2019/03/17(日) - 11:48
アルデンヌクラシックのような丘陵コースで行われたティレーノ〜アドリアティコ第4ステージは、最大勾配19%の急坂で形成された精鋭4名によるスプリント勝負に。独走逃げを試み、終盤に2度も落車しながらも勝負に残ったアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)が劇的なステージ優勝を飾った。
アップダウンとコーナーが連続するコース photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
ティレーノ〜アドリアティコ2019第4ステージ photo:RCS Sport
第4ステージ フィニッシュ手前プロフィール photo:RCS Sport
ウンブリア州からマルケ州に移動し、標高300mほどの丘を繋ぐように走るティレーノ〜アドリアティコ第4ステージ。距離221km、レース時間5時間以上という長丁場の獲得標高差は3,100mに達する。さらに終盤にかけてGPM※イ・カップチーニ(全長3.6km/平均勾配10.6km/最大勾配19%)の登りを含む全長9.25kmのフォッソンブローネ周回コースを2周(※GPMはグラン・プレミオ・モンターニャの略、つまりカテゴリー山岳)。2回目の頂上からフィニッシュまでは5.6kmしかないという刺激的なレイアウトが用意された。
序盤に飛び出したマークス・ブルグハート(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)、ロバート・パワー(オーストラリア、サンウェブ)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)ら10名がメイン集団から9分を超えるリードを得たものの、マルケ州特有の丘陵地帯に入るとタイム差は縮小する。ユンボ・ヴィズマやアスタナ、バーレーン・メリダが牽引するメイン集団は残り38km地点で全ての逃げを飲み込んだ。
ユンボ・ヴィズマを先頭にメイン集団が進む photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
春の新緑に覆われ始めた丘陵を進む photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が胃腸のトラブルによりレースを去る中、最大勾配が18%に達するGPMモンテグイドゥッチョで総合優勝候補たちが動く。数回のアタックの末に独走に持ち込んだのはアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)で、その後ろではリーダージャージのアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)、サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)らが追走グループを組織した。
先頭ルツェンコは独走のままフォッソンブローネのフィニッシュ地点(残り19km地点)を通過していく。その50秒後方では、協調体制を築くことができない追走グループは約40名のメイン集団に吸収され、ルツェンコ1名vs集団約50名という展開に。
メイン集団から54秒リードで1回目のGPMイ・カップチーニをクリアしたルツェンコだったが、下りコーナーで落車してしまう。フルブレーキングで減速しながらコーナー外側の斜面に倒れ込んだルツェンコはほぼリードを失うことなく再スタート。1分のリードで最終周回に突入した。
アスタナが積極的にメイン集団を牽引 photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
独走に持ち込んだアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
1回目のGPMイ・カップチーニの下りで落車したアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
徐々にルツェンコとの間合いを詰めるメイン集団では、ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)の献身的な引きが終わったところでログリッチェがアタック。この2回目のGPMイ・カップチーニでのログリッチェの動きにはフルサングとAイェーツがマークに入る。猛烈なペースで急坂を駆け上がったログリッチェ、フルサング、Aイェーツが、歯を食いしばる先頭ルツェンコを追い詰めるとともに、後方のデュムランやアラフィリップ、フォルモロらを突き放した。
大声援に包まれる頂上を独走で通過したルツェンコの12秒後方にはAイェーツ、ログリッチェ、フルサングの3名の姿。リードを全く失わないまま、最後の下り区間を安全に終えたルツェンコだったが、残り1.5km地点のコーナー出口で再び落車してしまう。この2度目の落車にもめげずすぐに再スタートしたルツェンコは、残り500m地点でついに追走3名に吸収された。
ステージ優勝争いは向い風が吹く平坦な最終ストレートでの4名によるスプリントに。ログリッチェとAイェーツのマークに徹したフルサングに有利なスプリントに持ち込まれると思われたが、残り100mを切ってから最初に仕掛けたルツェンコのスプリントが伸びた。
最後はログリッチェ、ルツェンコ、フルサング、Aイェーツが横並びでフィニッシュし、その中でカザフスタンチャンピオンが手を上げる。独走に持ち込み、2度落車し、スプリントで勝った。
GPMイ・カップチーニを先頭で登るアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
2回目のGPMイ・カップチーニでアタックするプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
精鋭4名によるスプリントでアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)が勝利 photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
「フィニッシュまで距離を残してアタックした時、誰も勝利を信じていなかったと思う。1回目の下りで砂利に滑ってしまって落車。残り1.5km地点での2回目の落車はなぜ起こったのか自分でも分からなかった。勝ちたいと願って走り続けた結果、果たすことができた本当に美しい勝利だ」と、ティレーノの歴史上初のカザフスタン人ステージ優勝者となったルツェンコは語る。
ルツェンコはアラフィリップと最多タイのシーズン5勝目。アスタナとドゥクーニンク・クイックステップもシーズン17勝で並んでいる。ボーナスタイムによって総合6位に順位を上げたルツェンコは「明日は今日よりも厳しいステージが待っている。今日の疲れと落車の影響が出るかもしれないけど、アスタナには好調のヤコブ・フルサングもいる。明日は彼の出番になると思う」とコメント。もう一人のエースであるフルサングは総合8位につけている。
「アップダウンの繰り返しで、コースは曲がりくねっていて、急勾配の登りも登場。まるでアルデンヌクラシックのような、とてもトリッキーなステージだった。ログリッチェの強力なアタックに対処することができたけど、ステージ優勝を逃してしまって残念な気持ち。今日は最も強い選手が勝った」と、ルツェンコの果敢な走りを讃えたのはリーダージャージを守ったAイェーツ。
第4ステージを終えて、総合2位ログリッチェと7秒、総合3位デュムランと50秒のタイム差をつけてリーダージャージを着るAイェーツは「春のステージレースで総合優勝を飾りたいと思っているけど、最終日に自分が苦手な真っ平らなタイムトライアルが設定されているティレーノでは難しいかもしれない。でも兄弟揃ってTT能力の改善に取り組んでいるので、体重60kg以下の選手にとっては悪くない走りができているはず」とコメントしている。
果敢な走りでステージ優勝を飾ったアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
リーダージャージを守ったアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
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ウンブリア州からマルケ州に移動し、標高300mほどの丘を繋ぐように走るティレーノ〜アドリアティコ第4ステージ。距離221km、レース時間5時間以上という長丁場の獲得標高差は3,100mに達する。さらに終盤にかけてGPM※イ・カップチーニ(全長3.6km/平均勾配10.6km/最大勾配19%)の登りを含む全長9.25kmのフォッソンブローネ周回コースを2周(※GPMはグラン・プレミオ・モンターニャの略、つまりカテゴリー山岳)。2回目の頂上からフィニッシュまでは5.6kmしかないという刺激的なレイアウトが用意された。
序盤に飛び出したマークス・ブルグハート(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)やジョセフ・ロスコフ(アメリカ、CCCチーム)、ロバート・パワー(オーストラリア、サンウェブ)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF)ら10名がメイン集団から9分を超えるリードを得たものの、マルケ州特有の丘陵地帯に入るとタイム差は縮小する。ユンボ・ヴィズマやアスタナ、バーレーン・メリダが牽引するメイン集団は残り38km地点で全ての逃げを飲み込んだ。
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ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が胃腸のトラブルによりレースを去る中、最大勾配が18%に達するGPMモンテグイドゥッチョで総合優勝候補たちが動く。数回のアタックの末に独走に持ち込んだのはアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)で、その後ろではリーダージャージのアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)、ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)、サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)らが追走グループを組織した。
先頭ルツェンコは独走のままフォッソンブローネのフィニッシュ地点(残り19km地点)を通過していく。その50秒後方では、協調体制を築くことができない追走グループは約40名のメイン集団に吸収され、ルツェンコ1名vs集団約50名という展開に。
メイン集団から54秒リードで1回目のGPMイ・カップチーニをクリアしたルツェンコだったが、下りコーナーで落車してしまう。フルブレーキングで減速しながらコーナー外側の斜面に倒れ込んだルツェンコはほぼリードを失うことなく再スタート。1分のリードで最終周回に突入した。
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徐々にルツェンコとの間合いを詰めるメイン集団では、ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)の献身的な引きが終わったところでログリッチェがアタック。この2回目のGPMイ・カップチーニでのログリッチェの動きにはフルサングとAイェーツがマークに入る。猛烈なペースで急坂を駆け上がったログリッチェ、フルサング、Aイェーツが、歯を食いしばる先頭ルツェンコを追い詰めるとともに、後方のデュムランやアラフィリップ、フォルモロらを突き放した。
大声援に包まれる頂上を独走で通過したルツェンコの12秒後方にはAイェーツ、ログリッチェ、フルサングの3名の姿。リードを全く失わないまま、最後の下り区間を安全に終えたルツェンコだったが、残り1.5km地点のコーナー出口で再び落車してしまう。この2度目の落車にもめげずすぐに再スタートしたルツェンコは、残り500m地点でついに追走3名に吸収された。
ステージ優勝争いは向い風が吹く平坦な最終ストレートでの4名によるスプリントに。ログリッチェとAイェーツのマークに徹したフルサングに有利なスプリントに持ち込まれると思われたが、残り100mを切ってから最初に仕掛けたルツェンコのスプリントが伸びた。
最後はログリッチェ、ルツェンコ、フルサング、Aイェーツが横並びでフィニッシュし、その中でカザフスタンチャンピオンが手を上げる。独走に持ち込み、2度落車し、スプリントで勝った。
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「フィニッシュまで距離を残してアタックした時、誰も勝利を信じていなかったと思う。1回目の下りで砂利に滑ってしまって落車。残り1.5km地点での2回目の落車はなぜ起こったのか自分でも分からなかった。勝ちたいと願って走り続けた結果、果たすことができた本当に美しい勝利だ」と、ティレーノの歴史上初のカザフスタン人ステージ優勝者となったルツェンコは語る。
ルツェンコはアラフィリップと最多タイのシーズン5勝目。アスタナとドゥクーニンク・クイックステップもシーズン17勝で並んでいる。ボーナスタイムによって総合6位に順位を上げたルツェンコは「明日は今日よりも厳しいステージが待っている。今日の疲れと落車の影響が出るかもしれないけど、アスタナには好調のヤコブ・フルサングもいる。明日は彼の出番になると思う」とコメント。もう一人のエースであるフルサングは総合8位につけている。
「アップダウンの繰り返しで、コースは曲がりくねっていて、急勾配の登りも登場。まるでアルデンヌクラシックのような、とてもトリッキーなステージだった。ログリッチェの強力なアタックに対処することができたけど、ステージ優勝を逃してしまって残念な気持ち。今日は最も強い選手が勝った」と、ルツェンコの果敢な走りを讃えたのはリーダージャージを守ったAイェーツ。
第4ステージを終えて、総合2位ログリッチェと7秒、総合3位デュムランと50秒のタイム差をつけてリーダージャージを着るAイェーツは「春のステージレースで総合優勝を飾りたいと思っているけど、最終日に自分が苦手な真っ平らなタイムトライアルが設定されているティレーノでは難しいかもしれない。でも兄弟揃ってTT能力の改善に取り組んでいるので、体重60kg以下の選手にとっては悪くない走りができているはず」とコメントしている。
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ティレーノ〜アドリアティコ2019第4ステージ結果
1位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 5:16:29 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | |
3位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | |
4位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | |
5位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:09 |
6位 | アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト) | 0:00:23 |
7位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) | |
8位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) | |
9位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
10位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) |
個人総合成績
1位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 15:53:42 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:07 |
3位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | 0:00:50 |
4位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 0:00:56 |
5位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | |
6位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 0:01:06 |
7位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) | 0:01:16 |
8位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 0:01:19 |
9位 | アルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト) | 0:01:21 |
10位 | サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) | 0:01:25 |
ポイント賞
1位 | ミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSF) | 21pts |
2位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 17pts |
3位 | アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 17pts |
山岳賞
1位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 35pts |
2位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 20pts |
3位 | ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、コフィディス・ソルシオンクレディ) | 20pts |
ヤングライダー賞
1位 | サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) | 15:54:38 |
2位 | ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル) | 0:01:01 |
3位 | マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) | 0:01:15 |
チーム総合成績
1位 | EFエデュケーションファースト | 23:01:26 |
2位 | トレック・セガフレード | 0:02:15 |
3位 | ロット・スーダル | 0:04:53 |
text:Kei Tsuji
photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
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