2017/07/10(月) - 07:54
好天に恵まれたUCIグランフォンドのニセコクラシック。140kmは田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)が高岡亮寛(Roppongi Express)の対決を制し総合優勝。70kmは西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)がスタートと同時にアタックして逃げ切り総合優勝。女子総合は藤村祥子(Brassica)が制した。
今年2回目となるUCIグランフォンドのニセコクラシック。UCIのグランフォンドワールドシリーズの一戦として昨年大会よりも約5割増しの900人余りの参加者を集めて7月9日(日)、北海道倶知安町、ニセコ町周辺で行われた。大会は4回目、UCIとしては2回目の開催だ。
大会は大きく分けて140kmと70km、それぞれUCIクラスと非UCIクラスがある。そして男女別、およそ5歳単位の年齢区分に分けられる。UCIクラスの各賞者にはチャンピオンジャージが与えられるとともに、上位25%以内にはグランフォンド世界選手権への出場資格が得られる。
シクロクロス3度世界チャンピオンのフェルヴェッケン氏がUCIマネージャー
今年はUCIのグランフォンド専門マネージャーとして、シクロクロスで3度の世界チャンピオンに輝くなどの名選手であるエルウィン・フェルヴェッケン氏(ベルギー)が訪れた。「景色の良いニセコ地方のコースでグランフォンドが行われることは大変素晴らしいこと。3年前にここのベン・カー氏らから相談を受け、昨年開催するに至った」とUCIグランフォンドワールドシリーズのニセコクラシックを説明した。
コースはニセコ地方の山岳と平地を組み合わせた起伏に富むものだ。140kmコースはグラン・ヒラフをスタートしニセコパノラマラインを越え、日本海まで一気に走る。レース後半もフィニッシュまでに三度のアップダウンを繰り返し、獲得標高は2400mに達する山岳コース。70kmは蘭越町スタートで140kmの後半に合流するもので、獲得標高は約1100mとコース後半のアップダウンが脚に応えるものだ。
強者たちが戦いを繰り広げた140kmクラスは平均時速37.27km!
140kmクラスは混乱を避けるため全体を3グループに分け1分間隔でスタートし、正式スタート時には全部が合流する見込みだったが合流できたのは第2グループまでだった。ただし年齢別グループ分けのためそれぞれのクラス内成績は大きな影響はないものに。
6km地点から始まる複数の上りを経て大きく下ると集団はいきなり50人ほどに絞られる。その後に後方から合流したがニセコパノラマラインの上り区間では、森本誠(GOKISO)を中心とする選手たちがペースを上げて集団はばらばらになる。神仙沼KOMは岩島啓太(MIVRO)がトップ通過し先頭は6人に。メンバーは森本、岩島、田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)、高岡亮寛(Roppongi Express)、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)、新井康文(BIKE SHOP FORZA)でいずれも優勝候補として下馬評に上がったメンバーだ。
山岳に強いメンバーが逃げる
過去3度の大会は数人が逃げて50人ほどの集団でKOMを越え、のちの平坦区間では100人以上の集団となるパターンだった。だが今年は森本らのペースアップで集団は破壊されて10人単位程度の集団がいくつもできるような展開に。下りを経て先頭6人と後続12人の差は1分半程度だったが次第に縮まり、その追走12人が次の上りの始まる105km地点で合流し先頭は18人になる。
8%ほどの勾配が続く上り区間で抜け出したのはもともと逃げていたメンバーだ。森本を中心にペースが上がりふたたび集団は分断され、先頭は田崎と高岡の2人に。上り区間では田崎がやや先行する場面があるが基本は2人で下りに入る。125km地点の次の上りでは田崎が先行し10秒~20秒差で高岡が追う展開に。田崎が強さを見せる。その後ろは森本が単独、さらに岩島と中村が追う。
田崎友康と高岡亮寛の一騎打ち
田崎先行でフィニッシュへの残り距離が短くなる中、ラスト5kmでついに高岡が先頭の田崎に追いつく。ここからは平坦や下りもあるため先頭交代しながら進み、フィニッシュ直前の上り区間で田崎が踏み込むと高岡が離れ、10秒差で田崎が先着した。田崎は140kmの全クラス総合と35-39歳クラスで優勝、高岡は40-44歳クラスで優勝した。
田崎は富士ヒルクライムで2連覇、乗鞍56分23秒の記録を持つなどヒルクライムを得意とするが2015年和歌山国体ロードレース7位の成績もある。高岡は2週間前の全日本選手権ロードで終盤まで前方で活躍したコンディションそのままで臨んだ。そして”山の神”森本を中心にした強豪勢がペースを上げたため小集団のサバイバルレースとなり、昨年記録を約20分縮める3時間38分56秒、平均時速37.27kmというとてつもないハイペースを刻んだ。
西谷雅史のゼロキロアタックで独走優勝の70km
蘭越町スタートの70kmクラスは女子との同時スタート。UCIクラスで出るためには女子はすべて70kmになる。男子は50歳以上が強制的に70kmになる。非UCIクラスならばその制約はない。このため昨年49歳で140kmの44-49歳クラス覇者の西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)はこの70kmクラスに出場した。
その西谷はスタートと同時にアタックして前方のクラスを抜き去り単独先頭に。その差は平坦終えて上り区間に入ってからも拡大し3分を超える。そのまま独走で2位以下に2分半の差をつけ優勝した。女子70kmはスピードスケートで2014年ソチオリンピックに出場した藤村祥子(Brassica)が男子の中でもそん色ないタイムで走破し優勝した。
各上位者のコメント
140km総合1位 田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)
まさか勝てるとは本当に思っていなかったです。終盤に高岡さんが脚が攣ってると言っていて上りになるとペースが落ちる感じだったので、あとは一人で行こうと頑張りました。ですが自分に地脚が無くて追いつかれてしまって。後ろが追っているということだったので2人で回していけば少なくとも年代別のジャージは確保できるし、総合は高岡さんとの勝負になると思っていました。最後踏んだら離れたので勝てたという感じです。
今回は特に上りで森本さんが強かったですね。周りは強い選手ばかりで、その選手たちと一緒に走ってこの成績というのが信じられないです。自分のキャリアの中で一番いい成績です。このニセコは自分にとってアマチュアのロードレース選手権という位置づけですね。景色も良くて凄くいいコースです。しかも前をしっかりと見て下りも得意でないといけない。貴重なラインのロードレースだと思います。
140km総合2位 高岡亮寛(Roppongi Express)
年代別は1位なので最低限のことはできたかなと思います。序盤で脚を攣ってしまって、でも最後まであきらめなければ何とかいけるかなと思い走りました。終盤に田崎さんに先行されましたが、5秒から10秒差で常に前に見えている範囲で走っていました。最後上りで追いついたのでそこからは何とかなるかと。ゴール前はきつかったですね、追いついたけど勝てなかった。田崎さんが強かったです。
上りは森本さんが速かったですね。KOMの後は6人で回して後続とは1分半から縮まって12人が追いついてきたけれど、上りの勝負だと思って落ち着いていました。そこからは生命力の戦いという感じでしたね。
このニセコはコースが素場らしいですね、また出たいです。グランフォンドだけれども正直ロードレースと思って走っています。
140km総合3位 森本誠(GOKISO)
田崎さんに負けたのが、、できれば勝負したかったのですが。今日の田崎さんは上りだけでなく平坦でも強かったですね。上位陣はもう脚なりに並んだ順位ですね。みんな力勝負に持ち込みたい気持ちは一緒で。そういう展開になりました。ここはいいコースですね、パノラマラインの下りは特にいい景色でした。
70km総合1位 西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)
スタートからのアタックは、このクラスに上がったらやろうと思っていたのでそれで勝てて良かったです。自信が無く追いつかれると思ったので、上りに入るまでに3分差が無いと不安でした。
結果
140km男子総合
1位 田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)3時間38分56秒
2位 高岡亮寛(Roppongi Express)+10秒
3位 森本誠(GOKISO)+3分36秒
4位 中村龍太郎(イナーメ信濃山形)+4分59秒
5位 井上亮(Magellan Systems Japan)+5分04秒
6位 岩島啓太(MIVRO)+5分07秒
7位 生田目修(イナーメ信濃山形)+5分23秒
8位 内田喬平(Team Projection)+6分07秒
9位 坂大恵太(阿部幸製菓)+6分41秒
10位 岡泰誠(COSMOS performance consulting)+7分27秒
70km男子総合
1位 西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)2時間04分35秒
2位 菊川実紀(Roppongi Express)+2分28秒
3位 今西大地(パラティアムTOKYO)+2分35秒
4位 島野翔汰(北星学園大学付属高校)+2分40秒
5位 ライアン・マッケイ(TEAM NISEKO)+2分59秒
6位 木村公一 +3分01秒
70km女子総合
1位 藤村祥子(Brassica)2時間08分27秒
2位 榎本美帆 +7分26秒
3位 米田和美(Brassica)+8分22秒
photo&text:Hideaki TAKAGI
今年2回目となるUCIグランフォンドのニセコクラシック。UCIのグランフォンドワールドシリーズの一戦として昨年大会よりも約5割増しの900人余りの参加者を集めて7月9日(日)、北海道倶知安町、ニセコ町周辺で行われた。大会は4回目、UCIとしては2回目の開催だ。
大会は大きく分けて140kmと70km、それぞれUCIクラスと非UCIクラスがある。そして男女別、およそ5歳単位の年齢区分に分けられる。UCIクラスの各賞者にはチャンピオンジャージが与えられるとともに、上位25%以内にはグランフォンド世界選手権への出場資格が得られる。
シクロクロス3度世界チャンピオンのフェルヴェッケン氏がUCIマネージャー
今年はUCIのグランフォンド専門マネージャーとして、シクロクロスで3度の世界チャンピオンに輝くなどの名選手であるエルウィン・フェルヴェッケン氏(ベルギー)が訪れた。「景色の良いニセコ地方のコースでグランフォンドが行われることは大変素晴らしいこと。3年前にここのベン・カー氏らから相談を受け、昨年開催するに至った」とUCIグランフォンドワールドシリーズのニセコクラシックを説明した。
コースはニセコ地方の山岳と平地を組み合わせた起伏に富むものだ。140kmコースはグラン・ヒラフをスタートしニセコパノラマラインを越え、日本海まで一気に走る。レース後半もフィニッシュまでに三度のアップダウンを繰り返し、獲得標高は2400mに達する山岳コース。70kmは蘭越町スタートで140kmの後半に合流するもので、獲得標高は約1100mとコース後半のアップダウンが脚に応えるものだ。
強者たちが戦いを繰り広げた140kmクラスは平均時速37.27km!
140kmクラスは混乱を避けるため全体を3グループに分け1分間隔でスタートし、正式スタート時には全部が合流する見込みだったが合流できたのは第2グループまでだった。ただし年齢別グループ分けのためそれぞれのクラス内成績は大きな影響はないものに。
6km地点から始まる複数の上りを経て大きく下ると集団はいきなり50人ほどに絞られる。その後に後方から合流したがニセコパノラマラインの上り区間では、森本誠(GOKISO)を中心とする選手たちがペースを上げて集団はばらばらになる。神仙沼KOMは岩島啓太(MIVRO)がトップ通過し先頭は6人に。メンバーは森本、岩島、田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)、高岡亮寛(Roppongi Express)、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)、新井康文(BIKE SHOP FORZA)でいずれも優勝候補として下馬評に上がったメンバーだ。
山岳に強いメンバーが逃げる
過去3度の大会は数人が逃げて50人ほどの集団でKOMを越え、のちの平坦区間では100人以上の集団となるパターンだった。だが今年は森本らのペースアップで集団は破壊されて10人単位程度の集団がいくつもできるような展開に。下りを経て先頭6人と後続12人の差は1分半程度だったが次第に縮まり、その追走12人が次の上りの始まる105km地点で合流し先頭は18人になる。
8%ほどの勾配が続く上り区間で抜け出したのはもともと逃げていたメンバーだ。森本を中心にペースが上がりふたたび集団は分断され、先頭は田崎と高岡の2人に。上り区間では田崎がやや先行する場面があるが基本は2人で下りに入る。125km地点の次の上りでは田崎が先行し10秒~20秒差で高岡が追う展開に。田崎が強さを見せる。その後ろは森本が単独、さらに岩島と中村が追う。
田崎友康と高岡亮寛の一騎打ち
田崎先行でフィニッシュへの残り距離が短くなる中、ラスト5kmでついに高岡が先頭の田崎に追いつく。ここからは平坦や下りもあるため先頭交代しながら進み、フィニッシュ直前の上り区間で田崎が踏み込むと高岡が離れ、10秒差で田崎が先着した。田崎は140kmの全クラス総合と35-39歳クラスで優勝、高岡は40-44歳クラスで優勝した。
田崎は富士ヒルクライムで2連覇、乗鞍56分23秒の記録を持つなどヒルクライムを得意とするが2015年和歌山国体ロードレース7位の成績もある。高岡は2週間前の全日本選手権ロードで終盤まで前方で活躍したコンディションそのままで臨んだ。そして”山の神”森本を中心にした強豪勢がペースを上げたため小集団のサバイバルレースとなり、昨年記録を約20分縮める3時間38分56秒、平均時速37.27kmというとてつもないハイペースを刻んだ。
西谷雅史のゼロキロアタックで独走優勝の70km
蘭越町スタートの70kmクラスは女子との同時スタート。UCIクラスで出るためには女子はすべて70kmになる。男子は50歳以上が強制的に70kmになる。非UCIクラスならばその制約はない。このため昨年49歳で140kmの44-49歳クラス覇者の西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)はこの70kmクラスに出場した。
その西谷はスタートと同時にアタックして前方のクラスを抜き去り単独先頭に。その差は平坦終えて上り区間に入ってからも拡大し3分を超える。そのまま独走で2位以下に2分半の差をつけ優勝した。女子70kmはスピードスケートで2014年ソチオリンピックに出場した藤村祥子(Brassica)が男子の中でもそん色ないタイムで走破し優勝した。
各上位者のコメント
140km総合1位 田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)
まさか勝てるとは本当に思っていなかったです。終盤に高岡さんが脚が攣ってると言っていて上りになるとペースが落ちる感じだったので、あとは一人で行こうと頑張りました。ですが自分に地脚が無くて追いつかれてしまって。後ろが追っているということだったので2人で回していけば少なくとも年代別のジャージは確保できるし、総合は高岡さんとの勝負になると思っていました。最後踏んだら離れたので勝てたという感じです。
今回は特に上りで森本さんが強かったですね。周りは強い選手ばかりで、その選手たちと一緒に走ってこの成績というのが信じられないです。自分のキャリアの中で一番いい成績です。このニセコは自分にとってアマチュアのロードレース選手権という位置づけですね。景色も良くて凄くいいコースです。しかも前をしっかりと見て下りも得意でないといけない。貴重なラインのロードレースだと思います。
140km総合2位 高岡亮寛(Roppongi Express)
年代別は1位なので最低限のことはできたかなと思います。序盤で脚を攣ってしまって、でも最後まであきらめなければ何とかいけるかなと思い走りました。終盤に田崎さんに先行されましたが、5秒から10秒差で常に前に見えている範囲で走っていました。最後上りで追いついたのでそこからは何とかなるかと。ゴール前はきつかったですね、追いついたけど勝てなかった。田崎さんが強かったです。
上りは森本さんが速かったですね。KOMの後は6人で回して後続とは1分半から縮まって12人が追いついてきたけれど、上りの勝負だと思って落ち着いていました。そこからは生命力の戦いという感じでしたね。
このニセコはコースが素場らしいですね、また出たいです。グランフォンドだけれども正直ロードレースと思って走っています。
140km総合3位 森本誠(GOKISO)
田崎さんに負けたのが、、できれば勝負したかったのですが。今日の田崎さんは上りだけでなく平坦でも強かったですね。上位陣はもう脚なりに並んだ順位ですね。みんな力勝負に持ち込みたい気持ちは一緒で。そういう展開になりました。ここはいいコースですね、パノラマラインの下りは特にいい景色でした。
70km総合1位 西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)
スタートからのアタックは、このクラスに上がったらやろうと思っていたのでそれで勝てて良かったです。自信が無く追いつかれると思ったので、上りに入るまでに3分差が無いと不安でした。
結果
140km男子総合
1位 田崎友康(F(t)麒麟山レーシング)3時間38分56秒
2位 高岡亮寛(Roppongi Express)+10秒
3位 森本誠(GOKISO)+3分36秒
4位 中村龍太郎(イナーメ信濃山形)+4分59秒
5位 井上亮(Magellan Systems Japan)+5分04秒
6位 岩島啓太(MIVRO)+5分07秒
7位 生田目修(イナーメ信濃山形)+5分23秒
8位 内田喬平(Team Projection)+6分07秒
9位 坂大恵太(阿部幸製菓)+6分41秒
10位 岡泰誠(COSMOS performance consulting)+7分27秒
70km男子総合
1位 西谷雅史(サイクルポイントオーベスト)2時間04分35秒
2位 菊川実紀(Roppongi Express)+2分28秒
3位 今西大地(パラティアムTOKYO)+2分35秒
4位 島野翔汰(北星学園大学付属高校)+2分40秒
5位 ライアン・マッケイ(TEAM NISEKO)+2分59秒
6位 木村公一 +3分01秒
70km女子総合
1位 藤村祥子(Brassica)2時間08分27秒
2位 榎本美帆 +7分26秒
3位 米田和美(Brassica)+8分22秒
photo&text:Hideaki TAKAGI
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