いよいよシクロクロス世界選手権がオランダ、ファルケンブルクにて開幕する。大改修が加えられたアップダウンコースは雨に濡れ、マテュー・ファンデルポール(オランダ)有利の激マッドコンディションに。アルカンシエルを決める大一番を現地からプレビューする。



急な斜面を縫うように据え付けられた世界選手権のコース急な斜面を縫うように据え付けられた世界選手権のコース photo:So.Isobe
いよいよ今週末、シクロクロスの世界王者を決める大一番がオランダはリンブルフ州、ファルケンブルクにて開幕する。テレネット・フィデアの監督を務めるスヴェン・ネイス(ベルギー)に「過去20年間の世界選手権で最も美しいレイアウト」と言わしめるコースは、優勝候補最右翼マテュー・ファンデルポール(オランダ)の父であり、かつての名選手、アドリ氏がディレクションを担当している。

アムステル・ゴールドレースの勝負を決める登坂「カウベルグ」の脇(=それだけアップダウンに富む立地)に設定されたコースは、普段ワールドカップで使われるものから大幅な変更が行われた。斜面を一気に下っては登り返す区間が設定され、より下りのテクニックが問われるよう変貌を遂げている。丘を丸々使ったダイナミックなレイアウトは日本には存在しない。

長く急で、足元のゆるい担ぎ上げ区間長く急で、足元のゆるい担ぎ上げ区間 photo:So.Isobe下り区間にはホイール半分が埋まるほどの深い轍が生まれている下り区間にはホイール半分が埋まるほどの深い轍が生まれている photo:So.Isobe

他選手のラインを確認するマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)ら他選手のラインを確認するマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)ら photo:So.Isobe
スリッピーなコースに手を焼く選手たちスリッピーなコースに手を焼く選手たち photo:So.Isobeチームピットでは高圧洗浄機が唸りを上げるチームピットでは高圧洗浄機が唸りを上げる photo:So.Isobe


加えて現地の天気は日曜日まで雨続き。そのためコースの90%が深い泥で、10%は硬い泥とホームストレート。水分をたっぷりと含んだコースは平坦区間ですら地盤が緩んでいるため、極めて自転車の進みが重く、極めて下り区間はスリッピー。試走段階からコースの至る所でスリップダウンが発生しており、いかに転倒を少なくするか、いかに轍をトレースできるかによって結果が変わってくる。本場のシクロクロスファンを歓喜させる、過酷極まりないコンディションとなることは間違いない。

男子エリート:自国開催の威信を背負うファンデルポールが絶対的優勝候補

一人圧倒的なスピードを披露したマテュー・ファンデルポール(オランダ)一人圧倒的なスピードを披露したマテュー・ファンデルポール(オランダ) photo:So.Isobe
エリート男子の絶対的優勝候補はオランダ期待の星、ファンデルポールだ。ベルギーチームを率いる現世界王者ワウト・ファンアールトも先週のワールドカップでファンデルポールとほぼ同じラップタイムを刻むなど調子を合わせてきているが、スリッピーなコースはファンデルポール向けというのが大方の予想だ。

また、ファンアールトは本格的なロードレース参戦をアナウンスしているため、現地では彼のモチベーションに疑問を投げかける声も聞こえてくる。金曜日の前日試走は落車を防ぐために出走を見送っている。

今季圧倒的な勝利数を稼いでいるファンデルポールはプレスカンファレンスにおいて「昨年逃した優勝を今年こそは取る。ここまで完璧なシーズンを過ごしてきたので、残すはアルカンシエルだけ。良い試合をしたい」と自信を語っており、ネイスもライバル国ながら彼を優勝候補筆頭に挙げている。2014年のホーヘルハイデ以来4年ぶりに自国開催される世界選手権でのアルカンシエル奪還がオランダ人ファンの願いだ。

記者会見に臨んだワウト・ファンアールト(ベルギー)記者会見に臨んだワウト・ファンアールト(ベルギー) (c)CorVos深い轍が生まれた登りを行くトーン・アールツ(ベルギー)深い轍が生まれた登りを行くトーン・アールツ(ベルギー) photo:So.Isobe

スリッピーなキャンバー区間を試走するティム・メルリエ(ベルギー)スリッピーなキャンバー区間を試走するティム・メルリエ(ベルギー) photo:So.Isobeスムーズな走りでコースを確かめるラース・ファンデルハール(オランダ)スムーズな走りでコースを確かめるラース・ファンデルハール(オランダ) photo:So.Isobe


2強に続くのは前ヨーロッパ王者のトーン・アールツや、試走でも好調ぶりを示していたマイケル・ファントーレンハウト、ティム・メルリエ、ローレンス・スウィークら、分厚い層を誇るベルギー勢。表彰台の常連ケヴィン・パウエルスは不調が祟り補欠となっているが、それを埋めて余りある戦力がシクロクロス大国の強みだ。

層の厚さではベルギーに譲るオランダだが、ファンデルポール以外にもマテューの兄デーヴィッドや、今季結果を残せていないながらも総合力の高いラース・ファンデルハールら、ワールドカップでトップ10に入る役者が揃っている。

そんな大国に割って入る存在がミカエル・ボロシュ(チェコ)や、スティーヴ・シェネル(フランス)だろう。特にシェネルは試走の際ファンデルポールに迫る下りスピードを見せており、本人も調子の良さを公言していた。気さくな人柄で日本人ファンの多い彼の走りにも注目だ。

女子エリート:2連覇の掛かるサンヌ・カント(ベルギー)が有力か

女子エリートでは、昨年悲願のアルカンシエル獲得を果たしたサンヌ・カント(ベルギー)を優勝候補に挙げる声が多数派だ。2015年に優勝しているポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)は先週末のワールドカップで激しくクラッシュした末に出走を選んだが、ダメージが心配されるところ。その際に巻き込まれたMTBクロスカントリーの世界王者ヨランダ・ネフ(スイス)も優勝候補だったが、骨折によってDNSの憂き目に。

昨年、悲願の初優勝を遂げたサンヌ・カント(ベルギー)昨年、悲願の初優勝を遂げたサンヌ・カント(ベルギー) photo:CorVos丁寧にラインを確認していたポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)丁寧にラインを確認していたポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス) photo:So.Isobe

世界選手権を7度制しているマリアンヌ・フォス(オランダ)世界選手権を7度制しているマリアンヌ・フォス(オランダ) (c)CorVosマイペースで試走するヘレン・ワイマン(イギリス)マイペースで試走するヘレン・ワイマン(イギリス) photo:So.Isobe


元世界王者のマリアンヌ・フォスが調子を落としていることは否めないが、ルシンダ・ブランドらと共に臨む自国開催の世界選手権に対してモチベーションは高いはず。エヴァ・リヒナー(イタリア)やカテリーナ・ナッシュ(チェコ)、ケイティ・コンプトン(アメリカ)、ヘレン・ワイマン(イギリス)、エレン・ヴァンロイ(ベルギー)らも優勝争いの最前線に絡んでくるだろう。

MTB選手としてもキャリアを積みつつ、今季ワールドカップのエリートカテゴリーで優勝しているイヴィ・リチャーズ(イギリス)はU23カテゴリーでアルカンシエルを目指す。男子U23はエリ・イゼルビッド(ベルギー)対トーマス・ピッドコック(イギリス)の様相を呈している。

7名で世界に挑む日本ナショナルチーム

日本ナショナルチームの選手7名と、その走りを支えるスタッフ陣日本ナショナルチームの選手7名と、その走りを支えるスタッフ陣 photo:So.Isobe
大一番に挑む日本人選手は計7名。男子エリートの小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と竹之内悠(東洋フレーム)の2名を筆頭に、男子U23の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、男子ジュニアの村上功太郎(松山工業高校)と積田蓮(TEAM CHAINRING)、女子エリートの今井美穂(CO2Bicycle)、與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が日本から、そして現地スタッフのバックアップを受けてスタートラインに並ぶ。

日本人選手の事前コメントは追って別記事にて紹介します。



シクロクロス世界選手権2018放送スケジュール
2月3日(土)
11:00(日本時間19:00)男子ジュニア
https://www.youtube.com/watch?v=xIGmfJhMSb8

13:00(日本時間21:00)女子U23
https://www.youtube.com/watch?v=w2RaZ0eEcxs

15:00(日本時間23:00)女子エリート
https://www.youtube.com/watch?v=ofJ1W4DvrYc

2月4日(日)
11:00(日本時間19:00)男子U23
https://www.youtube.com/watch?v=omKE_ZSOmP0

15:00(日本時間23:00)男子エリート
https://www.youtube.com/watch?v=HxBMUMcjkAk

text&photo:So.Isobe in Valkenburg, Nederland

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