2018/06/04(月) - 07:53
ツール・ド・熊野最終日は、混戦のサバイバルレースを制した佐野淳哉(マトリックスパワータグ)がステージ優勝。マルク・デマール(チーム右京)が逆転して個人総合優勝。ポイント賞、山岳賞とあわせて3賞を独占した。
太地港沿いのKOMに向かう登り 最終日も青空が広がった photo:Satoru Kato
ツール・ド・熊野第3ステージは、太地町に設定された1周10.5kmの周回コースを9周する104.3km(9.8kmのパレード区間を含む)。高低差は60mほどだが、短距離で斜度のある登りが繰り返されるハードなコースは「ジェットコースター」と表現される。4級山岳が設定される太地港沿いの道を集団が登る様は、丸山千枚田と並んでツール・ド・熊野を象徴する光景だ。
最終日も晴れ。悪天候とセットで語られることの多いツール・ド・熊野としては奇跡的とも言える天気に恵まれ、最終日のレースがスタートした。
マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)が序盤からアタック photo:Satoru Kato
登り区間でアタックする岡篤志(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato
個人総合2位につけるマーク・デマール(チーム右京)、同3位のベンジャミン・ディボール(セントジョージコンチネンタル)は先頭集団でレースを進める photo:Satoru Kato
リーダージャージの入部正太朗は孤軍奮闘 photo:Satoru Kato
個人総合優勝争いの上位3人のタイム差は30秒以内。逆転優勝を狙うチームと最後のステージ優勝を狙うチームの思惑が交錯し、スタートからアタックが繰り返される。チーム右京、セントジョージコンチネンタル、キナンサイクリングチーム、マトリックスパワータグ、宇都宮ブリッツェンなどが次々とアタック。どれも逃げにつながるアタックにはならないものの、集団の人数を減らし、リーダージャージの入部正太朗とシマノレーシングにダメージを与えていく。
レース中盤までに先頭集団に残ったのは30人ほど。そこからさらにトマ・ルバ、マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)や、ホセ・ビセンテ・トリビオ、土井雪広(マトリックスパワータグ)らがペースアップを図る。この動きで入部が遅れる一方、総合2位のマルク・デマール(チーム右京)と総合3位のベンジャミン・ディボール(セントジョージコンチネンタル)は先頭集団に残る。入部は後方の集団に合流するが、前を追う勢いはなく、総合首位陥落は確実になってしまう。
7周目 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)がアタック photo:Satoru Kato
8周目 佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が先行するトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)を追う photo:Satoru Kato
太地港を背景に登りを行くトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)と佐野淳哉(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato
7周目、この日何度もアタックを繰り返していたトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)がアタック。後続に20秒差をつけて8周目に入って行く。さらに佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が単独で追走し、残り2周となる9周目にルバに追いつく。逃げ切りで一致していたと言う2人は均等に先頭交代しながら走行。チェン・キンロ(HKSIプロサイクリング)が追走するが2人に追いつくことはなく、勝負は佐野とルバに絞られた。
踊りながらフィニッシュする佐野淳哉(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato
最終周回の残り3km、短い登りでルバが佐野を引き離そうとするが不発に終わり、最後のスプリント勝負へ。フィニッシュに先頭で現れたのは佐野。うなだれるルバを後方に、ウィニング・ダンスをしながら第3ステージ優勝を決めた。
第3ステージを完走したのは36人。プロローグをスタートした人数の3分の1しか完走できないというサバイバルレースだった。
第3ステージ 表彰式 ©️Tour de KUMANO「総合上位勢が序盤から激しく動いていたのでかなりキツかったですが、集団の後ろでこらえてなんとか前に残れました。チームメイトとは終盤に行こうと話をしていて、出来ればホセ(・ビセンテ・トリビオ)を連れて行きたかったのですが、彼が行くと他チームがついてくるから1人で行けと言われて、単独でトマ(・ルバ)選手を追いました。最終周回でトマ選手が攻撃してきましたが、余力があったので対応出来、最後のスプリントに持ち込めたのが勝因だと思います」と、レースを振り返る佐野。
「これから全日本選手権まで重要なレースが続きますが、例年よりも良いコンディションで走れているので、次のレースにも繋げていきたいです」と、次のレースに意欲を見せた。
逆転の総合優勝を決めてフィニッシュするマーク・デマール(チーム右京) photo:Satoru Kato
グルペットでフィニッシュする入部正太朗(シマノレーシング) photo:Satoru Kato
個人総合成績 上位3名 ©️Tour de KUMANO
24秒遅れてフィニッシュした集団ではデマールがガッツポーズ。入部は5分以上遅れた集団でフィニッシュしたため、デマールの個人総合優勝が決まった。デマールは前日の第2ステージで確定している山岳賞、さらにはポイント賞も獲得して3賞を独占。20回記念のツール・ド・熊野を完全制覇した。
デマールは「4日間を通してとても良いレースだった。第1ステージは危険なコースでオーガナイザーに不満があったけれど、第2ステージは美しい景色と緑が綺麗なコースだったから、レースだけれどライディングを楽しんだ。日本には初めて来たけれど、日本を好きになったよ。
今日の最終ステージは最初からレースリーダーにプレッシャーをかけるためにハードに攻めて行った。その結果リーダーが脱落してくれて僕がリーダージャージを手に入れた。10年前にもジャージを重ね着したことがあるけれど、3枚のジャージを手に入れられるなんて嬉しいね。これもチームのおかげ。来年もこのジャージを獲りに来たいね。明日にはヨーロッパに戻ってMTBレースに出るんだ。日本とアジアツアーには9月に戻ってくるよ」と、コメントした。
20回記念のツール・ド・熊野が終わった。第1ステージのキャンセルなど今後の課題も見えたが、自然豊かな熊野地域でのレースをここまで続けた関係者の努力には脱帽という言葉しか見当たらない。今後も新たな歴史を作り続けて欲しい。
一方、悲願の地元優勝を目指したキナンサイクリングチームは今年も及ばず。しかし最終ステージでの総攻撃に地元チームとしてのプライドを見た気がする。21回目の来年こそ悲願成就となるか。

ツール・ド・熊野第3ステージは、太地町に設定された1周10.5kmの周回コースを9周する104.3km(9.8kmのパレード区間を含む)。高低差は60mほどだが、短距離で斜度のある登りが繰り返されるハードなコースは「ジェットコースター」と表現される。4級山岳が設定される太地港沿いの道を集団が登る様は、丸山千枚田と並んでツール・ド・熊野を象徴する光景だ。
最終日も晴れ。悪天候とセットで語られることの多いツール・ド・熊野としては奇跡的とも言える天気に恵まれ、最終日のレースがスタートした。




個人総合優勝争いの上位3人のタイム差は30秒以内。逆転優勝を狙うチームと最後のステージ優勝を狙うチームの思惑が交錯し、スタートからアタックが繰り返される。チーム右京、セントジョージコンチネンタル、キナンサイクリングチーム、マトリックスパワータグ、宇都宮ブリッツェンなどが次々とアタック。どれも逃げにつながるアタックにはならないものの、集団の人数を減らし、リーダージャージの入部正太朗とシマノレーシングにダメージを与えていく。
レース中盤までに先頭集団に残ったのは30人ほど。そこからさらにトマ・ルバ、マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)や、ホセ・ビセンテ・トリビオ、土井雪広(マトリックスパワータグ)らがペースアップを図る。この動きで入部が遅れる一方、総合2位のマルク・デマール(チーム右京)と総合3位のベンジャミン・ディボール(セントジョージコンチネンタル)は先頭集団に残る。入部は後方の集団に合流するが、前を追う勢いはなく、総合首位陥落は確実になってしまう。



7周目、この日何度もアタックを繰り返していたトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)がアタック。後続に20秒差をつけて8周目に入って行く。さらに佐野淳哉(マトリックスパワータグ)が単独で追走し、残り2周となる9周目にルバに追いつく。逃げ切りで一致していたと言う2人は均等に先頭交代しながら走行。チェン・キンロ(HKSIプロサイクリング)が追走するが2人に追いつくことはなく、勝負は佐野とルバに絞られた。

最終周回の残り3km、短い登りでルバが佐野を引き離そうとするが不発に終わり、最後のスプリント勝負へ。フィニッシュに先頭で現れたのは佐野。うなだれるルバを後方に、ウィニング・ダンスをしながら第3ステージ優勝を決めた。
第3ステージを完走したのは36人。プロローグをスタートした人数の3分の1しか完走できないというサバイバルレースだった。

「これから全日本選手権まで重要なレースが続きますが、例年よりも良いコンディションで走れているので、次のレースにも繋げていきたいです」と、次のレースに意欲を見せた。



24秒遅れてフィニッシュした集団ではデマールがガッツポーズ。入部は5分以上遅れた集団でフィニッシュしたため、デマールの個人総合優勝が決まった。デマールは前日の第2ステージで確定している山岳賞、さらにはポイント賞も獲得して3賞を独占。20回記念のツール・ド・熊野を完全制覇した。
デマールは「4日間を通してとても良いレースだった。第1ステージは危険なコースでオーガナイザーに不満があったけれど、第2ステージは美しい景色と緑が綺麗なコースだったから、レースだけれどライディングを楽しんだ。日本には初めて来たけれど、日本を好きになったよ。
今日の最終ステージは最初からレースリーダーにプレッシャーをかけるためにハードに攻めて行った。その結果リーダーが脱落してくれて僕がリーダージャージを手に入れた。10年前にもジャージを重ね着したことがあるけれど、3枚のジャージを手に入れられるなんて嬉しいね。これもチームのおかげ。来年もこのジャージを獲りに来たいね。明日にはヨーロッパに戻ってMTBレースに出るんだ。日本とアジアツアーには9月に戻ってくるよ」と、コメントした。
20回記念のツール・ド・熊野が終わった。第1ステージのキャンセルなど今後の課題も見えたが、自然豊かな熊野地域でのレースをここまで続けた関係者の努力には脱帽という言葉しか見当たらない。今後も新たな歴史を作り続けて欲しい。
一方、悲願の地元優勝を目指したキナンサイクリングチームは今年も及ばず。しかし最終ステージでの総攻撃に地元チームとしてのプライドを見た気がする。21回目の来年こそ悲願成就となるか。
ツール・ド・熊野2018 第3ステージ(104.3km)
1位 | 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) | 2時間35分39秒 |
2位 | トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) | +2秒 |
3位 | チェン・キンロ(香港、HKSIプロサイクリング) | +12秒 |
4位 | ライアン・キャバナ(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) | +24秒 |
5位 | 黒枝士揮(愛三工業レーシングチーム) | |
6位 | 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング ) | |
7位 | マルク・デマール(チーム右京) | +26秒 |
8位 | ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) | +26秒 |
9位 | 野本 空(愛三工業レーシングチーム) | |
10位 | 鈴木 譲(宇都宮ブリッツェン) |
個人総合時間順位(最終)
1位 | マルク・デマール(オランダ、チーム右京) | 5時間22分47秒 |
2位 | ベンジャミン・ディボール(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) | +18秒 |
3位 | ベンジャミ・プラデス(スペイン、チーム右京) | +35秒 |
4位 | 鈴木 譲(宇都宮ブリッツェン) | +38秒 |
5位 | サルバードール・グアルディオラ(キナンサイクリングチーム) | |
6位 | マーカス・カリー(オーストラリア、セントジョージコンチネンタル) | +39秒 |
ポイント賞(最終)
1位 | マルク・デマール(オランダ、チーム右京) | 29p |
2位 | 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) | 25p |
3位 | 入部正太朗(シマノレーシング) | 25p |
山岳賞(最終)
1位 | マルク・デマール(チーム右京) | 24p |
2位 | マルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム) | 12p |
3位 | ベンジャミ・プラデス(スペイン、チーム右京) | 8p |
個人総合時間順位(最終)
1位 | セントジョージコンチネンタル | 16時間13分4秒 |
2位 | キナンサイクリングチーム | +15秒 |
3位 | 宇都宮ブリッツェン | +3分15秒 |
text&photo:Satoru Kato
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