2018/05/10(木) - 15:59
リラックスした表情の選手たちがシチリア南部の乾いた丘を走ったジロ・デ・イタリア第5ステージ。エトナ決戦を翌日に控えた丘ステージの模様を現地からお届けします。
アグリジェントのスタート地点にやってきた選手たちは一様にリラックスしていた。イスラエルでの特殊な3日間を終え、さらに前日のカターニアが混沌としていただけに、どの選手も笑顔を浮かべていて、観客の求めに応じて写真撮影やサインをする。
アグリジェントと言えばユネスコ世界遺産の「神殿の谷」がある街として有名で、ギリシャ時代の神殿の遺跡が丘の上に横たわっている。レースはそんな神殿の横をかすめて国道(SS)に入る予定が、スタート直前に交通事故が発生したためコースが通行止めになってしまった。
急遽主催者はレース開始を15分遅らせ、コースを変更し、誘導のサインを移動させ、人員の配置をパパッと変えてレースを通した。おかげ様で予定していたアグリジェントらしい神殿の写真を撮れなくなったわけだが、長年ロードレースを運営するプロフェッショナルたちの柔軟かつ迅速な対応には驚かされる。
アグリジェントの一帯はオレンジの産地。海から山までうねるように続く広大な丘にはオレンジの畑が広がり、そこにオリーブ畑やブドウ畑も混ざる。それらの樹々を揺らす強い向かい風が吹いたため、スタート時間15分遅延も相まって、レースはスローな展開を見せた。
イタリアの中で最大の州で、地中海最大の島であるシチリア島。面積は25,420km2で、大きさで言うと九州(36,782km2)と四国(18,297km2)の中間ぐらい。車で島を1周ぐるっと回ると約900kmある。ちなみに昨年の開幕地サルデーニャ島は面積24,089km2で、お隣フランス領のコルシカ島は8,680km2。シチリア島をジロが走るのは18回目であり、国土の12分の1の面積を誇りながらも5回に1回弱しか登場していない計算。
そんなシチリア出身選手と言えばヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)の名前がまず出てくるが、「メッシーナのサメ」はツール・ド・フランスに照準を合わすためジロを欠場。同じく出場していないが、ダミアーノ・カルーゾ(BMCレーシング)はシチリアのラグーザ出身だ。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(バーレーン・メリダ)はピエモンテ州トリノ出身だが、父親がシチリア出身で、シチリアのパレルモで育っているのでほぼシチリア人。
そしてもう一人がサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームスカイ)。レース中盤の77km地点で通過した人口1万人強のメンフィがプッチョの出身地であり、至るところにトト(サルヴァトーレの愛称)を応援するバナーが見られた。イタリアの端っこに位置するシチリアの、その中でも端っこに位置する街の出身で、2013年のジロでマリアローザを着たプッチョを人々は温かく迎えた。
この日は映画ニューシネマパラダイス(ヌオーヴォチネマパラディーゾ)のロケ地であるパラッツォ・アドリアーノの近くを通っている。フィニッシュ地点サンタニンファを含め、ステージ後半に通過したのは、今から50年前の1968年に大地震で大きな被害を受けた地域。サンタニンファの家屋は70〜80%が全壊のダメージを受けている。
イタリアに到着してから全く目立っていないイスラエルサイクリングアカデミーは、2人のガイのうち1人のガイを失ってしまった。ガイ・ニーブ(イスラエル)が体調不良によりレース中盤にリタイア。チームはイスラエル人選手をローマまで連れていくことを目標としており、イスラエル人初完走の記録はガイ・サギブにかかっている。
Velonのデータによると、逃げに乗っていた体重67kgのアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)の消費カロリーは3,750kcal。一方、集団内で1日を過ごした体重53kgのドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)の消費カロリーは2,700kcal。案外少ない?案外多い?
エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)はここまでの5ステージで3人目のイタリア人ステージ優勝者になった。イタリア人による開幕5戦3勝は2009年以来の記録。2017年は第17ステージまでイタリア人選手のステージ優勝を拝めなかっただけに開催国として今年は順調に好成績を残していると言える。
そのイタリアの勢いはエトナ火山でも続く?第5ステージを終えて総合タイム差1分以内にいるのは24名。ヨーロッパ最大の活火山の中腹を目指す登りで、まずはローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)がマリアローザを守れるのかどうかに注目したい。そして連日短い登りで苦戦しているクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)の本当の調子はどうなのか。第5ステージの残り5kmで落車して総合39位までダウンしたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が巻き返しを図る?マリアローザ争いにおいてエトナ決戦は興味が尽きない。
あと、エトナでは山岳賞ランキングも激変することになる。毎日のように逃げてマリアアッズーラを着るエンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)は現在11ポイントを保有しているが、1級山岳エトナを先頭通過(ステージ優勝)すれば一気に35ポイント。つまりエトナでステージ優勝した選手は自動的に山岳賞ランキング首位に立つことになる。
text&photo:Kei Tsuji in Santa Ninfa, Italy
アグリジェントのスタート地点にやってきた選手たちは一様にリラックスしていた。イスラエルでの特殊な3日間を終え、さらに前日のカターニアが混沌としていただけに、どの選手も笑顔を浮かべていて、観客の求めに応じて写真撮影やサインをする。
アグリジェントと言えばユネスコ世界遺産の「神殿の谷」がある街として有名で、ギリシャ時代の神殿の遺跡が丘の上に横たわっている。レースはそんな神殿の横をかすめて国道(SS)に入る予定が、スタート直前に交通事故が発生したためコースが通行止めになってしまった。
急遽主催者はレース開始を15分遅らせ、コースを変更し、誘導のサインを移動させ、人員の配置をパパッと変えてレースを通した。おかげ様で予定していたアグリジェントらしい神殿の写真を撮れなくなったわけだが、長年ロードレースを運営するプロフェッショナルたちの柔軟かつ迅速な対応には驚かされる。
アグリジェントの一帯はオレンジの産地。海から山までうねるように続く広大な丘にはオレンジの畑が広がり、そこにオリーブ畑やブドウ畑も混ざる。それらの樹々を揺らす強い向かい風が吹いたため、スタート時間15分遅延も相まって、レースはスローな展開を見せた。
イタリアの中で最大の州で、地中海最大の島であるシチリア島。面積は25,420km2で、大きさで言うと九州(36,782km2)と四国(18,297km2)の中間ぐらい。車で島を1周ぐるっと回ると約900kmある。ちなみに昨年の開幕地サルデーニャ島は面積24,089km2で、お隣フランス領のコルシカ島は8,680km2。シチリア島をジロが走るのは18回目であり、国土の12分の1の面積を誇りながらも5回に1回弱しか登場していない計算。
そんなシチリア出身選手と言えばヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)の名前がまず出てくるが、「メッシーナのサメ」はツール・ド・フランスに照準を合わすためジロを欠場。同じく出場していないが、ダミアーノ・カルーゾ(BMCレーシング)はシチリアのラグーザ出身だ。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(バーレーン・メリダ)はピエモンテ州トリノ出身だが、父親がシチリア出身で、シチリアのパレルモで育っているのでほぼシチリア人。
そしてもう一人がサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームスカイ)。レース中盤の77km地点で通過した人口1万人強のメンフィがプッチョの出身地であり、至るところにトト(サルヴァトーレの愛称)を応援するバナーが見られた。イタリアの端っこに位置するシチリアの、その中でも端っこに位置する街の出身で、2013年のジロでマリアローザを着たプッチョを人々は温かく迎えた。
この日は映画ニューシネマパラダイス(ヌオーヴォチネマパラディーゾ)のロケ地であるパラッツォ・アドリアーノの近くを通っている。フィニッシュ地点サンタニンファを含め、ステージ後半に通過したのは、今から50年前の1968年に大地震で大きな被害を受けた地域。サンタニンファの家屋は70〜80%が全壊のダメージを受けている。
イタリアに到着してから全く目立っていないイスラエルサイクリングアカデミーは、2人のガイのうち1人のガイを失ってしまった。ガイ・ニーブ(イスラエル)が体調不良によりレース中盤にリタイア。チームはイスラエル人選手をローマまで連れていくことを目標としており、イスラエル人初完走の記録はガイ・サギブにかかっている。
Velonのデータによると、逃げに乗っていた体重67kgのアンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)の消費カロリーは3,750kcal。一方、集団内で1日を過ごした体重53kgのドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)の消費カロリーは2,700kcal。案外少ない?案外多い?
エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)はここまでの5ステージで3人目のイタリア人ステージ優勝者になった。イタリア人による開幕5戦3勝は2009年以来の記録。2017年は第17ステージまでイタリア人選手のステージ優勝を拝めなかっただけに開催国として今年は順調に好成績を残していると言える。
そのイタリアの勢いはエトナ火山でも続く?第5ステージを終えて総合タイム差1分以内にいるのは24名。ヨーロッパ最大の活火山の中腹を目指す登りで、まずはローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)がマリアローザを守れるのかどうかに注目したい。そして連日短い登りで苦戦しているクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)の本当の調子はどうなのか。第5ステージの残り5kmで落車して総合39位までダウンしたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が巻き返しを図る?マリアローザ争いにおいてエトナ決戦は興味が尽きない。
あと、エトナでは山岳賞ランキングも激変することになる。毎日のように逃げてマリアアッズーラを着るエンリーコ・バルビン(イタリア、バルディアーニCSF)は現在11ポイントを保有しているが、1級山岳エトナを先頭通過(ステージ優勝)すれば一気に35ポイント。つまりエトナでステージ優勝した選手は自動的に山岳賞ランキング首位に立つことになる。
text&photo:Kei Tsuji in Santa Ninfa, Italy
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