2017/12/30(土) - 10:29
シーズンの中で最も盛り上がるのがツール・ド・フランスが開催される7月にかけて。ロードレースがハイシーズンを迎える6月から7月までを振り返ります。
6月
2017年の大きなトピックに挙げられるのがハンマーシリーズが初開催されたこと。「ロードレースの経営モデルの維新」を目標に掲げて2014年11月に設立されたヴェロングループが主催するオリジナルの新シリーズはハンマークライム、ハンマースプリント、ハンマーチェイスの3種目で争われるもので、最終的にチームTT方式のスプリント合戦の末にチームスカイがサンウェブを下した。同時期に開催されたツール・ド・ルクセンブルクではグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がステージ2勝&総合優勝の活躍を見せている。
別府史之(トレック・セガフレード)や新城幸也(バーレーン・メリダ)の他、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)やアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が顔を揃えたのがツール・ド・フランス前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネ。マイヨジョーヌ候補の中で最も煌めきを見せたのが23.5km個人TTで優勝したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)で、超級山岳モン=デュ=シャを越える難関山岳ステージでフルームとヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)とのスプリントの末にポートが総合首位に。ポートは翌日のラルプデュエズ山頂フィニッシュでもリードを広げたが、最終山岳ステージで孤立したため苦戦を強いられる。ステージ優勝を飾ったフルサングが逆転でドーフィネ総合優勝に輝いた。
もう一つのツール前哨戦であるツール・ド・スイスはローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)の個人TT勝利で開幕。オーストラリアTTチャンピオンのデニスは最終個人TTで2勝目を飾るなど、圧倒的なスピードを披露した。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がステージ通算15勝を飾る中、雨の超級山岳ステージで動いたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)が首位に立つも、イエロージャージは翌日の標高2780mの超級山岳を制したシモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)にスイッチ。中級ステージレースを得意とするスロベニアのスピラクが2度目の総合優勝に輝いている。
ツアー・オブ・スロベニアではラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が総合優勝し、ツール・ド・コリアではジョン・アベラストゥリ(スペイン、チーム右京)がステージ2勝の活躍。同大会では初山翔(ブリヂストンアンカー)が総合10位に入っている。
世界各国で開催されたナショナル選手権のロードレースとタイムトライアルを経ていよいよ世間の注目はツール・ド・フランスへ。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やアルノー・デマール(フランス、エフデジ)らがナショナルチャンピオンジャージを着てツールに挑むことになった。
7月
7月1日から23日までの日程で開催されたツール・ド・フランス。ドイツのデュッセルドルフで開幕した第104回は、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)による雨の個人TT勝利とマイヨジョーヌ獲得で始まる。初日からアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車リタイアする波乱の幕開けとなった。
平坦ステージで最も多くの勝利を重ねたスプリンターはマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)だった。地元ドイツからベルギーに至る第2ステージで勝利し、集団スプリントではほぼ負けなしのスピードを披露。マイヨヴェール獲得に期待が集まったが、キッテルはアルプスを越えることができずに途中リタイアに終わっている。キッテルを欠いた集団スプリントではデマールやディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が勝利を飾った。
世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は第3ステージの登りスプリントで勝利したが、翌日の第4ステージのスプリント中にマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)を転倒させたとして失格処分に。サガン本人は故意に転倒させたことを否定したが結果は覆らず、世界チャンピオンが大会4日目にレースを去る波乱が生まれた。
マイヨジョーヌ争いで前半からリードしたのはクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)だった。アルがステージ初勝利を飾った大会最初の本格山岳ステージでフルームが早くも総合首位に浮上。ヴォージュ山脈とジュラ山脈を越えてもなおフルームがマイヨジョーヌをキープ。ドーフィネにも登場した超級山岳モン=デュ=シャを越える難関山岳ステージ(ウラン勝利)でポートとトーマスが落車リタイアに見舞われる中、フルームは危なげなく首位をキープしてツール前半戦を終えた。
フルームが初めて弱みを見せたのがピレネーの激坂滑走路にフィニッシュする第12ステージ。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)のステージ優勝にフランスが沸く中、マイヨジョーヌは失速したフルームからアルにスイッチ。フルームが山岳ステージで総合ライバルに首位を明け渡すのは初めてのこと。
バルデとともにフランスを最も沸かせたのは、最終的にマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を獲得するワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)の活躍だった。フランス革命記念日のピレネー山岳短距離ステージで優勝したバルギルは、超級山岳イゾアールにフィニッシュする第18ステージでも勝利。文句なしの登坂力でマイヨアポワを手にした。また、チームメイトでルームメイトのマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)がステージ2勝の活躍でマイヨヴェールを獲得。サンウェブが2枚の特別賞ジャージを手にしてる。
アルの失速によってマイヨジョーヌがフルームの手に戻った第14ステージや、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が独走勝利した第15ステージを挟んでレースの舞台はアルプス山脈へ。超級山岳ガリビエを越えるステージで勝利したのはプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)。フルームは翌日のイゾアールも無難にこなしたが、総合2位バルデと総合3位ウランとのタイム差は30秒以下。接戦のまま迎えたマルセイユ個人TTでフルームがライバルたちを一蹴した。最終的にフルームは総合2位ウランに54秒、総合3位バルデに2分20秒のタイム差をつけてパリに凱旋。4度目の総合優勝に輝いた。
イタリアで10日間の日程で開催されたジロローザではアンナ・ヴァンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・プロサイクリング)が総合優勝。與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ)が総合28位でレースを終える。與那嶺はツール第18ステージと同日に超級山岳イゾアールにフィニッシュするコースで行われたラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランスで11位に入り、マルセイユのTTコースを走るいわば「決勝戦」の第2ステージを15位で終えている。
7月下旬にはクラシカ・サンセバスティアンとプルデンシャル・ライドロンドン・サリー・クラシックという2つのUCIワールドツアーレースが開催。ツールでフルームを強力にアシストしたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がサンセバスティアンを、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)がロンドン・サリー・クラシックを制している。
text:Kei Tsuji
6月
2017年の大きなトピックに挙げられるのがハンマーシリーズが初開催されたこと。「ロードレースの経営モデルの維新」を目標に掲げて2014年11月に設立されたヴェロングループが主催するオリジナルの新シリーズはハンマークライム、ハンマースプリント、ハンマーチェイスの3種目で争われるもので、最終的にチームTT方式のスプリント合戦の末にチームスカイがサンウェブを下した。同時期に開催されたツール・ド・ルクセンブルクではグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がステージ2勝&総合優勝の活躍を見せている。
別府史之(トレック・セガフレード)や新城幸也(バーレーン・メリダ)の他、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)やアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が顔を揃えたのがツール・ド・フランス前哨戦のクリテリウム・デュ・ドーフィネ。マイヨジョーヌ候補の中で最も煌めきを見せたのが23.5km個人TTで優勝したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)で、超級山岳モン=デュ=シャを越える難関山岳ステージでフルームとヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)とのスプリントの末にポートが総合首位に。ポートは翌日のラルプデュエズ山頂フィニッシュでもリードを広げたが、最終山岳ステージで孤立したため苦戦を強いられる。ステージ優勝を飾ったフルサングが逆転でドーフィネ総合優勝に輝いた。
もう一つのツール前哨戦であるツール・ド・スイスはローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)の個人TT勝利で開幕。オーストラリアTTチャンピオンのデニスは最終個人TTで2勝目を飾るなど、圧倒的なスピードを披露した。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がステージ通算15勝を飾る中、雨の超級山岳ステージで動いたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)が首位に立つも、イエロージャージは翌日の標高2780mの超級山岳を制したシモン・スピラク(スロベニア、カチューシャ・アルペシン)にスイッチ。中級ステージレースを得意とするスロベニアのスピラクが2度目の総合優勝に輝いている。
ツアー・オブ・スロベニアではラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が総合優勝し、ツール・ド・コリアではジョン・アベラストゥリ(スペイン、チーム右京)がステージ2勝の活躍。同大会では初山翔(ブリヂストンアンカー)が総合10位に入っている。
世界各国で開催されたナショナル選手権のロードレースとタイムトライアルを経ていよいよ世間の注目はツール・ド・フランスへ。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やアルノー・デマール(フランス、エフデジ)らがナショナルチャンピオンジャージを着てツールに挑むことになった。
7月
7月1日から23日までの日程で開催されたツール・ド・フランス。ドイツのデュッセルドルフで開幕した第104回は、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)による雨の個人TT勝利とマイヨジョーヌ獲得で始まる。初日からアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車リタイアする波乱の幕開けとなった。
平坦ステージで最も多くの勝利を重ねたスプリンターはマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)だった。地元ドイツからベルギーに至る第2ステージで勝利し、集団スプリントではほぼ負けなしのスピードを披露。マイヨヴェール獲得に期待が集まったが、キッテルはアルプスを越えることができずに途中リタイアに終わっている。キッテルを欠いた集団スプリントではデマールやディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が勝利を飾った。
世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は第3ステージの登りスプリントで勝利したが、翌日の第4ステージのスプリント中にマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)を転倒させたとして失格処分に。サガン本人は故意に転倒させたことを否定したが結果は覆らず、世界チャンピオンが大会4日目にレースを去る波乱が生まれた。
マイヨジョーヌ争いで前半からリードしたのはクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)だった。アルがステージ初勝利を飾った大会最初の本格山岳ステージでフルームが早くも総合首位に浮上。ヴォージュ山脈とジュラ山脈を越えてもなおフルームがマイヨジョーヌをキープ。ドーフィネにも登場した超級山岳モン=デュ=シャを越える難関山岳ステージ(ウラン勝利)でポートとトーマスが落車リタイアに見舞われる中、フルームは危なげなく首位をキープしてツール前半戦を終えた。
フルームが初めて弱みを見せたのがピレネーの激坂滑走路にフィニッシュする第12ステージ。ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)のステージ優勝にフランスが沸く中、マイヨジョーヌは失速したフルームからアルにスイッチ。フルームが山岳ステージで総合ライバルに首位を明け渡すのは初めてのこと。
バルデとともにフランスを最も沸かせたのは、最終的にマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を獲得するワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)の活躍だった。フランス革命記念日のピレネー山岳短距離ステージで優勝したバルギルは、超級山岳イゾアールにフィニッシュする第18ステージでも勝利。文句なしの登坂力でマイヨアポワを手にした。また、チームメイトでルームメイトのマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)がステージ2勝の活躍でマイヨヴェールを獲得。サンウェブが2枚の特別賞ジャージを手にしてる。
アルの失速によってマイヨジョーヌがフルームの手に戻った第14ステージや、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が独走勝利した第15ステージを挟んでレースの舞台はアルプス山脈へ。超級山岳ガリビエを越えるステージで勝利したのはプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)。フルームは翌日のイゾアールも無難にこなしたが、総合2位バルデと総合3位ウランとのタイム差は30秒以下。接戦のまま迎えたマルセイユ個人TTでフルームがライバルたちを一蹴した。最終的にフルームは総合2位ウランに54秒、総合3位バルデに2分20秒のタイム差をつけてパリに凱旋。4度目の総合優勝に輝いた。
イタリアで10日間の日程で開催されたジロローザではアンナ・ヴァンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・プロサイクリング)が総合優勝。與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ)が総合28位でレースを終える。與那嶺はツール第18ステージと同日に超級山岳イゾアールにフィニッシュするコースで行われたラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランスで11位に入り、マルセイユのTTコースを走るいわば「決勝戦」の第2ステージを15位で終えている。
7月下旬にはクラシカ・サンセバスティアンとプルデンシャル・ライドロンドン・サリー・クラシックという2つのUCIワールドツアーレースが開催。ツールでフルームを強力にアシストしたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がサンセバスティアンを、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)がロンドン・サリー・クラシックを制している。
text:Kei Tsuji
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