2017/09/23(土) - 10:41
最終周回にアタックしたUCIワールドチーム所属選手2名の逃げ切りが決まったロード世界選手権U23ロードレース。ブノワ・コズネフロワ(フランス)が勝利を飾り、序盤から逃げに選手2名を送り込んだ日本チームの最高位は岡本隼の46位だった。
176名の選手たちがスタートを切る
スタートの準備を整える日本代表チーム
スタートに並んだ岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)と岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
U23ロードレースが開催された9月22日は1日を通して雨が降ったり止んだり。高い降水確率を示していた天気予報とは裏腹に土砂降りの雨にはならなかったが、それでも石畳を含む路面はほぼウェットな状態が保たれた。
19.1km周回コースを10周する全長191kmのレースが始まるとすぐ、岡篤志(宇都宮ブリッツェン)を含む5名が逃げグループを形成してメイン集団を引き離しにかかる。「前に誰かが逃げていることは知らなかった」という山本大喜(鹿屋体育大学)がメイン集団からカウンターアタックを仕掛けて飛び出し、長い単独追走の末に岡のいる逃げグループに追いついた。
後方からさらに4名が追いついて先頭は11名。タイトルを防衛する立場の地元ノルウェーがメイン集団を徹底的にコントロールし、タイム差が2分〜2分30秒を推移しながらレースは中盤へ。タイム差が縮まりつつある中、個人タイムトライアル2位のブランドン・マクナルティ(アメリカ)がカウンターアタックを仕掛けて岡と山本のいる逃げグループに単独で追いついた。
強力なマクナルティが逃げに乗ったことでメイン集団がペースを上げて追走したため、残り70km地点で逃げグループは吸収。マクナルティは諦めずに再度加速し、ここにパヴェル・シヴァコフ(ロシア)やパトリック・ミュラー(スイス)という強力な面々が合流する。こうして新たに編成された8名の逃げグループが1分30秒のリードを得た。
岡篤志(宇都宮ブリッツェン)を含む逃げグループ
単独でブリッジをかける山本大喜(鹿屋体育大学)
1周目から逃げグループをリードした岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
先頭グループとのタイム差を詰める追走グループ
ノルウェーが牽引するメイン集団
ベルゲンの街中を走るメイン集団
しかしこの逃げグループもスペインの集団牽引によってリードを失い、フィニッシュまで1.5周を残したサーモンヒル(長さ1.5km/平均6.4%)で吸収されてレースは再び振り出しに。その後のビョルグ・ランブレフト(ベルギー)らのアタックは決まらず、不安定な状態のまま80名の大きな塊が最終周回に突入。日本勢は岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)と雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)の2名がこの集団に残った。
最終周回前半の登りで6名が抜け出す形となり、そこからレナード・ケムナ(ドイツ)がフィニッシュまで12km地点を残してアタック。サーモンヒルを平均30km/h近いスピードで駆け上がったケムナは10秒のリードで下り&平坦区間へ。すると下りを利用して追走グループの中からブノワ・コズネフロワ(フランス)が単独でアタックした。
先頭を独走するケムナにコズネフロワが残り7km地点で合流。バーレーン・メリダに所属するイバン・ガルシア(スペイン)やウィルマル・パレデス(コロンビア)の追走は届かず、人数を増やした追走集団に対してケムナとコズネフロワが15秒ほどのリードで残り1kmを切る。牽制しながら残り200mの最終コーナーを先頭で抜けたコズネフロワが、追いすがるケムナを振り切った。
ノルウェーを先頭に進むメイン集団
集団内で石畳区間をこなす小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
集団内で走る雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)
新たに逃げグループを形成するパトリック・ミュラー(スイス)やブランドン・マクナルティ(アメリカ)
スペインがメイン集団のペースを上げて逃げグループを追撃
スペインのペースアップで縦に伸びるメイン集団
集団後方で走る岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)
「フランスは絶対的なエースがおらず、逆に言えば誰でも世界タイトルを狙える布陣で挑んでいた。ライバル(ケムナ)のことはよく知らなかったので、彼に集中するのではなく、自分のスプリントに集中することにしたんだ」。2009年のロメン・シカール、2011年のアルノー・デマール、そして2015年のケヴィン・ルダノワに続く4人目のフランス人U23世界チャンピオンに輝いたコズネフロワは、アルカンシェルに袖を通した後、チームメイトたちに高く担ぎ上げられた。
2016年にアージェードゥーゼールにスタジエールとして合流し、2017年8月1日から同チームの正式メンバーとなった21歳のコズネフロワ。9月17日にフランスで開催されたGPイスベルグでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)やナセル・ブアニ(フランス)を含む集団を振り切ってプロ初勝利を飾ったばかりだった。
2位に入ったケムナはサンウェブ所属の21歳。ケムナは2017年のブエルタ・ア・エスパーニャに初出場し、第16ステージの個人タイムトライアルで8位という成績を残している。ロード世界選手権チームタイムトライアルでトム・デュムラン(オランダ)らとともに金メダルを獲得した。
UCIワールドチーム所属選手である2人がワンツーを決める結果に。今後アージェードゥーゼールのメンバーとして出場するレースでコズネフロワはU23のアルカンシェルを着ることができない。逆に、UCIワールドチームに所属するマテイ・モホリッチ(スロベニア)やマッズ・ペデルセン(デンマーク)は年齢的にはU23カテゴリー対象だが、日曜日のエリートレースに出場する。
スプリントで先頭をキープするブノワ・コズネフロワ(フランス)
スプリント一騎打ちを制したブノワ・コズネフロワ(フランス)
チームメイトと喜ぶブノワ・コズネフロワ(フランス)
日本勢最高位となる46位でフィニッシュした岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)
第1集団で最終周回に入った岡本と雨澤は1分50秒遅れの第2集団でフィニッシュ。スプリントで集団先頭をとった岡本の46位が日本勢の最高位となった。「調子は良くて中盤のペースアップにも対応できていたんですが、最終周回の(サーモンヒルの)登りで遅れました。それまでの周回は集団の前で登りに入ってポジションを落としながらも集団に残る感じでしたが、最終周回は前半からペースが速くて前に上がれなかった」と、岡本は終盤の走りを振り返る。
岡本は「このレースはU23の選手にとって世界最高の舞台。ツール・ド・ラヴニールの時も思いましたが、ここで戦えないとプロになれない。これが世界の基準だということを改めて身にしみました」と締めくくった。
アルカンシェルを獲得したブノワ・コズネフロワ(フランス)
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U23ロードレースが開催された9月22日は1日を通して雨が降ったり止んだり。高い降水確率を示していた天気予報とは裏腹に土砂降りの雨にはならなかったが、それでも石畳を含む路面はほぼウェットな状態が保たれた。
19.1km周回コースを10周する全長191kmのレースが始まるとすぐ、岡篤志(宇都宮ブリッツェン)を含む5名が逃げグループを形成してメイン集団を引き離しにかかる。「前に誰かが逃げていることは知らなかった」という山本大喜(鹿屋体育大学)がメイン集団からカウンターアタックを仕掛けて飛び出し、長い単独追走の末に岡のいる逃げグループに追いついた。
後方からさらに4名が追いついて先頭は11名。タイトルを防衛する立場の地元ノルウェーがメイン集団を徹底的にコントロールし、タイム差が2分〜2分30秒を推移しながらレースは中盤へ。タイム差が縮まりつつある中、個人タイムトライアル2位のブランドン・マクナルティ(アメリカ)がカウンターアタックを仕掛けて岡と山本のいる逃げグループに単独で追いついた。
強力なマクナルティが逃げに乗ったことでメイン集団がペースを上げて追走したため、残り70km地点で逃げグループは吸収。マクナルティは諦めずに再度加速し、ここにパヴェル・シヴァコフ(ロシア)やパトリック・ミュラー(スイス)という強力な面々が合流する。こうして新たに編成された8名の逃げグループが1分30秒のリードを得た。
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最終周回前半の登りで6名が抜け出す形となり、そこからレナード・ケムナ(ドイツ)がフィニッシュまで12km地点を残してアタック。サーモンヒルを平均30km/h近いスピードで駆け上がったケムナは10秒のリードで下り&平坦区間へ。すると下りを利用して追走グループの中からブノワ・コズネフロワ(フランス)が単独でアタックした。
先頭を独走するケムナにコズネフロワが残り7km地点で合流。バーレーン・メリダに所属するイバン・ガルシア(スペイン)やウィルマル・パレデス(コロンビア)の追走は届かず、人数を増やした追走集団に対してケムナとコズネフロワが15秒ほどのリードで残り1kmを切る。牽制しながら残り200mの最終コーナーを先頭で抜けたコズネフロワが、追いすがるケムナを振り切った。
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「フランスは絶対的なエースがおらず、逆に言えば誰でも世界タイトルを狙える布陣で挑んでいた。ライバル(ケムナ)のことはよく知らなかったので、彼に集中するのではなく、自分のスプリントに集中することにしたんだ」。2009年のロメン・シカール、2011年のアルノー・デマール、そして2015年のケヴィン・ルダノワに続く4人目のフランス人U23世界チャンピオンに輝いたコズネフロワは、アルカンシェルに袖を通した後、チームメイトたちに高く担ぎ上げられた。
2016年にアージェードゥーゼールにスタジエールとして合流し、2017年8月1日から同チームの正式メンバーとなった21歳のコズネフロワ。9月17日にフランスで開催されたGPイスベルグでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)やナセル・ブアニ(フランス)を含む集団を振り切ってプロ初勝利を飾ったばかりだった。
2位に入ったケムナはサンウェブ所属の21歳。ケムナは2017年のブエルタ・ア・エスパーニャに初出場し、第16ステージの個人タイムトライアルで8位という成績を残している。ロード世界選手権チームタイムトライアルでトム・デュムラン(オランダ)らとともに金メダルを獲得した。
UCIワールドチーム所属選手である2人がワンツーを決める結果に。今後アージェードゥーゼールのメンバーとして出場するレースでコズネフロワはU23のアルカンシェルを着ることができない。逆に、UCIワールドチームに所属するマテイ・モホリッチ(スロベニア)やマッズ・ペデルセン(デンマーク)は年齢的にはU23カテゴリー対象だが、日曜日のエリートレースに出場する。
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第1集団で最終周回に入った岡本と雨澤は1分50秒遅れの第2集団でフィニッシュ。スプリントで集団先頭をとった岡本の46位が日本勢の最高位となった。「調子は良くて中盤のペースアップにも対応できていたんですが、最終周回の(サーモンヒルの)登りで遅れました。それまでの周回は集団の前で登りに入ってポジションを落としながらも集団に残る感じでしたが、最終周回は前半からペースが速くて前に上がれなかった」と、岡本は終盤の走りを振り返る。
岡本は「このレースはU23の選手にとって世界最高の舞台。ツール・ド・ラヴニールの時も思いましたが、ここで戦えないとプロになれない。これが世界の基準だということを改めて身にしみました」と締めくくった。
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ロード世界選手権2017男子U23ロードレース
1位 | ブノワ・コズネフロワ(フランス) | 4:48:23 |
2位 | レナード・ケムナ(ドイツ) | |
3位 | ミカエルカーベル・スヴェンドガールド(デンマーク) | 0:00:03 |
4位 | オリヴァー・ウッド(イギリス) | |
5位 | ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア) | |
6位 | ダミアン・トゥゼ(フランス) | |
7位 | マックス・カンター(ドイツ) | |
8位 | ミカル・パルタ(ポーランド) | |
9位 | マーク・ドウニー(アイルランド) | |
10位 | アンデルス・スコールシェス(ノルウェー) | |
46位 | 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング) | 0:01:50 |
59位 | 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) | |
111位 | 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) | 0:13:24 |
DNF | 小野寺玲(宇都宮ブリッツェン) | |
DNF | 山本大喜(鹿屋体育大学) |
text&photo:Kei.Tsuji
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