2018/07/15(日) - 15:54
パリ〜ルーベと同じ石畳を走るというツール第9ステージに向けて各チームがスペシャルバイクの用意を進めている様子を取材した。ツール第1週目のフィナーレ、大きくレースを変えるだろうと言われるステージに向けたオフロード対策のバイクとは?
長い1週目を締めくくる前半戦のクライマックスがこのルーベにフィニッシュする第9ステージ。平坦な156.5kmのコースには、パリ〜ルーベにも登場する「モンサン・ペヴェル」など、実に15カ所・合計21.7kmのパヴェ(石畳)区間が含まれている。
今までのツールでも、同じようにパヴェ区間が取り入れられたことがあるが、今回のように計15セクター、21.7kmの長さのパヴェは異例のこと。パリ〜ルーベと同様に荒れたレースになるとみられ、大きな明暗がつくと言われている。パヴェ対策のバイクの準備に余念がない各チームのホテルを訪問し、その様子を取材した。
まず前日の第8ステージから機材のウォームアップをしていた選手たちも居る。優勝候補ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)は平坦ステージにもかかわらず、今までに乗ったエアロロードのメリダREACTOからSCULTURAにスウィッチ。パヴェ本番で乗るバイクのタイプに身体を馴染ませるべく一日を走った。また、各チームカーのルーフにはパヴェ仕様のバイクがスペアとして載ることも(もちろんロードタイヤ装着だ)。
しかし大抵の場合、こうしたスペシャルバイクの用意は前夜の作業がメインとなる。第8ステージ後、チームの宿泊するホテルを訪問すると、各チームの元には別部隊による機材車両が到着し、メカニックたちによるセットアップが着々と進んでいた。
タフなホイールに28〜30C程度の太さのパンクに強いタフなパヴェタイヤ、44T程度の大きなインナーチェンリング、クッションたっぷりの、あるいは2重に巻かれたバーテープ、ボトルが振動で飛び出さないためのボトルケージ、チェーン外れ対策のガード、クッション厚めのサドルに交換するなどが典型的なチューニング対策だ。各スポンサーのバイクメーカーが快適性を重視したエンデュランスロードをラインナップしているかどうかも大きなポイントだ。ツールの総合優勝を狙う軽量なクライマータイプのエースは得てしてパヴェが不得意。パリ〜ルーベに出場したことが無いという選手も多く、守りか攻めかでも機材の選択は違ってくる。
ディスクブレーキを取り巻く問題についてはこちらの現地レポートで取り上げたが、このルーベステージではホイール交換に時間が掛かることとサポートによる体制への不安からスタンダードなリムブレーキホイールを使用するチームが多くなるだろうとの予想もあった。しかしEFエデュケーションファースト・ドラパックはディスクブレーキ仕様のバイクを用意していた。
キャノンデールを駆るEFドラパックはエンデュランスモデルのSYNAPSEを全選手に用意。快適さを狙って設計され、販売ラインアップは全グレードでディスクブレーキ仕様だ。ややポジションがアップライトなジオメトリーであるため前下がり気味のステムでポジションを出す選手も。バーテープのクッションは厚めに。ハンドル上部を持っても変速できるよう、サテライトスイッチやスプリンタースイッチなどDi2のオプションシフターが追加されていた。
ロンド・ファン・フラーンデレン覇者でもあるパヴェのスペシャリスト、アレクサンドル・クリストフを擁するUAEチームエミレーツは快適性も備える軽量オールラウンドロードのコルナゴV2-RとC64の両方を選手の好みにより使い分けるようだ。普段エアロバイクのCONCEPTに乗るクリストフはV2-Rにスイッチ。剛性の高い一体型ハンドルは使用せず、丸型ハンドルを使用することで快適性を狙うが、バーテープもシングル巻きと攻めセッティングだ。
シート状のクッション材をハサミで切り、ハンドルバーの上にトッピングしていたのはよくある手法。これを適材適所にバーテープで巻き込み、振動吸収ハンドルに仕上げる。
このステージで総合ライバルたちに差をつけることを目論むニーバリには、確認できただけで4台のSCULTURAが用意されていた。ポジション出しのメジャーでどのバイクも同じポジションになるよう厳密にセッティングされるが、目立つパーツは28Cタイヤと大きめのインナーリング程度。オフロード走行を得意とするだけあり、テクニックで走破するためのセッティングだ。そして4月のロンドに出場した際に選んだ機械式シフトのバイクも用意していた。理由についてメカニックはノーコメントだが、一気変速の早さ、あるいはブラケット形状が気に入っていることで選んでいるのか。
作業を行うメカニックスペースにはなぜかデュガスのシクロクロスタイヤが置いてあった。さすがにそれを使うことは無いだろうが、バーレーン・メリダはシクロクロスの世界チャンピオンであるワウト・ファンアールトとの移籍交渉を進めている噂があり、その状況証拠とも言えるかもしれない。
ロットNLユンボはオランダから届いた機材トラックからパヴェ対策用のバイクを荷降ろしする段階だったが、ビアンキのエンデュランスロードで快適性のあるInfinito CVというモデルをメインに、選手によりORTLE XR4を使用するようだ。ひと世代前のシマノC50、C35ホイールにパヴェ対策のヴィットリア CORSA CONTROLの28Cチューブラーを貼る。太めのバーテープ、サテライトスウィッチ、大きめのインナーリングなども定番通りだ。
KUOTAを駆るコフィディスは、とくにエンデュランスモデルを使用せず、山岳でも使用する軽量モデルのKAHNをメインに使用するようだ。タイヤスポンサーのミシュランにはパヴェ対策になるタフなチューブラーのラインアップがないはずだが、POWER Competitionのロゴがある28Cの太さのチューブラーが貼られていた。太めのバーテープに大きめインナーリング以外に目立つパヴェ仕様はなかった。
チームスカイはクリス・フルームらに電子制御サスペンションの搭載されたピナレロ・ドグマK10が用意されているようだ。路面の振動を感知して作動し、滑らかな路面のときは硬くなるという頭脳をもったリアサスペンションシステムは、すでに近年のパリ〜ルーベで数年に渡り使用された実績がある。K10はジオメトリーもエンデュランスの味付けがされたものだ。
取材を切り上げたのは20時を回った頃。メカニックたちの作業はこの後も22時頃まで続くということだった。
photo&text:Makoto.AYANO in Amiens in France
長い1週目を締めくくる前半戦のクライマックスがこのルーベにフィニッシュする第9ステージ。平坦な156.5kmのコースには、パリ〜ルーベにも登場する「モンサン・ペヴェル」など、実に15カ所・合計21.7kmのパヴェ(石畳)区間が含まれている。
今までのツールでも、同じようにパヴェ区間が取り入れられたことがあるが、今回のように計15セクター、21.7kmの長さのパヴェは異例のこと。パリ〜ルーベと同様に荒れたレースになるとみられ、大きな明暗がつくと言われている。パヴェ対策のバイクの準備に余念がない各チームのホテルを訪問し、その様子を取材した。
まず前日の第8ステージから機材のウォームアップをしていた選手たちも居る。優勝候補ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)は平坦ステージにもかかわらず、今までに乗ったエアロロードのメリダREACTOからSCULTURAにスウィッチ。パヴェ本番で乗るバイクのタイプに身体を馴染ませるべく一日を走った。また、各チームカーのルーフにはパヴェ仕様のバイクがスペアとして載ることも(もちろんロードタイヤ装着だ)。
しかし大抵の場合、こうしたスペシャルバイクの用意は前夜の作業がメインとなる。第8ステージ後、チームの宿泊するホテルを訪問すると、各チームの元には別部隊による機材車両が到着し、メカニックたちによるセットアップが着々と進んでいた。
タフなホイールに28〜30C程度の太さのパンクに強いタフなパヴェタイヤ、44T程度の大きなインナーチェンリング、クッションたっぷりの、あるいは2重に巻かれたバーテープ、ボトルが振動で飛び出さないためのボトルケージ、チェーン外れ対策のガード、クッション厚めのサドルに交換するなどが典型的なチューニング対策だ。各スポンサーのバイクメーカーが快適性を重視したエンデュランスロードをラインナップしているかどうかも大きなポイントだ。ツールの総合優勝を狙う軽量なクライマータイプのエースは得てしてパヴェが不得意。パリ〜ルーベに出場したことが無いという選手も多く、守りか攻めかでも機材の選択は違ってくる。
ディスクブレーキを取り巻く問題についてはこちらの現地レポートで取り上げたが、このルーベステージではホイール交換に時間が掛かることとサポートによる体制への不安からスタンダードなリムブレーキホイールを使用するチームが多くなるだろうとの予想もあった。しかしEFエデュケーションファースト・ドラパックはディスクブレーキ仕様のバイクを用意していた。
キャノンデールを駆るEFドラパックはエンデュランスモデルのSYNAPSEを全選手に用意。快適さを狙って設計され、販売ラインアップは全グレードでディスクブレーキ仕様だ。ややポジションがアップライトなジオメトリーであるため前下がり気味のステムでポジションを出す選手も。バーテープのクッションは厚めに。ハンドル上部を持っても変速できるよう、サテライトスイッチやスプリンタースイッチなどDi2のオプションシフターが追加されていた。
ロンド・ファン・フラーンデレン覇者でもあるパヴェのスペシャリスト、アレクサンドル・クリストフを擁するUAEチームエミレーツは快適性も備える軽量オールラウンドロードのコルナゴV2-RとC64の両方を選手の好みにより使い分けるようだ。普段エアロバイクのCONCEPTに乗るクリストフはV2-Rにスイッチ。剛性の高い一体型ハンドルは使用せず、丸型ハンドルを使用することで快適性を狙うが、バーテープもシングル巻きと攻めセッティングだ。
シート状のクッション材をハサミで切り、ハンドルバーの上にトッピングしていたのはよくある手法。これを適材適所にバーテープで巻き込み、振動吸収ハンドルに仕上げる。
このステージで総合ライバルたちに差をつけることを目論むニーバリには、確認できただけで4台のSCULTURAが用意されていた。ポジション出しのメジャーでどのバイクも同じポジションになるよう厳密にセッティングされるが、目立つパーツは28Cタイヤと大きめのインナーリング程度。オフロード走行を得意とするだけあり、テクニックで走破するためのセッティングだ。そして4月のロンドに出場した際に選んだ機械式シフトのバイクも用意していた。理由についてメカニックはノーコメントだが、一気変速の早さ、あるいはブラケット形状が気に入っていることで選んでいるのか。
作業を行うメカニックスペースにはなぜかデュガスのシクロクロスタイヤが置いてあった。さすがにそれを使うことは無いだろうが、バーレーン・メリダはシクロクロスの世界チャンピオンであるワウト・ファンアールトとの移籍交渉を進めている噂があり、その状況証拠とも言えるかもしれない。
ロットNLユンボはオランダから届いた機材トラックからパヴェ対策用のバイクを荷降ろしする段階だったが、ビアンキのエンデュランスロードで快適性のあるInfinito CVというモデルをメインに、選手によりORTLE XR4を使用するようだ。ひと世代前のシマノC50、C35ホイールにパヴェ対策のヴィットリア CORSA CONTROLの28Cチューブラーを貼る。太めのバーテープ、サテライトスウィッチ、大きめのインナーリングなども定番通りだ。
KUOTAを駆るコフィディスは、とくにエンデュランスモデルを使用せず、山岳でも使用する軽量モデルのKAHNをメインに使用するようだ。タイヤスポンサーのミシュランにはパヴェ対策になるタフなチューブラーのラインアップがないはずだが、POWER Competitionのロゴがある28Cの太さのチューブラーが貼られていた。太めのバーテープに大きめインナーリング以外に目立つパヴェ仕様はなかった。
チームスカイはクリス・フルームらに電子制御サスペンションの搭載されたピナレロ・ドグマK10が用意されているようだ。路面の振動を感知して作動し、滑らかな路面のときは硬くなるという頭脳をもったリアサスペンションシステムは、すでに近年のパリ〜ルーベで数年に渡り使用された実績がある。K10はジオメトリーもエンデュランスの味付けがされたものだ。
取材を切り上げたのは20時を回った頃。メカニックたちの作業はこの後も22時頃まで続くということだった。
photo&text:Makoto.AYANO in Amiens in France
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