2017/09/07(木) - 09:08
28%もの激坂を擁する超級山岳ロス・マチュコス峠で激しく総合争いが動いた。ステファン・デニフル(オーストリア、アクアブルースポート)が大金星を掴んだ後方で、アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)がアタックを成功させる。急勾配に苦しんだクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は貯金を崩しながらマイヨロホを守った。
激しい総合争いが繰り広げられているブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)はカスティーリャ・イ・レオン州から大西洋沿いのカンタブリア州へ。中盤に2級山岳ルナダ峠(長さ8.3km/平均5.7%)を越えてから一気に海岸近くまで高度を下げ、残り28kmから1級山岳アリサス峠(長さ10km/平均6%)の登坂に取り掛かる。最後に待つのは28%もの激坂を擁する超級山岳ロス・マチュコス峠(長さ7.2km/平均8.7%)の山頂フィニッシュだ。
前半は風が強い平坦基調、そして後半には先述した山岳が続くため、集団はハイスピードのまま山岳へ突入することが予想されていた。162名まで減少しやプロトンはパレード走行の時点で横風の只中にあり、分断の危険性をはらんだままリアルスタートが切られた。
この日逃げに積極的だったのはアクアブルースポート。アタック合戦の中からワイルドカード枠で出場を決めたアイルランドチームは、昨年までIAMサイクリングに所属していたステファン・デニフル(オーストリア)を送り込む。後にブリッジと合流を経て、6名がチームスカイがコントロールするメイン集団から逃げ始めた。メンバーは以下の通り。
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシングチーム)
ダニエル・モレノ(スペイン、モビスター チーム)
マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
ステファン・デニフル(オーストリア、アクアブルースポート)
メイン集団ではこの日もチームスカイのイアン・スタナード(イギリス)とクリスティアン・クネース(ドイツ)がペースメイクを担当する。総合争いに影響しない6名の逃げグループに対して最大で9分15秒の猶予を与え、中盤まで淡々と距離を消化していった。
先頭6名は6分弱のリードで2級山岳ルナダ峠に入ると、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)に8ポイント差まで詰められたマイヨモンターニャのリードを広げたいヴィレッラが先頭通過。5ポイントを確保して逃げグループに戻ったものの、深い霧に包まれたダウンヒルで遅れてしまう。
50m先の視界もままならない濃霧と濡れた路面にチャンスを見出したのは、下りの名手として名高い総合2位ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)だった。しかしマイヨロホを従えるチームスカイが鉄壁の守りで逃さず、反対にステージ優勝狙いのラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が脱落。ピンチに陥ったマイカだったが、チームメイトの助けによって1級山岳アリサス峠までに辛くも復帰できた。
登坂距離10kmというアリサス峠では、前日のタイムトライアルで失速し敗北宣言を出した総合9位のエスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)が起死回生のアタックを試みる。アダム・イェーツ(イギリス)と共にアスタナとチームスカイがコントロールする集団から距離を稼いだものの、いよいよチームスカイの山岳アシスト勢が動き出したことで不発に終わってしまった。
抵抗を続けるオリカ・スコットの次なる一手はジャック・ヘイグ(オーストラリア)。アリサス峠山頂付近で逃げ出すと、前から降りてきたニールセンと合流して逃げグループ合流を目指す。しかしダウンヒルを経ていよいよこの日最後の勝負所である超級山岳ロス・マチュコス峠に突入すると、先頭からは激坂区間でデニフル独走に持ち込んだ。30秒程度まで縮めたヘイグだったがデニフルまでは届かず、そのままスピードを失っていった。
デニフルが快調にペースを刻むその後方では、いよいよ総合上位陣による山岳勝負の火蓋が切って落とされる。まずはヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)が抜け出し、続いて勾配の緩急を利用してミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がダッシュ。更にロペスを目がけて3度の総合優勝者(2008年、2012年、2014年)アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が再び動いた。
歯を食いしばりながらダンシングを多用するコンタドールの勢いは止まらなかった。ロペスを引き離し、苦手な急勾配に苦しむフルームを置き去りにしてぐいぐいと距離を開いていく。失速したマイヨロホをチームメイト4人がフォローしたものの、どうしてもペースは上がらなかった。
コンタドールの後ろではロペスとマイカ、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、が追従。総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)は遅れ、総合表彰台圏外脱落も漂わせる。
そんな激しい総合争いを尻目に、尾根上のアップダウンでもペースを崩さなかった先頭デニフルは、追い上げるコンタドールから28秒逃げ切って大金星の独走勝利を達成。スプリントしたチャベスを先頭にニーバリ、ザカリン、マイカは1分4秒差、マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)は1分13秒差、ケルデルマンは1分19秒差。ミケル・ニエベ(スペイン)に付き添われたフルームは1分46秒差でフィニッシュにたどり着き、貯金を切り崩しながらも総合首位を守った。
「今日起きたことはまさにアメージングだ。ブエルタではステージ優勝を目指して第3週目にコンディションを合わせてきたんだ。今日は逃げを許容してもらうまで随分と長いこと集団から逃げ続けた。20km地点では3名しかメンバーがおらず、かつ向かい風だったのでその時はまさか勝てるだなんて思わなかった」と驚きと喜びを同時に表現するデニフル。
大金星の逃げ切り勝利を挙げたデニフルは、昨年解散したIAMサイクリングから加入した1987年生まれの29歳。過去グランツアーには4度参戦しているが、グランツアー、そしてワールドツアーカテゴリーでは初勝利だ。第12ステージ前にはチームバスが放火全焼するという事件が起きており、そうした不遇を乗り越えての勝利だった。
アタックを成功させたコンタドールはレース後に笑顔を交えながらインタビューに応えた。「総合表彰台は遠くにも感じるし、近くも感じる。このステージで多くのタイムを奪うことが出来たけれど、その気持ちは強まるばかりだ。まだこのブエルタでは大きな展開があると思う。全てのステージに全力を投入し、起こりうることに注意を払い続ける必要がある」と、未だ表彰台狙いの闘志は消えていない。
前日に奪ったリードで未だニーバリに1分16秒差を維持したフルームは「恐らく昨日プッシュしたツケが回ってきた。僕は選手全員が25%超の勾配を楽しんでいるなんて思えない。もちろんリードを削るのはいい気分はしないけれど、今僕がいる状況にはとても満足している」と、前向きに結果を受け入れた。
激しい総合争いが繰り広げられているブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)はカスティーリャ・イ・レオン州から大西洋沿いのカンタブリア州へ。中盤に2級山岳ルナダ峠(長さ8.3km/平均5.7%)を越えてから一気に海岸近くまで高度を下げ、残り28kmから1級山岳アリサス峠(長さ10km/平均6%)の登坂に取り掛かる。最後に待つのは28%もの激坂を擁する超級山岳ロス・マチュコス峠(長さ7.2km/平均8.7%)の山頂フィニッシュだ。
前半は風が強い平坦基調、そして後半には先述した山岳が続くため、集団はハイスピードのまま山岳へ突入することが予想されていた。162名まで減少しやプロトンはパレード走行の時点で横風の只中にあり、分断の危険性をはらんだままリアルスタートが切られた。
この日逃げに積極的だったのはアクアブルースポート。アタック合戦の中からワイルドカード枠で出場を決めたアイルランドチームは、昨年までIAMサイクリングに所属していたステファン・デニフル(オーストリア)を送り込む。後にブリッジと合流を経て、6名がチームスカイがコントロールするメイン集団から逃げ始めた。メンバーは以下の通り。
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシングチーム)
ダニエル・モレノ(スペイン、モビスター チーム)
マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
ステファン・デニフル(オーストリア、アクアブルースポート)
メイン集団ではこの日もチームスカイのイアン・スタナード(イギリス)とクリスティアン・クネース(ドイツ)がペースメイクを担当する。総合争いに影響しない6名の逃げグループに対して最大で9分15秒の猶予を与え、中盤まで淡々と距離を消化していった。
先頭6名は6分弱のリードで2級山岳ルナダ峠に入ると、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)に8ポイント差まで詰められたマイヨモンターニャのリードを広げたいヴィレッラが先頭通過。5ポイントを確保して逃げグループに戻ったものの、深い霧に包まれたダウンヒルで遅れてしまう。
50m先の視界もままならない濃霧と濡れた路面にチャンスを見出したのは、下りの名手として名高い総合2位ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)だった。しかしマイヨロホを従えるチームスカイが鉄壁の守りで逃さず、反対にステージ優勝狙いのラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が脱落。ピンチに陥ったマイカだったが、チームメイトの助けによって1級山岳アリサス峠までに辛くも復帰できた。
登坂距離10kmというアリサス峠では、前日のタイムトライアルで失速し敗北宣言を出した総合9位のエスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)が起死回生のアタックを試みる。アダム・イェーツ(イギリス)と共にアスタナとチームスカイがコントロールする集団から距離を稼いだものの、いよいよチームスカイの山岳アシスト勢が動き出したことで不発に終わってしまった。
抵抗を続けるオリカ・スコットの次なる一手はジャック・ヘイグ(オーストラリア)。アリサス峠山頂付近で逃げ出すと、前から降りてきたニールセンと合流して逃げグループ合流を目指す。しかしダウンヒルを経ていよいよこの日最後の勝負所である超級山岳ロス・マチュコス峠に突入すると、先頭からは激坂区間でデニフル独走に持ち込んだ。30秒程度まで縮めたヘイグだったがデニフルまでは届かず、そのままスピードを失っていった。
デニフルが快調にペースを刻むその後方では、いよいよ総合上位陣による山岳勝負の火蓋が切って落とされる。まずはヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)が抜け出し、続いて勾配の緩急を利用してミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がダッシュ。更にロペスを目がけて3度の総合優勝者(2008年、2012年、2014年)アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が再び動いた。
歯を食いしばりながらダンシングを多用するコンタドールの勢いは止まらなかった。ロペスを引き離し、苦手な急勾配に苦しむフルームを置き去りにしてぐいぐいと距離を開いていく。失速したマイヨロホをチームメイト4人がフォローしたものの、どうしてもペースは上がらなかった。
コンタドールの後ろではロペスとマイカ、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、が追従。総合3位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)は遅れ、総合表彰台圏外脱落も漂わせる。
そんな激しい総合争いを尻目に、尾根上のアップダウンでもペースを崩さなかった先頭デニフルは、追い上げるコンタドールから28秒逃げ切って大金星の独走勝利を達成。スプリントしたチャベスを先頭にニーバリ、ザカリン、マイカは1分4秒差、マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)は1分13秒差、ケルデルマンは1分19秒差。ミケル・ニエベ(スペイン)に付き添われたフルームは1分46秒差でフィニッシュにたどり着き、貯金を切り崩しながらも総合首位を守った。
「今日起きたことはまさにアメージングだ。ブエルタではステージ優勝を目指して第3週目にコンディションを合わせてきたんだ。今日は逃げを許容してもらうまで随分と長いこと集団から逃げ続けた。20km地点では3名しかメンバーがおらず、かつ向かい風だったのでその時はまさか勝てるだなんて思わなかった」と驚きと喜びを同時に表現するデニフル。
大金星の逃げ切り勝利を挙げたデニフルは、昨年解散したIAMサイクリングから加入した1987年生まれの29歳。過去グランツアーには4度参戦しているが、グランツアー、そしてワールドツアーカテゴリーでは初勝利だ。第12ステージ前にはチームバスが放火全焼するという事件が起きており、そうした不遇を乗り越えての勝利だった。
アタックを成功させたコンタドールはレース後に笑顔を交えながらインタビューに応えた。「総合表彰台は遠くにも感じるし、近くも感じる。このステージで多くのタイムを奪うことが出来たけれど、その気持ちは強まるばかりだ。まだこのブエルタでは大きな展開があると思う。全てのステージに全力を投入し、起こりうることに注意を払い続ける必要がある」と、未だ表彰台狙いの闘志は消えていない。
前日に奪ったリードで未だニーバリに1分16秒差を維持したフルームは「恐らく昨日プッシュしたツケが回ってきた。僕は選手全員が25%超の勾配を楽しんでいるなんて思えない。もちろんリードを削るのはいい気分はしないけれど、今僕がいる状況にはとても満足している」と、前向きに結果を受け入れた。
H3
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第17ステージ
ステージ成績
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 67:44:03 |
2位 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 1:16 |
3位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 2:13 |
4位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 2:25 |
5位 | アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) | 3:34 |
6位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 4:39 |
7位 | マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) | 6:33 |
8位 | ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ) | 6:40 |
9位 | ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) | 6:45 |
10位 | ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 10:10 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 137pts |
2位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) | 118pts |
3位 | ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) | 108pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) | 54pts |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 47pts |
3位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 29pts |
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 5pts |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 12pts |
3位 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 17pts |
チーム総合成績
1位 | アスタナ | 202:52:23 |
2位 | チームスカイ | 9:46 |
3位 | モビスター | 35:43 |
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