2018/12/16(日) - 19:09
2016年の全日本コースで開催された宇都宮シクロクロス2日目。ワールドクラスの走りを披露したフェリペ・オルツ(スペイン、DELIKIA - GINESTAR)が、メカトラブルで2位となった前日のリベンジを達成。女子エリートでは松本璃奈(TEAM SCOTT)が圧倒的な走りで連勝した。
男子エリート:前日覇者シェネルを置き去りにしたオルツがリベンジ達成
前日と比べて気温が下がり、朝方はマイナス気温にまで冷え込んだ栃木県宇都宮市の「道の駅うつのみや ろまんちっく村」。ただでさえテクニカルなキャンバー区間は霜、そして午前中レースの選手たちが地面を耕したことで薄く滑りやすい泥に覆われ、選手たちのタイヤ選択を悩ませた。
前日よりも選手層を増した男子エリートレース。ホールショットはオーストラリア王者のクリス・ジョンジェワード(オーストラリア、Flanders JBLOOD CX team)が決め、続く砂区間ではメカトラで2位に終わったリベンジに燃えるフェリペ・オルツ(スペイン、DELIKIA - GINESTAR)が先頭に。猛烈な勢いで4連続キャンバーを駆け上がったオルツにはフランス王者スティーブ・シェネル(フランス、チームシャザル・キャニオン)が食らいつき、海外招待選手3名が先頭を固めたままコースが狭まる林間セクションに入った。
前日の焼き直しのように抜きん出た実力を持つオルツとシェネルが抜け出し、好スタートを切ったケヴィン・ブラッドフォード(アメリカ)や新全日本王者の前田公平と前日3位の織田聖(共に弱虫ペダルサイクリングチーム)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、ジョンジュワード、沢田時(チームブリヂストンサイクイング)、横山航太(シマノレーシング)が10秒間隔で続く形に。
すると先頭では、1周目の長くスリッピーなキャンバー区間でシェネルが痛恨のスリップダウンを喫してしまう。ライバルのミスに気づいたオルツは猛プッシュし、すぐさま10秒ほどのリードを稼ぎ出す。ここで生まれた差はシェネルにとってあまりにも大きかった。
「ラインを間違えて足をついてしまったんだ。僕と彼(オルツ)のフィジカルは同レベルだけど、彼のほうがテクニシャン。だから昨日よりも慎重さが求められる今日は彼有利だった」。必死に追走するシェネルに対し、荒削りながらパワフルな走りを続けたスペイン出身の24歳は、5秒、10秒とリードを稼ぎ、レースを自分有利に傾けていく。
その後ろでは、国内勢の中でフィジカル差で一歩抜きん出た前田が単独3位を走行し、ここに「一昨日の試走で痛めた足首も少し回復したし、最終日だから思いきり攻めようと思っていた」と言うジョンジェワードが合流。日豪のナショナル王者は互いの得意・不得意区間で抜きつ抜かれつの熾烈な表彰台争いを最終周回まで続けた。
「昨日のメカトラブルが悔しくて、今日はどうしても勝ちたかった。滑りやすいコースを見て今日は楽しいレースになると感じたよ」と振り返る先頭オルツの走りは最後まで陰りを見せなかった。2連シケインを全てバニーホップで飛び切り、アップダウンを平地のように走るそのラップタイムは、ドライコンディションの前日にシェネルが刻んだものとほぼ同じ。80%カットを上回る速さでラップアウトを量産し、最終的にシェネルとの差を1分にまで広げてみせた。
前日と打って変わって晴れやなか笑顔でフィニッシュラインに帰ってきたオルツが、昨年に続く宇都宮シクロクロス優勝。フィニッシュ後にはチームスタッフと抱き合い、2位シェネルの到着を待って健闘を讃えあった。「勝つために来日したのでホッとしたよ。この後はワールドカップや世界選手権を目指す上で必要なUCIポイントを稼げて良かった。(リードを築いてからは)シェネルが必死に追ってきたから、約3周回全力で逃げ続けたんだ。本当に嬉しい」。
ワンミスが響き2位に終わりながらも、出し切った笑顔でレースを終えたフランス王者は「今日のオルツは強く、勝ちにふさわしい走りをした」と10歳差のライバルを讃える。「2連勝できればもっとハッピーだったけれど、当初の目標通りレースに対する”良いイメージ”を掴めたので満足。今日はこれから東京に移動してアニメ博物館に行くんだ」。
シェネルの1分後方では前田とジョンジェワードが激しく鍔迫り合いを続け、コース奥のキャンバー区間で前田に差をつけた豪州王者が5秒差で3位を確保。前田は「彼はマッド(泥)タイヤを選んでいたのでトラクションに差が出てしまった。国内レースだから日本人が表彰台に乗らなければいけなかったのですが…」と、国内王者として残念がる。2009年に北京五輪に出場した39歳は「痛めた足首でランニング区間はキツかったし(前田)公平は強かった。最後はなんとか抜け出せたけれど、彼はチャンピオンらしい積極的な走りだった」と前田の顔を立てた。
更に後方では織田が5位を確保し、「(この週末に開催される)全米選手権よりも、大好きな日本で開催されるレースを選んだ」と野辺山に続いて参戦したブラッドフォードが6位。宇都宮の大声援に後押しされた小坂が7位となり、その後は沢田、横山。10位の丸山厚(TEAM RIDLEY)が最終完走者となり、2日間に渡り続いた宇都宮シクロクロスが幕を閉じた。
女子エリート:全日本女子王者、松本璃奈(TEAM SCOTT)が圧倒的な2連勝
男子の前に開催された女子エリートレースには、前日より1名多い17名がスタート。前全日本女子王者の今井美穂(CO2 Bicycle)が得意のスタートダッシュを決めたが、4段キャンバー「TKCマウンテン」を踏み切り先頭を奪ったのは前日勝者の松本璃奈(TEAM SCOTT)。「レースが楽しくて仕方ないんです」と言う18歳が見る間に独走を開始した。
UCIマキノ、全日本選手権、宇都宮初日とUCIポイント付与レースで3連勝中と波に乗る松本の走りは、ただただ圧倒的。男子エリートレースでも通用するラップタイムを刻み、2位以下を見る間に引き離していく。反対に精彩を欠いた今井はキャンバー区間で杭に引っかかり、リアホイールが外れるトラブルによる大停止で表彰台圏外に姿を消してしまった。
笑顔を見せながら観客の声援に応え走った松本は、そのまま2分半近い大差をつけて勝利。「泥が難しかったけれど、昨日よりも速いラップタイムを目指して走りました。でも転んだりミスが出たし、まだまだ世界との差は大きい。もっと練習しなきゃと思いますね」と更なるレベルアップを見据えている。
後方では今年のアジア選手権ロードレースのチームメイトだった福田咲絵(AX Cyclocross Team)と唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)の一騎打ちとなり、キャンバー区間で抜け出した福田が先着。「技術が無いので踏めるところで思い切り踏めました。初めてのUCI表彰台なので本当に嬉しいです」と笑顔を見せた。
AJOCCカテゴリーレースの模様
男子エリート:前日覇者シェネルを置き去りにしたオルツがリベンジ達成
前日と比べて気温が下がり、朝方はマイナス気温にまで冷え込んだ栃木県宇都宮市の「道の駅うつのみや ろまんちっく村」。ただでさえテクニカルなキャンバー区間は霜、そして午前中レースの選手たちが地面を耕したことで薄く滑りやすい泥に覆われ、選手たちのタイヤ選択を悩ませた。
前日よりも選手層を増した男子エリートレース。ホールショットはオーストラリア王者のクリス・ジョンジェワード(オーストラリア、Flanders JBLOOD CX team)が決め、続く砂区間ではメカトラで2位に終わったリベンジに燃えるフェリペ・オルツ(スペイン、DELIKIA - GINESTAR)が先頭に。猛烈な勢いで4連続キャンバーを駆け上がったオルツにはフランス王者スティーブ・シェネル(フランス、チームシャザル・キャニオン)が食らいつき、海外招待選手3名が先頭を固めたままコースが狭まる林間セクションに入った。
前日の焼き直しのように抜きん出た実力を持つオルツとシェネルが抜け出し、好スタートを切ったケヴィン・ブラッドフォード(アメリカ)や新全日本王者の前田公平と前日3位の織田聖(共に弱虫ペダルサイクリングチーム)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、ジョンジュワード、沢田時(チームブリヂストンサイクイング)、横山航太(シマノレーシング)が10秒間隔で続く形に。
すると先頭では、1周目の長くスリッピーなキャンバー区間でシェネルが痛恨のスリップダウンを喫してしまう。ライバルのミスに気づいたオルツは猛プッシュし、すぐさま10秒ほどのリードを稼ぎ出す。ここで生まれた差はシェネルにとってあまりにも大きかった。
「ラインを間違えて足をついてしまったんだ。僕と彼(オルツ)のフィジカルは同レベルだけど、彼のほうがテクニシャン。だから昨日よりも慎重さが求められる今日は彼有利だった」。必死に追走するシェネルに対し、荒削りながらパワフルな走りを続けたスペイン出身の24歳は、5秒、10秒とリードを稼ぎ、レースを自分有利に傾けていく。
その後ろでは、国内勢の中でフィジカル差で一歩抜きん出た前田が単独3位を走行し、ここに「一昨日の試走で痛めた足首も少し回復したし、最終日だから思いきり攻めようと思っていた」と言うジョンジェワードが合流。日豪のナショナル王者は互いの得意・不得意区間で抜きつ抜かれつの熾烈な表彰台争いを最終周回まで続けた。
「昨日のメカトラブルが悔しくて、今日はどうしても勝ちたかった。滑りやすいコースを見て今日は楽しいレースになると感じたよ」と振り返る先頭オルツの走りは最後まで陰りを見せなかった。2連シケインを全てバニーホップで飛び切り、アップダウンを平地のように走るそのラップタイムは、ドライコンディションの前日にシェネルが刻んだものとほぼ同じ。80%カットを上回る速さでラップアウトを量産し、最終的にシェネルとの差を1分にまで広げてみせた。
前日と打って変わって晴れやなか笑顔でフィニッシュラインに帰ってきたオルツが、昨年に続く宇都宮シクロクロス優勝。フィニッシュ後にはチームスタッフと抱き合い、2位シェネルの到着を待って健闘を讃えあった。「勝つために来日したのでホッとしたよ。この後はワールドカップや世界選手権を目指す上で必要なUCIポイントを稼げて良かった。(リードを築いてからは)シェネルが必死に追ってきたから、約3周回全力で逃げ続けたんだ。本当に嬉しい」。
ワンミスが響き2位に終わりながらも、出し切った笑顔でレースを終えたフランス王者は「今日のオルツは強く、勝ちにふさわしい走りをした」と10歳差のライバルを讃える。「2連勝できればもっとハッピーだったけれど、当初の目標通りレースに対する”良いイメージ”を掴めたので満足。今日はこれから東京に移動してアニメ博物館に行くんだ」。
シェネルの1分後方では前田とジョンジェワードが激しく鍔迫り合いを続け、コース奥のキャンバー区間で前田に差をつけた豪州王者が5秒差で3位を確保。前田は「彼はマッド(泥)タイヤを選んでいたのでトラクションに差が出てしまった。国内レースだから日本人が表彰台に乗らなければいけなかったのですが…」と、国内王者として残念がる。2009年に北京五輪に出場した39歳は「痛めた足首でランニング区間はキツかったし(前田)公平は強かった。最後はなんとか抜け出せたけれど、彼はチャンピオンらしい積極的な走りだった」と前田の顔を立てた。
更に後方では織田が5位を確保し、「(この週末に開催される)全米選手権よりも、大好きな日本で開催されるレースを選んだ」と野辺山に続いて参戦したブラッドフォードが6位。宇都宮の大声援に後押しされた小坂が7位となり、その後は沢田、横山。10位の丸山厚(TEAM RIDLEY)が最終完走者となり、2日間に渡り続いた宇都宮シクロクロスが幕を閉じた。
女子エリート:全日本女子王者、松本璃奈(TEAM SCOTT)が圧倒的な2連勝
男子の前に開催された女子エリートレースには、前日より1名多い17名がスタート。前全日本女子王者の今井美穂(CO2 Bicycle)が得意のスタートダッシュを決めたが、4段キャンバー「TKCマウンテン」を踏み切り先頭を奪ったのは前日勝者の松本璃奈(TEAM SCOTT)。「レースが楽しくて仕方ないんです」と言う18歳が見る間に独走を開始した。
UCIマキノ、全日本選手権、宇都宮初日とUCIポイント付与レースで3連勝中と波に乗る松本の走りは、ただただ圧倒的。男子エリートレースでも通用するラップタイムを刻み、2位以下を見る間に引き離していく。反対に精彩を欠いた今井はキャンバー区間で杭に引っかかり、リアホイールが外れるトラブルによる大停止で表彰台圏外に姿を消してしまった。
笑顔を見せながら観客の声援に応え走った松本は、そのまま2分半近い大差をつけて勝利。「泥が難しかったけれど、昨日よりも速いラップタイムを目指して走りました。でも転んだりミスが出たし、まだまだ世界との差は大きい。もっと練習しなきゃと思いますね」と更なるレベルアップを見据えている。
後方では今年のアジア選手権ロードレースのチームメイトだった福田咲絵(AX Cyclocross Team)と唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)の一騎打ちとなり、キャンバー区間で抜け出した福田が先着。「技術が無いので踏めるところで思い切り踏めました。初めてのUCI表彰台なので本当に嬉しいです」と笑顔を見せた。
AJOCCカテゴリーレースの模様
男子エリート結果
1位 | フェリペ・オルツ(スペイン、DELIKIA - GINESTAR) | 57:38 |
2位 | スティーブ・シェネル(フランス、チームシャザル・キャニオン) | 58:36 |
3位 | クリス・ジョンジェワード(オーストラリア、Flanders JBLOOD CX team) | 59:39 |
4位 | 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 59:44 |
5位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 1:00:24 |
6位 | ケヴィン・ブラッドフォード(アメリカ) | 1:00:46 |
7位 | 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) | 1:00:57 |
8位 | 沢田時(チームブリヂストンサイクイング) | 1:01:17 |
9位 | 横山航太(シマノレーシング) | 1:02:21 |
10位 | 丸山厚(TEAM RIDLEY) | 1:03:01 |
女子エリート結果
1位 | 松本璃奈(TEAM SCOTT) | 44:37 |
2位 | 福田咲絵(AX Cyclocross Team) | 46:52 |
3位 | 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 47:07 |
4位 | 今井美穂(CO2 Bicycle) | 48:23 |
5位 | 西形舞(TRCパナマレッズ) | 48:24 |
6位 | 橋口陽子(AX Cyclocross Team) | 48:44 |
7位 | 西山みゆき(東洋フレーム) | 48:47 |
8位 | 林口幸恵(Live GARDEN Bicistelle) | 49:16 |
9位 | 大岩明子(ブラウ・ブリッツェン) | 49:45 |
10位 | 川崎 路子(PAX PROJECT) | 50:02 |
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO
フォトギャラリー
Amazon.co.jp
宇都宮餃子公式ガイドブック vol.6
下野新聞社