2010/03/10(水) - 11:40
3月10日から16日までの1週間に渡って、イタリア半島中部を舞台に第45回ティレーノ〜アドリアティコ(UCIヒストリカル)が開催される。カヴェンディッシュやペタッキら、世界屈指のスプリンターによるバトルに注目。総合ではヴィノクロフやエヴァンス、Aシュレクらが顔を合わせる。
ティレニア海とアドリア海を結ぶ半島横断レース
ティレーノ〜アドリアティコは、ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルトが主催する1週間のステージレース。昨年からUCI(国際自転車競技連合)のヒストリカルレースとしてワールドカレンダーに組み込まれている。
レースはその名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、半島を横断してアドリア海沿岸へ。2つの海を結ぶその行程から、イタリア国内では「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」とも呼ばれる。
毎年フランスのパリ〜ニースと同時期に開催され、このティレーノ閉幕1週間後にミラノ〜サンレモが開催される。パリ〜ニースと比較すると平坦コースが多く、サンレモに向けて調整を続ける有力スプリンターたちは、このティレーノでコンディションを仕上げていく。
第1回大会が開催されたのは1966年。奇しくも、2月7日にラリーカー事故で亡くなったフランコ・バッレリーニ元イタリア代表チーム監督と同い年。大会主催者は今年の大会を故バッレリーニ監督に捧げたい考えだ。
第48回大会はトスカーナ州西部のリヴォルノで開幕。前半の3ステージは、いずれも終盤に難易度の低いカテゴリー山岳が設定されているが、スプリンター向きの比較的平坦なステージ。上りでアタックを仕掛けた選手とスプリンターチームによるハイスピードレースが繰り広げるだろう。さながらミラノ〜サンレモの予行演習だ。
このティレーノにはジロ・デ・イタリアのような難関山岳は登場しない分、距離の短い急坂が多数登場する。
コース全長が243kmに達する超ロングコースで行なわれる第4ステージは、中盤にかけて標高のあるカテゴリー山岳を2つクリア。ゴールは丘上都市キエーティに設定されており、ラスト3.4kmで最大勾配19%のカテゴリー山岳を越え、ラスト500mから勾配15%の急坂を駆け上がってゴールに辿り着く。ここで総合成績は大きく変動するはずだ。
標高1535mの峠を越える第5ステージは、寒さとの闘いになるだろう。しかもコース全長は234kmで、ラスト2km地点から1kmに渡って平均勾配15%・最大勾配20%の激坂が続く。アルデンヌ・クラシックのような起伏のあるレースが得意な選手に有利。険しい上りで飛び出した数名のグループによる闘いになる。
総合争いを決定づける第6ステージは、終盤にカテゴリー山岳を含む周回コースを3周。ゴール地点は山岳頂上に設定されており、平均勾配11.3%・最大勾配18%の登坂を制した選手が勝者に輝く。最終日は今年もサンベネデット・デル・トロントにゴールする恒例のフラットステージだ。
ティレーノ〜アドリアティコ2010日程
3月10日(水)第1ステージ リヴォルノ〜ロシニャーノ・ソルヴァイ 148km
3月11日(木)第2ステージ モンテカティーニ・テルメ〜モンテカティーニ・テルメ 165km
3月12日(金)第3ステージ サンミニアート〜モンスマーノ・テルメ 159km
3月13日(土)第4ステージ サンジェーミニ〜キエーティ 243km
3月14日(日)第5ステージ キエーティ〜コルムラーノ 234km
3月15日(月)第6ステージ モンテコザーロ〜マチェラータ 148km
3月16日(火)第7ステージ チヴィタノーヴァ・マルケ〜サンベネデット・デル・トロント 164km
ハイレベルな闘いが予想される総合争い
レースに出場するのはプロツアー16チームを含む22チーム。ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルトが主催するレースだけに、どのチームもこのティレーノで結果を残して主催者にアピールしたい。
昨年の総合優勝者ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)は、ジナンニ(イタリア)やセルパ(コロンビア)を従えて連覇を狙う。しかしその前には高い壁が立ち塞がる。
最も注目を集めているのは、世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)だろう。ジロ出場がすでに決まっているチームは、ヒンカピー(アメリカ)やバッラン(イタリア)、ブルグハート(ドイツ)ら、ベストメンバーを揃えて来た。
パリ〜ニースにコンタドール(スペイン)を送り込んだアスタナは、このティレーノでアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)をエースに立てる。ヴィノクロフは2007年大会でアシストとしてクレーデン(ドイツ)の総合優勝を支えながら総合3位。アスタナからは直前のモンテパスキ・ストラーデビアンケの優勝者イグリンスキー(カザフスタン)も出場する。
そのストラーデビアンケ2位のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)と3位マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)も総合優勝候補だ。特にロヴクヴィストは2008年総合3位、2009年総合4位と相性が良い。
昨年ツール・ド・フランスで総合2位に入ったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)も出場。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで連覇が懸かったAシュレクの調子は如何に。2008年大会の総合優勝者のカンチェラーラ(スイス)も出場する。
他にもヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)やステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ケースデパーニュ)ら、グランツールでの活躍が期待されるオールラウンダーがズラリ。キエーティやコルムラーノ、マチェラータの急坂で、これらの選手たちが総合争いを繰り広げる。
スプリントはカヴェンディッシュvsその他大勢
ティレーノの見どころは総合争いだけではない。ミラノ〜サンレモに照準を合わせるスプリンターたちが集結し、グランツールさながらのスプリントバトルを繰り広げるのも魅力の一つ。今年もパリ〜ニースとは比較にならないほど豪華な顔ぶれが揃った。
注目はやはり、昨年シーズン最多勝をマークしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)だろう。昨年カヴェンディッシュは最終ステージで優勝し、その勢いのままミラノ〜サンレモ制覇を成し遂げた。
しかし今年は歯の疾患によってオフシーズンのトレーニングを上手くこなせず、シーズンインも遅れている。現に、他のスプリンターたちが勝利数を重ねる中、カヴェンディッシュはまだシーズン0勝。このティレーノで勝利を飾るとともにコンディションを上げなければ、連覇の懸かったミラノ〜サンレモに間に合わなくなる。
カヴェンディッシュの最大のライバルになると目されたアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)は、トレーニング中に負傷。出場すればベルヌッチ(イタリア)やホンド(ドイツ)がペタッキのためにトレインを形成し、THCコロンビアトレインに対抗する光景が見られるはずだ。
2005年大会で総合優勝を飾ったオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は、今シーズンのブエルタ・ア・アンダルシアでステージ2連勝飾っており、好調の波に乗る。山岳コースへの順応性は出場するスプリンターの中でナンバーワン。後半の山岳ステージで生き残る可能性もある。
イタリアチャンピオンのフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)は、マキュアン(オーストラリア)とともに出場。起伏のあるステージではポッツァートがエースを担うことになるだろう。ちなみにポッツァートは2003年大会の総合優勝者だ。
ツアー・オブ・オマーンでステージ2勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)も勢いのある選手。同じノルウェーからは昨年ツールでマイヨヴェールを獲得したトル・フースホフト(サーヴェロ・テストチーム)も出場する。
注目スプリンターとしては他にも、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)、ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)など枚挙にいとまがない。とにかくティレーノのスプリントバトルは熱くなりそうだ。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
ティレニア海とアドリア海を結ぶ半島横断レース
ティレーノ〜アドリアティコは、ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルトが主催する1週間のステージレース。昨年からUCI(国際自転車競技連合)のヒストリカルレースとしてワールドカレンダーに組み込まれている。
レースはその名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、半島を横断してアドリア海沿岸へ。2つの海を結ぶその行程から、イタリア国内では「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」とも呼ばれる。
毎年フランスのパリ〜ニースと同時期に開催され、このティレーノ閉幕1週間後にミラノ〜サンレモが開催される。パリ〜ニースと比較すると平坦コースが多く、サンレモに向けて調整を続ける有力スプリンターたちは、このティレーノでコンディションを仕上げていく。
第1回大会が開催されたのは1966年。奇しくも、2月7日にラリーカー事故で亡くなったフランコ・バッレリーニ元イタリア代表チーム監督と同い年。大会主催者は今年の大会を故バッレリーニ監督に捧げたい考えだ。
第48回大会はトスカーナ州西部のリヴォルノで開幕。前半の3ステージは、いずれも終盤に難易度の低いカテゴリー山岳が設定されているが、スプリンター向きの比較的平坦なステージ。上りでアタックを仕掛けた選手とスプリンターチームによるハイスピードレースが繰り広げるだろう。さながらミラノ〜サンレモの予行演習だ。
このティレーノにはジロ・デ・イタリアのような難関山岳は登場しない分、距離の短い急坂が多数登場する。
コース全長が243kmに達する超ロングコースで行なわれる第4ステージは、中盤にかけて標高のあるカテゴリー山岳を2つクリア。ゴールは丘上都市キエーティに設定されており、ラスト3.4kmで最大勾配19%のカテゴリー山岳を越え、ラスト500mから勾配15%の急坂を駆け上がってゴールに辿り着く。ここで総合成績は大きく変動するはずだ。
標高1535mの峠を越える第5ステージは、寒さとの闘いになるだろう。しかもコース全長は234kmで、ラスト2km地点から1kmに渡って平均勾配15%・最大勾配20%の激坂が続く。アルデンヌ・クラシックのような起伏のあるレースが得意な選手に有利。険しい上りで飛び出した数名のグループによる闘いになる。
総合争いを決定づける第6ステージは、終盤にカテゴリー山岳を含む周回コースを3周。ゴール地点は山岳頂上に設定されており、平均勾配11.3%・最大勾配18%の登坂を制した選手が勝者に輝く。最終日は今年もサンベネデット・デル・トロントにゴールする恒例のフラットステージだ。
ティレーノ〜アドリアティコ2010日程
3月10日(水)第1ステージ リヴォルノ〜ロシニャーノ・ソルヴァイ 148km
3月11日(木)第2ステージ モンテカティーニ・テルメ〜モンテカティーニ・テルメ 165km
3月12日(金)第3ステージ サンミニアート〜モンスマーノ・テルメ 159km
3月13日(土)第4ステージ サンジェーミニ〜キエーティ 243km
3月14日(日)第5ステージ キエーティ〜コルムラーノ 234km
3月15日(月)第6ステージ モンテコザーロ〜マチェラータ 148km
3月16日(火)第7ステージ チヴィタノーヴァ・マルケ〜サンベネデット・デル・トロント 164km
ハイレベルな闘いが予想される総合争い
レースに出場するのはプロツアー16チームを含む22チーム。ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルトが主催するレースだけに、どのチームもこのティレーノで結果を残して主催者にアピールしたい。
昨年の総合優勝者ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)は、ジナンニ(イタリア)やセルパ(コロンビア)を従えて連覇を狙う。しかしその前には高い壁が立ち塞がる。
最も注目を集めているのは、世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)だろう。ジロ出場がすでに決まっているチームは、ヒンカピー(アメリカ)やバッラン(イタリア)、ブルグハート(ドイツ)ら、ベストメンバーを揃えて来た。
パリ〜ニースにコンタドール(スペイン)を送り込んだアスタナは、このティレーノでアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)をエースに立てる。ヴィノクロフは2007年大会でアシストとしてクレーデン(ドイツ)の総合優勝を支えながら総合3位。アスタナからは直前のモンテパスキ・ストラーデビアンケの優勝者イグリンスキー(カザフスタン)も出場する。
そのストラーデビアンケ2位のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)と3位マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)も総合優勝候補だ。特にロヴクヴィストは2008年総合3位、2009年総合4位と相性が良い。
昨年ツール・ド・フランスで総合2位に入ったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)も出場。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで連覇が懸かったAシュレクの調子は如何に。2008年大会の総合優勝者のカンチェラーラ(スイス)も出場する。
他にもヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)やステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ケースデパーニュ)ら、グランツールでの活躍が期待されるオールラウンダーがズラリ。キエーティやコルムラーノ、マチェラータの急坂で、これらの選手たちが総合争いを繰り広げる。
スプリントはカヴェンディッシュvsその他大勢
ティレーノの見どころは総合争いだけではない。ミラノ〜サンレモに照準を合わせるスプリンターたちが集結し、グランツールさながらのスプリントバトルを繰り広げるのも魅力の一つ。今年もパリ〜ニースとは比較にならないほど豪華な顔ぶれが揃った。
注目はやはり、昨年シーズン最多勝をマークしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)だろう。昨年カヴェンディッシュは最終ステージで優勝し、その勢いのままミラノ〜サンレモ制覇を成し遂げた。
しかし今年は歯の疾患によってオフシーズンのトレーニングを上手くこなせず、シーズンインも遅れている。現に、他のスプリンターたちが勝利数を重ねる中、カヴェンディッシュはまだシーズン0勝。このティレーノで勝利を飾るとともにコンディションを上げなければ、連覇の懸かったミラノ〜サンレモに間に合わなくなる。
カヴェンディッシュの最大のライバルになると目されたアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)は、トレーニング中に負傷。出場すればベルヌッチ(イタリア)やホンド(ドイツ)がペタッキのためにトレインを形成し、THCコロンビアトレインに対抗する光景が見られるはずだ。
2005年大会で総合優勝を飾ったオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)は、今シーズンのブエルタ・ア・アンダルシアでステージ2連勝飾っており、好調の波に乗る。山岳コースへの順応性は出場するスプリンターの中でナンバーワン。後半の山岳ステージで生き残る可能性もある。
イタリアチャンピオンのフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)は、マキュアン(オーストラリア)とともに出場。起伏のあるステージではポッツァートがエースを担うことになるだろう。ちなみにポッツァートは2003年大会の総合優勝者だ。
ツアー・オブ・オマーンでステージ2勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)も勢いのある選手。同じノルウェーからは昨年ツールでマイヨヴェールを獲得したトル・フースホフト(サーヴェロ・テストチーム)も出場する。
注目スプリンターとしては他にも、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)、タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)、アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)、ルーカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)など枚挙にいとまがない。とにかくティレーノのスプリントバトルは熱くなりそうだ。
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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