3月7日から13日までの7日間にわたって、イタリア半島を横断するティレーノ〜アドリアティコが開催される。フルーム、デュムラン、ニバリ、アル、ランダ、バルデ、そしてサガン、GVA、ガビリア、カヴ、キッテル、ユアン、初山翔が出場する1週間のステージレースの見どころをチェック。



パリ〜ニースに肩を並べるもう一つのステージレース

ティレーノ〜アドリアティコ2018コース全体図ティレーノ〜アドリアティコ2018コース全体図 photo:RCS Sport

1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルト(エッレチーエッセ・スポルト)が主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、イタリア半島を横断してアドリア海沿岸に至るステージレースだ。イタリア半島を囲む2つの海を結ぶその行程から、「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」とも呼ばれる。

同時期に開催されるパリ〜ニースと同様、クラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力選手たちが大勢出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分けている。開催期間はパリ〜ニースよりも1日短い7日間だが、タイムトライアルx2、平坦ステージx2、丘陵ステージx2、本格山岳ステージx1というバリエーションに富んだコース設定が特徴だ。

初日はティレニア海に面したリード・ディ・カマイオーレを舞台にしたチームタイムトライアル。平坦&直線基調の21.5kmコースを22チームの選手たちが高速で駆け抜け、優勝チームの先頭フィニッシュ選手が青いリーダージャージを獲得する。スピードが弱まるポイントが少ないため、平均スピードは55km/h前後まで上がる予想が出ている。

第2ステージはスタート直後のGPM(グラン・プレミオ・モンターニャ=カテゴリー山岳)を除いてほぼフルフラットな167km。終盤にかけてフォッロニカの8.3km周回コースを3周するレイアウトは完全にスプリンター向きだ。ラスト40kmがフラットな最終日前日の第6ステージもスプリンター向きであり、逆に言えばその2日間を除いてスプリンターにチャンスは回ってこない。

青空が広がるトスカーナ地方を走る青空が広がるトスカーナ地方を走る photo: TDWsport / KT雪を冠したアペニン山脈を越えてマルケ州に向かう雪を冠したアペニン山脈を越えてマルケ州に向かう photo: TDWsport / KT

ティレーノ〜アドリアティコと言えば激坂が登場する丘陵コースが名物。トスカーナ州からウンブリア州に向かう第3ステージには4つのGPMが設定されており、最後は「イタリアの最も美しい村」に指定されているトレヴィにフィニッシュ。中世の面影を色濃く残す丘上都市に向かう登りは最大勾配が20%に達する激坂で、残り1.5kmから先の平均勾配は11.5%。進むにつれて勾配が増すこの激坂を2回登ってフィニッシュを迎える。

ティレーノ〜アドリアティコ2018第4ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第4ステージ photo:RCS Sport219kmという距離に4つのGPMが詰め込まれた第4ステージが今大会のクイーンステージ。とくに中盤以降は登りと下りしかなく、フィニッシュ地点は標高1,335mのGPMサッソテットの頂上だ。全長11.75kmにわたって平均7.1%/最大13%の勾配が続くアペニン山脈の峠道を制したものが、青いリーダージャージを手にすることになるだろう。

今年のティレーノ〜アドリアティコは、2017年4月22日に事故死したミケーレ・スカルポーニ(イタリア)に捧げる大会でもある。第5ステージのフィニッシュ地点フィロットラーノは、2009年大会総合優勝者のスカルポーニが住み、命を落とした街だ。レースは終盤にかけてフィロットラーノを中心にした周回コースを3周(事故現場は避けている)。残り3km地点でピークを迎える最大勾配16%のGPMムーロ・ディ・フィロットラーノをこなし、さらに10%前後の登りをこなしてようやくフィニッシュを迎える。主催者RCSスポルトはこの第5ステージと第3ステージを「壁のステージ」と命名している。

最終日は恒例となっているサンベネデット・デル・トロントの10km個人タイムトライアル。海岸通りを含む真っ平らなハイスピード走行で総合争いが決する。

ティレーノ〜アドリアティコ2018第1ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第1ステージ photo:RCS Sportティレーノ〜アドリアティコ2018第2ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第2ステージ photo:RCS Sport
ティレーノ〜アドリアティコ2018第3ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第3ステージ photo:RCS Sportティレーノ〜アドリアティコ2018第5ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第5ステージ photo:RCS Sport
ティレーノ〜アドリアティコ2018第6ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第6ステージ photo:RCS Sportティレーノ〜アドリアティコ2018第7ステージティレーノ〜アドリアティコ2018第7ステージ photo:RCS Sport



フルーム、デュムラン、ニバリ、サガン、GVA、カヴ、キッテルらが激突

開幕前の写真撮影に応じるデュムラン、アル、フルーム、ニバリ、サガン開幕前の写真撮影に応じるデュムラン、アル、フルーム、ニバリ、サガン photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

スタートラインに並ぶのは、18あるUCIワールドチームにガスプロム・ルスヴェロ、イスラエル・サイクリングアカデミー、NIPPOヴィーニファンティーニ、ウィリエール・トリエスティーナを加えた合計22チーム。ストラーデビアンケに続いてNIPPOヴィーニファンティーニからは初山翔が出場し、総合エースのダミアーノ・クネゴ(イタリア)やマルコ・カノラ(イタリア)、スプリンターのフアンホセ・ロバト(スペイン)をアシストする。

今大会最も大きな注目を集めているのは、ジロ・デ・イタリア出場を表明しているクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)だろう。未だにドーピング疑惑が取り沙汰されているが、ダブルツールを狙うフルームは初出場した2013年大会(ステージ1勝&総合2位)以来となる自身2度目のティレーノ出場。シーズン初戦をアンダルシアを総合10位で終えたフルームは、ミラノ〜サンレモ覇者ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)やゲラント・トーマス(イギリス)を含む強力なメンバーを従えての出場となる。

ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)と握手するクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)と握手するクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Vuelta a Andaluciaミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:voltaaoalgarve.com/João Fonseca

対するのは、2017年ジロ覇者のトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)、そしてロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)という一流のグランツールレーサーたち。ディフェンディングチャンピオンのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は欠場するが、実に豪華なメンバーが揃った。

中でも、2ヶ月後のジロで顔を合わす予定のフルーム、デュムラン、アルの戦いに注目。ツール・ド・フランスに集中するためジロをパスする予定のニバリとランダ、バルデもここに加わるため、グランツール並みもしくはそれ以上の熾烈な総合争いが予想される。

他にもミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)やリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ)、シモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)といったオールラウンダーも揃っており、特に第4ステージのGPMサッソテット山頂フィニッシュはハイレベルな戦いになるだろう。

トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Tim de Waele / TDWsport
ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto.AYANOロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

「壁」が登場する丘陵ステージでは、オールラウンダーの他にも世界王者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)や、GVAことグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)といったパンチャーたちも勝負に絡むだろう。ストラーデビアンケを制したばかりの新星ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)も出場する。

平坦ステージではマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)らが覇権を争う。もちろん地元イタリアのソニー・コルブレッリ(バーレーン・メリダ)やサーシャ・モードロ(EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ジャコモ・ニッツォーロ(トレック・セガフレード)らも、このティレーノ閉幕4日後に開催されるミラノ〜サンレモに向けて感触をつかんでおきたいところだ。

ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Kei Tsuji / TDWsportグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:A.S.O.
マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:RCS Sportフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Colombia Oro y Paz
ティレーノ〜アドリアティコ2018ステージリスト
3月7日(水) 第1ステージ リード・ディ・カマイオーレ 21.5km(チームTT)
3月8日(木) 第2ステージ カマイオーレ〜フォッロニカ 167km
3月9日(金) 第3ステージ フォッロニカ〜トレヴィ 234km
3月10日(土) 第4ステージ フォリーニョ〜サルナノ・サッソテット 219km
3月11日(日) 第5ステージ カステルライモンド〜フィロットラーノ 178km
3月12日(月) 第6ステージ ヌマラ〜ファーノ 153km
3月13日(火) 第7ステージ サンベネデット・デル・トロント 10km(個人TT)
text:Kei.Tsuji

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