スイスの総合バイクブランド、BMC。数あるスポーツバイクブランドの中でも、最先端の開発力を誇る同社の技術の粋を結集したアルミバイク「Teammachine ALR ONE」をインプレッション。



BMC Teammachine ALR ONEBMC Teammachine ALR ONE (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
数多あるブランドの中でも、バイク開発に対する妥協の無さで知られるBMC。ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲ、パテック・フィリップという世界三大高級時計メーカーが本拠を置くスイスならではの精密で真摯なクラフトマンシップは、自転車産業という分野においても通奏低音として流れ続けている。

常にレースの最前線で戦う中で磨き上げられてきたのがBMCのレーシングバイクであり、その中でも最も選手らの使用率の高いモデルがオールラウンドバイクであるTeammachine SLR01だ。超高速コンピューターによる幾万通りものモデル解析から導き出された最適解をカタチにしたレーシングバイクは、世界最高峰の選手たちの走りを受け止め、勝利に導く名馬として多くの名声を勝ち取ってきた。

コンパクトなリアトライアングルが反応性を高めているコンパクトなリアトライアングルが反応性を高めている SLR01と同形状のD型フルカーボンシートポストが快適性を高めるSLR01と同形状のD型フルカーボンシートポストが快適性を高める フロント周りの安定感を高める上位モデル譲りのフルカーボンフォークフロント周りの安定感を高める上位モデル譲りのフルカーボンフォーク

カデル・エヴァンスのツール・ド・フランス制覇を筆頭に、リッチー・ポートやグレッグ・ヴァンアーヴェルマートといった名選手を擁し、数々のレースにおいて輝かしい戦績を残し続けてきたBMCレーシング。2019シーズンにおいて、BMCはメインスポンサーとしてチームを支えることは無くなったが、ディメンションデータへとバイクを供給しており、プロトンの中でも依然として大きな存在感を放っている。

そんなハイエンドレーシングバイク、SLR01の血統を受け継ぎつつ、フレームマテリアルをアルミニウムへと置き換えることで、その優れた設計が生み出す走行性能を身近に味わえるように用意されたのがTeammachineシリーズの末弟、ALRだ。

シートクランプはフレーム内蔵でトップチューブ下から締めていくシートクランプはフレーム内蔵でトップチューブ下から締めていく ハイドロフォーミングで滑らかに処理されたチューブ結合部ハイドロフォーミングで滑らかに処理されたチューブ結合部

オーソドックスな形状の大口径ダウンチューブがバイクの存在感を高めるオーソドックスな形状の大口径ダウンチューブがバイクの存在感を高める BMCオリジナルのアルミ製ハンドル・ステムをアセンブルBMCオリジナルのアルミ製ハンドル・ステムをアセンブル

全体的なフォルムは旗艦モデルであるSLR01とほぼ同一であり、シルエットだけを抜き出してしまえば区別がつかないほど、色濃く設計を受け継いでいる。ボリューミーなダウンチューブ、細身のシートステー、コンパクトなリアトライアングル、そしてTeammachineシリーズの特徴であるiSCテクノロジーをアルミで再現したトップチューブとシートチューブの集合部の造形。

まさしくTeammachineの正統な血筋であることが随所に窺える設計であり、アルミバイクとは思えない手の込んだチュービングは、BMCのロードバイクラインアップにおいてこのモデルがエントリーバイクとして用意されていることを忘れてしまいそうになるほど。

クランク以外のコンポーネントはシマノ105で統一クランク以外のコンポーネントはシマノ105で統一 BMCらしいレッドとブラックカラーのペイントをあしらうBMCらしいレッドとブラックカラーのペイントをあしらう

メインに用いられるアルミチューブも最高レベルのものが使用されている。各サイズに合わせて加工された超軽量トリプルバテッドチューブをハイドロフォーミングで成型し、スムースウェルディングで仕上げる。カーボンバイクと見紛うばかりの複雑な造形と滑らかな接合部分は、走行性能はもちろん所有欲にも訴えかけてくる審美的要素も併せ持つ。

SLRシリーズのためにACEテクノロジーを駆使して開発されたフルカーボンのフロントフォークがこのバイクにも奢られ、上位機種譲りの優れたハンドリングを実現する。ライディングフィールに大きく影響する部分に妥協の無いパーツをアセンブルするのは、いかにもBMCらしい。

D型シートポストに合わせパイプに形状変化を加えたシートチューブD型シートポストに合わせパイプに形状変化を加えたシートチューブ SLR01を基準としたジオメトリーを採用しつつヘッドチューブは5mmほど長い設計だSLR01を基準としたジオメトリーを採用しつつヘッドチューブは5mmほど長い設計だ オーソドックスなアルミリムホイールを装備オーソドックスなアルミリムホイールを装備

シートポストもフォークと同じくACEテクノロジーによって設計されたD型断面を持つ専用品がインストールされる。アルミバイクでありながら臼式のインテグレートシートクランプを採用し、シートポストのしなり量を確保する設計によって、軽さと振動吸収性、そしてスマートなルックスを手に入れた。

上述のACEカーボンフォーク及びシートポスト、そして極細のシートステイという設計によって、ALRはアルミバイクの枠を超える振動吸収性を獲得している。BMCがTCC(チューンド・コンプライアン・コンセプト)と呼ぶこの設計によって路面からの衝撃を緩和し、ライダーの疲労を抑えつつフィニッシュラインへと連れていってくれるのだ。

ワイドタイヤの流行に合わせ、タイヤクリアランスも28mmまで確保。ケーブルルーティングもダウンチューブ/トップチューブから内装されるデザインとされ、より現代的なシルエットを手に入れた。SLRシリーズのアップデートに合わせ、全方位に進化した末弟モデルALR。同年に生まれ変わったシマノ105をメインコンポーネントとする完成車をインプレッションしよう。



― インプレッション

「アルミでも見劣りしないトップモデル譲りのデザインが好印象」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

「アルミでも見劣りしないトップモデル譲りのデザインが好印象」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)「アルミでも見劣りしないトップモデル譲りのデザインが好印象」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) アルミモデルながらトップグレードのTeammachine SLR01と同様のフレーム形状というのが所有欲をそそりますね。剛性や振動吸収といったフレーム性能も申し分ないですし、初めてのロードバイクとして最適な良いバイクだと思います。

昨今のパフォーマンスロードに多用されるコンパクトなリアトライアングルデザインですが、BMCは各社に先駆けて取り入れていましたし、先見の明があるブランドだと関心させられますよね。このTeammachine ALRもそのデザインを受け継いでおり、快適性や反応性といったフレーム性能のバランスを高めてくれていると感じました。

アルミロードということで、カーボンモデルと比べてしまうとやはり重量は気になります。ですがその分バイクの挙動そのものに安定感が生まれている感覚があり、むしろ初心者の方には安心してロードバイクを楽しんで貰えるのではないかと思いました。軽量なバイクだと下りのコーナーリングでヒラヒラするような感覚があったり、ハンドリングに安定感がなかったりするものもありますが、このバイクはそういったこともなく扱いやすいと思いますね。

シマノ105組みの完成車ですが、ブレーキキャリパーまで同グレードで揃えてあるので安心ですね。スプロケットも11-32Tと非常にワイドなギアがセットされており、ビギナーでも登り坂でのギア選択に余裕が持てると思います。

トップモデル譲りのD型シートポストも装備されており、路面からの振動を和らげてくれる働きをしてくれますね。加えて28Cまで装備可能なタイヤクリアランスを備えているとのことで、少し太めのタイヤを組み合わせてあげればロングライドなどにも最適だと思います。

「高度な技術で実現した滑らかなフィーリング」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

金属フレームらしいしっかり感がありつつも、アルミの振動吸収性の悪さを素材の組み合わせの工夫や形状によって補おうという意匠が見えますね。そのためアルミロードにも関わらず滑らかな乗り味に仕上がっており、不快に感じるような尖った剛性感が削ぎ落とされていると感じました。

「高度な技術で実現した滑らかなフィーリング」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)「高度な技術で実現した滑らかなフィーリング」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)
アルミロードというと鋭敏な剛性感を感じるバイクが多いと思うのですが、このTeammachine ALRはしっとりとした乗り味が印象的です。アルミの不快な部分を削り、カーボンのような滑らかさを出そうと演出されています。踏み込んだ時もそうですし、乗り心地としてもそういったイメージを受けますね。

そのため、踏んでみるとアルミロードらしい初速の反応感は抑え気味です。ただ、スピードが上がり巡航していくとフレームの軸がしっかりとあるため、パワーを受け止めて推進力に変えていってくれるような走りを見せてくれました。フレームの奥底の重厚感はアルミロードならではといったところでしょうか。

また、柔軟性のある剛性に調整されているおかげか、路面からの振動をフレームが吸収してくれる感覚もあります。アルミバイクですが長距離を走るシチュエーションにも最適でしょう。一方、登りのシーンではフレーム重量がやや気になるところかと。軽量ホイールにアップグレードするなどでその当たりは改善できるでしょうし、カスタマイズしていく楽しみも持ち合わせていると思いますね。

初めてのロードバイクとして高性能なアルミロードは非常に良い選択肢だと思いますね。安価なカーボンロードもありますが、素材の性質上、慎重な扱いが必要になってきます。その分、アルミロードでしたら頑丈ですし、そこまで気負わなくロードバイクを楽しむことが出来るので、気軽にサイクリングを楽しむ1台として重宝してくれそうです。

BMC Teammachine ALR ONEBMC Teammachine ALR ONE (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
BMC Teammachine ALR ONE
フレーム:トリップルバテッド、ハイドロフォームド アルミ
重量:フレーム1,165g(54サイズ、塗装済小物込み)、フォーク375g
コンポーネント:シマノ105
カラー:オフホワイト
サイズ:47、51、54、57
価格:180,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) 遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

新潟県長岡市に店舗を構えるサイクルワークス Fin’sの店長。学生時代にBMXから始まり、MTBやロードバイクまで幅広く自転車を楽しむバリバリの走れる系店長。2012年には全日本選手権ロードに出場した経験も。お店は完璧なメカニックサービスを提供するべく、クオリティの高い整備が評判だ。ショップ主催のサイクリングやレース活動に積極的で、初めての人から実業団レースで活躍したい人まで手厚いサポートを心がける。

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サイクルワークス Fin’s HP

宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi) 宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

千葉県流山市にある「SPORTS CYCLE SHOP Swacchi」のスタッフ。自転車歴は95年からはじめて、2019年で25年目を迎える。レース活動も行っており、ニセコクラシックやツール・ド・おきなわ、実業団レースなどにも積極的に出場。日本体育協会自転車公認コーチの資格を有し、ロードバイクスクールの開催にも力を入れる。週末はショップライドをアテンドし、ショップのお客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。

SPORTS CYCLE SHOP Swacchi HP


text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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