ジャイアントPROPELのリムブレーキ仕様が、2019年モデルでフレーム形状を刷新。昨年新登場したPROPEL DISCのデザインを引き継ぎ速さに磨きをかけている。その中でも、22万円という高いコストパフォーマンスを実現したミドルグレード「PROPEL ADVANCED 2」をインプレッション。



ジャイアント PROPEL ADVANCED 2ジャイアント PROPEL ADVANCED 2 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
世界最大規模を誇る総合バイクメーカーのジャイアント。今季はBMCレーシングの後継チームとして誕生したCCCチームをサポートし、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー)を筆頭とした選手らが、オレンジ色のジャージとともにオールブラックカラーのジャイアントバイクで世界トップレースを駆ける。

サンウェブ時代からそうであったように、チームのメインバイクはオールラウンドモデルのTCRが選択されているが、過去平坦ステージで度々投入されてきたのがエアロロードの「PROPEL(プロペル)」である。その初登場は2013年。各社がオールラウンド、エアロ、エンデュランスの3本柱を打ち立てる中、TCRとDEFYに続くエアロカテゴリーのバイクとしてラインアップに加えられたのがPROPELであった。

コンパクトなリア三角のデザインは先代から受け継ぐものコンパクトなリア三角のデザインは先代から受け継ぐもの PROPEL DISCより形状をアップデートしたVECTOR COMPOSITEシートピラーが空力性能を高めるPROPEL DISCより形状をアップデートしたVECTOR COMPOSITEシートピラーが空力性能を高める 極太のエアロ形状を採用したストレートフォーク。コラムはアルミタイプだ極太のエアロ形状を採用したストレートフォーク。コラムはアルミタイプだ

スプリンターであるマルセル・キッテル(当時ジャイアント・アルペシン)も愛用したPROPELだが、4年の期間を経て2017年にフルモデルチェンジ。時代の流れに沿ってディスクブレーキ専用に開発されたPROPEL DISCとして生まれ変わり新登場した。さらに2019年モデルでは、リムブレーキモデルも追従してPROPEL DISCと同様のフレーム形状へとアップデートされている。

そんな中今回インプレッションを行ったのは、末弟グレードに当たるシマノ105完成車の「PROPEL ADVANCED 2」だ。フルカーボンフレームにセミエアロホイールとチューブレスレディタイヤを標準装備しながらも、22万円という圧倒的なコストパフォーマンスを実現しているモデルである。

アグレッシブな走りに最適なFORWARDタイプのサドルをアセンブルアグレッシブな走りに最適なFORWARDタイプのサドルをアセンブル ハンドル、ステムはジャイアントのアルミグレードCONTACTを装備ハンドル、ステムはジャイアントのアルミグレードCONTACTを装備

ブレーキキャリパー以外のコンポーネントはシマノ105で統一されるブレーキキャリパー以外のコンポーネントはシマノ105で統一される ジャイアントらしさが出るブルーのカラーリングジャイアントらしさが出るブルーのカラーリング

フランス・マニクールサーキット内の風洞実験施設で空力性能を煮詰めた「AeroSystem シェイプ」を各チューブに採用。先代に比べ断面形状をワイドに、かつ前後に短くしたカムテール状のチュービングを施すことで、横風時の乱流発生を抑えエアロダイナミクスをさらに強化させている。

ホリゾンタルなトップチューブやコンパクトなリア三角、後輪に沿って切り欠きされたシートチューブなどエアロロードらしい要素は先代から受け継ぐもの。ブレーキもフレームと一体化するVブレーキ方式を採用したジャイアント独自の「SPEED CONTROL SL」とし、フォークとシートステー後方に隠れるように装着されることで空気抵抗を抑えている。

コラム後方からシフトケーブルが内装される。コラムスペーサーも専用形状だコラム後方からシフトケーブルが内装される。コラムスペーサーも専用形状だ 40mmハイトのセミエアロホイールに、チューブレスレディタイヤを装備する40mmハイトのセミエアロホイールに、チューブレスレディタイヤを装備する

3種類のグレードでカーボンフレームを展開するジャイアントだが、PROPEL ADVANCED 2はモデル名の通りミドル帯の”Advanced”グレードフレームを採用。幅広いレベルのライダーにマッチする剛性感に仕上がる。PROPEL DISCで刷新された「VECTOR COMPOSITE」と呼ばれる新形状のカーボンシートピラーが装備され、こちらも空力性能向上に寄与している。

極太のエアロブレード形状を持ったフロントフォークは、アルミコラムのグレードを装備しコストダウンを図る。ヘッドの規格はジャイアント独自のOverDrive2ではなく、一般的なステムが使用可能な1-1/8インチ径コラムの「OverDrive」としつつ、専用形状のコラムスペーサーをアセンブルする部分からもパッケージへの細かなこだわりが見て取れる。

シートステーに隠れるように配置されたリアブレーキが空気抵抗を抑えるシートステーに隠れるように配置されたリアブレーキが空気抵抗を抑える 後輪に沿って切り欠きされたシートチューブ後輪に沿って切り欠きされたシートチューブ 風洞実験施設でエアロダイナミクスを煮詰めたAeroSystem シェイプを採用する風洞実験施設でエアロダイナミクスを煮詰めたAeroSystem シェイプを採用する

各種パーツはジャイアントオリジナル品を合わせる。注目はエアロフレームに合わせて、初めからセミエアロホイールが装着される点だろう。40mmハイトのアルミリムを採用しており、エアロロードのルックスをさらに引き上げている。またチューブレスレディタイヤの「GAVIA AC 1」が標準装備される点もポイントだ。

ブレーキキャリパー以外のコンポーネントはシマノ105で統一。各グレードごとにフレームカラーが塗り分けられており、PROPEL ADVANCED 2はブランドカラーであるブルーを纏いジャイアントらしい1台に仕上がる。465、500、520、545mmの4サイズ展開で、完成車重量は8.4kg(500mm)だ。それでは、インプレッションに移ろう。



― インプレッション

「一般ライダーにマッチした剛性感で気持ちの良い加速が持ち味の1台」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

BB周りの剛性感がアマチュアレーサーにとって丁度良く、踏み込むとしっかりと加速しながらもフレームが硬すぎないので反発も少なく気持ち良いですね。エアロロードとして空力性能も高めですから平坦でアドバンテージを感じる事ができました。フラットコースでの高速巡航やスプリントで効果を発揮してくれるだろうと思いますね。

「一般ライダーにマッチした剛性感で気持ちの良い加速が持ち味の1台」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)「一般ライダーにマッチした剛性感で気持ちの良い加速が持ち味の1台」遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) 例えばコーナーの立ち上がりで加速が必要なクリテリウムやロードレースのアタック合戦など、何度も加速しなければいけないようなシチュエーションでスピードが伸びていく感覚を強く受けるでしょう。加えてそこまで足への反発もないので、持久戦となっても最後まで食らいつくことが出来ます。

トップクラスのハイエンドレーシングバイクと比べれば剛性面で劣る部分ももちろん出てきますが、多くの人はこのくらいの硬さで満足できると思います。少なくとも私はこのバイクで十分レースすることができると感じました。

登りに関しては勾配が上がってくるとフレームの重さを感じますね。ただ、緩めの勾配や登り返しのシーンでは適切なギア選択をすれば違和感なく登ってくれます。重量的な部分はよりハイエンドなパーツに交換していくことで7kg前半くらいの重量まで軽量化することが出来ると思いますので、カスタマイズを楽しみながら登坂性能を向上させていくのも良いでしょうね。

快適性に関しては、標準装備のチューブレスレディタイヤが効果を発揮してくれているように感じます。エンデュランスバイクではないので、非常に快適とまでは言えませんが、レースバイクとして必要十分なレベルだと思います。これなら平坦区間をゆっくりのんびり走りたい方にとっても良いバイクだと思いますね。

このバイクが最適な人は3種類に分けられるかもしれません。レースに興味があり1台目としてエアロカーボンロードが欲しい人、アルミロードからステップアップとしてエアロカーボンロードに乗り換えたい人、平坦区間のロングライドを楽しんでいきたいけど、格好いいバイクが欲しい人という3種類ですね。かなり多くの人が対象になってくるのかもしれないですが、それくらい乗りやすいカーボンロードだと思いました。

「縦には強く横にはしなやかなエアロロードらしいバイク」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

乗ってみた印象としてはエアロロードらしいバイクだなと思いました。縦には強く横にはしなやかで1世代前のエアロロードのような感じですね。ただこのしなやかな横剛性が快適性向上にも一役買ってくれ、乗り心地も良いのが印象的です。加えてエアロダイナミクスの良さも感じることができ、バランスの良い仕上がりだなと感じました。

「縦には強く横にはしなやかなエアロロードらしいバイク」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)「縦には強く横にはしなやかなエアロロードらしいバイク」宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)
縦には硬いですが、横方向には力が逃げる感覚もあるので、強引に踏むという走り方には向いていません。ですので少し丁寧なペダリングを意識して回してあげると気持ち良く加速していきます。ダッシュする時は回転を意識した踏み込み方が必要になってきますね。また、フロントフォークの剛性感もしっかりしており、下ハンドルを握って前荷重でもがくと加速に繋がっていく感覚が味わえます。

登りはエアロロードとして満足できるレベルにあると思います。逆にマッシブなエアロルックスでありながら軽快に登る印象すらありますね。重量的な重さもあまり感じませんでしたし、登坂性能は高いと言えるでしょう。平坦も登りもこなせるオールラウンドなエアロロードだと思います。

快適性に関してはカーボンレーシングロードとして必要十分の性能があります。フロント周りが硬めである一方、リアは振動をいなしてくれる印象で乗り心地の良さに繋がっていると感じました。

ブレーキシステムは1世代前のVブレーキタイプのエアロロードと比べてもしっかりと効くようになったと思います。レースでしっかりと使える水準まで高めてあるように感じますね。また、ハンドリングに関してはフロントフォークがしっかりとしていることもあり、安定感のあるコーナリングが可能です。

全体的にはレーシーな乗り心地ですから、やはりレースで使用して欲しいバイクですね。硬すぎない剛性感なので長めのレースで活きてくると思います。対して短めのレースで何度も加速していくようなシーンでも前荷重で回していけば対応可能ですし、クリテリウムやアップダウンのあるコースでも楽しめると思います。レース参加を見据えた1台に、またサーキットエンデューロを楽しみたい人には最適な選択肢となるでしょう。

ジャイアント PROPEL ADVANCED 2ジャイアント PROPEL ADVANCED 2 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ジャイアント PROPEL ADVANCED 2
フレーム:Advanced-Grade Composite,VECTOR Composite Seat Pillar
フォーク:Advanced-Grade Composite,Aluminum OverDrive Column
ドライブトレイン:シマノ 105
ブレーキ:シマノ 105 + ジャイアント SPEED CONTROL SL
タイヤ:ジャイアント GAVIA AC 1 700x25C Tubeless Ready
サイズ:465(XS)、500(S)、520(M)、545(ML)mm
重 量:8.4kg(500mm)
価格:220,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)遠藤健太(サイクルワークス Fin’s) 遠藤健太(サイクルワークス Fin’s)

新潟県長岡市に店舗を構えるサイクルワークス Fin’sの店長。学生時代にBMXから始まり、MTBやロードバイクまで幅広く自転車を楽しむバリバリの走れる系店長。2012年には全日本選手権ロードに出場した経験も。お店は完璧なメカニックサービスを提供するべく、クオリティの高い整備が評判だ。ショップ主催のサイクリングやレース活動に積極的で、初めての人から実業団レースで活躍したい人まで手厚いサポートを心がける。

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サイクルワークス Fin’s HP

宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi) 宗吉貞幸(SPORTS CYCLE SHOP Swacchi)

千葉県流山市にある「SPORTS CYCLE SHOP Swacchi」のスタッフ。自転車歴は95年からはじめて、2019年で25年目を迎える。レース活動も行っており、ニセコクラシックやツール・ド・おきなわ、実業団レースなどにも積極的に出場。日本体育協会自転車公認コーチの資格を有し、ロードバイクスクールの開催にも力を入れる。週末はショップライドをアテンドし、ショップのお客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視している。

SPORTS CYCLE SHOP Swacchi HP


text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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