2018/07/13(金) - 18:02
ツール・ド・フランス開幕と時期を同じくして解禁されたディスクブレーキの本格使用。この世界最大のレースには様々な新型バイクが投入されることもあり、ディスク化が一気に進むとみられたが、そうではない面も。ディスクを取り巻くツールの現状を調べてレポートしよう。
UCIから「アジェンダ2022」が発表されたのが6月23日。そのなかで、これまでトライアルとして許可されていたディスクブレーキの使用を7月1日から全面解禁することが明らかにされた。つまりツール・ド・フランスからは公式に使用ができるということになる。賛否両論、ローターによるケガなど危険を懸念する声もあったが、今後は試用ではなく、ディスクは公式に認められた存在となる。レースでの使用にゴーサインが出たのだ。
ツール直前の発表となったが、ツールに出場するチームがその発表によって「ではディスクブレーキを使用しよう」とはならない。それらのチームはすでにディスク使用に関してのプランを決めており、その発表が使用の可否を左右するものではないからだ。トレックを始めとしたバイクブランドのいくつかは、そのUCI発表以前よりスポンサードチームがツールでディスク仕様バイクを本格投入することを明らかにしていたからだ。
バイクブランドが第1スポンサーにつくようなチームの場合、メーカーの意向でチームに対してディスクブレーキバイクの使用がプッシュされる事情は大いにある。今や先進のバイクにはディスクブレーキは欠かせないテクノロジーで、それらのブランドはいずれもディスクを使用する前提でトップカテゴリーのバイクを開発しているからだ。ツール前に発表されたバイクの数々を見てもそれは明らかで、世界最大のレースを世界への発表・アピールの場と考えているのはどのブランドも同じだ。
開幕から5ステージを終え、状況が見えてきたところでこれまでの各ステージの使用状況なども踏まえてディスクブレーキを取り巻くプロトンの現況を見てゆこう。
平坦路系の通常ロードステージで行われた開幕第1ステージは、ツールでも多くの注目を集める。チームの全員にディスクブレーキバイクを用意したトレック・セガフレード、EFエデュケーションファースト・ドラパック(キャノンデール)、ボーラ・ハンスグローエ(スペシャライズド)、ロット・スーダル(リドレー)、クイックステップフロアーズ(スペシャライズド)の5チームと、メンバーの過半数(4人)がディレクトエネルジー(ウィリエール)。
なおBMCレーシングはシュテファン・キュングとミヒャエル・シェアーの2名の選手がディスクを使用した新型バイクを駆った。ミッチェルトン・スコットもマイケル・ヘップバーンとマシュー・ヘイマンの2名がディスク。開幕ステージを制したフェルナンド・ガヴィリア(クイックステップフロアーズ)もディスクブレーキバイクを使用しての勝利だったことで、ディスク時代の本格到来を感じさせた。
しかし、各チームのディスク使用率の高さが目立つ印象だが、そのほとんどがエアロ系のバイクであることに注目したい。ツールに合わせて新型エアロバイクを発表したトレック、キャノンデール、BMC、スペシャライズド、リドレー、ウィリエール、そして新型ではないもののスコットのディスク使用モデルはエアロ系バイクだ。
エアロ系バイクの最近の設計傾向はブレーキケーブルをフレームに完全内装する方向で進んでおり、そうする際に自由度が高い油圧ケーブルとディスクブレーキの組み合わせが相性が良いため、この数字はディスクブレーキの使用率というより、最新エアロロードバイクを使用することで出た数字とも置き換えられるのだ。
カンパニョーロのテックサポートを行うマヌエル・ペナッツァート氏は言う。「カンパニョーロがサポートしているロット・スーダルの選手たちがディスクを使用するのは、今の時点では平坦ステージだけです。グライペルとチームは第1ステージで高速スプリントに有利なエアロバイクで勝利を目指しましたが、坂の多いステージでは使わないでしょう。バイクの重量が7.6kgと軽くはないため、チームの多くの選手は平坦かローリングステージのみで使用します。マルセル・シーベルグはすべてのステージでディスクを使うようです。選手個人の好みで、トレーニングから使用して慣れて好む選手も居ます」。
平坦系のアシストを担う選手がそれらのエアロバイクを使用するメリットが大きく、平坦を巡航する際のエネルギーロスを減らすためにエアロバイクひいてはディスクブレーキ仕様バイクを駆るというのが実情だ。
第1ステージはエアロバイクをチームでフル採用したチームが多かったが、この状況は第2ステージで変化。ディスク率が減り、第4ステージではさらにディスク使用率は減ることになる。注目度の高い序盤ステージでディスクブレーキバイクの「デビュー」を済ませると、またリムブレーキのバイクに戻すチームが出てきたのだ。さらにコースに坂が多く出てきた第5・6ステージでは、ディスク使用率はさらに減り、エアロバイクよりもノーマル形状のオールラウンドバイクが好まれた。その両方にディスクとリムブレーキモデルを用意しているチームも複数ある。また、第3ステージのチームTTではワンティ・グループゴベールがTT用のディスクホイールなどにディスクブレーキモデルを投入した。
第5ステージでは、ボーラ・ハンスグローエは優勝したサガンがディスク仕様バイクを駆ったが、マイカなど総合系の選手はリムブレーキバイクを選択。チームでもブレーキタイプが混在していた。ベースは同じモデル(Tarmac)だが、そうなれば2つのモデルごとに2つのブレーキタイプのバイクを用意することになる。今回スペシャライズドはボーラとクイックステップのために大量のバイクを運搬・供給するためのトラックを帯同させており、ロジスティック面からのサポートも独自に行っている。物流作戦でクリアできるとも言えるが、それだけの物資、人員、手間とコストがかかっているいうこと。そこは選手サポートとブランドPRにかけるバイクメーカーの意地のようなものだろう。
一方で、バイクメーカーとしてはディスクブレーキ推しのスタンスであるのに、今回のツールではリムブレーキで揃えたのがカチューシャ・アルペシンをサポートするキャニオンだ。テック担当者によればチームとの話し合いの結果、リムブレーキメインでいくという結果になったのだという。タイムロスのリスクを負いたくないことに加え、ホイールのブレーキ当たり面の処理による性能向上で、リムブレーキもパフォーマンス的に問題ないレベルと判断したという。イルヌール・ザカリンが状況によりディスクを使用することがあるが、メインはリムブレーキだという。こうしたリムブレーキ派チームが未だに過半数だ。もちろんチームスカイもそのひとつ。
ピナレロ社代表のファウスト・ピナレロ氏によれば、ピナレロとチームスカイの関係では、チームにディスク使用をプッシュするのではなく、あくまで勝つための選択をチームと選手に任せるというものだと言う。クリストファー・フルームは、プロトンの全員がディスクになるというような状況になるまでは使用しないと言う。
フルームがこだわっているのはホイール交換にかかる時間のロスだ。それはディスクそのものの問題でなく、組み合わされる規格「スルーアクスル」によるもの。クイックリリース以上に交換に時間がかかってしまうことで、タイムを失う可能性がある限り使用しないというスタンスだ。フルームの場合、同じようなサイズのバイクに乗るアシスト選手が身の回りに多い(バイクごと交換できる)という好条件が揃っていても。
ディスクの場合、スルーアクスルのタイプの違いに加え、ローターの径の違いも問題になる。UCIのレコメンデーションでは、フロントが160mm、リア140mmを推奨している。しかしチームはそれに従うわけでなく、前後140mmローター、あるいは前後160mmなどの組み合わせも見られる。ニュートラルサポートのホイール交換の都合による推奨値は、バイク性能の追求の前に意味をなさなくなっているようだ。
カンパのペナッツァート氏は言う。「登り用に軽い140mmを選ぶ、体重のある選手が160mmを選ぶなど、ローター径は選手の好みによります。カンパニョーロとしては、バイクと体重の合計が80kgを境に、それを越えるならリアも160mmローターを推奨しています」。
「今はすごく混乱した状況。ディスク使用選手やそのローター径は毎日チェックすることが欠かせない」と話すのはマヴィックのニュートラルサポートを担当するマキシム・ルフィ氏だ。「毎朝、各チームバスを訪問して、どの選手がディスクを使うのか、そのローター経は何mmなのかをチェックしてリスト化しています。状況は毎日変わります。今はそのような”まとまらない状況”と言えるでしょう。我々が活躍するのは常にストレスフルな状況においてですから、事前にすべての準備をしておくことが大切なんです」。
BMCレーシングは、キュングとシェアーの2人がディスクロードに乗るが、パンクの際はホイール交換でなくバイク交換を前提としているという。平坦路でのアシストが彼らの主な役割なだけに、(タイムを大きく失う)最悪の事態も割り切れるという。「ニュートラルサービスに頼ることは考えていません。バイクごと交換が早いし、メカニックは電動ドリルを改造したドライバーも用意しています」。しかしエースにホイールを差し出すことはできない。
各チームが今から心配しているのが、第9ステージの、パリ〜ルーベと同じ石畳区間を走るステージだ。「悪路だからディスクブレーキが有利」という考えは、ホイール交換の懸念の前にまったく意味を持たないようだ。
マヴィックのルフィ氏は言う。「第9ステージには各チームが”パリ〜ルーベ・スペシャル”バイクを用意するでしょう。そこではディスクブレーキ使用率はさらに低くなるとみています。悪路=ディスクブレーキと考えるのは違います。パンクによるホイール交換が頻繁にあることが前提です。もしパヴェ(石畳)でパンクしたら、通常の舗装区間よりもチームカーが到着するのに時間がかかるうえ、ホイール交換に時間がかかるディスクブレーキのホイールがさらにタイムロスにつながります。選手たちはそれを恐れています。ディスクブレーキの性能うんぬんより、いかに交換ホイールをすばやく受け取るか、再び走り出せるか。そちらが関心事なのです」。
マヴィックのニュートラルサポートチームは、2台のイエローカーそれぞれのルーフキャリアにバイク4台、合計7ペア・14本のスペアホイールを積載しているという。加えてホイールを積んだイエローモトも随行する。
「イエローカーの中にはディスク用としてローターが140mmのものを1ペア、160mmのものを1ペア、そしてリムブレーキホイールを1ペア、合計6本を積載しています。これはホイール交換が必要な際にすぐに掴んで飛び出すためのものです」。加えて第9ステージではパリ〜ルーベで活躍するオフロードタイプのモトを追加投入する。ホイールもパヴェ用タイヤを貼ったものに入れ替える。
パリ〜ルーベ覇者のペテル・サガンも、ここまでのステージで新型のディスク仕様バイクを使い続けているが、ルーベステージはリムブレーキのホイールを使用する可能性があることを話す。「ルーベステージはパンクの際のニュートラルサポートの状況がわからないから、依然としてリムブレーキを選ぶ可能性はある」。
photo&text:Makoto.AYANO in Renne in France
UCIから「アジェンダ2022」が発表されたのが6月23日。そのなかで、これまでトライアルとして許可されていたディスクブレーキの使用を7月1日から全面解禁することが明らかにされた。つまりツール・ド・フランスからは公式に使用ができるということになる。賛否両論、ローターによるケガなど危険を懸念する声もあったが、今後は試用ではなく、ディスクは公式に認められた存在となる。レースでの使用にゴーサインが出たのだ。
ツール直前の発表となったが、ツールに出場するチームがその発表によって「ではディスクブレーキを使用しよう」とはならない。それらのチームはすでにディスク使用に関してのプランを決めており、その発表が使用の可否を左右するものではないからだ。トレックを始めとしたバイクブランドのいくつかは、そのUCI発表以前よりスポンサードチームがツールでディスク仕様バイクを本格投入することを明らかにしていたからだ。
バイクブランドが第1スポンサーにつくようなチームの場合、メーカーの意向でチームに対してディスクブレーキバイクの使用がプッシュされる事情は大いにある。今や先進のバイクにはディスクブレーキは欠かせないテクノロジーで、それらのブランドはいずれもディスクを使用する前提でトップカテゴリーのバイクを開発しているからだ。ツール前に発表されたバイクの数々を見てもそれは明らかで、世界最大のレースを世界への発表・アピールの場と考えているのはどのブランドも同じだ。
開幕から5ステージを終え、状況が見えてきたところでこれまでの各ステージの使用状況なども踏まえてディスクブレーキを取り巻くプロトンの現況を見てゆこう。
平坦路系の通常ロードステージで行われた開幕第1ステージは、ツールでも多くの注目を集める。チームの全員にディスクブレーキバイクを用意したトレック・セガフレード、EFエデュケーションファースト・ドラパック(キャノンデール)、ボーラ・ハンスグローエ(スペシャライズド)、ロット・スーダル(リドレー)、クイックステップフロアーズ(スペシャライズド)の5チームと、メンバーの過半数(4人)がディレクトエネルジー(ウィリエール)。
なおBMCレーシングはシュテファン・キュングとミヒャエル・シェアーの2名の選手がディスクを使用した新型バイクを駆った。ミッチェルトン・スコットもマイケル・ヘップバーンとマシュー・ヘイマンの2名がディスク。開幕ステージを制したフェルナンド・ガヴィリア(クイックステップフロアーズ)もディスクブレーキバイクを使用しての勝利だったことで、ディスク時代の本格到来を感じさせた。
しかし、各チームのディスク使用率の高さが目立つ印象だが、そのほとんどがエアロ系のバイクであることに注目したい。ツールに合わせて新型エアロバイクを発表したトレック、キャノンデール、BMC、スペシャライズド、リドレー、ウィリエール、そして新型ではないもののスコットのディスク使用モデルはエアロ系バイクだ。
エアロ系バイクの最近の設計傾向はブレーキケーブルをフレームに完全内装する方向で進んでおり、そうする際に自由度が高い油圧ケーブルとディスクブレーキの組み合わせが相性が良いため、この数字はディスクブレーキの使用率というより、最新エアロロードバイクを使用することで出た数字とも置き換えられるのだ。
カンパニョーロのテックサポートを行うマヌエル・ペナッツァート氏は言う。「カンパニョーロがサポートしているロット・スーダルの選手たちがディスクを使用するのは、今の時点では平坦ステージだけです。グライペルとチームは第1ステージで高速スプリントに有利なエアロバイクで勝利を目指しましたが、坂の多いステージでは使わないでしょう。バイクの重量が7.6kgと軽くはないため、チームの多くの選手は平坦かローリングステージのみで使用します。マルセル・シーベルグはすべてのステージでディスクを使うようです。選手個人の好みで、トレーニングから使用して慣れて好む選手も居ます」。
平坦系のアシストを担う選手がそれらのエアロバイクを使用するメリットが大きく、平坦を巡航する際のエネルギーロスを減らすためにエアロバイクひいてはディスクブレーキ仕様バイクを駆るというのが実情だ。
第1ステージはエアロバイクをチームでフル採用したチームが多かったが、この状況は第2ステージで変化。ディスク率が減り、第4ステージではさらにディスク使用率は減ることになる。注目度の高い序盤ステージでディスクブレーキバイクの「デビュー」を済ませると、またリムブレーキのバイクに戻すチームが出てきたのだ。さらにコースに坂が多く出てきた第5・6ステージでは、ディスク使用率はさらに減り、エアロバイクよりもノーマル形状のオールラウンドバイクが好まれた。その両方にディスクとリムブレーキモデルを用意しているチームも複数ある。また、第3ステージのチームTTではワンティ・グループゴベールがTT用のディスクホイールなどにディスクブレーキモデルを投入した。
第5ステージでは、ボーラ・ハンスグローエは優勝したサガンがディスク仕様バイクを駆ったが、マイカなど総合系の選手はリムブレーキバイクを選択。チームでもブレーキタイプが混在していた。ベースは同じモデル(Tarmac)だが、そうなれば2つのモデルごとに2つのブレーキタイプのバイクを用意することになる。今回スペシャライズドはボーラとクイックステップのために大量のバイクを運搬・供給するためのトラックを帯同させており、ロジスティック面からのサポートも独自に行っている。物流作戦でクリアできるとも言えるが、それだけの物資、人員、手間とコストがかかっているいうこと。そこは選手サポートとブランドPRにかけるバイクメーカーの意地のようなものだろう。
一方で、バイクメーカーとしてはディスクブレーキ推しのスタンスであるのに、今回のツールではリムブレーキで揃えたのがカチューシャ・アルペシンをサポートするキャニオンだ。テック担当者によればチームとの話し合いの結果、リムブレーキメインでいくという結果になったのだという。タイムロスのリスクを負いたくないことに加え、ホイールのブレーキ当たり面の処理による性能向上で、リムブレーキもパフォーマンス的に問題ないレベルと判断したという。イルヌール・ザカリンが状況によりディスクを使用することがあるが、メインはリムブレーキだという。こうしたリムブレーキ派チームが未だに過半数だ。もちろんチームスカイもそのひとつ。
ピナレロ社代表のファウスト・ピナレロ氏によれば、ピナレロとチームスカイの関係では、チームにディスク使用をプッシュするのではなく、あくまで勝つための選択をチームと選手に任せるというものだと言う。クリストファー・フルームは、プロトンの全員がディスクになるというような状況になるまでは使用しないと言う。
フルームがこだわっているのはホイール交換にかかる時間のロスだ。それはディスクそのものの問題でなく、組み合わされる規格「スルーアクスル」によるもの。クイックリリース以上に交換に時間がかかってしまうことで、タイムを失う可能性がある限り使用しないというスタンスだ。フルームの場合、同じようなサイズのバイクに乗るアシスト選手が身の回りに多い(バイクごと交換できる)という好条件が揃っていても。
ディスクの場合、スルーアクスルのタイプの違いに加え、ローターの径の違いも問題になる。UCIのレコメンデーションでは、フロントが160mm、リア140mmを推奨している。しかしチームはそれに従うわけでなく、前後140mmローター、あるいは前後160mmなどの組み合わせも見られる。ニュートラルサポートのホイール交換の都合による推奨値は、バイク性能の追求の前に意味をなさなくなっているようだ。
カンパのペナッツァート氏は言う。「登り用に軽い140mmを選ぶ、体重のある選手が160mmを選ぶなど、ローター径は選手の好みによります。カンパニョーロとしては、バイクと体重の合計が80kgを境に、それを越えるならリアも160mmローターを推奨しています」。
「今はすごく混乱した状況。ディスク使用選手やそのローター径は毎日チェックすることが欠かせない」と話すのはマヴィックのニュートラルサポートを担当するマキシム・ルフィ氏だ。「毎朝、各チームバスを訪問して、どの選手がディスクを使うのか、そのローター経は何mmなのかをチェックしてリスト化しています。状況は毎日変わります。今はそのような”まとまらない状況”と言えるでしょう。我々が活躍するのは常にストレスフルな状況においてですから、事前にすべての準備をしておくことが大切なんです」。
BMCレーシングは、キュングとシェアーの2人がディスクロードに乗るが、パンクの際はホイール交換でなくバイク交換を前提としているという。平坦路でのアシストが彼らの主な役割なだけに、(タイムを大きく失う)最悪の事態も割り切れるという。「ニュートラルサービスに頼ることは考えていません。バイクごと交換が早いし、メカニックは電動ドリルを改造したドライバーも用意しています」。しかしエースにホイールを差し出すことはできない。
各チームが今から心配しているのが、第9ステージの、パリ〜ルーベと同じ石畳区間を走るステージだ。「悪路だからディスクブレーキが有利」という考えは、ホイール交換の懸念の前にまったく意味を持たないようだ。
マヴィックのルフィ氏は言う。「第9ステージには各チームが”パリ〜ルーベ・スペシャル”バイクを用意するでしょう。そこではディスクブレーキ使用率はさらに低くなるとみています。悪路=ディスクブレーキと考えるのは違います。パンクによるホイール交換が頻繁にあることが前提です。もしパヴェ(石畳)でパンクしたら、通常の舗装区間よりもチームカーが到着するのに時間がかかるうえ、ホイール交換に時間がかかるディスクブレーキのホイールがさらにタイムロスにつながります。選手たちはそれを恐れています。ディスクブレーキの性能うんぬんより、いかに交換ホイールをすばやく受け取るか、再び走り出せるか。そちらが関心事なのです」。
マヴィックのニュートラルサポートチームは、2台のイエローカーそれぞれのルーフキャリアにバイク4台、合計7ペア・14本のスペアホイールを積載しているという。加えてホイールを積んだイエローモトも随行する。
「イエローカーの中にはディスク用としてローターが140mmのものを1ペア、160mmのものを1ペア、そしてリムブレーキホイールを1ペア、合計6本を積載しています。これはホイール交換が必要な際にすぐに掴んで飛び出すためのものです」。加えて第9ステージではパリ〜ルーベで活躍するオフロードタイプのモトを追加投入する。ホイールもパヴェ用タイヤを貼ったものに入れ替える。
パリ〜ルーベ覇者のペテル・サガンも、ここまでのステージで新型のディスク仕様バイクを使い続けているが、ルーベステージはリムブレーキのホイールを使用する可能性があることを話す。「ルーベステージはパンクの際のニュートラルサポートの状況がわからないから、依然としてリムブレーキを選ぶ可能性はある」。
photo&text:Makoto.AYANO in Renne in France
Amazon.co.jp
シマノ BR-R9170 フロント用 レジンパッド(L02A)フィン付 フラットマウント 付属/φ140/160mmローター用 マウントブラケット IBRR9170F1RF
シマノ(SHIMANO)
¥ 16,618
シマノ BR-R9170 リア用 レジンパッド(L02A)フィン付 フラットマウント 付属/固定ボルトX2本(マウント厚25mm用) IBRR9170R1RF
シマノ(SHIMANO)
¥ 16,254