2018/09/16(日) - 03:26
6つのカテゴリー山岳が詰め込まれた97.3kmで行われたアンドラ最終山岳決戦。ともに先行したミゲルアンヘル・ロペスを登りスプリントで下したエンリク・マスが総合2位に浮上し、最後まで安定感ある走りを見せたサイモン・イェーツが事実上のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を決めた。
100kmに満たない97.3kmのショートコースで行われた第73回ブエルタ最後の山岳決戦。アンドラ公国の中心地エスカルデス=エンゴルダニをスタートしてから、ひたすら山岳の登りと下りをリピートする。前半から2級山岳コメリャ峠(全長4.3km/平均8.7%)、1級山岳ベシャリス峠(全長7.1km/平均8%)、1級山岳オルディノ峠(全長9.8km/平均7.1%)、1級山岳ベシャリス峠(全長7.1km/平均8%)、3級山岳コメリャ峠(全長3.6km/平均6.3%)を休む間もなくクリア。そして最後は超級山岳ラ・ガリーナ峠(全長3.5km/平均8.7%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。
獲得標高差3,200mの最終山岳ステージは、総合優勝者を導き出すと同時に、山岳賞の受賞者を決めるステージでもある。第19ステージを終えた段階で山岳賞トップ4(デヘント、マテマルドネス、モレマ、キング)が18ポイント以内にひしめき合う混戦。最初の2級山岳コメリャ峠で動いたのは山岳賞ジャージを着るトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)で、同賞2位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)を下して先頭通過する。デヘントとモレマはその後の下り区間でヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)のイニシアティブにより形成された15名の逃げグループにも乗った。
ニバリ、デヘント、モレマの他、ダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)やマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)を含む逃げグループはメイン集団から1分ほどのリードを得て続く1級山岳ベシャリス峠にアタック。淡々と12%オーバーの勾配を刻む登りでモレマが飛び出したが、ここも落ち着いてデヘントが先頭通過している。
まだステージ前半にもかかわらずメイン集団からはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタック。しかしミッチェルトン・スコットやロットNLユンボが牽引するメイン集団は総合6位につけるコロンビアンクライマーの先行を許さずに吸収した。
3つ目の1級山岳オルディノ峠に差し掛かるとメイン集団はアスタナのコントロール下に置かれ、ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)やトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)をふるい落としながら逃げグループを追いかける。逃げグループとメイン集団のタイム差は1分前後で推移。逃げグループからアタックしたヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)に1位通過を譲ったものの、しっかりと1級山岳オルディノ峠を2位通過したデヘントが山岳賞首位の座を揺るぎないものにした。
ステージも後半に入り、2回目の1級山岳ベシャリス峠で総合争いが動く。フィニッシュまで38kmを残して総合5位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がチームメイトとともにアタック。まだ3つの峠を残して早めに動いたロペスがメイン集団から20秒程度のリードを得たが、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が集団先頭に立ってペースメイク。ロペスは決定的なリードを得ることができないまま吸収された。
ロペスのアタックによってペースが上がったメイン集団は序盤から逃げていた選手たちも全員吸収。すると下り区間で再びキンタナがアタックを仕掛け、ここにロペスが飛びついた。
僅かながらリードを得たコロンビアンクライマー2名(キンタナとロペス)が最後から2つ目の3級山岳コメリャ峠に挑む中、20秒後方を走るメイン集団からはマイヨロホのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)自らカウンターアタック。ここに総合4位エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が反応すると、下り区間で先頭2名に追いついた。
こうして超級山岳ラ・ガリーナ峠を残して先頭で形成された総合1位イェーツ、総合4位マス、総合5位ロペス、総合6位キンタナのカルテット(4人組)。出遅れた総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を含むメイン集団は20秒遅れ。キンタナがバルベルデのサポートに回ったが状況は変わらず、先頭3名(イェーツ、マス、ロペス)がリードを30秒まで広げた状態で今大会最終山岳に突入した。
ロペスのハイペースにイェーツがたまらず遅れ、マスだけが食らいついて残り3km。イェーツは20秒遅れ、総合3位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)のグループは50秒遅れ、そして総合2位バルベルデのグループは1分20秒遅れ。明らかに精彩を欠いたバルベルデの手元から総合表彰台が離れていった。
イェーツに追いつかれることなく超級山岳ラ・ガリーナ峠を登りきったロペスとマスの2名がスプリント一騎打ちを繰り広げ、先行したマスが歓喜の表情を浮かべながらフィニッシュ。23歳のマスが最終山岳ステージでグランツールステージ初優勝を飾った。
23秒遅れでフィニッシュしたイェーツは総合優勝を確定。バルベルデが3分09秒遅れたため、ステージ上位2名のマスとロペスがそれぞれ総合2位と総合3位にジャンプアップしている。
「2012年にアレハンドロ・バルベルデが勝った時の映像で予習して、最終コーナーを先頭で突っ込む必要があることを理解していた。最終コーナーまで全開でもがいて、そのままフィニッシュラインまで突き進んだ」と、マスは狙い通りの登りスプリントを振り返る。
「ステージ優勝は美しく、そして総合2位という成績も素晴らしい。マドリードで馬鹿なことをして落車しないようにしないと。23歳の若者にとって総合2位は夢のようだ。自分は第2のアルベルト・コンタドールではなくエンリク・マス。コンタドールの輝かしい成績の半分でも残せれば満足。彼のレーススタイルを真似て、これからも成長していきたい」とスペインの期待を背負うマスは語る。
そして第73回ブエルタ総合優勝のタイトルは実質的にイェーツの手に。「やりきった!ミッチェルトン・スコットにとってこれが初めてのグランツール総合優勝。自分とチームの走りを心から誇りに思う」と、プレッシャーから解き放たれた表情でインタビューに答えるイェーツ。
「アダムに力が残っていないのを感じて自らアタックした。先に逃げていたロペスは総合成績のために協力するだろうと思っていたし、結果的に攻撃が最高の防御になったんだ。最後の登りでマスとロペスが作る強力なペースに対応できなかったけど、自分のリズムを刻んで登坂。フィニッシュラインまで全力で走りきった」と語るイェーツは、翌日、マイヨロホを着てマドリードに凱旋する。
総合5位まで順位を下げたバルベルデは「敗北を受け入れないといけない。望んでいた通りの走りができなかった。でもこのブエルタで残した成績には満足している」とコメント。総合争いには敗れたものの、バルベルデはポイント賞トップをキープしている。
100kmに満たない97.3kmのショートコースで行われた第73回ブエルタ最後の山岳決戦。アンドラ公国の中心地エスカルデス=エンゴルダニをスタートしてから、ひたすら山岳の登りと下りをリピートする。前半から2級山岳コメリャ峠(全長4.3km/平均8.7%)、1級山岳ベシャリス峠(全長7.1km/平均8%)、1級山岳オルディノ峠(全長9.8km/平均7.1%)、1級山岳ベシャリス峠(全長7.1km/平均8%)、3級山岳コメリャ峠(全長3.6km/平均6.3%)を休む間もなくクリア。そして最後は超級山岳ラ・ガリーナ峠(全長3.5km/平均8.7%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。
獲得標高差3,200mの最終山岳ステージは、総合優勝者を導き出すと同時に、山岳賞の受賞者を決めるステージでもある。第19ステージを終えた段階で山岳賞トップ4(デヘント、マテマルドネス、モレマ、キング)が18ポイント以内にひしめき合う混戦。最初の2級山岳コメリャ峠で動いたのは山岳賞ジャージを着るトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)で、同賞2位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)を下して先頭通過する。デヘントとモレマはその後の下り区間でヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)のイニシアティブにより形成された15名の逃げグループにも乗った。
ニバリ、デヘント、モレマの他、ダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ)やマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)を含む逃げグループはメイン集団から1分ほどのリードを得て続く1級山岳ベシャリス峠にアタック。淡々と12%オーバーの勾配を刻む登りでモレマが飛び出したが、ここも落ち着いてデヘントが先頭通過している。
まだステージ前半にもかかわらずメイン集団からはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタック。しかしミッチェルトン・スコットやロットNLユンボが牽引するメイン集団は総合6位につけるコロンビアンクライマーの先行を許さずに吸収した。
3つ目の1級山岳オルディノ峠に差し掛かるとメイン集団はアスタナのコントロール下に置かれ、ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)やトニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)をふるい落としながら逃げグループを追いかける。逃げグループとメイン集団のタイム差は1分前後で推移。逃げグループからアタックしたヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)に1位通過を譲ったものの、しっかりと1級山岳オルディノ峠を2位通過したデヘントが山岳賞首位の座を揺るぎないものにした。
ステージも後半に入り、2回目の1級山岳ベシャリス峠で総合争いが動く。フィニッシュまで38kmを残して総合5位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がチームメイトとともにアタック。まだ3つの峠を残して早めに動いたロペスがメイン集団から20秒程度のリードを得たが、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が集団先頭に立ってペースメイク。ロペスは決定的なリードを得ることができないまま吸収された。
ロペスのアタックによってペースが上がったメイン集団は序盤から逃げていた選手たちも全員吸収。すると下り区間で再びキンタナがアタックを仕掛け、ここにロペスが飛びついた。
僅かながらリードを得たコロンビアンクライマー2名(キンタナとロペス)が最後から2つ目の3級山岳コメリャ峠に挑む中、20秒後方を走るメイン集団からはマイヨロホのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)自らカウンターアタック。ここに総合4位エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が反応すると、下り区間で先頭2名に追いついた。
こうして超級山岳ラ・ガリーナ峠を残して先頭で形成された総合1位イェーツ、総合4位マス、総合5位ロペス、総合6位キンタナのカルテット(4人組)。出遅れた総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を含むメイン集団は20秒遅れ。キンタナがバルベルデのサポートに回ったが状況は変わらず、先頭3名(イェーツ、マス、ロペス)がリードを30秒まで広げた状態で今大会最終山岳に突入した。
ロペスのハイペースにイェーツがたまらず遅れ、マスだけが食らいついて残り3km。イェーツは20秒遅れ、総合3位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)のグループは50秒遅れ、そして総合2位バルベルデのグループは1分20秒遅れ。明らかに精彩を欠いたバルベルデの手元から総合表彰台が離れていった。
イェーツに追いつかれることなく超級山岳ラ・ガリーナ峠を登りきったロペスとマスの2名がスプリント一騎打ちを繰り広げ、先行したマスが歓喜の表情を浮かべながらフィニッシュ。23歳のマスが最終山岳ステージでグランツールステージ初優勝を飾った。
23秒遅れでフィニッシュしたイェーツは総合優勝を確定。バルベルデが3分09秒遅れたため、ステージ上位2名のマスとロペスがそれぞれ総合2位と総合3位にジャンプアップしている。
「2012年にアレハンドロ・バルベルデが勝った時の映像で予習して、最終コーナーを先頭で突っ込む必要があることを理解していた。最終コーナーまで全開でもがいて、そのままフィニッシュラインまで突き進んだ」と、マスは狙い通りの登りスプリントを振り返る。
「ステージ優勝は美しく、そして総合2位という成績も素晴らしい。マドリードで馬鹿なことをして落車しないようにしないと。23歳の若者にとって総合2位は夢のようだ。自分は第2のアルベルト・コンタドールではなくエンリク・マス。コンタドールの輝かしい成績の半分でも残せれば満足。彼のレーススタイルを真似て、これからも成長していきたい」とスペインの期待を背負うマスは語る。
そして第73回ブエルタ総合優勝のタイトルは実質的にイェーツの手に。「やりきった!ミッチェルトン・スコットにとってこれが初めてのグランツール総合優勝。自分とチームの走りを心から誇りに思う」と、プレッシャーから解き放たれた表情でインタビューに答えるイェーツ。
「アダムに力が残っていないのを感じて自らアタックした。先に逃げていたロペスは総合成績のために協力するだろうと思っていたし、結果的に攻撃が最高の防御になったんだ。最後の登りでマスとロペスが作る強力なペースに対応できなかったけど、自分のリズムを刻んで登坂。フィニッシュラインまで全力で走りきった」と語るイェーツは、翌日、マイヨロホを着てマドリードに凱旋する。
総合5位まで順位を下げたバルベルデは「敗北を受け入れないといけない。望んでいた通りの走りができなかった。でもこのブエルタで残した成績には満足している」とコメント。総合争いには敗れたものの、バルベルデはポイント賞トップをキープしている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第20ステージ結果
1位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 2:59:30 |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | |
3位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:23 |
4位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:54 |
5位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:00:57 |
6位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:01:11 |
7位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:01:15 |
8位 | ダビ・デラクルス(スペイン、チームスカイ) | 0:02:17 |
9位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:03:09 |
10位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | |
15位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:04:58 |
16位 | トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:05:08 |
敢闘賞 | ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) |
個人総合成績
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 79:44:30 |
2位 | エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:01:46 |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:02:04 |
4位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:02:54 |
5位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:04:28 |
6位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 0:05:57 |
7位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) | 0:06:07 |
8位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:06:51 |
9位 | ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) | 0:11:09 |
10位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:11:11 |
ポイント賞
1位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 131pts |
2位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 104pts |
3位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 103pts |
山岳賞
1位 | トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) | 95pts |
2位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 83pts |
3位 | ルイス・マテマルドネス(スペイン、コフィディス) | 64pts |
複合賞
1位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 9pts |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 11pts |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 18pts |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 239:45:40 |
2位 | バーレーン・メリダ | 0:45:36 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | 0:47:57 |
text:Kei Tsuji in La Gallina, Andorra
photo:Kei Tsuji, Luca Bettini
photo:Kei Tsuji, Luca Bettini
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