世界最古の自転車メーカーの一つであるビアンキのフラッグシップレーサー、OLTRE XR4に追加されたディスクブレーキモデル。安定した制動力という新たな武器を手に入れたオールラウンドバイク「OLTRE XR4 DISC」をインプレッション。



ビアンキ OLTRE XR4 DISCビアンキ OLTRE XR4 DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
1885年の創業以来、130年を超える歴史を重ねてきたイタリアンブランド、ビアンキ。現存する世界最古の自転車メーカーとしても名高い一方、コーポレートカラーのチェレステのお洒落なイメージもあり、ベテランからビギナーまで幅広い層から支持を集める稀有なブランドでもある。

ロードレーサーからシティバイクまで、イタリアンブランドらしからぬ幅広いカテゴリ―の自転車を手掛ける総合自転車ブランドとしての顔を持つビアンキ。一方で、その歴史は常にレースへの燃える情熱と共にあった。

シートポストもエアロ形状を採用シートポストもエアロ形状を採用 フロントフォークは真っ直ぐのストレートフォークフロントフォークは真っ直ぐのストレートフォーク ビアンキのブランドロゴが誇らしく光るヘッドチューブビアンキのブランドロゴが誇らしく光るヘッドチューブ


古くは史上初のダブルツールを達成したファウスト・コッピやフェリーチェ・ジモンディ、イタリアの英雄、ピラータことマルコ・パンターニといった、ロードレースの歴史を語るうえで外すことのできないヒーローたちはみな、ビアンキのバイクと共に物語を紡いできた。

そして現在、ビアンキと共に戦うロットNLユンボ(今季ユンボ・ヴィズマ)もまた、多くの輝かしい戦績を挙げている。ディラン・フルーネウェーヘンやプリモシュ・ログリッチェらの活躍によって、2018シーズンは33勝を挙げることに。その勝利を支えてきたビアンキのオールラウンドレーサーOLTRE XR4に新たにディスクブレーキモデルが登場した。既に選手らによるテストも行われ、実戦投入に期待がかかる最新鋭機だ。

Metron 5D ACRハンドルに最適化されたヘッドコラムMetron 5D ACRハンドルに最適化されたヘッドコラム ヴィジョンと共同開発した新型のMetron 5D ACRハンドルヴィジョンと共同開発した新型のMetron 5D ACRハンドル


ボリューム感のあるリアトライアングル周りボリューム感のあるリアトライアングル周り 今回はフルクラム Racing 418 DBをアッセンブルしたシマノ ULTEGRA Di2完成車今回はフルクラム Racing 418 DBをアッセンブルしたシマノ ULTEGRA Di2完成車


エアロロードとして2010年に登場した初代OLTREから4代目に当たるOLTRE XR4は、優れた空力性能を発揮するエアロチュービングとスプリンターの出力を受け止める剛性感、そしてビアンキが誇る振動除去素材「Countervail(カウンターヴェイル)」によって生み出される優れた快適性を兼ね備え、あらゆるシチュエーションで最高の性能を発揮するレーシングバイク。

一般的なCFD解析や風洞実験に加え、フレーム周辺の空気の流れを可視化する「フロービジュアライゼーション」という開発手法を取り入れることで決定されたフレームシェイプは、最高のエアロダイナミクスを実現するもの。

シートクランプは上から締める臼方式シートクランプは上から締める臼方式 ディスクブレーキはもちろんフラットマウントだディスクブレーキはもちろんフラットマウントだ


いかにもな翼断面形状を採用するダウンチューブやシートチューブはもちろん、空気抜けを重視し、ホイールとのクリアランスを大きくとったフロントフォーク、ヘッドチューブからフォーククラウンにかけてのインテグレートデザインなど、最先端のエアロロードに相応しいデザインエッセンスが凝縮されている。

更に、OLTRE XR4 DISCはヴィジョンと共同開発した新型のMetron 5D ACRハンドルを使用することで電動コンポーネント使用時にケーブルの完全内装化を実現。大きな空気抵抗を生み出すケーブル類を排除することによって、エアロロードとして一歩進んだ空力性能を手に入れた。

フロントフォークは空気の抜けを良くするため左右に膨らんだ形状フロントフォークは空気の抜けを良くするため左右に膨らんだ形状 ボリューム感のあるエアロ形状を採用したダウンチューブボリューム感のあるエアロ形状を採用したダウンチューブ 振動除去素材であるカウンターヴェイルを採用している振動除去素材であるカウンターヴェイルを採用している


ディスクブレーキの搭載やケーブルのフル内装化への対応もあり、ヘッドチューブやフロントフォーク、シートステーといったフレームの各部位はすべて再設計されている。リムブレーキの乗り味を再現すべく剛性バランスが調整されていることに加え、重量の増加も最小限に抑えられており、オールラウンドな性能はリムブレーキモデル同様。

また、ディスクブレーキ化によって硬くなりがちな乗り心地についても、形状に囚われない快適性をもたらすカウンターヴェイルが補完する。ディスクブレーキ化に伴うネガティブな要素を一掃し、純粋にアドバンテージのみを享受できる理想のエアロディスクロードをインプレッション。



― インプレッション

「自分のパワー以上に加速してくれる優れた推進力が魅力」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

エアロな見た目のバイクですが、オールラウンドモデルのような扱いやすさと軽快感がある1台ですね。軽いペダリングでもしっかり進んでくれる印象が強く、自分のパワー以上のスピードが出ているような気がします。それくらい推進力の強いバイクだと感じました。

「自分のパワー以上に加速してくれる優れた推進力が魅力」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)「自分のパワー以上に加速してくれる優れた推進力が魅力」高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)
踏み味はハイエンドモデルながら硬く乾いたカーボンの感触はなく、むしろしっとりとした印象を受けますが、踏み出しは非常に軽くてスッと下死点まで脚が抜けていきます。あまりパワーをかけずとも、自分の出力以上に進んでくれるような走りを見せてくれるため、抜群のパワー伝達効率の良さを感じられますね。逆に捉えれば、他のバイクよりもパワーを温存して走ることができるほどの走行性能と言えるでしょう。

オーソドックスなルックスのフォークですが、その見た目以上に剛性感はしっかりと確保されています。結構攻めたコーナリングをしてみても全く怖くないですし、むしろもう一段階攻める事もできたかなと思わせてくれるほどで、高速のダウンヒルも楽しんで走る事ができますね。乗り味は優しいのにレーシングバイクとしての鋭い走りも共存しており、いい意味で驚かされるポテンシャルを持っています。

振動除去技術のカウンターヴェイルにも関してもその性能を十分に感じる事ができました。微振動をカットしてくれるため、普通に走るだけでもストレスの大きさが全く違います。長距離のロードレースでアドバンテージとなるのはもちろん、これならロングライドにも持ち出したくなりますね。

エアロダイナミクスを実感するのはなかなか難しいですが、高速域でのスピードの持ち具合が良いというのは明らかに感じました。ハイスピードを維持するような巡航もしやすかったですし、結果論としてエアロダイナミクスの効果を発揮していたのではないかと思います。軽快な加速感とカウンターヴェイルの快適性に確かなエアロ性能も加わっており、より万能感の高いバイクに仕上がっていますね。

レースバイクとしての戦闘力は非常に高いので、シリアスにロードバイクを楽しんでいる方にはぜひ乗ってもらいたい1台です。レースでの順位を求める人、タイム短縮を狙いたい人にはうってつけのバイクでしょう。それでいてロングも快適にこなせる性能なので、あらゆるシーンで満足度は高いと思います。

「今までのディスクエアロロードの概念を覆す総合力の高さ」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)

私にとって衝撃の1台でした。今までディスクエアロロードというのはいい所もあるのだけれど、どこかバランスが取れていない部分があるなと感じていたのですが、このバイクは欠点を探しても無いくらいの総合力の高さが特徴的です。乗り心地もハンドリングも踏み味も全ての作りが絶妙に良いですね。

「今までのディスクエアロロードの概念を覆す総合力の高さ」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)「今までのディスクエアロロードの概念を覆す総合力の高さ」西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)
まず1番に感じたのは乗り心地の良さですね。ディスクエアロロードにありがちな剛性の違和感といったものがなく、かつフレームの衝撃吸収性が高くコーナリングも滑らかです。ルックス的には非常にマッシブでいかにも硬そうなのですが、それでもこの乗り心地を実現しているのは話題のカウンターヴェイルが作用しているからだと考える他ありません。

また快適性を向上させるカウンターヴェイルのテクノロジーによって、レーシングバイクに必要な粘りのような硬さを作り出しているような感覚もありました。さすが130年の歴史は伊達ではない、自転車製造におけるビアンキの積み重ねてきたノウハウが最大限活かされた性能を感じますね。

そういった部分は推進力に関わるBB周りの剛性感にも現れています。踏み込んでから一瞬のタメがあった後にスピードが出てくるような感覚で、私は非常に好みな加速感でした。見た目はガチガチなBB周りですが、硬さとパワー伝達性のバランスが整っていて踏みやすい味付けだと思います。

ハンドルは一体式ハンドルのヴィジョン METRON 6Dですが、これの出来も非常に良かったと思います。少ししゃくり気味のドロップ形状もいいですし、下ハンドルを持った時でもバートップの肩の部分がぶつからないこだわりの設計をしているように思います。剛性もフレームに合わせて硬めになっており、よりマッチしていましたね。

エアロのデザインに関してはアメリカンブランドみたいに完全なエアロロードではなく、乗りやすさやロードバイクとしてあるべき姿を空力性能とバランスしている点に好感が持てます。とはいってもフロントフォークなどは空気の抜けを考えている形状ですし、エアロのメリットも感じる部分はありますね。

もちろんレーシングバイクですからアグレッシブな走りを楽しんでほしい1台です。走りのシーンを選ぶこと無く、山岳レースでも高速平坦レースでも様々なシチュエーションで活躍してくれるでしょう。乗り心地も良いですしバイクに癖がないので、レースをしない方がロングライドに使っても非の打ち所が無いバイクですね。

ビアンキ OLTRE XR4 DISCビアンキ OLTRE XR4 DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ビアンキ OLTRE XR4 DISC フレームセット
サイズ:47、50、53、55、57、59、61
カラー:BZ-Black matt/CK16 graphite glossy、1D-CK16 Glossy/Black Glossy、TAVOLOZZA
付属:Metron 5D ACRハンドル
価格:538,000円(税抜)

ビアンキ OLTRE XR4 DISC 完成車
シマノ ULTEGRA Di2+フルクラム Racing 418 DB:998,000円(税抜)
シマノ DURA-ACE Di2+フルクラム Racing Quattro DB:1,580,000円(税抜)
カンパニョーロ SUPER RECORD+カンパニョーロ Shamal Ultra DB:1,480,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)高木友明(アウトドアスペース風魔横浜) 高木友明(アウトドアスペース風魔横浜)

横浜駅から徒歩10分、ベイサイドエリアに店舗を構えるアウトドアスペース風魔横浜の店長。前職メッセンジャーの経験を活かし自転車業界へ。自身はロードバイクをメインに最近はレース活動にも力を入れる実走派だ。ショップはロード・MTBの2本柱で幅広い自転車遊びを提案している。物を売るだけでなくお客さんと一緒にスポーツサイクルを楽しむことを大事にし、イベント参加なども積極的に行っている。

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西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。過去にはツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝を経験。2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たし、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。

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text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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