2017/05/21(日) - 04:41
1級山岳オローパで繰り広げられたマリアローザ争い。キンタナのアタックを冷静に対処し、石畳の最終ストレートで加速したトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)がステージ2勝目を飾り、ライバルたちに対してリードを広げることに成功した。
故ファウスト・コッピの生誕地カステッラーニアをスタートする第14ステージ。約110kmにわたる平坦区間を終えると、世界遺産に指定されたキリスト教の聖地オローパに向かって選手たちはヒルクライムを開始する。標高1,142mの1級山岳オローパ(全長11.8km/平均6.2%)が今大会3つ目の山頂フィニッシュだ。
「モンターニャ・パンターニ(パンターニの山)」に指定された聖地オローパに向かって、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)を除く183名がスタート。断続的なアタック合戦が収束したのは30kmを過ぎてからで、メイン集団はナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)、セルゲイ・ラグティン(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ダニエル・マルティネス(コロンビア、ウィリエール・トリエスティーナ)の3名による先行を容認した。
しかしステージ距離の短さからタイム差の拡大は2分で頭打ち。オリカ・スコットやエフデジ、サンウェブといった総合系チームが集団の先頭に陣取り、水田が広がるピエモンテ州の平野部を北上する。先頭3名は1級山岳オローパの登坂開始を前に、フィニッシュまで18kmを残してメイン集団に飲み込まれた。
ラウンドアバウトが連続するビエッラの街中を抜け、残り12kmを切って本格的な登坂が始まるとバーレーン・メリダやトレック・セガフレード、そしてモビスターが先頭に立つ。集団後方ではアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)を含む落車が発生。17回グランツール連続出場中のハンセンは手首を痛めながらもフィニッシュしている。
ホセ・ロハスとゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)が集団先頭に立ってペースを上げると不意に後続と距離が開き、このモビスターの2人に飛びついたディエゴ・ローザ(イタリア、チームスカイ)が単独でしばらく独走。ステージ優勝狙いに作戦を切り替えているチームスカイだったが、ローザの動きはモビスターの牽引によって封じ込められる。
続いて動いたイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)が吸収されると、頂上まで5.5kmを残して、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が総合争いの先陣を切った。ザカリンに続いてドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が動く中、遅れてはいけない総合3位バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)やマリアビアンカのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が脱落してしまう。
集団の人数が減りつつある中、残り4kmを切ったところでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がついに仕掛けた。ダンシングで鋭く加速したキンタナにはザカリンがしばらく食らいついたもののやがては脱落。苦しい表情を見せずにハイペースで登るキンタナに対し、マリアローザのデュムランは一定ペースキープに徹した。
デュムランから約10秒のリードを得たキンタナだったが、登りを進むにつれてそのタイム差は縮まり始めた。デュムランはザカリン、ニーバリ、ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)を引き連れて追走を続け、残り1.5km地点でついに先頭キンタナをキャッチ。逆にデュムランがペースを上げるとニーバリが脱落し、ステージ優勝の行方はデュムラン、ザカリン、キンタナ、ランダの先頭4名に絞られた。
残り250mの石畳区間で仕掛けたザカリンにデュムランがダンシングで対抗。石畳の登りをパワフルに踏み抜き、スプリント対決でザカリンを下したデュムランがガッツポーズでフィニッシュラインを切った。
「この勝利は予想していなかった。キンタナのアタックには反応できなかったものの、落ち着いて、集中力を切らさずに、リラックスして自分のペースを守り続けたんだ。最後のステージ優勝争いまで力が残っていたことに驚いたよ。この勝利を夢見ていたけど、まさか本当に実現できるとは思っていなかった」。個人タイムトライアルに続いて山頂フィニッシュを制したデュムランは笑顔でインタビューに答えた。
デュムランはキンタナに14秒、ピノに35秒、ニーバリに43秒差をつけることに成功。さらにボーナスタイム10秒を加算したため総合2位キンタナとのタイム差は2分47秒に広がっている。1分44秒遅れのステージ22位に終わったモレマが総合3位から総合6位に順位を下げた一方で、ピノがデュムランと3分25秒差の総合3位に浮上している。
積極的に仕掛けながらも登りバトルに敗れたキンタナは「予想外の結果になった。ライバルたちを試すために力を尽くしたものの、デュムランの登坂力が秀でていた。局所的に吹いていた風が影響を与えたのかもしれない。脚の調子は良く、他のライバルたちからリードを奪うことができたし、総合争いから脱落したわけじゃない。3週目の山岳ステージは今日とは違う戦いになる」と語り、巻き返しを誓った。
デュムランはマリアローザのリードを広げるとともに、マリアアッズーラも同時に獲得。ユンゲルスはマリアビアンカを守ったが、ヤングライダー賞2位のアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)から41秒失う結果となった。
ジロ・デ・イタリア2017第14ステージ結果
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 3h02'34"
2位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +03"
3位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) +09"
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +14"
5位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +35"
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +41"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +43"
8位 フランコ・ペリツォッティ(イタリア、バーレーン・メリダ)
9位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +46"
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
11位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +50"
19位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +1'22"
22位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1'44"
29位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +2'21"
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 59h31'17"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +2'47"
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +3'25"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +3'40"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +4'24"
6位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +4'32"
7位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +4'55"
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +4'59"
9位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +5'28"
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +5'36"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 315pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 51pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 49pts
3位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 46pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 59h36'45"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2'15"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'27"
チーム総合成績
1位 モビスター 178h52'59"
2位 アスタナ +3'54"
3位 UAEチームエミレーツ +10'21"
text&photo:Kei Tsuji in Oropa, Italy
故ファウスト・コッピの生誕地カステッラーニアをスタートする第14ステージ。約110kmにわたる平坦区間を終えると、世界遺産に指定されたキリスト教の聖地オローパに向かって選手たちはヒルクライムを開始する。標高1,142mの1級山岳オローパ(全長11.8km/平均6.2%)が今大会3つ目の山頂フィニッシュだ。
「モンターニャ・パンターニ(パンターニの山)」に指定された聖地オローパに向かって、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)を除く183名がスタート。断続的なアタック合戦が収束したのは30kmを過ぎてからで、メイン集団はナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)、セルゲイ・ラグティン(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、ダニエル・マルティネス(コロンビア、ウィリエール・トリエスティーナ)の3名による先行を容認した。
しかしステージ距離の短さからタイム差の拡大は2分で頭打ち。オリカ・スコットやエフデジ、サンウェブといった総合系チームが集団の先頭に陣取り、水田が広がるピエモンテ州の平野部を北上する。先頭3名は1級山岳オローパの登坂開始を前に、フィニッシュまで18kmを残してメイン集団に飲み込まれた。
ラウンドアバウトが連続するビエッラの街中を抜け、残り12kmを切って本格的な登坂が始まるとバーレーン・メリダやトレック・セガフレード、そしてモビスターが先頭に立つ。集団後方ではアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)を含む落車が発生。17回グランツール連続出場中のハンセンは手首を痛めながらもフィニッシュしている。
ホセ・ロハスとゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)が集団先頭に立ってペースを上げると不意に後続と距離が開き、このモビスターの2人に飛びついたディエゴ・ローザ(イタリア、チームスカイ)が単独でしばらく独走。ステージ優勝狙いに作戦を切り替えているチームスカイだったが、ローザの動きはモビスターの牽引によって封じ込められる。
続いて動いたイゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)が吸収されると、頂上まで5.5kmを残して、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が総合争いの先陣を切った。ザカリンに続いてドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が動く中、遅れてはいけない総合3位バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)やマリアビアンカのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が脱落してしまう。
集団の人数が減りつつある中、残り4kmを切ったところでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がついに仕掛けた。ダンシングで鋭く加速したキンタナにはザカリンがしばらく食らいついたもののやがては脱落。苦しい表情を見せずにハイペースで登るキンタナに対し、マリアローザのデュムランは一定ペースキープに徹した。
デュムランから約10秒のリードを得たキンタナだったが、登りを進むにつれてそのタイム差は縮まり始めた。デュムランはザカリン、ニーバリ、ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)を引き連れて追走を続け、残り1.5km地点でついに先頭キンタナをキャッチ。逆にデュムランがペースを上げるとニーバリが脱落し、ステージ優勝の行方はデュムラン、ザカリン、キンタナ、ランダの先頭4名に絞られた。
残り250mの石畳区間で仕掛けたザカリンにデュムランがダンシングで対抗。石畳の登りをパワフルに踏み抜き、スプリント対決でザカリンを下したデュムランがガッツポーズでフィニッシュラインを切った。
「この勝利は予想していなかった。キンタナのアタックには反応できなかったものの、落ち着いて、集中力を切らさずに、リラックスして自分のペースを守り続けたんだ。最後のステージ優勝争いまで力が残っていたことに驚いたよ。この勝利を夢見ていたけど、まさか本当に実現できるとは思っていなかった」。個人タイムトライアルに続いて山頂フィニッシュを制したデュムランは笑顔でインタビューに答えた。
デュムランはキンタナに14秒、ピノに35秒、ニーバリに43秒差をつけることに成功。さらにボーナスタイム10秒を加算したため総合2位キンタナとのタイム差は2分47秒に広がっている。1分44秒遅れのステージ22位に終わったモレマが総合3位から総合6位に順位を下げた一方で、ピノがデュムランと3分25秒差の総合3位に浮上している。
積極的に仕掛けながらも登りバトルに敗れたキンタナは「予想外の結果になった。ライバルたちを試すために力を尽くしたものの、デュムランの登坂力が秀でていた。局所的に吹いていた風が影響を与えたのかもしれない。脚の調子は良く、他のライバルたちからリードを奪うことができたし、総合争いから脱落したわけじゃない。3週目の山岳ステージは今日とは違う戦いになる」と語り、巻き返しを誓った。
デュムランはマリアローザのリードを広げるとともに、マリアアッズーラも同時に獲得。ユンゲルスはマリアビアンカを守ったが、ヤングライダー賞2位のアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)から41秒失う結果となった。
ジロ・デ・イタリア2017第14ステージ結果
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 3h02'34"
2位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +03"
3位 ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) +09"
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +14"
5位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +35"
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +41"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +43"
8位 フランコ・ペリツォッティ(イタリア、バーレーン・メリダ)
9位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +46"
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
11位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +50"
19位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +1'22"
22位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1'44"
29位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +2'21"
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 59h31'17"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +2'47"
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +3'25"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +3'40"
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +4'24"
6位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +4'32"
7位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +4'55"
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +4'59"
9位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +5'28"
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +5'36"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 315pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 192pts
3位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 117pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 51pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 49pts
3位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 46pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 59h36'45"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +2'15"
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'27"
チーム総合成績
1位 モビスター 178h52'59"
2位 アスタナ +3'54"
3位 UAEチームエミレーツ +10'21"
text&photo:Kei Tsuji in Oropa, Italy
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