2018/04/07(土) - 18:41
「北のクラシック」を締めくくるパリ〜ルーベが4月8日に開催される。総延長54.5kmにおよぶパヴェ区間を含む難コースを制するのは絶好調クイックステップフロアーズ勢か、それともサガンやヴァンアーヴェルマートか。第116回大会の見どころをチェックしておこう。
総延長54.5kmのパヴェが登場 当日は晴れ&砂埃の予報
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)を先頭にアランベールの森を行く photo: TDWsport
パリ〜ルーベ2018 photo:A.S.O.「クラシックの女王」またの名を「北の地獄」。近代オリンピックと同じ1896年に第1回大会が開催され、今年で第116回を迎えるパリ〜ルーベが今週日曜日に開催される。
パリ〜ルーベの特徴は何と言っても荒れたパヴェ(石畳)が連続して登場する異質のコースレイアウトだ。選手たちはバイクを抑え込みながら荒れたパヴェを突き進む。
スタート地点は今年もパリ北部のコンピエーニュ。そこから平野部を蛇行しながらベルギー国境近くのルーベを目指す257kmのコースに大きな登りは存在しない。とは言えレース前半には2〜3%ほどの細かいアップダウンが登場するため、フルフラットでありながらも獲得標高差は1,200mに達する。
レース前半の約100kmは快適なアスファルト舗装路が続くが、後半は休むまもなくパヴェ区間(セクター)が登場する。フィニッシュ地点ルーベに至るまでに登場するパヴェは合計29区間。毎年細かい変更が加えられているが、後半の名物区間は例年通りだ。
パヴェ区間の総延長は54.5km。最初の「No.29 トロワヴィル」を越えると、そこからフィニッシュまでのレース後半部の約3分の1がパヴェに覆われている計算になる。
パヴェ区間のほとんどが握りこぶし大の石が敷き詰められた「悪路」だ。毎年補修が行われているものの、普段は巨大なトラクターが行き交う農道であり、石と石の間の土は風雨によって浸食されている。鋭く角の立った石や段差がパンクや落車を引き起こすため、チームは総力を挙げて選手をサポートする。荒れた路面が選手たちを苦しめ、ときに致命的なダメージを与える。これほどマシントラブルや落車の多いレースは他に類を見ないだろう。
そこで要求されるのは、荒れた石畳のラインを読む高度な走行テクニックと、振動をいなしながら踏み切る走力だ。雨が降って路面が濡れればトラブル続出の「泥地獄」になり、晴れて乾燥すれば砂埃により呼吸もままならない「砂埃地獄」になる。
パリ〜ルーベ2018 photo:A.S.O.
砂埃を巻き上げながらプロトンが進む photo: TDWsport
数あるセクターの中でも特に有名なのが、難易度5つ星の「No.19 アランベール」と「No.11 モンサン=ぺヴェル」、そして「No.4 カルフール=ド=ラルブル」の3区間だ。いずれも全長が2kmを超え、その路面の荒れ具合を見ると難易度5つ星は納得の数字。
「アランベールの森」を貫く直線的な「アランベール」の全長は2,400mで、その路面は荒れに荒れている。両脇が観戦用のフェンスで覆われているため、選手たちは荒れたパヴェの真ん中を走らなければならない。集団後方からのポジションアップが難しく、その後の平坦区間でアタックがかかることも多いことから、この「アランベール」に向けたポジション争いは毎年熾烈なものになる。
難所の「モンサン=ぺヴェル」を越えるとフィニッシュまで残り約45km。ここからのラスト1時間は一つのミスが命取りになる。終盤にかけて大きな盛り上がりを見せるのが、難易度の高い3区間(No.7 シソワン、No.6 ブルゲル、No.5 カンファナン=ぺヴェル)を越えた後に登場する「カルフール=ド=ラルブル」だ。長さ2,100mのこの難所を越えると、フィニッシュまで残り15km。その後の3区間の難易度は低く、この5つ星区間で勝負が決まる可能性が高い。
そんなパヴェレースの最後を締めくくるのが、スムースな路面のルーベ・ヴェロドローム(トラック競技場)。先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた選手には、パヴェの石塊で作られたトロフィーが贈られる。
天気予報によると日曜日の天候は晴れで最高気温は21度。昨年同様に暑さと砂埃との戦いになりそうだ。
観客が鈴なりとなったパヴェを進む photo: Makoto Ayano
ドライなコンディションにパヴェには砂塵が舞う photo:Makoto.AYANO
角が立った石が敷かれ、波打ったパヴェ photo:TDWsport
総延長54.5kmのパヴェが登場 当日は晴れ&砂埃の予報
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パリ〜ルーベの特徴は何と言っても荒れたパヴェ(石畳)が連続して登場する異質のコースレイアウトだ。選手たちはバイクを抑え込みながら荒れたパヴェを突き進む。
スタート地点は今年もパリ北部のコンピエーニュ。そこから平野部を蛇行しながらベルギー国境近くのルーベを目指す257kmのコースに大きな登りは存在しない。とは言えレース前半には2〜3%ほどの細かいアップダウンが登場するため、フルフラットでありながらも獲得標高差は1,200mに達する。
レース前半の約100kmは快適なアスファルト舗装路が続くが、後半は休むまもなくパヴェ区間(セクター)が登場する。フィニッシュ地点ルーベに至るまでに登場するパヴェは合計29区間。毎年細かい変更が加えられているが、後半の名物区間は例年通りだ。
パヴェ区間の総延長は54.5km。最初の「No.29 トロワヴィル」を越えると、そこからフィニッシュまでのレース後半部の約3分の1がパヴェに覆われている計算になる。
パヴェ区間のほとんどが握りこぶし大の石が敷き詰められた「悪路」だ。毎年補修が行われているものの、普段は巨大なトラクターが行き交う農道であり、石と石の間の土は風雨によって浸食されている。鋭く角の立った石や段差がパンクや落車を引き起こすため、チームは総力を挙げて選手をサポートする。荒れた路面が選手たちを苦しめ、ときに致命的なダメージを与える。これほどマシントラブルや落車の多いレースは他に類を見ないだろう。
そこで要求されるのは、荒れた石畳のラインを読む高度な走行テクニックと、振動をいなしながら踏み切る走力だ。雨が降って路面が濡れればトラブル続出の「泥地獄」になり、晴れて乾燥すれば砂埃により呼吸もままならない「砂埃地獄」になる。
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数あるセクターの中でも特に有名なのが、難易度5つ星の「No.19 アランベール」と「No.11 モンサン=ぺヴェル」、そして「No.4 カルフール=ド=ラルブル」の3区間だ。いずれも全長が2kmを超え、その路面の荒れ具合を見ると難易度5つ星は納得の数字。
「アランベールの森」を貫く直線的な「アランベール」の全長は2,400mで、その路面は荒れに荒れている。両脇が観戦用のフェンスで覆われているため、選手たちは荒れたパヴェの真ん中を走らなければならない。集団後方からのポジションアップが難しく、その後の平坦区間でアタックがかかることも多いことから、この「アランベール」に向けたポジション争いは毎年熾烈なものになる。
難所の「モンサン=ぺヴェル」を越えるとフィニッシュまで残り約45km。ここからのラスト1時間は一つのミスが命取りになる。終盤にかけて大きな盛り上がりを見せるのが、難易度の高い3区間(No.7 シソワン、No.6 ブルゲル、No.5 カンファナン=ぺヴェル)を越えた後に登場する「カルフール=ド=ラルブル」だ。長さ2,100mのこの難所を越えると、フィニッシュまで残り15km。その後の3区間の難易度は低く、この5つ星区間で勝負が決まる可能性が高い。
そんなパヴェレースの最後を締めくくるのが、スムースな路面のルーベ・ヴェロドローム(トラック競技場)。先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた選手には、パヴェの石塊で作られたトロフィーが贈られる。
天気予報によると日曜日の天候は晴れで最高気温は21度。昨年同様に暑さと砂埃との戦いになりそうだ。
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登場する29カ所の石畳区間
区間 | レース距離 | 残り距離 | 名称 | 長さ | 難易度 |
---|---|---|---|---|---|
29 | 93.5km | 163.5km | トロワヴィル | 2,200m | ☆☆☆ |
28 | 100km | 157km | ブリアストル | 3,000m | ☆☆☆ |
27 | 109km | 148km | サンピトン | 1,500m | ☆☆☆ |
26 | 111.5km | 145.5km | キエヴィ | 3,700m | ☆☆☆☆ |
25 | 119km | 138km | サンヴァースト | 1,500m | ☆☆☆ |
24 | 130km | 127km | ヴェルション=モグレ | 1,200m | ☆☆ |
23 | 134.5km | 122.5km | ケレネン | 1,600m | ☆☆☆ |
22 | 137.5km | 199.5km | マン | 2,500m | ☆☆☆ |
21 | 140.5km | 116.5km | モンショー=シュル=エカイヨン | 1,600m | ☆☆☆ |
20 | 153.5km | 103.5km | アヴルイ | 2,500m | ☆☆☆☆ |
19 | 162km | 95km | トルエー=ド=アランベール | 2,400m | ☆☆☆☆☆ |
18 | 168km | 89km | エレーム | 1,600m | ☆☆☆ |
17 | 174.5km | 82.5km | ワンディニー | 2,700m | ☆☆☆☆ |
16 | 182km | 75km | ブリヨン | 2,400m | ☆☆☆ |
15 | 185.5km | 71.5km | サール=エ=ロジエール | 2,400m | ☆☆☆☆ |
14 | 189km | 68km | バーヴリー=ラ=フォレ | 1,400m | ☆☆☆ |
13 | 197km | 60km | オルシー | 1,700m | ☆☆☆ |
12 | 203km | 54km | ベルセー | 2,700m | ☆☆☆☆ |
11 | 208.5km | 48.5km | モンサン=ぺヴェル | 3,000m | ☆☆☆☆☆ |
10 | 214.5km | 42.5km | アヴラン | 700m | ☆☆ |
9 | 218km | 39km | エンヌヴラン | 1,400m | ☆☆☆ |
8 | 223.5km | 33.5km | タンプルーヴ〜レピネット | 200m | ☆ |
8 | 224km | 33km | タンプルーヴ〜ムーラン=ド=ヴェルテン | 500m | ☆☆ |
7 | 230.5km | 26.5km | シソワン | 1,300m | ☆☆☆ |
6 | 233km | 24km | ブルゲル | 1,100m | ☆☆☆ |
5 | 237.5km | 19.5km | カンファナン=ぺヴェル | 1,800m | ☆☆☆☆ |
4 | 240km | 17km | カルフール=ド=ラルブル | 2,100m | ☆☆☆☆☆ |
3 | 242.5km | 14.5km | グルソン | 1,100m | ☆☆ |
2 | 249km | 8km | エム | 1,400m | ☆☆☆ |
1 | 256km | 1km | ルーベ | 300m | ☆ |
クイックステップの快進撃を止めるのはサガン?GVA?
コンピエーニュのスタートラインに並ぶのはUCIワールドチームにワイルドカード枠のコフィディス、フォルトゥネオ・サムシック、ディレクトエネルジー、ヴィタルコンセプト、デルコ・マルセイユKTM、ベランダスヴィレムス、WBアクアプロジェクトを加えた合計25チーム。それぞれ7名ずつを石畳決戦に送り込む。
中でも今シーズンすでに23勝と勝ちまくっているクイックステップフロアーズが最強チームであると言っていいだろう。誰もが勝利を狙える「ウルフパック(狼の群れ)」を名乗る彼らは、トム・ボーネン(ベルギー)の引退後も抜群の存在感を放っている。
ロンド・ファン・フラーンデレンとレコードバンク・E3ハーレルベーケで独走勝利したニキ・テルプストラ(オランダ)は2014年大会の優勝者。引退したトム・ボーネンとファビアン・カンチェラーラを含めて過去にのべ12名が達成している「ロンド=ルーべ」同年制覇を狙うテルプストラを、強力なメンバーがバックアップする。
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
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テルプストラが厳しいマークを受けることが予想されるため、過去に2回2位を経験しているゼネク・スティバル(チェコ)やフィリップ・ジルベール(ベルギー)、イヴ・ランパールト(ベルギー)らも攻撃を仕掛けてくるだろう。なお、ジルベールはキャリアの中で最初で最後の出場だった2007年(52位)以来11年ぶりの出場。すでにロンドとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、イル・ロンバルディアで勝利しているジルベールは現役選手の中で最も「モニュメント全制覇」に近い選手であると言える。パリ〜ルーベを除くモニュメントでは表彰台を経験済みだ。
そんなクイックステップフロアーズの盤石の体制を崩しにかかる急先鋒は、昨年の優勝者グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)だろう。今シーズンはまだクラシックレースで勝利がないが、安定して上位入賞を繰り返しており、過去に11名が達成している大会連覇の選手リストに名前を加えることができるだろうか。
ヘント〜ウェヴェルヘムで勝利し、ロンドではミラノ〜サンレモと同じ6位に終わったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は展開の鍵を握るはず。世界王者サガンはこれまで6回ルーべに出場して2014年の6位が最高位。近年は他チームの協力を得ることができずに孤立するシーンが多かったが、昨年ヴァンアーヴェルマートをサポートしたダニエル・オス(イタリア)が心強い相棒としてサガンに寄り添う。
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
これまでの115回の開催のうちベルギー勢が優勝したのは56回。その伝統を引き継ぐべく、クイックステップフロアーズ勢やヴァンアーヴェルマートの他にも、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)やセップ・ヴァンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト・ドラパック)といった大柄なフランドリアンが勝負に絡んでくるだろう。
1997年のフレデリック・ゲドン以降、20年間海外勢にタイトルを奪われている地元フランスは、アルノー・デマール(グルパマFDJ)に望みを託す。デマールはこれまで4回出場して昨年の6位が最高位。ロンドでは登りに苦しんで15位に終わったが、サンレモ3位、ヘント3位と着実に成績を残している。デマールとともに直前のシュヘルデプライスで踏切突破により失格処分にあったディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)やアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)らも石畳を戦えるスプリンターだ。
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ロンドで2位に入って周囲を驚かせた22歳のマッズ・ペデルセン(デンマーク、トレック・セガフレード)は、優勝経験者のジョン・デゲンコルブ(ドイツ)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)といった先輩たちと2回目のルーべ挑戦。初出場した昨年は95位でレースを終えている。
グランツールレーサーでありながら、平坦な石畳クラシックも得意とするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)は3年ぶりの出場。トーマスは2014年に7位という成績を残している。チームスカイは昨年5位のジャンニ・モスコン(イタリア)や、ロンドで好走したディラン・ファンバーレ(オランダ)、骨折から復活したルーク・ロウ(イギリス)、イアン・スタナード(イギリス)という強力な布陣だ。
これまで15回完走し、出場選手の中で最年長(4月20日に40歳)で、2016年大会の優勝者であるマシュー・ヘイマン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)はマッテオ・トレンティン(イタリア)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア)らとタッグを組む。
今年初出場するのは35名の選手たち。その中にはシクロクロス世界王者ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ベランダスヴィレムス・クレラン)やパリ〜ニース覇者マルク・ソレル(スペイン、モビスター)の名前もある。シクロクロスシーズンからトップコンディションを維持し続けているヴァンアールトはストラーデビアンケ3位、ヘント10位、ロンド9位。初挑戦のルーべでどこまでの走りを見せるかに注目したい。
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
text:Kei.Tsuji
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