スリランカで初回開催された3日間のステージレース、スリランカTカップで中島康晴(キナンサイクリングチーム)が総合優勝。ボーナスタイムを巡るゴールスプリントの末に、僅か1秒差で初代王者に輝いた。

中島康晴(KINAN Cycling Team)をステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)と平塚吉光(チームUKYO)が囲む中島康晴(KINAN Cycling Team)をステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)と平塚吉光(チームUKYO)が囲む (c)KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
第1ステージの逃げ切り勝利から総合リーダーとして駒を進めた中島は、集団スプリントで総合2位のステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)に次ぐ3位に滑り込んで1秒差で総合優勝を確定させた。また、総合3位は平塚吉光(チームUKYO)がキープした。以下はキナンサイクリングチームによるレポート。



キナンサイクリングチームによるレポート

個人総合優勝をかけてレースに臨む中島康晴はスタート前にこの表情個人総合優勝をかけてレースに臨む中島康晴はスタート前にこの表情 (c)KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU スリランカを構成するセイロン島の東海岸から西海岸とを結ぶ戦いは、この日が最終日。5月4日に始まったレースは、各ステージ100km前後と短いことも関係し、終始プロトン内での出入りが激しいものに。KINAN Cycling Teamは、第1ステージに中島が逃げ切りでステージ優勝を決めて以来、リーダーチームの立場として戦いを続けてきた。前日の第2ステージでは、中西健児、雨乞竜己、トマ・ルバ、新城雄大のアシスト陣が絶妙の集団コントロール。中島のリーダージャージ堅守に大きく貢献した。

トップをゆく中島と、個人総合2位のステファン・アスタフイェフ選手(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)との総合タイム差は、第2ステージまでを終えて3秒。中間スプリントとフィニッシュで上位選手に付与されるボーナスタイム次第では、その差を開くことも逆転もできる状況。今大会でも、KINAN Cycling Teamとヴィノ・アスタナモータースのチーム力が群を抜いており、第3ステージも両チームの攻防戦となることが予想された。

このステージは、前日のフィニッシュ地であるキャンディからニゴンボまでの118.5km。スタートから5.8kmでこの日唯一の山岳ポイントが設けられ、その後はダウンヒルを経ておおむね平坦路となる。ただし、前夜の強い雨により序盤の登坂区間とダウンヒル区間には泥が浮いている場所もあることから、落車やバイクトラブルには十分に注意を払う必要があった。

そんな中で始まったレースは、スタート直後からアタックの応酬。ただし、この流れは山岳ポイントを通過する頃には沈静化。4人が先行したのを機に、KINANが集団のコントロールを開始する。

その後も逃げを狙う選手が集団から発生するものの、容認できる選手とできない選手とをKINAN勢を中心にセレクション。やがて総合成績に大きな影響を及ぼさない6人に逃げが固まり、KINAN勢はしばし彼らを先行させた。

しかし、33.6km地点に設けられたこの日1つ目のスプリントポイントに近づくと、ライバルのヴィノ・アスタナモータースが集団のスピードアップを図る。スプリントポイント直前で逃げを捕らえたことから、KINAN勢も中島でのスプリントに備えるが、結果総合に関係しない選手が上位通過。中島もボーナスタイムを狙って動いたが4位。ここでの総合タイム差拡大はならなかった。

この直後、今度は集団から7人が飛び出し、徐々にリードを広げていく。集団のコントロールを担うのはKINAN。最大で約3分差までリードを許容し、次なる展開へと備える。

スプリントでフィニッシュへ飛び込む選手たち。中島康晴(中央)とステファン・アスタフイェフ選手(右から2人目)が個人総合優勝を賭けて最後の勝負スプリントでフィニッシュへ飛び込む選手たち。中島康晴(中央)とステファン・アスタフイェフ選手(右から2人目)が個人総合優勝を賭けて最後の勝負 (c)KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU 3位を死守した中島康晴。ボーナスタイムが効き個人総合優勝を決定させた3位を死守した中島康晴。ボーナスタイムが効き個人総合優勝を決定させた (c)KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU 集団のムードが変化したのは、スタートから80kmを迎えようかというタイミング。KINAN勢のコントロールに、ヴィノ・アスタナモータース、トレンガヌサイクリングチームが加わり、逃げる選手との差を縮め始める。3チームの思惑が交錯する中、レースは終盤戦へ。逃げグループも最後のチャンスに賭けてペースアップ。人数を減らしながら、先を急いだ。

フィニッシュまで残り20kmとなったところで逃げと集団とのタイム差は2分10秒。さらに集団の勢いは増し、残り10kmでは約1分。そして、残り5kmを迎える直前で逃げを吸収。集団は1つとなり、勝負はスプリントにゆだねられることになった。

KINAN勢は中島での勝負に備え、本来はエーススプリンターの雨乞をリードアウト役に抜擢。集団前方でのポジショニングで中島を好位置へと引き上げる。そして、今大会最大のクライマックスの時を迎える。

長い直線を経て始まったスプリントは、アスタフイェフ選手が最前列から加速。これをチェックするように中島も反応。追い上げる形になった中島だったが、アスタフイェフ選手の背後につけ、両者がなだれ込むようにフィニッシュ。ステージ優勝こそ譲ったものの、アスタフイェフ選手が2位、中島が3位となった。

この結果、アスタフイェフ選手がフィニッシュボーナスで6秒、中島が4秒をそれぞれ獲得。総合タイム差3秒で始まった最終ステージは、わずか1秒で中島に軍配。個人総合優勝決定の瞬間は、劇的なものとなった。

結果を知り喜びを爆発させたKINAN Cycling Teamの選手たち。第1ステージで中島がチームに今シーズン初勝利をもたらしたが、勢いのままに新たなタイトル獲得にこぎつけた。中島個人にとっても、UCIレースにおけるキャリア通算9勝目、そしてチームにとっては発足4年目にして初となる日本人選手でのUCIレース個人総合優勝となった。

総合優勝を果たした中島康晴(KINAN Cycling Team)をチームメイトが囲む総合優勝を果たした中島康晴(KINAN Cycling Team)をチームメイトが囲む (c)KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
KINAN Cycling Teamはそのほか、チーム総合で3位、スプリント賞では最終日にアスタフイェフ選手の逆転を許したものの、中島が2位。最後までチーム力を誇示した3日間だった。

以下は中島のコメント。「自分で何かを残せたレースというのは、第1ステージだけだと思っている。残りの2日間はみんなが支えてくれた。自分の勝利ではあるけれど、それ以上にチームの勝利として価値のあるものになった。 日本籍のチームとして、日本人選手が活躍することがリーム理念の1つ。それを果たせたことが何よりうれしい。この先にはツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・熊野が控えていて、そこに向けてこの勝利が大きな勢いになるのではないか。メンバー入りができれば今度は自分がみんなを助ける番になる。 ジャージを守るうえで、総合に関係しない選手の逃げなどをどう選別していくのかは、トマが中心となって若い選手たちにアドバイスしながらレースを進められた。中西、雨乞、新城がトマの期待に応えて働いてくれたことが勝因として挙げられると思う」

総合優勝争いを演じたKINAN Cycling Teamと、ヴィノ・アスタナモータースの選手たち総合優勝争いを演じたKINAN Cycling Teamと、ヴィノ・アスタナモータースの選手たち (c)KINAN Cycling Team/Syunsuke FUKUMITSU
主戦場のUCIアジアツアーで組織力の高さを示したKINAN Cycling Team。チーム最大目標であるツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野が近づく中、大きな弾みとなる勝利を挙げることとなった。また、同時に日本人選手の底上げが着々と進んでいることも証明する今大会だった。この勢いのまま、チームはレース活動を続けていくこととなる。なお、次戦は5月12日のJBCF 宇都宮クリテリウムを予定している。
ステージ結果
1位 モハメドハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム)
2位 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)
3位 中島康晴(KINAN Cycling Team)
4位 イルワンディ・ラカセク(マレーシア、トレンガヌサイクリングチーム)
5位 シーン・ホワイトフィールド(オーストラリア、オリヴァーズリアルフード)
6位 キム・ジョセク(韓国、ガピョンサイクリングチーム)
個人総合成績
1位 中島康晴(KINAN Cycling Team) 7h45’03”
2位 ステファン・アスタフイェフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +01”
3位 平塚吉光(チームUKYO) +16”
4位 ローガン・グリフィン(ニュージーランド、ネックスCCNサイクリングチーム) +2’38”
5位 吉岡直哉(チームUKYO) +2’45”
6位 イェフゲニー・ネポムニャクシイ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) +2’51”
photo&report:KINAN Cycling Team