2018/05/09(水) - 16:14
平日なのにカターニア市内は人だかり。事前の発表の1,000m増しの獲得標高差3,500mステージで再びマリアローザ候補にタイム差が生まれた。シチリアで賑やかに再始動したジロ・デ・イタリア第4ステージの模様を現地からお届けします。
イタリア初日は地中海に浮かぶシチリア島第2の都市カターニア。石畳が敷かれた街中には古いスクーターが放つ排気ガスの匂いが漂い、見上げると真っ青な空にツバメが飛んでいるイタリアらしい光景。イスラエルにはなかったキャラバン隊が放つ大音量の音楽がカターニア中の人々を呼び寄せる。
話がそれるが、とても重要なことなので記しておくと、イタリアはやはりご飯が安くて美味い。イスラエルで1週間弱を過ごしてきた身体と頭がイタリアの全てに驚いている。ご飯の安さはもちろんのこと、例えば同じクオリティのホテルでもイスラエルの半額するかしないか。開幕から5日が経ってようやくイタリア一周レースが始まった感がある。
前日の午前中にシチリア入りした選手たちは、先に到着してメカニックによって組まれたバイクに乗って、30〜60kmを軽く流した。休息日とは言っても全くバイクに乗らないわけではなく、レースのリズムを崩さないためにも、そして移動で疲れた脚の血を巡らせるためにも、選手たちは3週間(細かく言えば24日間)毎日乗る。
連日30度を超えたイスラエルよりもシチリアは涼しく、最高気温は25度ほど。朝方は14度ほどまで下がるので、町中にはダウンジャケットを着込んでいる紳士淑女もいる。
カターニアのスタート地点は人で溢れかえった。熱烈な歓迎ぶりは、良く言えば活気があり、悪く言えばコントロールが効いていない。イタリア語で言うところのカジーノ、英語で言うところのカオスな状態。スタート地点に限らず、通過する町はどこもかしこも人だらけ。平日(火曜日)の昼間に老若男女問わずこれだけの人が外に出てくると、逆に仕事をしている人がいるのかどうか疑問になるレベル。
そんな活気の中で、イスラエルでのジロ開幕に反発するデモがニュートラルゾーン内で起こった。「ユダヤ人が武力でアラブ人を追い出し、国土を占拠している行為をジロが正当化している」と主張するデモ隊が、パレスチナの旗(色味はUAEにとても似ている)を持ったコースを塞いだため、盾を持った警察部隊が力で押さえ込む。レースの進行には影響しなかったが、イスラエルでの開幕は今後もジロの運営に影響を与えそうだ。
シチリアの道はこれでもかというほどガタガタのデコボコ。ジロのコースが通過する道路は補修もしく再舗装されている場合が多いため中継映像では分かりにくいが、一歩コースを外れると、突然現れる深さ10cmほどの穴に気をつけなければ車が壊れる。国道(SS)はほとんどの場合問題なく、州道(SR)、県道(SP)とランクが下がるとともに荒れ具合が増す。メッシーナ海峡を渡った本土のカラブリア州やプーリア州も負けず劣らずだが、やはりシチリア島南部の荒れ具合はイタリアナンバーワンだ。
事前の公式発表では第4ステージの獲得標高差は2,500mだったが、実際に選手たちは3,500mを登った。実に1,000mもの誤差がある。標高600〜800mの峠をつなぐコースは登りと下りしかないような代物で、例えるならばリエージュ〜バストーニュ〜リエージュのよう。細かく言うと、路面が滑りやすく、パンクが多く、コース上に溢れた観客にも注意しないといけないリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)の調子は良いのか悪いのか。それともツールにはないジロらしい細くてテクニカルなコースに苦戦しているのか。休息日に同じチャーター機でシチリアに移動後、パスポートコントロール待ちの際に数分話したところ「(試走時の落車は)もっと悪い怪我になりえたのでホッとしているのが正直な気持ち。怪我の影響はほぼない。日に日に左右バランスも良くなっている」と笑っていたが、ロードステージで挽回するどころか、またトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)からまたタイムを失ってしまった。
もともとフルームは短時間で爆発的なパワーを発揮するような走りは得意ではないが、再び最大勾配13%の登りがフィニッシュ手前に登場する第5ステージや、エトナ火山の山頂フィニッシュが設定された第6ステージでタイムを失うことにがあれば、このままフェードアウトしかねない。「肝心なタイミングでポジションを落としてしまい、後方から最後の登りに挑むことになってしまった。調子は良いし、調子は上向き。エトナの前に明日の第5ステージにフォーカスしないと」と、再びポジション取りがキーとなるジロらしいステージに目を向ける。
text&photo:Kei Tsuji in Caltagirone, Italy
イタリア初日は地中海に浮かぶシチリア島第2の都市カターニア。石畳が敷かれた街中には古いスクーターが放つ排気ガスの匂いが漂い、見上げると真っ青な空にツバメが飛んでいるイタリアらしい光景。イスラエルにはなかったキャラバン隊が放つ大音量の音楽がカターニア中の人々を呼び寄せる。
話がそれるが、とても重要なことなので記しておくと、イタリアはやはりご飯が安くて美味い。イスラエルで1週間弱を過ごしてきた身体と頭がイタリアの全てに驚いている。ご飯の安さはもちろんのこと、例えば同じクオリティのホテルでもイスラエルの半額するかしないか。開幕から5日が経ってようやくイタリア一周レースが始まった感がある。
前日の午前中にシチリア入りした選手たちは、先に到着してメカニックによって組まれたバイクに乗って、30〜60kmを軽く流した。休息日とは言っても全くバイクに乗らないわけではなく、レースのリズムを崩さないためにも、そして移動で疲れた脚の血を巡らせるためにも、選手たちは3週間(細かく言えば24日間)毎日乗る。
連日30度を超えたイスラエルよりもシチリアは涼しく、最高気温は25度ほど。朝方は14度ほどまで下がるので、町中にはダウンジャケットを着込んでいる紳士淑女もいる。
カターニアのスタート地点は人で溢れかえった。熱烈な歓迎ぶりは、良く言えば活気があり、悪く言えばコントロールが効いていない。イタリア語で言うところのカジーノ、英語で言うところのカオスな状態。スタート地点に限らず、通過する町はどこもかしこも人だらけ。平日(火曜日)の昼間に老若男女問わずこれだけの人が外に出てくると、逆に仕事をしている人がいるのかどうか疑問になるレベル。
そんな活気の中で、イスラエルでのジロ開幕に反発するデモがニュートラルゾーン内で起こった。「ユダヤ人が武力でアラブ人を追い出し、国土を占拠している行為をジロが正当化している」と主張するデモ隊が、パレスチナの旗(色味はUAEにとても似ている)を持ったコースを塞いだため、盾を持った警察部隊が力で押さえ込む。レースの進行には影響しなかったが、イスラエルでの開幕は今後もジロの運営に影響を与えそうだ。
シチリアの道はこれでもかというほどガタガタのデコボコ。ジロのコースが通過する道路は補修もしく再舗装されている場合が多いため中継映像では分かりにくいが、一歩コースを外れると、突然現れる深さ10cmほどの穴に気をつけなければ車が壊れる。国道(SS)はほとんどの場合問題なく、州道(SR)、県道(SP)とランクが下がるとともに荒れ具合が増す。メッシーナ海峡を渡った本土のカラブリア州やプーリア州も負けず劣らずだが、やはりシチリア島南部の荒れ具合はイタリアナンバーワンだ。
事前の公式発表では第4ステージの獲得標高差は2,500mだったが、実際に選手たちは3,500mを登った。実に1,000mもの誤差がある。標高600〜800mの峠をつなぐコースは登りと下りしかないような代物で、例えるならばリエージュ〜バストーニュ〜リエージュのよう。細かく言うと、路面が滑りやすく、パンクが多く、コース上に溢れた観客にも注意しないといけないリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)の調子は良いのか悪いのか。それともツールにはないジロらしい細くてテクニカルなコースに苦戦しているのか。休息日に同じチャーター機でシチリアに移動後、パスポートコントロール待ちの際に数分話したところ「(試走時の落車は)もっと悪い怪我になりえたのでホッとしているのが正直な気持ち。怪我の影響はほぼない。日に日に左右バランスも良くなっている」と笑っていたが、ロードステージで挽回するどころか、またトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)からまたタイムを失ってしまった。
もともとフルームは短時間で爆発的なパワーを発揮するような走りは得意ではないが、再び最大勾配13%の登りがフィニッシュ手前に登場する第5ステージや、エトナ火山の山頂フィニッシュが設定された第6ステージでタイムを失うことにがあれば、このままフェードアウトしかねない。「肝心なタイミングでポジションを落としてしまい、後方から最後の登りに挑むことになってしまった。調子は良いし、調子は上向き。エトナの前に明日の第5ステージにフォーカスしないと」と、再びポジション取りがキーとなるジロらしいステージに目を向ける。
text&photo:Kei Tsuji in Caltagirone, Italy
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