2019/01/13(日) - 09:45
真夏の南オーストラリア州で繰り広げられる8日間の戦い。1月13日から20日までサントス・ツアー・ダウンアンダーが開催される。サガンやポート、ユアン、ヴィヴィアーニ、新城幸也が出場するUCIワールドツアー初戦の注目選手やコースの特徴などを開幕前にチェックしておきましょう。
最難関ウィランガヒルが最終日に登場
南半球最大のロードレースとしての格式を誇るサントス・ツアー・ダウンアンダーが初開催されたのは1999年のこと。1985年から1995年までアデレード市内で開催されていたF1オーストラリアGPが1996年にメルボルンのアルバートパークに移ったことに伴い、南オーストラリア州観光局のバックアップを受け、その代替イベントとして誕生した。当初はカテゴリーの低い国内選手向けのステージレースとして開催されたが徐々に規模を拡大。2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たし、ハイシーズンに向けて早い時期に乗り込みを行いたい欧米選手のシーズンデビュー戦としてのポジションを確立した。
選手やスタッフから運営に関して高い評価を得ているダウンアンダーだが、同時にファンにとっても観戦がしやすいレースとして知られている。トップ選手が揃うステージレースながら、アデレードに滞在すればほぼ毎ステージ自走で観戦ポイントに向かうことが可能。そのためオーストラリア各地から多くのサイクリストがアデレードに駆けつけ、1週間ライドをしながらレースを観戦するスタイルがすっかり定着した。オーストラリアの自転車界にとっても、集客や注目を集めることのできる重要なイベントでもある。
「ダウンアンダー(Down Under)」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。大きな気温差に慣れ、10時間近い時差を解消するために多くの選手たちが時間に余裕をもって現地入りしている。なお、日本との時差は+1.5時間(現在はサマータイム)だ。
南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛りで、連日気温が40度を超えることもしばしば。概ね、海から西風が吹けば気温が下がり、内陸から東風が吹けば気温が上がる。風向きによってダイナミックに気温が上下するのが特徴で、男子レース開催期間の気温は37度から13度を行ったり来たり。Tシャツが真っ白になるような灼熱の日の翌朝にダウンジャケットが必要なほど冷え込むことも。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高600m程度。コースの大部分を占めるのは、海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯だ。
8日間の戦いはアデレード市内のクリテリウムで幕開ける。ダウンアンダー・クラシックと名付けられたハイスピードレースはUCIワールドツアーに含まれておらず、本戦の総合成績には反映されない。とは言ってもシーズン初戦の初日とあって、スプリンターたちにとっては何としても勝って最高の形でシーズンスタートを切りたいところ。ロビー・マキュアンの言葉を借りると「本戦の第1ステージよりも勝っておきたいレース」だ。
アデレード近郊を発着し、中盤にかけてアデレードヒルズを走る第1ステージはピュアスプリンター向き。風が吹く地域として知られるバロッサバレーを走る第2ステージも集団スプリントが予想されているが、フィニッシュ地点アンガストンに向かって緩斜面が続くため軽量級のスプリンターにチャンスが回ってくる。
総合争いが動き出すのは第3ステージと第4ステージ。高低差100mほどのアップダウンが組み込まれた周回コースを7周してフィニッシュを迎える第3ステージの獲得標高差は3,337mに達するため、総合優勝候補が絞られるのは間違いない。そして第4ステージの残り6km地点にはKOMコークスクリュー(平均勾配9%/登坂距離2.5km)が登場。「コルク抜き」に例えられるコーナーが連続する登りでアタックがかかり、そこからハイスピードダウンヒルを経てフィニッシュを迎える。
大きく南下する第5ステージはピュアスプリンターでもこなせる難易度だが、後半にかけて風が強い一帯を走るため総合上位陣は気が抜けない。南風が吹けばエシュロンが形成され、致命的なタイム差が生まれることも考えられる。そのため、年々クライマー向きに偏ってきているダウンアンダーでも、総合狙いのチームは大柄なルーラーをしっかりとメンバー入りさせている。
長年にわたって最終ステージはアデレード市街地周回コースで開催されてきたが、2019年は最難関ウィランガヒルの山頂フィニッシュを最終日に持ってきた。KOMウィランガヒル(平均勾配7.5%/登坂距離3.0km)を2回登るレイアウトは例年同様。アデレードから自走で駆けつけるサイクリストに埋め尽くされた登りで最後の登坂バトルが繰り広げられる。
最難関ウィランガヒルが最終日に登場
南半球最大のロードレースとしての格式を誇るサントス・ツアー・ダウンアンダーが初開催されたのは1999年のこと。1985年から1995年までアデレード市内で開催されていたF1オーストラリアGPが1996年にメルボルンのアルバートパークに移ったことに伴い、南オーストラリア州観光局のバックアップを受け、その代替イベントとして誕生した。当初はカテゴリーの低い国内選手向けのステージレースとして開催されたが徐々に規模を拡大。2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たし、ハイシーズンに向けて早い時期に乗り込みを行いたい欧米選手のシーズンデビュー戦としてのポジションを確立した。
選手やスタッフから運営に関して高い評価を得ているダウンアンダーだが、同時にファンにとっても観戦がしやすいレースとして知られている。トップ選手が揃うステージレースながら、アデレードに滞在すればほぼ毎ステージ自走で観戦ポイントに向かうことが可能。そのためオーストラリア各地から多くのサイクリストがアデレードに駆けつけ、1週間ライドをしながらレースを観戦するスタイルがすっかり定着した。オーストラリアの自転車界にとっても、集客や注目を集めることのできる重要なイベントでもある。
「ダウンアンダー(Down Under)」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。大きな気温差に慣れ、10時間近い時差を解消するために多くの選手たちが時間に余裕をもって現地入りしている。なお、日本との時差は+1.5時間(現在はサマータイム)だ。
南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛りで、連日気温が40度を超えることもしばしば。概ね、海から西風が吹けば気温が下がり、内陸から東風が吹けば気温が上がる。風向きによってダイナミックに気温が上下するのが特徴で、男子レース開催期間の気温は37度から13度を行ったり来たり。Tシャツが真っ白になるような灼熱の日の翌朝にダウンジャケットが必要なほど冷え込むことも。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高600m程度。コースの大部分を占めるのは、海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯だ。
8日間の戦いはアデレード市内のクリテリウムで幕開ける。ダウンアンダー・クラシックと名付けられたハイスピードレースはUCIワールドツアーに含まれておらず、本戦の総合成績には反映されない。とは言ってもシーズン初戦の初日とあって、スプリンターたちにとっては何としても勝って最高の形でシーズンスタートを切りたいところ。ロビー・マキュアンの言葉を借りると「本戦の第1ステージよりも勝っておきたいレース」だ。
アデレード近郊を発着し、中盤にかけてアデレードヒルズを走る第1ステージはピュアスプリンター向き。風が吹く地域として知られるバロッサバレーを走る第2ステージも集団スプリントが予想されているが、フィニッシュ地点アンガストンに向かって緩斜面が続くため軽量級のスプリンターにチャンスが回ってくる。
総合争いが動き出すのは第3ステージと第4ステージ。高低差100mほどのアップダウンが組み込まれた周回コースを7周してフィニッシュを迎える第3ステージの獲得標高差は3,337mに達するため、総合優勝候補が絞られるのは間違いない。そして第4ステージの残り6km地点にはKOMコークスクリュー(平均勾配9%/登坂距離2.5km)が登場。「コルク抜き」に例えられるコーナーが連続する登りでアタックがかかり、そこからハイスピードダウンヒルを経てフィニッシュを迎える。
大きく南下する第5ステージはピュアスプリンターでもこなせる難易度だが、後半にかけて風が強い一帯を走るため総合上位陣は気が抜けない。南風が吹けばエシュロンが形成され、致命的なタイム差が生まれることも考えられる。そのため、年々クライマー向きに偏ってきているダウンアンダーでも、総合狙いのチームは大柄なルーラーをしっかりとメンバー入りさせている。
長年にわたって最終ステージはアデレード市街地周回コースで開催されてきたが、2019年は最難関ウィランガヒルの山頂フィニッシュを最終日に持ってきた。KOMウィランガヒル(平均勾配7.5%/登坂距離3.0km)を2回登るレイアウトは例年同様。アデレードから自走で駆けつけるサイクリストに埋め尽くされた登りで最後の登坂バトルが繰り広げられる。
サントス・ツアー・ダウンアンダー2019ステージリスト
日時 | ステージ名 | スタート地点〜フィニッシュ地点 | 距離 | 獲得標高差 |
---|---|---|---|---|
1月13日(日) | クラシック | ライミルパーク周回コース | 1時間+1周回 | |
1月14日(月) | 休息日 | |||
1月15日(火) | 第1ステージ | ノースアデレード〜ポートアデレード | 132.4km | 1,851m |
1月16日(水) | 第2ステージ | ノーウッド〜アンガストン | 149.0km | 2,246m |
1月17日(木) | 第3ステージ | ロベサル〜ウライドラ | 146.2km | 3,337m |
1月18日(金) | 第4ステージ | アンレー〜キャンベルタウン | 129.2km | 2,427m |
1月19日(土) | 第5ステージ | グレネルグ〜ストラサルビン | 149.5km | 1,778m |
1月20日(日) | 第6ステージ | マクラーレンヴェイル〜ウィランガヒル | 151.5km | 1,859m |
ポートの6年連続ウィランガヒル制覇なるか?サガンやユアン、ヴィヴィアーニのバトルにも注目
過去5年間にわたってKOMウィランガヒルはリッチー・ポート(オーストラリア)の独壇場だった。頂上まで1kmほどを残してダンシングで加速し、そのままライバルたちを置き去りにするのが彼のスタイル。2017年に総合優勝、2015年、2016年、2018年総合2位のポートはBMCレーシングからトレック・セガフレードに移籍した。「今まで経験したほどがないほど強い布陣でウィランガヒルに挑む」と、ポートはリベンジに燃えている。
1年前のウィランガヒルでポートに先行を許しながらも、ポートと総合タイム差0秒で大会制覇を果たしたダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)も強力なメンバーを揃えての出場。インピーは例えば第2ステージのような登りスプリントでも上位に絡むパンチ力を秘めているため、序盤からライバルに対してタイムを奪ってくるはず。なお、チームメイトのマシュー・ヘイマン(オーストラリア)にとってはこのダウンアンダーが現役最終戦となる。
ポートが警戒するのは、2016年のウィランガヒルで3位に入っているマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)。2018年ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳ステージを制し、ロード世界選手権で銅メダルを獲得した遅咲きのクライマーは新しい装いとなったチームでジャンプアップを目指す。
ヨーロッパ勢はまだ仕上がっていない場合が多いものの、2018年ツール・ド・フランスでマイヨブランを獲得したピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール)や初出場のワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)、5回目の出場となるディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)らも総合上位候補。トレーニング中に落車したドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)に代わって、地元アデレード出身のローハン・デニス(オーストラリア)がバーレーン・メリダのエースを担うと見られる。
他にもジョージ・ベネット(ニュージーランド)とロベルト・ヘーシンク(オランダ)擁するユンボ・ヴィズマや、総合優勝経験者であるトムイェルト・スラフテル(オランダ、ディメンションデータ)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)らが今年も南オーストラリア州に乗り込む。
平坦ステージで注目したいのは、昨シーズン18勝を飾ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)だろう。2018年大会でヴィヴィアーニのステージ優勝を支えたファビオ・サバティーニ(イタリア)やミケル・モルコフ(デンマーク)が再びリードアウトトレインを走らせる。
スロバキアチャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は昨年開幕戦のクラシックを含めて2勝。プロ入り1年目の2010年(当時19歳)にダウンアンダーに出場したサガンは初日からアームストロングと逃げ、集団スプリントと山岳ステージで上位に絡んで周囲を驚かせた。サガンが初めて世界を驚かせたレースがこのダウンアンダーであるとも言える。
発射台役のロジャー・クルーゲ(ドイツ)とともにミッチェルトン・スコットを離れたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)は2017年大会で無敵のスピードを披露。総合系チームに進化しつつあるミッチェルトン・スコットでは思うようにスプリントを狙えないとしてチームを変えた身長165cmの「ポケットロケット」はクルーゲやアダム・ブライス(イギリス)のリードアウトを受ける。
メルボルンで開催されたベイクラシックで総合優勝したマルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ・アルペシン)の他、ダニー・ファンポッペル(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)やフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・メリダ)、ヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム)、ダニエル・マクレー(イギリス、EFエデュケーションファースト)らもシーズン最初のスプリント争いに絡んでくるだろう。
新城幸也(バーレーン・メリダ)は2014年(総合56位)、2017年(総合70位)、2018年(総合43位)に続く4回目のダウンアンダー出場。デニスやポッツォヴィーヴォ、バウハウスらを様々なシーンでアシストすることになるだろう。総合60位までUCIポイントが獲得できるため、ステージ優勝を含めて東京オリンピックに向けたUCIポイント獲得にも期待したい。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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