2017/09/24(日) - 09:31
終盤まで人数を残したオランダが王者の走りを披露。残り8kmから独走したシャンタル・ブラーク(オランダ)が初の世界王者に輝いた。最終周回で精鋭集団から遅れた與那嶺恵理は50位。
集団内でベルゲン周回コースを走る與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ベルゲンの港を通過する photo:Kei Tsuji / TDWsport
多くの観客が集まったエリート女子ロードレース photo:Kei Tsuji / TDWsport
週末にかけて天候が回復し、最高気温が18度(この時期にしては暖かい)まで上がる予報が出ているノルウェー西部の町ベルゲン。エリート女子の世界チャンピオンを決める大一番は、そんなベルゲンを中心とする19.1km周回コースを8周する152.8kmで行われた。
太陽がさんさんと照らす午後1時半にスタートが切られるとすぐとサラ・ペントン(スウェーデン)がアタック。1周にわたって独走したペントンを追い抜く形でメリッサ・ロウサー(イギリス)が先頭に立ったが、いずれの逃げもメイン集団から1分以上のタイム差を奪うには至らなかった。
レース中盤、4周目に入るとスザンネ・アンデルセン(ノルウェー)のアタックをきっかけにメイン集団は活性化。アミー・ピータース(オランダ)とレイチェル・ネイラン(オーストラリア)、ハンナ・バーンズ(イギリス)という各国のサブエース級選手が逃げ始めて30秒のアドバンテージを築く。メイン集団ではシャンタル・ブラーク(オランダ)を含む落車が発生するなどどこか安定しない。
イギリスとオランダ、オーストラリアはその後も積極的な走りを見せ、残り3周でメイン集団から抜け出したエリノール・バーカー(イギリス)とルチンダ・ブランド(オランダ)、グレーシー・エルヴィン(オーストラリア)が逃げグループにジョイン。しかしライバルチームはこの危険な動きを容認せずに吸収してしまう。集団の人数が70名に絞られた状態でレースは残り2周に入った。
徐々に人数を減らしていくメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
サーモンヒルの登りをこなす與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
序盤に遅れた梶原悠未(筑波大学)が集団復帰を目指す photo:Kei Tsuji / TDWsport
中盤から何度も逃げを試みたハンナ・バーンズ(イギリス) photo:Kei Tsuji / TDWsport
石畳の登りをこなす與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ベルゲンの海岸通りを通過するメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
続くダニエーレ・キング(イギリス)のアタックも決定打を欠き、最後から2回目のサーモンヒルでアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)やアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)、カタルジーナ・ニウイアドマ(ポーランド)、カトリン・ガーフット(オーストラリア)という優勝候補を含む小集団が抜け出したものの集団は再び一つに戻る。すると、最終周回突入前の残り23km地点でブラークがカウンターアタックを成功させた。
中盤に逃げていたバーンズとオードリー・コルドン(フランス)がブラークに合流し、先頭で3名の逃げグループを形成して最終周回の鐘を聞く。有力スプリンターや與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)を含む50名のメイン集団は40秒遅れ。すると、最後のサーモンヒルでメイン集団の中からニウイアドマが強烈なアタックを仕掛けた。
ニウイアドマの加速に反応できたのはガーフットとファンフルーテン、ファンデルブレッヘンのみ。猛烈な勢いでサーモンヒルを駆け上がったニウイアドマら4名は先頭のバーンズとコルドン、ブラークの位置まで一気にジャンプアップする。こうしてサーモンヒルで7名まで人数を増やした逃げグループの中にオランダ人選手は3名(ファンフルーテン、ファンデルブレッヘン、ブラーク)。人数で他を圧倒したオランダの次の一手は残り8km地点からのブラークのアタックだった。
世界TTチャンピオンのファンフルーテンではなく、リオ五輪ロード金メダリストのファンデルブレッヘンでもなく、ブラークが独走に持ち込む。ローテーションが回らずに約30名の後続集団に捕まった追走グループを尻目に、ブラークが独走。2016年にヘント〜ウェヴェルヘム優勝とブールスレーディースツアー総合優勝、2017年にオランダ選手権ロード優勝を果たしている27歳がフィニッシュラインまで逃げ切った。
最終周回に向かうハンナ・バーンズ(イギリス)ら3名 photo:Kei Tsuji / TDWsport
最終周回で先頭グループを率いるアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
独走に持ち込んだシャンタル・ブラーク(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
独走でフィニッシュするシャンタル・ブラーク(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
2番手争いはカトリン・ガーフット(オーストラリア)に軍配 photo:Kei Tsuji / TDWsport
「今日のレースではいろんなことが起こった。落車で全身に痛みが走ったので今日のレースは終わりだと思ったけど、レースを続行して何かできないかを探ることにした」と、レース中盤に落車し、ジャージの右肩の部分が破れた状態でフィニッシュしたブラーク。「オランダチームとしてどう動くかを話し合ったわけではなく、自分たちはそれぞれどう動けばいいのか分かっていた。7人の中にオランダ人選手が3人いるならアタックする以外に方法がない。最初にアネミエク(ファンフルーテン)がアタックしたけどマークが厳しくて飛び出せず、次に自分の出番が回ってきた。だからこの勝利はチームワークの賜物。オランダチャンピオンジャージに続く世界チャンピオンジャージの獲得は夢のよう」。まだ事態を飲み込めていないような驚きの表情でブラークはアルカンシェルに袖を通した。
集団内で最終周回に入った與那嶺は2分31秒遅れの50位に。梶原悠未(筑波大学)は1周目から1分もの遅れを被るもその後メイン集団に復帰。しかし3周目に再びメイン集団から遅れ、5周回完了後にレースを降りている。
「補給が足りなかったのかではなく、最後は力尽きました。残り2周のサーモンヒルでかかったセレクションで一回遅れてから集団に戻ったものの、最終周回前半の短い上りで遅れてしまった」と、終盤の展開を與那嶺は説明する。最後の最後で勝負に残れなかったことについては「チームメイトとも話していたんですが、今シーズンから女子レースの距離が全体的に伸びたんです。160km近い長距離のレースでは、いつも130kmを過ぎたところで落ちてしまう。そこが不安だった。来年はもっと3〜4時間走ってから強度を上げるようなトレーニングを行ってベースを上げたい」とコメント。結果について與那嶺は「最後の1周で千切れてグルペットでフィニッシュするような、今シーズンの自分の立ち位置がそのまま順位になった」と受け止めている。
ヨーロッパで1シーズンを戦い抜いた與那嶺は「この世界選手権までの1年間、とても疲れました」と疲労困憊の表情で笑う。「やっぱりこの1年の成長を感じました。そして、ヨーロッパのプロトンの中で顔と名前を覚えてもらえたことが大きいですね」と語る與那嶺は2018年シーズンに向けて現在所属するエフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープを離れる。引き続きオランダに生活拠点を置きながら新チームで活動する予定だ。
チームスタッフと喜ぶシャンタル・ブラーク(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
2分31秒遅れでレースを終えた與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
就任したばかりのダヴィ・ラパルティアンUCI会長が表彰式に登場 photo:Kei Tsuji / TDWsport
アルカンシェルと金メダルを獲得したシャンタル・ブラーク(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
アルカンシェルに袖を通したシャンタル・ブラーク(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
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週末にかけて天候が回復し、最高気温が18度(この時期にしては暖かい)まで上がる予報が出ているノルウェー西部の町ベルゲン。エリート女子の世界チャンピオンを決める大一番は、そんなベルゲンを中心とする19.1km周回コースを8周する152.8kmで行われた。
太陽がさんさんと照らす午後1時半にスタートが切られるとすぐとサラ・ペントン(スウェーデン)がアタック。1周にわたって独走したペントンを追い抜く形でメリッサ・ロウサー(イギリス)が先頭に立ったが、いずれの逃げもメイン集団から1分以上のタイム差を奪うには至らなかった。
レース中盤、4周目に入るとスザンネ・アンデルセン(ノルウェー)のアタックをきっかけにメイン集団は活性化。アミー・ピータース(オランダ)とレイチェル・ネイラン(オーストラリア)、ハンナ・バーンズ(イギリス)という各国のサブエース級選手が逃げ始めて30秒のアドバンテージを築く。メイン集団ではシャンタル・ブラーク(オランダ)を含む落車が発生するなどどこか安定しない。
イギリスとオランダ、オーストラリアはその後も積極的な走りを見せ、残り3周でメイン集団から抜け出したエリノール・バーカー(イギリス)とルチンダ・ブランド(オランダ)、グレーシー・エルヴィン(オーストラリア)が逃げグループにジョイン。しかしライバルチームはこの危険な動きを容認せずに吸収してしまう。集団の人数が70名に絞られた状態でレースは残り2周に入った。
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中盤に逃げていたバーンズとオードリー・コルドン(フランス)がブラークに合流し、先頭で3名の逃げグループを形成して最終周回の鐘を聞く。有力スプリンターや與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)を含む50名のメイン集団は40秒遅れ。すると、最後のサーモンヒルでメイン集団の中からニウイアドマが強烈なアタックを仕掛けた。
ニウイアドマの加速に反応できたのはガーフットとファンフルーテン、ファンデルブレッヘンのみ。猛烈な勢いでサーモンヒルを駆け上がったニウイアドマら4名は先頭のバーンズとコルドン、ブラークの位置まで一気にジャンプアップする。こうしてサーモンヒルで7名まで人数を増やした逃げグループの中にオランダ人選手は3名(ファンフルーテン、ファンデルブレッヘン、ブラーク)。人数で他を圧倒したオランダの次の一手は残り8km地点からのブラークのアタックだった。
世界TTチャンピオンのファンフルーテンではなく、リオ五輪ロード金メダリストのファンデルブレッヘンでもなく、ブラークが独走に持ち込む。ローテーションが回らずに約30名の後続集団に捕まった追走グループを尻目に、ブラークが独走。2016年にヘント〜ウェヴェルヘム優勝とブールスレーディースツアー総合優勝、2017年にオランダ選手権ロード優勝を果たしている27歳がフィニッシュラインまで逃げ切った。
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集団内で最終周回に入った與那嶺は2分31秒遅れの50位に。梶原悠未(筑波大学)は1周目から1分もの遅れを被るもその後メイン集団に復帰。しかし3周目に再びメイン集団から遅れ、5周回完了後にレースを降りている。
「補給が足りなかったのかではなく、最後は力尽きました。残り2周のサーモンヒルでかかったセレクションで一回遅れてから集団に戻ったものの、最終周回前半の短い上りで遅れてしまった」と、終盤の展開を與那嶺は説明する。最後の最後で勝負に残れなかったことについては「チームメイトとも話していたんですが、今シーズンから女子レースの距離が全体的に伸びたんです。160km近い長距離のレースでは、いつも130kmを過ぎたところで落ちてしまう。そこが不安だった。来年はもっと3〜4時間走ってから強度を上げるようなトレーニングを行ってベースを上げたい」とコメント。結果について與那嶺は「最後の1周で千切れてグルペットでフィニッシュするような、今シーズンの自分の立ち位置がそのまま順位になった」と受け止めている。
ヨーロッパで1シーズンを戦い抜いた與那嶺は「この世界選手権までの1年間、とても疲れました」と疲労困憊の表情で笑う。「やっぱりこの1年の成長を感じました。そして、ヨーロッパのプロトンの中で顔と名前を覚えてもらえたことが大きいですね」と語る與那嶺は2018年シーズンに向けて現在所属するエフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープを離れる。引き続きオランダに生活拠点を置きながら新チームで活動する予定だ。
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ロード世界選手権2017エリート女子ロードレース結果
1位 | シャンタル・ブラーク(オランダ) | 4:06:30 |
2位 | カトリン・ガーフット(オーストラリア) | 0:00:28 |
3位 | アマリー・ディデリクセン(デンマーク) | |
4位 | アネミエク・ファンフルーテン(オランダ) | |
5位 | カタルジーナ・ニウイアドマ(ポーランド) | |
6位 | クリスティーヌ・マジェルス(ルクセンブルク) | |
7位 | スザンネ・アンデルセン(ノルウェー) | |
8位 | アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ) | |
9位 | エミリア・ファリン(スウェーデン) | |
10位 | エレーナ・チェッキーニ(イタリア) | |
50位 | 與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ) | 0:02:31 |
DNF | 梶原悠未(筑波大学) |
text&photo:Kei Tsuji in Bergen, Norway
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