2018/09/28(金) - 02:54
ジュニアカテゴリーで敵なしの強さ。落車で遅れながらも終盤に独走に持ち込んだレムコ・イヴェネプール(ベルギー)がロード世界選手権ロードレースで二冠を達成した。相次ぐ落車にレースは荒れ、51位の小野寺慶(ブラウ・ブリッツェン)が日本チーム唯一の完走者となった。
スタート後、緩やかにアップダウンを繰り返しながらインスブルックを目指す photo:CorVos
ジュニアカテゴリー最強を決めるロード世界選手権男子ジュニアロードレース。スタート地点は人口17,000人のクーフシュタインの街で、そこからイン渓谷に沿った平坦路をこなして「グナーデンヴァルト(距離2.6km/平均勾配10.5%/最大勾配14%)」に挑む。急勾配の登りをこなしてから一旦フィニッシュラインを通過し、そこから「イグルス(距離7.9km/平均勾配5.7%/最大勾配10%)」の登りを含む23.8km周回コースを回るレイアウトは男女エリートと男子U23レースと共通だ。
男子ジュニアは84.2kmのロード区間をこなしてから23.8km周回コースを2周する合計131.8km、獲得標高差1,905m。日本から参戦した5名を含む54カ国159名の選手たちが晴れ渡る気温22度のクーフシュタインをスタートした。
レース前半は落車が相次いだ。ニュートラル区間で発生した落車に日野泰静(松山城南高校)が巻き込まれ、その後も断続的に発生する落車によって遅れる選手が続出する。集団に最も大きなダメージを与えたのは、スタートから約1時間半経過後、フィニッシュまで72kmを残した地点で発生した大落車。集団前方で発生した落車に大勢の選手が巻き込まれ、その中にはタイムトライアルで圧勝したレムコ・イヴェネプール(ベルギー)の姿もあった。日本勢は香山飛龍(横浜高校)と馬越裕之(榛生昇陽高校)、福田圭晃(横浜高校)がこの時点で集団から脱落している。
後輪を交換したイヴェネプールは重要な勝負どころである「グナーデンヴァルト」を前に2分の遅れを被ってしまう。落車を免れたイタリアチームが登りで積極的に先頭集団のペースを作ると小野寺慶(ブラウ・ブリッツェン)も脱落。イヴェネプールは「グナーデンヴァルト」で快調に遅れを挽回し、頂上通過時点で先頭から1分遅れまで追い上げた。
急勾配の「グナーデンヴァルト」でイタリアチームが先頭集団のペースを上げる photo:Kei Tsuji
「グナーデンヴァルト」で集団から遅れた小野寺慶(ブラウ・ブリッツェン) photo:Kei Tsuji
「グナーデンヴァルト」で集団から遅れた福田圭晃(横浜高校) photo:Kei Tsuji
落車で遅れたレムコ・イヴェネプール(ベルギー)がハイペースで集団復帰を目指す photo:Kei Tsuji
落車の影響で遅れた馬越裕之(榛生昇陽高校) photo:Kei Tsuji
落車の影響で遅れた香山飛龍(横浜高校) photo:Kei Tsuji
落車の影響で遅れた日野泰静(松山城南高校) photo:Kei Tsuji
その後もベルギーチームの追走によりタイム差は縮まり、先頭でアンドレア・ピッコロ(イタリア)とマリウス・マイヤーホーファー(ドイツ)が逃げる展開でインスブルックの周回コースに入っていく。1分まで広がったピッコロとマイヤーホーファーのリードは縮小し、「イグルス」の登りでベルギーチームが作るハイペースによって先頭2名は吸収。そこから加速したイヴェネプールに対応できたのはカレル・ヴァチェク(チェコ)とマイヤーホーファーだけだった。
下り区間でヴァチェクが脱落したため先頭はイヴェネプールとマイヤーホーファーの2名に。イタリア勢が牽引する追走集団とのタイム差は広がり続け、1分以上のリードをもって最終周回の鐘を聞く。再び「イグルス」の登りが始まると、完全に付き位置で走り続けたマイヤーホーファーをイヴェネプールが振り切った。
フィニッシュまで20kmを残して独走に持ち込んだイヴェネプール。2番手を走るマイヤーホーファーと、3番手を走るアレッサンドロ・ファンチェル(イタリア)とアレクサンドル・バルマー(スイス)とのタイム差は広がるばかり。残り4kmを切って勝利を確信したイヴェネプールがカメラに向かってガッツポーズを見せ、観客の声援に応えながらウィニングランを楽しんだ。
チームメイトに引かれて先頭2名を追うレムコ・イヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ)を連れて最終周回に入るレムコ・イヴェネプール(ベルギー) photo:Kei Tsuji
レムコ・イヴェネプール(ベルギー)の力走にファンが盛り上がる photo:Kei Tsuji
最終周回に入る小野寺慶(ブラウ・ブリッツェン) photo:Kei Tsuji
降車を言い渡される福田圭晃(横浜高校) photo:Kei Tsuji
バイクを掲げでフィニッシュするレムコ・イヴェネプール(ベルギー) photo:Kei Tsuji
「クールネ〜ブリュッセル〜クールネでそうしたように、シーズン最後のレースをバイクを掲げるポーズで締めくくりたかった」というイヴェネプールが、フィニッシュライン上で降車してバイクを持ち上げる。落車で2分の遅れを被りながらも挽回し、アタックを仕掛け、独走に持ち込んだイヴェネプールがタイムトライアルとの二冠を達成。「第2のエディ・メルクス」と称される18歳の新星が改めてその力を見せつけた。
「グナーデンヴァルトでベルギーチームがペースを上げて人数を絞り込む作戦だったものの、登りを前に落車してしまったので作戦変更を強いられた。あいにくチームのメカニックが自分の落車を見逃してしまったので、チームメイトから後輪を受け取って再スタート。2分の遅れを被ってしまったのでそこからは懸命に追走した。集団に追いついた時点では2名が逃げていたものの、まだ周回コースの登りが2回残っているので問題はなかった。最終的にドイツ人選手が付いてきたけど、彼は協力することができない状態だったので、いつでも振り切って勝てると思っていた」と、圧巻の独走勝利を飾ったイヴェネプールは語る。
クイックステップフロアーズでのプロ入りが決まっているイヴェネプールは「来年はプロの世界に飛び込む。自分はチャンピオンでも何でもなくてまだ1人のジュニア選手。自転車競技を始めて1年半しか経っていないので、まだまだ多くのことを学ぶ必要がある。クイックステップフロアーズは自分のキャリアの良いステップになるはず。チームの中で静かに成長を続けたい。互いに信頼している関係であり、明るい将来が待っていると思う。夢はグランツールで勝つことだけど、まだそこまでの道のりは長い。これからもトレーニングを続けて、いつの日かその夢を叶えたい」とコメントする。ベルギーの男子ジュニアロードレース制覇は2009年のジャスパー・ストゥイヴェン以来9年ぶり4度目だ。
落車によって荒れたレースの完走者は84名で、75名が最終周回に入ることができずにバイクを降りている。日本チームは51位の小野寺慶が唯一の完走者となった。以下は小野寺のコメント。
「集団の密度が高く、最初から前にいないといけないとわかっていた。中盤の登りで前にいられたが、強豪国のトレインに挟まれる形となり、転びかけて前にいた選手のホイールに手の指を挟んでしまった。そこで一瞬遅れていまい、急勾配のところで急いで戻ろうと脚を使ってしまった。追いついたが、そこからズルズルと後退してしまった。周回コースに入ってからは、指だけでなく、身体のバランスも崩れて腰も痛くて、うまく踏み込むことができず、力を出し切ることができなかった。一瞬の出来事で、レースを無駄にしてしまったのが悔しい。今シーズン通して登りを強化してきた。今回は力を出し切れなかったが、アンダーに上がる来年、再来年でさらに登りに強い選手になっていきたい。」
ベルギー国旗を手に観客の声援に応えるレムコ・イヴェネプール(ベルギー) photo:Kei Tsuji
2位を守り抜いたマリウス・マイヤーホーファー(ドイツ) photo:Kei Tsuji
3位争いのスプリントを繰り広げたアレッサンドロ・ファンチェル(イタリア)とアレクサンドル・バルマー(スイス) photo:Kei Tsuji
2位マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ)、1位レムコ・イヴェネプール(ベルギー)、3位アレッサンドロ・ファンチェル(イタリア) photo:Kei Tsuji
圧倒的な力で二冠を達成したレムコ・イヴェネプール(ベルギー) photo:Kei Tsuji
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ジュニアカテゴリー最強を決めるロード世界選手権男子ジュニアロードレース。スタート地点は人口17,000人のクーフシュタインの街で、そこからイン渓谷に沿った平坦路をこなして「グナーデンヴァルト(距離2.6km/平均勾配10.5%/最大勾配14%)」に挑む。急勾配の登りをこなしてから一旦フィニッシュラインを通過し、そこから「イグルス(距離7.9km/平均勾配5.7%/最大勾配10%)」の登りを含む23.8km周回コースを回るレイアウトは男女エリートと男子U23レースと共通だ。
男子ジュニアは84.2kmのロード区間をこなしてから23.8km周回コースを2周する合計131.8km、獲得標高差1,905m。日本から参戦した5名を含む54カ国159名の選手たちが晴れ渡る気温22度のクーフシュタインをスタートした。
レース前半は落車が相次いだ。ニュートラル区間で発生した落車に日野泰静(松山城南高校)が巻き込まれ、その後も断続的に発生する落車によって遅れる選手が続出する。集団に最も大きなダメージを与えたのは、スタートから約1時間半経過後、フィニッシュまで72kmを残した地点で発生した大落車。集団前方で発生した落車に大勢の選手が巻き込まれ、その中にはタイムトライアルで圧勝したレムコ・イヴェネプール(ベルギー)の姿もあった。日本勢は香山飛龍(横浜高校)と馬越裕之(榛生昇陽高校)、福田圭晃(横浜高校)がこの時点で集団から脱落している。
後輪を交換したイヴェネプールは重要な勝負どころである「グナーデンヴァルト」を前に2分の遅れを被ってしまう。落車を免れたイタリアチームが登りで積極的に先頭集団のペースを作ると小野寺慶(ブラウ・ブリッツェン)も脱落。イヴェネプールは「グナーデンヴァルト」で快調に遅れを挽回し、頂上通過時点で先頭から1分遅れまで追い上げた。
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その後もベルギーチームの追走によりタイム差は縮まり、先頭でアンドレア・ピッコロ(イタリア)とマリウス・マイヤーホーファー(ドイツ)が逃げる展開でインスブルックの周回コースに入っていく。1分まで広がったピッコロとマイヤーホーファーのリードは縮小し、「イグルス」の登りでベルギーチームが作るハイペースによって先頭2名は吸収。そこから加速したイヴェネプールに対応できたのはカレル・ヴァチェク(チェコ)とマイヤーホーファーだけだった。
下り区間でヴァチェクが脱落したため先頭はイヴェネプールとマイヤーホーファーの2名に。イタリア勢が牽引する追走集団とのタイム差は広がり続け、1分以上のリードをもって最終周回の鐘を聞く。再び「イグルス」の登りが始まると、完全に付き位置で走り続けたマイヤーホーファーをイヴェネプールが振り切った。
フィニッシュまで20kmを残して独走に持ち込んだイヴェネプール。2番手を走るマイヤーホーファーと、3番手を走るアレッサンドロ・ファンチェル(イタリア)とアレクサンドル・バルマー(スイス)とのタイム差は広がるばかり。残り4kmを切って勝利を確信したイヴェネプールがカメラに向かってガッツポーズを見せ、観客の声援に応えながらウィニングランを楽しんだ。
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「クールネ〜ブリュッセル〜クールネでそうしたように、シーズン最後のレースをバイクを掲げるポーズで締めくくりたかった」というイヴェネプールが、フィニッシュライン上で降車してバイクを持ち上げる。落車で2分の遅れを被りながらも挽回し、アタックを仕掛け、独走に持ち込んだイヴェネプールがタイムトライアルとの二冠を達成。「第2のエディ・メルクス」と称される18歳の新星が改めてその力を見せつけた。
「グナーデンヴァルトでベルギーチームがペースを上げて人数を絞り込む作戦だったものの、登りを前に落車してしまったので作戦変更を強いられた。あいにくチームのメカニックが自分の落車を見逃してしまったので、チームメイトから後輪を受け取って再スタート。2分の遅れを被ってしまったのでそこからは懸命に追走した。集団に追いついた時点では2名が逃げていたものの、まだ周回コースの登りが2回残っているので問題はなかった。最終的にドイツ人選手が付いてきたけど、彼は協力することができない状態だったので、いつでも振り切って勝てると思っていた」と、圧巻の独走勝利を飾ったイヴェネプールは語る。
クイックステップフロアーズでのプロ入りが決まっているイヴェネプールは「来年はプロの世界に飛び込む。自分はチャンピオンでも何でもなくてまだ1人のジュニア選手。自転車競技を始めて1年半しか経っていないので、まだまだ多くのことを学ぶ必要がある。クイックステップフロアーズは自分のキャリアの良いステップになるはず。チームの中で静かに成長を続けたい。互いに信頼している関係であり、明るい将来が待っていると思う。夢はグランツールで勝つことだけど、まだそこまでの道のりは長い。これからもトレーニングを続けて、いつの日かその夢を叶えたい」とコメントする。ベルギーの男子ジュニアロードレース制覇は2009年のジャスパー・ストゥイヴェン以来9年ぶり4度目だ。
落車によって荒れたレースの完走者は84名で、75名が最終周回に入ることができずにバイクを降りている。日本チームは51位の小野寺慶が唯一の完走者となった。以下は小野寺のコメント。
「集団の密度が高く、最初から前にいないといけないとわかっていた。中盤の登りで前にいられたが、強豪国のトレインに挟まれる形となり、転びかけて前にいた選手のホイールに手の指を挟んでしまった。そこで一瞬遅れていまい、急勾配のところで急いで戻ろうと脚を使ってしまった。追いついたが、そこからズルズルと後退してしまった。周回コースに入ってからは、指だけでなく、身体のバランスも崩れて腰も痛くて、うまく踏み込むことができず、力を出し切ることができなかった。一瞬の出来事で、レースを無駄にしてしまったのが悔しい。今シーズン通して登りを強化してきた。今回は力を出し切れなかったが、アンダーに上がる来年、再来年でさらに登りに強い選手になっていきたい。」
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ロード世界選手権2018男子ジュニアロードレース結果
1位 | レムコ・イヴェネプール(ベルギー) | 3:03:49 |
2位 | マリウス・マイヤーホーファー(ドイツ) | 0:01:25 |
3位 | アレッサンドロ・ファンチェル(イタリア) | 0:01:38 |
4位 | アレクサンドル・バルマー(スイス) | |
5位 | フレデリック・ワンダール(デンマーク) | 0:03:20 |
6位 | ガブリエーレ・ベネデッティ(イタリア) | |
7位 | アロワ・シャラン(フランス) | |
8位 | ケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ) | |
9位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア) | |
10位 | ショーン・クイン(アメリカ) | 0:03:25 |
51位 | 小野寺慶(ブラウ・ブリッツェン) | 0:17:28 |
DNF | 福田圭晃(横浜高校) | |
DNF | 香山飛龍(横浜高校) | |
DNF | 日野泰静(松山城南高校) | |
DNF | 馬越裕之(榛生昇陽高校) |
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