2010/03/10(水) - 11:34
トリプルクラウン(ジロ、ツール、世界選を同年制覇)を達成した名選手ステファン・ロッシュの息子ニコラスは、GPルガーノのチームプレゼンテーションでアージェードゥーゼルの名前が呼ばれるのを、ルガーノ湖脇に設置されたステージの裏で待っていた。GPインスブリアで3位に入った次の日の話だ。
彼の忍耐強さは今、結果として現れ始めている。プロとして歩んだ5年の間に、彼は単なる“ステファンの息子”から一人前の選手として認知されるようになったのだ。
ロッシュは2007年ジロ・デ・イタリア、2008年ブエルタ・ア・エスパーニャ、そして昨年ツール・ド・フランスに出場。彼は一歩ずつ確実に、プロ選手としての格を上げて来た。これまでずっとフランスチーム一辺倒で、コフィディス、クレディアグリコル、そして昨年からアージェードゥーゼルで走る。ラ・ポム・マルセイユ出身で、当時は別府史之のチームメイトだった。
アージェードゥーゼル2年目のロッシュはひと味違う。「チームは今年、僕に大きな信頼を置いてくれている。かと言って僕にプレッシャーを与えようとしているわけじゃない。パリ〜ニースの準備レースとして位置づけたエトワール・ド・ベセージュはストレスを感じずに走ることが出来た。他のレースのためのトレーニングとしてレースに出場したことなんて今まで無かったんだ」。
「昨年は、次に繋げるため、とにかくどんなレースでも100%の力で走り切った。今年はスケジュールを周到に練って、目標レースを設定し、それに向けてコンディションを整えていいく。当然目標レースでは今まで以上のプレッシャーを感じることになるだろうけど」。
イタリア北部で開催されたGPインスブリアで、ロッシュは終盤の上りでカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らと決定的な動きを作った。結果は3位。上りスプリントでサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)に敗れた。
翌日のGPルガーノは強雨に見舞われ、更にコースを逆走した一般車両が選手と接触するトラブルも発生した。ロッシュはレースを継続すること無くリタイアした選手の一人。しかしパリ〜ニースに向けてコンディションは上り調子だ。
「今はヴァレーゼに住んでいるので、GPインスブリアとGPルガーノは近所のレースという感覚。トレーニングの成果を確認したかったんだ。そしてパリ〜ニースに向けて自信をつけたかった。パリ〜ニースは厳しい闘いになるだろうから」。
過去にパリ〜ニースで総合争いを繰り広げたチームメイトのリナルド・ノチェンティーニ(イタリア)も、ロッシュと同じくパリ〜ニースに照準を合わせていた選手の一人。しかしノチェンティーニは脚を骨折する大怪我を負ったため、少なくとも半年はレースを離れる。つまりロッシュの肩にかかるプレッシャーは倍増する。
「ノチェンティーニはパリ〜ニースでのチームリーダーだった。彼は総合表彰台を狙っていた。彼がいなくなったことで、チームは戦略の変更を余儀なくされる。代わりにタディ・ヴァリャベッチがエースに昇格するかもしれない。彼は僕よりも経験が豊かだ。とにかくパリ〜ニースにはコンタドールも出場するし、一年で最も厳しいレースの一つ。100%のコンディションじゃなければ闘えない」。
「昨年の大会でも総合成績を狙いたかったけど、コンディションが全く整っていなかった。その数週間前に行なわれたツール・メディテラネアンやツアー・ダウンアンダーで調子の波が来て、ヨーロッパ帰国後はコンディションが低迷を続けた。4月まで全くダメ。本当に残念なシーズンスタートだった」。
前年度と比較して、ロッシュは3〜4kgほど体重を減らして絞り込んでいる。パリ〜ニース開幕時の体重は69kg。昨年ロッシュはイタリア人のガールフレンドが作る料理によってオーバーウェイト気味だった。
「ヴァレーゼの街は自分に合っている。これまでアイルランドやフランスを移り住んで来たけど、イタリアのヴァレーゼこそ自分の街だと感じた。ヴァレーゼでの暮らしは静かで、バイクトレーニングに集中出来るんだ。その違いは大きいよ。いつもサイモン・クラーク(ISD)と一緒にトレーニングしている。道はもう知り尽くしている」。
ロッシュは現在(第2ステージ終了時)パリ〜ニースで総合43位・55秒遅れ。ケースデパーニュの奇襲作戦で集団が割れた第1ステージでも17名の先頭グループに入った。山岳が険しくなるとともに、ロッシュの闘いが始まる。
text:Gregor Brown
photo:Gregor Brown, Kei Tsuji, Cor Vos
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。
彼の忍耐強さは今、結果として現れ始めている。プロとして歩んだ5年の間に、彼は単なる“ステファンの息子”から一人前の選手として認知されるようになったのだ。
ロッシュは2007年ジロ・デ・イタリア、2008年ブエルタ・ア・エスパーニャ、そして昨年ツール・ド・フランスに出場。彼は一歩ずつ確実に、プロ選手としての格を上げて来た。これまでずっとフランスチーム一辺倒で、コフィディス、クレディアグリコル、そして昨年からアージェードゥーゼルで走る。ラ・ポム・マルセイユ出身で、当時は別府史之のチームメイトだった。
アージェードゥーゼル2年目のロッシュはひと味違う。「チームは今年、僕に大きな信頼を置いてくれている。かと言って僕にプレッシャーを与えようとしているわけじゃない。パリ〜ニースの準備レースとして位置づけたエトワール・ド・ベセージュはストレスを感じずに走ることが出来た。他のレースのためのトレーニングとしてレースに出場したことなんて今まで無かったんだ」。
「昨年は、次に繋げるため、とにかくどんなレースでも100%の力で走り切った。今年はスケジュールを周到に練って、目標レースを設定し、それに向けてコンディションを整えていいく。当然目標レースでは今まで以上のプレッシャーを感じることになるだろうけど」。
イタリア北部で開催されたGPインスブリアで、ロッシュは終盤の上りでカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らと決定的な動きを作った。結果は3位。上りスプリントでサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)に敗れた。
翌日のGPルガーノは強雨に見舞われ、更にコースを逆走した一般車両が選手と接触するトラブルも発生した。ロッシュはレースを継続すること無くリタイアした選手の一人。しかしパリ〜ニースに向けてコンディションは上り調子だ。
「今はヴァレーゼに住んでいるので、GPインスブリアとGPルガーノは近所のレースという感覚。トレーニングの成果を確認したかったんだ。そしてパリ〜ニースに向けて自信をつけたかった。パリ〜ニースは厳しい闘いになるだろうから」。
過去にパリ〜ニースで総合争いを繰り広げたチームメイトのリナルド・ノチェンティーニ(イタリア)も、ロッシュと同じくパリ〜ニースに照準を合わせていた選手の一人。しかしノチェンティーニは脚を骨折する大怪我を負ったため、少なくとも半年はレースを離れる。つまりロッシュの肩にかかるプレッシャーは倍増する。
「ノチェンティーニはパリ〜ニースでのチームリーダーだった。彼は総合表彰台を狙っていた。彼がいなくなったことで、チームは戦略の変更を余儀なくされる。代わりにタディ・ヴァリャベッチがエースに昇格するかもしれない。彼は僕よりも経験が豊かだ。とにかくパリ〜ニースにはコンタドールも出場するし、一年で最も厳しいレースの一つ。100%のコンディションじゃなければ闘えない」。
「昨年の大会でも総合成績を狙いたかったけど、コンディションが全く整っていなかった。その数週間前に行なわれたツール・メディテラネアンやツアー・ダウンアンダーで調子の波が来て、ヨーロッパ帰国後はコンディションが低迷を続けた。4月まで全くダメ。本当に残念なシーズンスタートだった」。
前年度と比較して、ロッシュは3〜4kgほど体重を減らして絞り込んでいる。パリ〜ニース開幕時の体重は69kg。昨年ロッシュはイタリア人のガールフレンドが作る料理によってオーバーウェイト気味だった。
「ヴァレーゼの街は自分に合っている。これまでアイルランドやフランスを移り住んで来たけど、イタリアのヴァレーゼこそ自分の街だと感じた。ヴァレーゼでの暮らしは静かで、バイクトレーニングに集中出来るんだ。その違いは大きいよ。いつもサイモン・クラーク(ISD)と一緒にトレーニングしている。道はもう知り尽くしている」。
ロッシュは現在(第2ステージ終了時)パリ〜ニースで総合43位・55秒遅れ。ケースデパーニュの奇襲作戦で集団が割れた第1ステージでも17名の先頭グループに入った。山岳が険しくなるとともに、ロッシュの闘いが始まる。
text:Gregor Brown
photo:Gregor Brown, Kei Tsuji, Cor Vos
translation:Kei Tsuji
Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)
イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。