム(イスラエルサイクリングアカデミー)ら8名。メイン集団のペースが緩んだことで5分ほどのリードを稼ぎ出したが、ドゥクーニンク・クイックステップのコントロールによってタイム差は3分台で推移した。
すると、112km地点のホトンドベルグ(距離1200m/平均4%/最大8%)を過ぎた下り区間で、セップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)が単独落車してしまう。集団のうねりを受けてハイスピードで路肩の溝に落ちたファンマルクはそのまま病院に運ばれ、痛みの激しい肋骨と膝、足首を検査したものの幸い骨折は無し。ただし捻った膝を回復させるためにEFエデュケーションファーストのクラシックエースは日曜日のヘント〜ウェヴェルヘムをスキップする予定だという。
レースが動いたのはトム・ボーネン(ベルギー)がアタックポイントとして好んだターインベルグ(距離650m/平均9.5%/最大18%)だった。今季初石畳レースのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がペースアップを行い、ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)など各チームのエース級選手が相次いで追従する。
60kmを残した登坂区間でボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が単独先行し、そのまま逃げグループに合流。強力な牽引力で難関パテルベルグ(700m/平均12%/最大20%)とオウデクワレモント(2200m/平均4.2%/最大11%)の連続登坂を終えると、ユンゲルスをフォローできたのは2017年U23世界選手権3位のマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)と、メイン集団から追走していたヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)とニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)のみ。続くカルネメルクベールストラート(1530m/平均4.9%/最大14%)でユンゲルスが独走に持ち込んだ。
パテルベルグとクワレモントはメイン集団にもダメージを与え、スティバルとサガン、イェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、そしてアルベルト・ベッティオール(イタリア、EFエデュケーションファースト)という各チームのエースが追走グループを形成する。更にその15秒後方には昨年覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)やイブ・ランパールト、フィリップ・ジルベール(共にベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が入った第2追走グループが生まれ、ドゥクーニンク・クイックステップはいかなる展開にも対応できる状況を作り上げた。
すると、最後の急坂ティーヘムベルグ(距離1000m/平均5.6%/最大9%)では、第1追走グループのファンアーフェルマートが猛烈にペースを上げたことでクークレールとナーセン、トレンティンが脱落。更に変速トラブルに見舞われたサガンも遅れ、背後のテルプストラグループに合流したものの、最終的にこのメンバーはいずれも勝負に絡むことはなかった。
50秒のリードで逃げ続けた先頭ユンゲルスだったが、ファンアーフェルマートの献身的な牽引もあって第1追走グループ(ファンアーフェルマート、スティバル、ファンアールト、ベッティオル)が残り7kmでキャッチ。第2追走グループ(ポリッツ、ヒルシ、トレンティン、ズッタリン、ナーセン)が追いつかないことを確認すると、数的有利に持ち込んだドゥクーニンク・クイックステップの二人が波状攻撃を仕掛けた。
残り3.5kmからまずはスティバルが、次いでユンゲルスが、更に再びスティバルがアタックしたものの、ファンアールトが追走したことで決まらない。牽制に陥ったことで再度ユンゲルスが復活し、ルクセンブルク王者先導でゴールスプリントが始まった。
ユンゲルスの番手に付けたファンアーフェルマートと、最後尾のベッティオルが同時にスプリントを開始。しかし伸びたのは、2度アタックを仕掛けながらも足を残したスティバルだった。前シクロクロス世界王者のファンアールトも並ぶことはできず、スティバルがオンループ・ヘットニュースブラッドに続くフランドルクラシック2勝目を達成。中盤からの完璧なチームワークを勝利で締めくくった。
「信じられないくらいハッピーだ!オンループとハレルベーケで勝つなんて信じられないけれど、チームの結束無くしては不可能だった。全員が勝てるだけの力があり、だからこそレースを作り出せている。特に今日はボブの働きが最高だったよ。彼に感謝を伝えたい」と、チームに感謝するスティバル。ドゥクーニンク・クイックステップはシーズン勝利記録をアスタナに並ぶ20勝にまで伸ばしている。
「レース中、ボブに対して調子が良ければ先行してくれと話した。彼のおかげで集団にプレッシャーを与え、僕としては重要な局面でのアタックについていくだけで良かった。捕まってからも"もし脚が残っていたらアタックしてほしい"と伝えて先頭に出てくれたのでライバルの脚も削れたし、もの凄いリードアウトでスプリントで僕が有利な状況を作り出してみせたんだ。最高にハッピーさ。僕らは今波に乗っている状態。これからのレースも楽しんでいきたい」(スティバル)。
スティバルの背後ではファンアールトとファンアーフェルマートが表彰台を抑え、1分遅れの追走グループではポリッツが先着。序盤の逃げから生き残ったヒルシは10位に入り、世界選U23銅メダルの実力を見せつけた。サガンやテルプストラ、ベノートらは遅れを取り戻すことはなかった。
ロンド・ファン・フラーンデレンの9日前というタイミングで開催されるE3・ビンクバンククラシック(UCIワールドツアー)。昨年まで「レコードバンク・E3ハーレルベーケ」、2010年までE3プライス・フラーンデレンと呼ばれていた今年で62回目開催を迎える歴史あるセミクラシックレースだ。
60年代に建設されたアントワープとフランスを結ぶ主要高速道路の名称E3(現在のA14)を付けたレースは、昨年までの呼び名の通りウェストフランデレン州に位置するハーレルベーケを発着する。ロンド・ファン・フラーンデレンが9日後に迫ったタイミングで開催される石畳&急坂レースであるため、通称「ミニロンド」としても親しまれている。
204kmの道中には含まれる急坂は合計15箇所で、いずれも標高が低い丘を越えるものだが総獲得標高差は2,000mに達する。パテルベルグやオウデ・クワレモントといったロンド本戦に登場する難関石畳登坂も組み込まれるため、過去に上位に入った選手がそのまま本戦で活躍するすることが通例だ。今年も多数の重量級クラシックレーサーや、フランドルクラシックを得意とするスプリンター勢が名を連ねた。
プロコンチネンタルチームを中心としたアタック合戦の末、エスケープを成功させたのはハイメ・カストリリョ(スペイン、モビスター)やマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)、今年積極的なレースを見せている昨年TOJ美濃ステージ優勝者のミヒケル・レイム(イスラエルサイクリングアカデミー)ら8名。メイン集団のペースが緩んだことで5分ほどのリードを稼ぎ出したが、ドゥクーニンク・クイックステップのコントロールによってタイム差は3分台で推移した。
すると、112km地点のホトンドベルグ(距離1200m/平均4%/最大8%)を過ぎた下り区間で、セップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)が単独落車してしまう。集団のうねりを受けてハイスピードで路肩の溝に落ちたファンマルクはそのまま病院に運ばれ、痛みの激しい肋骨と膝、足首を検査したものの幸い骨折は無し。ただし捻った膝を回復させるためにEFエデュケーションファーストのクラシックエースは日曜日のヘント〜ウェヴェルヘムをスキップする予定だという。
レースが動いたのはトム・ボーネン(ベルギー)がアタックポイントとして好んだターインベルグ(距離650m/平均9.5%/最大18%)だった。今季初石畳レースのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)やダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がペースアップを行い、ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)など各チームのエース級選手が相次いで追従する。
60kmを残した登坂区間でボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が単独先行し、そのまま逃げグループに合流。強力な牽引力で難関パテルベルグ(700m/平均12%/最大20%)とオウデクワレモント(2200m/平均4.2%/最大11%)の連続登坂を終えると、ユンゲルスをフォローできたのは2017年U23世界選手権3位のマルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ)と、メイン集団から追走していたヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)とニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)のみ。続くカルネメルクベールストラート(1530m/平均4.9%/最大14%)でユンゲルスが独走に持ち込んだ。
パテルベルグとクワレモントはメイン集団にもダメージを与え、スティバルとサガン、イェンス・クークレール(ベルギー、ロット・スーダル)、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)、そしてアルベルト・ベッティオール(イタリア、EFエデュケーションファースト)という各チームのエースが追走グループを形成する。更にその15秒後方には昨年覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)やイブ・ランパールト、フィリップ・ジルベール(共にベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が入った第2追走グループが生まれ、ドゥクーニンク・クイックステップはいかなる展開にも対応できる状況を作り上げた。
すると、最後の急坂ティーヘムベルグ(距離1000m/平均5.6%/最大9%)では、第1追走グループのファンアーフェルマートが猛烈にペースを上げたことでクークレールとナーセン、トレンティンが脱落。更に変速トラブルに見舞われたサガンも遅れ、背後のテルプストラグループに合流したものの、最終的にこのメンバーはいずれも勝負に絡むことはなかった。
50秒のリードで逃げ続けた先頭ユンゲルスだったが、ファンアーフェルマートの献身的な牽引もあって第1追走グループ(ファンアーフェルマート、スティバル、ファンアールト、ベッティオル)が残り7kmでキャッチ。第2追走グループ(ポリッツ、ヒルシ、トレンティン、ズッタリン、ナーセン)が追いつかないことを確認すると、数的有利に持ち込んだドゥクーニンク・クイックステップの二人が波状攻撃を仕掛けた。
残り3.5kmからまずはスティバルが、次いでユンゲルスが、更に再びスティバルがアタックしたものの、ファンアールトが追走したことで決まらない。牽制に陥ったことで再度ユンゲルスが復活し、ルクセンブルク王者先導でゴールスプリントが始まった。
ユンゲルスの番手に付けたファンアーフェルマートと、最後尾のベッティオルが同時にスプリントを開始。しかし伸びたのは、2度アタックを仕掛けながらも足を残したスティバルだった。前シクロクロス世界王者のファンアールトも並ぶことはできず、スティバルがオンループ・ヘットニュースブラッドに続くフランドルクラシック2勝目を達成。中盤からの完璧なチームワークを勝利で締めくくった。
「信じられないくらいハッピーだ!オンループとハレルベーケで勝つなんて信じられないけれど、チームの結束無くしては不可能だった。全員が勝てるだけの力があり、だからこそレースを作り出せている。特に今日はボブの働きが最高だったよ。彼に感謝を伝えたい」と、チームに感謝するスティバル。ドゥクーニンク・クイックステップはシーズン勝利記録をアスタナに並ぶ20勝にまで伸ばしている。
「レース中、ボブに対して調子が良ければ先行してくれと話した。彼のおかげで集団にプレッシャーを与え、僕としては重要な局面でのアタックについていくだけで良かった。捕まってからも"もし脚が残っていたらアタックしてほしい"と伝えて先頭に出てくれたのでライバルの脚も削れたし、もの凄いリードアウトでスプリントで僕が有利な状況を作り出してみせたんだ。最高にハッピーさ。僕らは今波に乗っている状態。これからのレースも楽しんでいきたい」(スティバル)。
スティバルの背後ではファンアールトとファンアーフェルマートが表彰台を抑え、1分遅れの追走グループではポリッツが先着。序盤の逃げから生き残ったヒルシは10位に入り、世界選U23銅メダルの実力を見せつけた。サガンやテルプストラ、ベノートらは遅れを取り戻すことはなかった。
E3・ビンクバンククラシック2019結果
1位 | ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 4h46'05" |
2位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) | |
3位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | |
4位 | アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト) | |
5位 | ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ) | +03" |
6位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) | +1'04" |
7位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) | |
8位 | オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) | |
9位 | ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) | |
10位 | マルク・ヒルシ(スイス、サンウェブ) |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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