3月14日、パリ~ニースの最終ステージがニースを発着する119kmの山岳コースで行われ、トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)と2人で逃げたアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)が2人のスプリントを制した。そしてアルベルト・コンタドールが2007年に続き2度目の総合優勝に輝いた。

「ボンシャンス(幸運を)!」レースディレクターのクリスチャン・プリュドムがスタートの合図「ボンシャンス(幸運を)!」レースディレクターのクリスチャン・プリュドムがスタートの合図 (c)A.S.O.パリ~ニースの最終ステージはいつもお決まりの119kmの山岳コース。ニース郊外の山岳路を駆け巡り、ニースへと戻る119kmだ。距離は短いが、峠道の非常に厳しいプロフィールを持つ。

この日待ち構えるのは3つの山岳ポイント。1級山岳ポルト峠、1級ラ・トゥルビー、1級山岳エズ峠の難関山岳が総合優勝者を選び出す。

上りだけでなく、下りのスピードとテクニックも要求される難コースで、特にニースに至るエズ峠のハイスピードダウンヒルで勝負が決まることもある。

風光明媚なニースをスタートして行く集団風光明媚なニースをスタートして行く集団 (c)A.S.O.注目の集まる総合優勝争い。マイヨジョーヌの アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)を追うのは アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)で、その差は14秒。その14秒が勝負の行方の鍵を握った。

そしてコンタドールとバルベルデの闘いのみならず、総合上位争いは僅差で熾烈を極める。3位につけるクロイツィゲルら以下の総合上位陣は2人の確執を利用できる立場にある。そして総合上位陣に関係のないステージ狙いの選手が虎視眈々と華やかなニースでのステージ勝利を狙う。



スタートしてすぐにアタックが始まるスタートしてすぐにアタックが始まる (c)A.S.O.この日スタートしたのは148選手。スタートすぐにアタックがかかりはじめる。上り基調とは思えないスピードでバトルが始まる。しかし18kmすぐにある中間ポイントを取りたいリクイガスの動きでこれらの逃げは封じられ、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)がポイント獲得でマイヨヴェールを確実なものにした。

そしてサガンに続いて2位通過でボーナスタイム2秒を得たルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)が、1秒差で総合3位にいたロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)を逆転、総合3位に上がった。

ニース郊外の峠への山岳路を進む集団ニース郊外の峠への山岳路を進む集団 (c)A.S.O.最初の上り1級山岳ポルト峠に向けてペースが上がる30kmすぎ、落車が選手たちを襲う。集団も割れ、リタイアする選手が出る。
峠へ向けて注目のバルベルデがアタックに出たが、アスタナがチーム力を持ってこれを抑える。しかしアスタナはさきの落車でチームキャプテンのベンハミン・ノバル(スペイン)を失った。

最初の1級山岳ポルト峠でトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)とアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)が抜け出しに成功。モワナールの山岳ジャージはすでに安泰だが、さらにポイントを重ねる。そして好調のヴォクレールは2日前のパンクでタイムを失ったため、総合上位陣からは先行が許される存在だ。

アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)とトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が逃げ続けるアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)とトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が逃げ続ける (c)A.S.O.2人を逃がすと不利なのはバルベルデ擁するケースデパーニュ。コンタドールを逆転するにはボーナスタイムも無視できない。
しかし前を行く2人は駆け引きに縛られる総合上位陣を尻目に好調に飛ばし続ける。

この日2つめの山岳ポイント、1級ラ・トゥルビー峠を越えてもモワナールとヴォクレールはハイテンポを刻み続ける。残り30kmを切ってもタイム差は2分ある。

後方ではステージ勝利を狙いたいカチューシャがペースをつくり、ロドリゲスがアタック。これにバルベルデが続く。

ロドリゲスとバルベルデのアタックを余裕をもって封じ込めたコンタドールロドリゲスとバルベルデのアタックを余裕をもって封じ込めたコンタドール (c)A.S.O.しかし、コンタドールはこの動きにも余裕で対処。逆に2人を従えて、軽やかで力強いダンシングで進む。バルベルデとロドリゲスは後ろにまわり着いて行くことに。

3つめの山岳ポイントのエズ峠を通過したモワナールとヴォクレール。マイヨジョーヌとの差は12秒。エズ峠の上りを最後のチャンスと動いたバルベルデだが、コンタドールはすぐさまチェックし、動きを封じ込めた。もう差をつけられる峠はない。

コンタドールグループを追ったレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)にはLLサンチェスがマークに入り、エズ峠のダウンヒルを利用してコンタドール集団に追いついた。

アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)とトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が逃げ続けるアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)とトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)が逃げ続ける (c)A.S.O.そして残り9km、満を持したロドリゲスがアタック。少し躊躇したコンタドールだったが、LLサンチェスが続くと再び封じる動きを見せる。バルベルデとサンチェスの2人がかりの攻撃も、決定的なものにできないまま海岸沿いへと下ってしまった。

駆け引きを続けるコンタドール集団に、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)や総合4位に落ちた新人賞ジャージのクロイツィゲル(リクイガス)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)、前半にマイヨジョーヌを着たイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)3人のレディオシャック勢ヤネス・ブライコビッチ(スロベニア)クリストファー・ホーナー(アメリカ)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル)らを含む後続グループが追いついた。
そこから飛び出して前を行く2人を追ったのはマシャド。しかし時すでに遅かった。
ルメヴェルはハイスピードの下りでサムエル・サンチェスの後輪にはすってしまい、激しく落車。

そして逃げる2人はラスト3kmへ。海岸通りのプロムナード・デ・オングレに出た時点で、後続とは13秒差。2人の勝負へと持ち込まれた。

ヴォクレールをゴール寸前で刺したアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)ヴォクレールをゴール寸前で刺したアマエル・モワナール(フランス、コフィディス) (c)A.S.O.好調さゆえか過剰な自信を見せたヴォクレールがゴール前200mを残して早めのスプリントに出た。しかしゴールまでそのスピードが保てず、失速してしまう。後方につけたモワナールはこれをゴール寸前で交わし、山岳賞ジャージを着ての最終ステージ勝者になった。

マイヨジョーヌ集団は2人に3秒差のところまで迫ったが、逃げ切りを許した。集団の先頭を制したのはバルベルデ。コンタドールはすぐ後ろで両手を挙げて自らの総合優勝を祝福しながらのゴールとなった。
バルベルデは逆転叶わなかったが、LLサンチェスは総合3位で表彰台の両脇をケースデパーニュのふたりで占めることになった。

チームメイトの祝福を受けるアマエル・モワナール(フランス、コフィディス)チームメイトの祝福を受けるアマエル・モワナール(フランス、コフィディス) (c)A.S.O.山岳賞獲得とステージ優勝でダブルの喜びに包まれるモワナールは言う。「山岳賞の水玉ジャージを着てすでにスーパー・ハッピーだったのに、さらにステージ優勝できるなんて格別だね。トマ(ヴォクレール)と逃げた一日はとても困難だった。差は大きくなかったし、エズ峠の上りでトマはアタックした。でも僕はこの上りを良く知っていたから、自信はあった。そして取り返すことができた。僕は臨機応変だったね。
最後の2kmで、トマは僕にプレッシャーをかけ続けた。でも僕はパニックにはならなかった。彼が飛び出したのを許したのは、向かい風だったから。ゴールラインを待って最後に刺した。僕は正しかったと思う」。

パリ~ニース2度目の総合優勝。そしてツール・ド・フランスへの自信

自らを祝福しながらゴールラインを越えるコンタドール自らを祝福しながらゴールラインを越えるコンタドール (c)CorVosそして2007年に続き自身2度目の総合優勝を勝ち取ったコンタドールは言う。「優勝候補と言われていても、優勝することはとても難しいこと。皆が勝てと言う状況のなか勝てて、ほっとしている。今日は短いステージだったけど、すべてのアタックに対処しなくてはならない緊張の一日だった。表彰台では感情的になったよ。スプリントのボーナスポイントなんかでこのビッグレースを逃したのでは後悔しか残らないから」。

チームの強さに疑問が残ること、そしてツール・ド・フランスについて訊かれて、コンタドールはこう応える。

「最初にしなければならないことは、夢中になりすぎないで、優先順位をもって物事を冷静に分析していくこと。僕も年を重ねるに連れて、経験を積み、熟し、進歩しているんだ。僕の脚はいいし、頭もだ。7月にはチームがもっと強くなってツール・ド・フランスで僕が勝つのを助けてくれるようになるといい。総合力からみてツールに勝てる選手は7、8人いる。僕もそのひとりだよ」。


選手コメントは公式サイトより。

2位バルベルデ、3位LLサンチェスに挟まれる総合優勝のコンタドール2位バルベルデ、3位LLサンチェスに挟まれる総合優勝のコンタドール パリ~ニース2010 第7ステージ 結果
1位 アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)      2h52'09"
2位 トマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)   +03"
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
5位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)
9位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
10位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
ポイント賞はペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)に。ポイント賞はペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)に。 (c)A.S.O.
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)       28h35'35"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)       +11"
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケスデパーニュ)       +25"
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)     +26"
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、 エウスカルテル)  +30"
6位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)           +35"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          +37"
8位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)         +1'07"
9位 ジャンクリストフ・ペロー (フランス、オメガファーマ・ロット)  +1'16"
10位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)     +1'17"


ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス)

山岳賞
アマエル・モワナール(フランス、コフィディス)
新人賞はロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)に新人賞はロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)に (c)A.S.O.
新人賞
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)

チーム総合成績
アージェードゥーゼル
チーム総合成績はアージェードゥーゼルが獲得チーム総合成績はアージェードゥーゼルが獲得 (c)A.S.O.



text:Makoto.AYANO
photo:Cor Vos, A.S.O.

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