2010/01/25(月) - 18:49
記録的な76万2000人の観客が集まった2010年ツアー・ダウンアンダー。スター選手の活躍や、無名選手の人気急上昇(?)など、過去最高の盛り上がりを見せた。このツアー・ダウンアンダーを皮切りに、2010年のロードレースシーズンは徐々に動き始める。
フランスの新人ヴィショに用意されたサプライズ
レース期間中、コースのあちこちで目についたのがアルテュール・ヴィショ(フランス、フランセーズデジュー)の名前だ。山岳ではデカデカと路上ペイントが施されていたり、「アレー!ヴィショ!アレー!」と書かれたTシャツを着た観客が大勢いたり。
ヴィショは1988年11月26日生まれの21歳で、今年フランセーズデジューでプロデビューしたばかりの新人選手。フランス選手権のU23で2位に入っている選手だが、世界的にはまだまだ無名の選手だ。
どうしてフランスの新人がオーストラリアでこれだけの人気を誇っているのか不思議に思っていたら、最終日になってようやくその謎が解けた。
ヴィショの大歓迎は、いわばオーストラリアの観客が仕掛けたドッキリ。彼らはアメリカ発祥のSNS(ソーシャル・ ネットワーキング・サービス)であるFacebookを通して集まった即席のファンクラブで、名の知れてない選手を適当に選んで驚かしてやろうというもの。短い準備期間ながら、500人以上の会員を集めたらしい。
ヴィショに白羽の矢が立った理由は、世界的に名の知られていない新人選手であり、出場選手の中で最も報酬が低そうで、英語が喋れなさそうな外国人だったから。ちなみにヴィショの応援ページはこちら。
最終ステージ終了後には、選手たちが宿泊しているヒルトンホテルにファンたちが押し掛け、ヴィショ本人にプレゼントが贈呈された。予想外の歓迎を受けたヴィショは「最初は戸惑ったよ(笑)なんでこんなにオーストラリア人はウェルカムなんだ!ってね。場所によっては『ゴー!ランス!』より『ゴー!ヴィショ!』の応援バナーのほうが多かったぐらい。理由がどうであれ、悪い気はしないよ(笑)」と嬉しそう。
ファンたちの「また来年出場してくれるかな?」との問いにヴィショは「イエス」と照れながら小さく答えていた。
レース期間中の観客動員数は76万2000人!
この日の観客動員数は、大会期間中最多の12万4000人。1月17日に開催されたキャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックを含めると、2010年のツアー・ダウンアンダーは合計76万2000人もの観客を集めた。
レースのカテゴリー、開催規模、観客動員数ともに間違いなく南半球最大のサイクルロードレースだ。表彰式に駆けつけた南オーストラリア州のマイク・ラン首相も大満足の様子。
第6ステージはは1周4.5kmのアデレード市内の市街地サーキットを20周。沿道には老若男女や人種を問わず、多くの観客で人垣ができている。
レースの模様はレースレポートの通り、クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)がスプリント勝利。しかもヘンダーソンとの南半球勢によるワンツー勝利。オーストラリアに悲願の2010年大会ステージ初優勝をもたらした。
チームスカイはキャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックと第6ステージで勝利。いずれもアデレード市民の前での勝利だ。第1〜5ステージではチームHTC・コロンビアに敗れはしたものの、平坦な周回コースで再びその強さを見せつけた。
新生チームとしては抜群のスタートを切ったと言えるだろう。一方、ランス・アームストロング(アメリカ)率いるレディオシャックは毎ステージ惜しいところまで行きながらも、勝利に手が届かないままデビュー戦を終えた。
2011年はシュレク兄弟とバッソが出場?
2010年のツアー・ダウンアンダーは、歴代最も豪華なメンバーが集まった大会だった。世界チャンピオンのエヴァンス(BMCレーシングチーム)、ツール7連覇のアームストロング(レディオシャック)、2009年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のバルベルデ(ケースデパーニュ)、そして2006年ツール覇者のペレイロ(アスタナ)。オーストラリアのトップ選手もほとんど顔を揃えた。
ツアー・ダウンアンダーの初開催時からレースディレクターを務めるマイク・ターター氏は2010年大会の成功を喜ぶとともに、2011年大会に向けての展望を語った。
ターター氏は、世界最強の兄弟と称されるアンディとフランクのシュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)や、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)をレースに呼ぶことを宣言。大会側の要望がそのまま通るかどうかは分からないが、実現すれば2011年大会も注目度抜群のシーズン初戦になるだろう。
アデレード空港でCJに遇う
今アデレード空港の出発ロビーでこのレポートを書いている。そろそろアップしようかと思って文章を読み返していると、チームスカイのシャツを着た男が隣の隣の席に座った。
顔を二度見してしまった。昨日ステージ優勝を飾った「CJ」ことクリストファー・サットンだ。昨日あれだけ声援を受けていたのに、ここ空港では全くその存在が気付かれていない。その光景が少し可笑しかった。
「今からシドニーに帰るんだ。それからヨーロッパに戻ってしばらく過ごし、次のレースはツール・ド・オマーン。またまた暑い場所でのレースだけど、寒いヨーロッパに居残るよりは暑いレースを転戦した方がトレーニングにはいい。日本までの帰り道、気をつけて。Cheers mate!」
まだ25歳のCJ。めちゃくちゃナイスガイだった。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
フランスの新人ヴィショに用意されたサプライズ
レース期間中、コースのあちこちで目についたのがアルテュール・ヴィショ(フランス、フランセーズデジュー)の名前だ。山岳ではデカデカと路上ペイントが施されていたり、「アレー!ヴィショ!アレー!」と書かれたTシャツを着た観客が大勢いたり。
ヴィショは1988年11月26日生まれの21歳で、今年フランセーズデジューでプロデビューしたばかりの新人選手。フランス選手権のU23で2位に入っている選手だが、世界的にはまだまだ無名の選手だ。
どうしてフランスの新人がオーストラリアでこれだけの人気を誇っているのか不思議に思っていたら、最終日になってようやくその謎が解けた。
ヴィショの大歓迎は、いわばオーストラリアの観客が仕掛けたドッキリ。彼らはアメリカ発祥のSNS(ソーシャル・ ネットワーキング・サービス)であるFacebookを通して集まった即席のファンクラブで、名の知れてない選手を適当に選んで驚かしてやろうというもの。短い準備期間ながら、500人以上の会員を集めたらしい。
ヴィショに白羽の矢が立った理由は、世界的に名の知られていない新人選手であり、出場選手の中で最も報酬が低そうで、英語が喋れなさそうな外国人だったから。ちなみにヴィショの応援ページはこちら。
最終ステージ終了後には、選手たちが宿泊しているヒルトンホテルにファンたちが押し掛け、ヴィショ本人にプレゼントが贈呈された。予想外の歓迎を受けたヴィショは「最初は戸惑ったよ(笑)なんでこんなにオーストラリア人はウェルカムなんだ!ってね。場所によっては『ゴー!ランス!』より『ゴー!ヴィショ!』の応援バナーのほうが多かったぐらい。理由がどうであれ、悪い気はしないよ(笑)」と嬉しそう。
ファンたちの「また来年出場してくれるかな?」との問いにヴィショは「イエス」と照れながら小さく答えていた。
レース期間中の観客動員数は76万2000人!
この日の観客動員数は、大会期間中最多の12万4000人。1月17日に開催されたキャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックを含めると、2010年のツアー・ダウンアンダーは合計76万2000人もの観客を集めた。
レースのカテゴリー、開催規模、観客動員数ともに間違いなく南半球最大のサイクルロードレースだ。表彰式に駆けつけた南オーストラリア州のマイク・ラン首相も大満足の様子。
第6ステージはは1周4.5kmのアデレード市内の市街地サーキットを20周。沿道には老若男女や人種を問わず、多くの観客で人垣ができている。
レースの模様はレースレポートの通り、クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)がスプリント勝利。しかもヘンダーソンとの南半球勢によるワンツー勝利。オーストラリアに悲願の2010年大会ステージ初優勝をもたらした。
チームスカイはキャンサー・カウンシル・ヘルプライン・クラシックと第6ステージで勝利。いずれもアデレード市民の前での勝利だ。第1〜5ステージではチームHTC・コロンビアに敗れはしたものの、平坦な周回コースで再びその強さを見せつけた。
新生チームとしては抜群のスタートを切ったと言えるだろう。一方、ランス・アームストロング(アメリカ)率いるレディオシャックは毎ステージ惜しいところまで行きながらも、勝利に手が届かないままデビュー戦を終えた。
2011年はシュレク兄弟とバッソが出場?
2010年のツアー・ダウンアンダーは、歴代最も豪華なメンバーが集まった大会だった。世界チャンピオンのエヴァンス(BMCレーシングチーム)、ツール7連覇のアームストロング(レディオシャック)、2009年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のバルベルデ(ケースデパーニュ)、そして2006年ツール覇者のペレイロ(アスタナ)。オーストラリアのトップ選手もほとんど顔を揃えた。
ツアー・ダウンアンダーの初開催時からレースディレクターを務めるマイク・ターター氏は2010年大会の成功を喜ぶとともに、2011年大会に向けての展望を語った。
ターター氏は、世界最強の兄弟と称されるアンディとフランクのシュレク兄弟(ルクセンブルク、サクソバンク)や、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)をレースに呼ぶことを宣言。大会側の要望がそのまま通るかどうかは分からないが、実現すれば2011年大会も注目度抜群のシーズン初戦になるだろう。
アデレード空港でCJに遇う
今アデレード空港の出発ロビーでこのレポートを書いている。そろそろアップしようかと思って文章を読み返していると、チームスカイのシャツを着た男が隣の隣の席に座った。
顔を二度見してしまった。昨日ステージ優勝を飾った「CJ」ことクリストファー・サットンだ。昨日あれだけ声援を受けていたのに、ここ空港では全くその存在が気付かれていない。その光景が少し可笑しかった。
「今からシドニーに帰るんだ。それからヨーロッパに戻ってしばらく過ごし、次のレースはツール・ド・オマーン。またまた暑い場所でのレースだけど、寒いヨーロッパに居残るよりは暑いレースを転戦した方がトレーニングにはいい。日本までの帰り道、気をつけて。Cheers mate!」
まだ25歳のCJ。めちゃくちゃナイスガイだった。
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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